交通事故 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 6
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • 自転車事故にも業務上過失致死傷罪適用の可能性あり

    2011年09月09日


    運動会の綱引きの最中に突然綱が切れ、参加していた10歳の女子が左腕を骨折するなど、小学生を含む14人が重軽傷を負ったそうです。

    綱は、小学校で30年前から使用されていたもので、警視庁が事故原因を調べています。

    ニュース
    http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20111009-00000018-ann-soci

    綱の管理の状況や、綱の安全性の点検の状況などによっては、業務上過失致傷罪の適用の可能性が出てくるかもしれません。

    ちなみに、自動車事故で他人に怪我をさせた場合、昔は、業務上過失致傷罪でしたが、現在は、「自動車運転過失致傷罪」です。

    ところが、自転車で事故を起こした場合には、普通の過失の場合には「過失致傷罪」、重過失の場合には「重過失致傷罪」です。

    法定刑は、次のとおり。

    自動車運転過失致傷罪 7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金
    業務上過失致傷罪   5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金
    重過失致傷罪     5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金
    過失致傷罪      30万円以下の罰金又は科料

    これを見ればわかるとおり、過失致傷罪だけ格段に軽い法定刑になっています。

    自転車に業務上過失致傷罪が適用されない理由は、自転車は、主として人の脚力のみで走行し、軽量で操作が容易であって、その運転速度も通常は他人に重大な傷害を負わせる可能性が一般的・類型的に大きいとはいえず、運転自体の危険性に乏しい、とされています(条解刑法第2版、576頁)。

    しかし、そうも言ってられなくなりました。

    自転車事故が過去最悪のペースとのことです。
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111009-00000034-jij-soci

    自転車は、今や高速度で走行し、他人に重大な傷害を負わせる可能性が一般的・類型的に大きいものとして、業務上過失致傷罪が適用されるようになるでしょう。

  • 自転車に一方通行規制が開始

    2011年06月25日


    警察庁及び国土交通省は、最近の自転車事故の増加などの状況を踏まえ、自転車の交錯による事故の危険性を減少させ、歩道・自転車道における自転車の通行を整序化するとともに、自転車道等の自転車通行環境の整備を推進するためとして、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(昭和35年総理府・建設省令第3号)」の一部改正について検討しています。

    8月20日までの間、パブリックコメントを募集しています。

    http://tinyurl.com/3bulefr

    年内にも施行する方針だそうです。

    警察庁によると、平成22年の自転車関連事故は15万1626件で全事故の20.9%。

    また、自転車道の整備前と整備後では事故が26%減少、歩道上に自転車通行帯を明示した場合でも14%減るということで、自転車道や自転車通行帯の整備が、自転車事故防止に役立つと見ています。

    一方通行が導入されると、一方通行標識に違反して逆走すれば道路交通法違反になり、3月以下の懲役か5万円以下の罰金になります。

    これにより、自転車事故が減少するとよいのですが・・・

    よく憶えておきましょう。

    この標識です。 

    $弁護士 谷原誠 のブログ

  • 「だんご3兄弟」が死亡事故

    2011年06月17日

    平成5年から平成11年にかて大ヒットした「だんご3兄弟」を歌っていた速水けんたろう氏が、死亡事故を起こしました。

    ニュースによると、7月11日午後1時15分ころ、埼玉県川越市通町の市道交差点で、横断歩道を歩いて渡っていた近くに住む無職の女性(78)が右折してきた乗用車にはねられたとのことです。

    運転していたのが速水氏。

    警察では、速水氏を逮捕せず、在宅のまま自動車運転過失致死容疑で書類送検する方針。

    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110717-00000504-san-soci

    速水氏には、今後、運転免許にかかる行政処分、刑事手続き、民事手続きが並行して進みます。

    刑事手続きとしては、自動車運転過失致死罪とのことなので、最大7年以下の懲役です。今回過失の大きさや、過去の前科などを検討した上で、起訴されるかどうか、起訴されたとして執行猶予となるかどうかが問題となります。

    民事手続きとしては、被害者の女性の遺族から、損害賠償を請求されます。速水氏が自賠責保険及び任意保険に加入していれば保険会社から被害者に損害賠償金が支払われますが、加入していない場合は自己負担の可能性があります。

    仮に78歳無職の女性が、年間80万円の年金収入を得ていた場合の損害賠償金を試算すると、2400万円~2600万円です。後は個別事情によって増減します。

    やはり、保険は入っておかないと、いけませんね。

    もし、自転車を運転していて同じようなことが起こったら、どうなるでしょうか?

    高齢者などにぶつかると、死亡の危険もあります。

    ほとんどの場合、自転車に保険がかけられていませんので(TSマーク付帯保険や火災保険に付帯してかけられている場合もある)、全額自己負担となる可能性が高いでしょう。

    あなたは、賠償金が払えますか?

    自転車にも、購入時に自賠責保険への加入を義務づけるなど、早急に保険制度の導入が検討されるべきです。

  • Androidアプリ『交通事故SOS 損害賠償自動シミュレーション』

    2011年06月17日

    交通事故被害者が損害賠償金額をシミュレーションできるAndroidアプリ

    『交通事故SOS 損害賠償自動シミュレーション』

    をリリースいたしました。

    本アプリは、交通事故による後遺症または死亡事故の損害賠償金額をシミュレーションできるAndroid用の無料アプリケーションです。

    専門知識がなくても、「治療費」や「通院交通費」などの必要項目を順番に入力するだけで、損害賠償金額を計算できます。交通事故被害者の方が、保険会社の提示した損害賠償金額の妥当性を判断する際に役立ちます。

    【ダウンロードサイト】交通事故SOS 損害賠償自動シミュレーション
    https://market.android.com/details?id=com.kitayama.jikosos

    ■開発背景
    交通事故被害者の多くが、適正な賠償金額が分からないため、本来もらえるはずの賠償額より低い金額で示談に応じている現状があります。これは二重の被害とも言えるものです。
    本アプリを無償提供することで、交通事故被害者が適正な賠償額を得る一助になればと考えています。

    ■主な機能
    ・後遺症編 損害賠償自動シミュレーション
    ・死亡事故編 損害賠償自動シミュレーション
    ・交通事故損害賠償の知識集
    (交通事故における各種保険・制度、人損及び物損の損害賠償について、用語集その他)

    ■iPhoneアプリ

    『交通事故SOS損害賠償自動シミュレーション』
    http://itunes.apple.com/jp/app/id418126080?mt=8

    もあります。

    今年3月にリリースしたiPhoneアプリ『交通事故SOS 損害賠償自動シミュレーション』は、下記メディアで掲載していただきました。
    ・2011年4月14日  「産経新聞」 
    ・2011年4月28日  「保険毎日新聞」(第一面) 
    ・2011年5月号    雑誌「オートバイ」 

    ぜひ、ご利用ください。

  • 死亡事故の原因は無謀自転車だった。

    2011年06月07日

    2011年5月、大阪市浪速区の国道で、急ハンドルを切ったタンクローリーが歩道に突っ込み、男性2人が死亡した事故があった。

    タンクローリーが急ハンドルを切った理由は、自車の直前にワゴン車が急な車線変更をしたためだった。

    そこで、警察は、ワゴン車とタンクローリーの運転手を、自動車運転過失致死の疑いで逮捕。

    ところが、捜査を進めると、ワゴン車が急な車線変更をしたのは、ワゴン車の目前に、突然自転車が飛び出してきたので、それを避けようとしたことが原因であることが判明。

    そこで警察は、この事故の原因は、自転車の急な飛び出しであると特定し、自転車を運転していた男(60)を重過失致死の疑いで逮捕して自転車の運転手のみを起訴。

    ワゴン車とタンクローリーの運転手を処分保留とした。

    http://tinyurl.com/43wsy2b

    このような事故で自動車の運転手ではなく、急な回避措置を取らせた自転車の運転手のみを起訴するのは、とても珍しいケースです。

    ワゴン車が避けきれないような飛び出しをしたのでしょう。

    ちなみに、ワゴン車とタンクローリーの運転手が逮捕された容疑は、「自動車運転過失致死罪」、自転車の運転手が逮捕されたのは、「重過失致死罪」です。

    自動車運転過失致死罪の法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金。

    重過失致死罪の法定刑は、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金。

    自転車は、道路交通法上「軽車両」ではありますが、「自動車」ではないので、自動車運転過失致死罪は成立しないということです。

    大阪では、自転車のマナー違反が問題となっているようです。

    http://tinyurl.com/3d2mlxk

    今後、自転車に対する取り締まりが強化されそうな機運が高まってきています。

    自転車を運転する方は、くれぐれも道路交通法やマナーにお気を付けください。

    自転車に課せられた法律上の義務のダイジェストはこちら。
    http://ameblo.jp/mtanihara/entry-10866207024.html

  • 意識を失えば、責任無能力か?

    2011年04月22日

    2011年4月18日午前7時半すぎ、栃木県鹿沼市で、クレーン車が児童6人をはねて死亡させた交通事故があった。

    加害者は、事故当時、意識障害により、意識を失っていた可能性があるという。

    そうなると、今後弁護士がついて、「責任無能力で無罪」と主張する可能性もあるだろう。

    責任無能力ということになれば、無罪となり、罪を問われない。

    もちろん、加害者が、これまで意識障害に陥ったことはなく、医師からも意識障害に陥る可能性はない旨説明を受けていたのであれば、本人に過失はないという結論になるかもしれない。

    しかし、もし、意識障害を伴う持病があり、医師から「意識障害を防ぐには薬を欠かさず服用すること」と指導を受けていた場合はどうか。

    その場合には、薬を飲み忘れれば意識障害の発作が起きることを予見でき、このような事故を回避できるはずだ。

    したがって、この場合には、仮に事故当時意識障害に陥っていたとしても、自動車運転過失致死罪が成立することになる。

    ニュースによると、加害者は、運転免許証の取得・更新の際に、持病を秘して申請をしたかのような報道となっている。

    そうだとすると、持病を申告した場合には、運転免許が取得できない、つまり意識障害を伴う持病であることを認識していた可能性が高くなり、過失が認められやすくなるだろう。

    また、「薬を飲み忘れた」と供述していることからすると、薬を飲み続ける必要性の説明を受けていた可能性が高く、やはり過失が認められやすい、と言えるだろう。

  • クレーン車事故の加害者、持病秘して免許取得か?

    2011年04月21日

    栃木件のクレーン車事故で児童6人が死亡した件、加害者は、運転免許の取得・更新時に持病のてんかんの申告をしていなかったそうです。

    http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20110421-00000888-fnn-soci

    運転免許を取得する際には、意識を失ったことがあるかどうか、などを申告しなければなりません。

    てんかん発作を起こしたことがあれば、当然申告することになります。

    もし、申告しなければ、

    「偽りその他不正の手段により免許証又は国外運転免許証の交付を受けた」

    とのことで、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる可能性があります(道路交通法117条の4)

    ちなみに、免許の拒否事由となる病気としては、統合失調症、てんかん、再発性の失神、無自覚性の低血糖症、そううつ病、重度の眠気の症状の呈する睡眠障害などがあります。(道路交通法施行令33条の2の3。一律に拒否されるのではなく、具体的症状により、免許が発行される場合もあります)

    たとえば、てんかんの場合、免許が発行されるのは、以下のような場合です。

    ①過去に5年以上発作がなく、今後発作が起こるおそれがない。
    ②発作が過去2年以内に起こったことがなく、今後、X年であれば発作が起こるおそれがない場合→X年後に判断
    ③1年の経過観察後、発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状の悪化のおそれはない。
    ④2年間の経過観察後、発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化のおそれはない。

    医師の診断書を提出することになります。

    もし、今回の加害者が、免許の取得・更新の際、てんかんを申告し、審査の結果免許証が発行されていなかったら、今回の事件は起こっていなかったことになります。

    加害者の勤務する会社が加害者の持病について知っていたかどうか、についても気になるところです。

  • クレーン車が小学生4人死亡事故

    2011年04月18日

    痛ましい事故が起きました。

    18日午前7時半すぎ、栃木県鹿沼市で、クレーン車が、センターラインを横切って、歩道に突っ込んでいきました。

    その歩道には、登校途中の小学生の列がいました。

    このうち、小学生4人が死亡し、1人が心肺停止となっているそうです。

    警察は、クレーン車を運転していた男性(26)を自動車運転過失傷害の疑いで現行犯逮捕したとのこと。

    http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20110418-00000009-jnn-soci

    登校途中の事故と言えば、2006年9月25日に起こった、川口園児4人死亡事故が思い出されます。

    川口市の市道を歩いていた保育園児の列に脇見運転の車が突っ込み園児4人が死亡し、17人が重軽傷を負った事故です。

    運転手は、カセットプレーヤーを操作しながら脇見運転していた男(38)で、当時は自動車運転過失傷害罪がなかったため、業務上過失致死傷罪で起訴されて、は最高刑の懲役5年が確定しています。

    この事故は、大きな物議を醸し、遺族らは量刑が軽すぎるとして署名活動を展開し、自動車運転過失致死傷罪(最高刑懲役7年)が刑法に新設された経緯があります。

    私は、川口園児4人死亡事故を担当していましたが、ご遺族の方々の悲しみや怒りは、筆舌に尽くしがたいものがあります。
    http://ameblo.jp/mtanihara/entry-10763780913.html

    今回、クレーンの運転手は、自動車運転過失傷害罪で起訴されるでしょう。

    仮に、最高刑7年が言い渡されるとして、小学生4人(現時点)の命を奪った代償として、重いでしょうか、それとも軽いでしょうか。

    もし、死亡者がもっと増えたら?

    自動車運転過失致死傷罪の法定刑について、改めて考える契機となるかもしれません。

    最後になりましたが、今回、お亡くなりになった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

  • ひき逃げ死亡事故で、病院院長逮捕

    2011年04月16日

    5月14日午後8時前に、千葉市中央区でひき逃げ死亡事故がありました。

    被害者は、65歳の男性で、路上に倒れていたらしいです。

    被疑者は、東京・江東区の城東社会保険病院院長(60歳)で、15日に逮捕されたそうです。

    http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20110515-00000011-nnn-soci

    路上で寝ていたとは言え、人をはねて死亡させた以上、自動車運転過失致死罪には問われます。

    法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金です。

    ひき逃げしなければ・・・です。

    しかし、今回は、ひいた後助けず、ひき逃げをしています。

    ひき逃げは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。

    今回は、自動車運転過失致死罪とひき逃げの2つで併合罪に問われることになるでしょう。

    併合罪の場合、重い方の刑に、その2分の1を足しますので、重いひき逃げの10年以下の懲役の2分の1、つまり5年を足して、最高15年以下の懲役となります。

    人をひいて、救急車を呼ぶなどして助ければ7年以下の懲役なのに、逃げれば15年以下の懲役となってしまうのです。

    被害者感情や遺族感情も、とても悪くなり、情状も悪くなります。

    民事の損害賠償でも話し合いがしにくくなってしまいます。

    自動車事故は自車に痕跡が残りますので、逃げたとしても、逃げ切れるものではありません。

    事故を起こしてしまった時は、速やかに救護し、救急車を手配するようにしていただきたいと思います。

  • 福岡3児死亡事件で飲酒検知前に水を飲ませた者に対する損害賠償棄却

    2011年02月24日

    2006年8月25日夜、福岡市東区にある海の中道大橋で幼児3人が死亡した飲酒運転事故で、3児の両親が、加害者(二審で懲役20年)の飲酒検知前に水を飲ませて証拠隠滅をはかった知人男性(26)に対して、200万円の損害賠償を求めていた。

    福岡地裁は、2月24日、両親の請求を棄却した。

    両親は、男性が水を飲ませたことで今林被告の刑事裁判が長期化し、犯罪被害者として「適正で迅速な刑罰の実現を期待する権利や、重要な事実を知る権利が侵害された」と主張していた。

    福岡地裁は「犯罪被害者としての権利や利益は、刑事手続きへの関与によって得られる事実上のもので、法律上保護されているとは認められない」と述べた。

    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110224-00000055-jij-soci

    確かに、裁判所の言うように、刑事手続は、あくまで国家と被告人との関係で行われ、前述の犯罪被害者の権利や利益は直接保護されているわけではない。

    しかし、過去の判例では、加害者が証拠隠滅行為をした場合に、被害者の精神的苦痛が増大するとして慰謝料を増額したものもあり、今回の加害者に対する損害賠償請求において慰謝料を増額する可能性がある。

    そうであれば、その証拠隠滅によって両親が精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求を認めてもおかしくはない。

    両親は控訴するとのことであり、控訴審では逆転判決が出る可能性もあると思うパンチ!