ブログ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 57
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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  • 交通事故賠償中間利息控除5%最高裁判決

    2005年06月14日

    交通事故の被害者側で損害賠償訴訟を手がける弁護士にとって残念な最高裁判決が、平成17年6月14日に出ました。
     
    後遺障害事案や死亡事故では、被害者が将来得られたであろう収入が逸失利益として、損害賠償の対象となります。ただし、「中間利息」が引かれます。(死亡の場合には、生活費に使用したであろう割合も引かれます)
     
    「中間利息」とは、将来段階的に得るはずの収入を今一時金として算定するため、運用益に相当する利息相当分を差し引くというものです。
     
    この中間利息は、低いほど賠償額が高くなり、被害者に有利になります。
     
    現在の低金利時代にあっては、銀行に預けておいてもほとんど金利がつかないことを考慮して、地裁、高裁レヴェルでは、中間利息を年3%とする判決がいくつか出されていました。
     
    ところが、最高裁は、この点に決着をつけ、中間利息を民法所定の年5%が妥当とする判決を出したそうです。
     
    私は判決文を読んだわけではありませんので、全ての場合に適用されるのかわかりませんが、ニュースで読んでショックだったので、書いてみました。
     

  • 鈴鹿レース死亡事故

    2005年06月12日

    鈴鹿サーキットで、平成17年6月12日に、オートバイレース中に、レースに参加していた24歳の男性が、コンクリート製フェンスに激突して死亡したそうです。
     
    男性が、任意保険に加入していたとしても、あらかじめサーキット場で運転することを保険会社に通知し、承認されていない限り、保険金がおりないという判例があります(平成14年4月18日東京地裁判決)。
     
    危険が著増するときは、あらかじめ保険会社に通知し、承認の請求をしなければならない約款になっていたところ、道路交通法や速度制限のないサーキット場での運転は、危険が著増するときにあたると判断したものです。
     
    そうすると、後は、男性の走行を妨害した他の参加者がいればその参加者に、なければサーキット場に損害賠償を請求しなければなりません。
     
    この場合、施設利用契約に基づく安全配慮義務、工作物責任等が問題となります。名古屋地裁は、平成13年12月26日判決で、鈴鹿サーキット国際レーシングコースで起きた死亡事故について、サーキット場の損害賠償責任を否定しています。
     
    上記判決が全ての事例に当てはまるわけではなく、事案毎の判断になりますが、今回はどうでしょうか。
     
    サーキット場での走行は、それ自体危険な行為です。参加される方は、ご家族等のこともお考えの上、安全に走行されるよう祈ります。

  • 古本窃盗

    2005年06月11日

    岩手県北上市の古本屋で、6月10日昼、漫画本45冊(計1万6700円相当)が盗まれたそうです。同店では、夕方になって気付き、店内を探し始めたとのこと。
     
    その直後の午後5時ごろ、なくなったのと同じ漫画本を持って男が売りに来たというのです。店員は、警察に通報し、警察官が駆けつけて逮捕したそうです。
     
    窃盗罪(刑法235条・10年以下の懲役)です。
     
    どうして同じ店に売りに行ったのでしょうか。
     
    1 本が盗まれたことを気付かないと思った。
    2 古本屋がここしかなかった。
    3 盗んだ男と売りに来た男は別人だった。
     
    わかりません。。
     
    ちなみに、盗品等を情を知りながら有償または無償で譲り受ける、運搬する、保管する、等の行為をすると、それだけで犯罪となりますので、ご注意ください。

  • 性別変更の申立

    2005年06月10日

    大阪拘置所に拘留されている20歳代の被告人(覚せい剤取締法違反の罪で公判中)が、戸籍上の性別変更を大阪家裁に申し立てて認められ、5月に女子用施設に移されたそうです。
     
    ニュース記事によると、被告は「ニューハーフ」として飲食店で働いていたそうです。

    実刑判決を受け、刑務所に入る場合には、男性の場合、坊主頭にしなければならず、男性用の下着も着用しなければならないことから、「精神的に計り知れない苦痛を受ける」として、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」による性別変更を申し立てたとのことです。
     
    この法律は、平成16年7月16日に施行されたもので、カルーセル麻紀さんもこの手続を取ったと記憶しています。
     
    性別変更が認められる要件は、
     
    1 20歳以上であること
    2 現に婚姻をしていないこと
    3 現に子がいないこと
    4 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
    5 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること
     
    です。4、5の要件があるので、実際には性別適合手術を受ける必要がありそうです。
     
    心理学で「認知的不協和解消理論」というものがあります。自分の心に矛盾する考えが発生した場合には苦痛を感じ、食い違いをなくすようにどちらかを変更または排斥してしまう行動に出るというものです。
     
    たとえば、妊婦にタバコが良くないと聞きますが、それでも吸っている人がいます。その妊婦は、「タバコを吸いたい」という気持ちと「タバコを吸うと子に悪影響が生ずるから、吸ってはいけない」という矛盾する考えが心に生じ、苦痛を感じます。
     
    そこで、その矛盾を解消するため、タバコをやめるか、「少しだったら大丈夫」というように、どちらかを排斥または変更して矛盾を解消するのです。
     
    性同一性障害の場合には、現に存在する自分の身体と、自分の性は男性と女性のどちらであるかに関する確信(性自認)との矛盾であり、単に内心の操作ではその矛盾は解消せず、その苦痛ははかりしれないものがあると思われます。

  • 平成17年6月度のアクセス数

    2005年06月09日

    平成17年6月度の本ブログのアクセス数を集計してみました。
     
    平成17年6月1日~同月30日までの総アクセス数は、18,686でした。
     
    1日平均622です。
     
    ライブドアのブログでは、サイト上にはアクセス数が出ませんが、管理画面で見ることができるようになっています。

  • 平成17年1月から6月までのアクセス数

    2005年06月09日

    ついでに平成17年1月から6月までのアクセス数を集計してみました。
     
    平成17年1月度  7,438
    平成17年2月度 12,005
    平成17年3月度 25,787
    平成17年4月度 15,458
    平成17年5月度 16,650
    平成17年6月度 18,686
     
    平成17年1月1日~同年6月30日まで 総アクセス数 96,024
     
    1ヶ月平均アクセス数  16,004
     
    ちなみに平成17年3月度が突出しているのは、メルマガからこのブログへ誘導した時に1日に数千アクセスがあったためで、それがなければ同じくらいのはずです。

  • ニート増加

    2005年06月05日

    ニート(NEET)とは、高校、大学を卒業した後、仕事も進学も職業訓練もしない若者を示す概念だそうですが、総務省の労働力調査によると、2年以上の長期失業男性は、今年1-3月期で46万人。このうち約33%にあたる15万人が25歳-34歳だそうです。
     
    厚労省は「働く意欲のない人が急増すると、日本経済の成長が鈍る。損失は甚大だ」と言っているそうです。
     
    色々な事情があり、価値観があるのだろうと思います。働かなくても生活ができてしまう(経済的にも精神的にも)ということも理由としてあるのだろうと思います。
     
    ちなみに、私は仕事をしている時間が、自分にとって、とても大切です。1日は24時間ですが、増やせるものなら増やしてもっと仕事に時間を使いたいと思います。

  • 花田勝氏相続放棄

    2005年06月05日

    故二子山親方の長男、花田勝氏が、6月29日に、東京家庭裁判所に相続放棄を申し立てたそうです。
     
    故双子山親方には、花田勝氏と貴乃花親方の2人の子がいますが、子が複数いるときの相続分の割合は平等なので、本来であれば、2分の1ずつの相続となります(遺言書がない場合)。
     
    相続は、死亡により当然に発生します。つまり、法律上は、すでに花田勝氏にも相続が発生していることになります。
     
    ここで、相続放棄という手続が出てきます。相続放棄とは、相続する本人の意思によって、一旦発生した相続について、相続しなかったことにする制度です。相続の開始を知った時から3ヶ月以内に行わなければなりません。
     
    相続放棄をすると、相続開始の時に遡って、全てを相続しなかったことになります。相続は、プラスの財産と、借金等のマイナスの財産がありますが、相続放棄をすると、プラスもマイナスも全て相続しなかったことになるのです。
     
    相続放棄の対象は、相続財産のみです。生前にもらったものがあれば、それは相続放棄の対象にはなりません。そのようなものがない限り、今回の相続放棄の申述が家庭裁判所に受理されれば、一応今回の相続騒動は解決したと考えて良いのではないでしょうか。

  • 線路に置き石

    2005年04月30日

    阪急電鉄神戸線の線路に置き石をしたとして、4月30日に、2人の会社員が往来危険罪の容疑で逮捕されました。
     
    線路に置き石をすると、脱線事故等の重大事故にもつながりかねない大変危険な行為です。そこで、置き石等の行為により電車の往来の危険を生じさせた者は、往来危険罪(刑法125条)として、2年以上15年以下の懲役刑が定められています。
     
    仮に、運転士や乗客がいる電車を置き石等で脱線させ、転覆させた場合には、刑法126条により、無期懲役刑または3年以上15年以下の懲役刑となります。
     
    更に、それによって死者が出た場合には、死刑または無期懲役刑となります。それほどに重い罪だということです。
     
    今回は、幸い未然に事故が防げたから良いのですが、酒に酔って冗談半分でレールに置き石をし、その結果人が死亡して、更に自分も死刑になってしまうということも生じうるのです。
     
    自分の行動の結果を論理的に予測すれば、このような行為はしないはずです。考えることを放棄しないよう改めて努力したいと思います。

  • 脱線事故と損害賠償の法律構成

    2005年04月29日

    兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故では、お亡くなりになった方々のご冥福をお祈り申し上げます。
     
    今後JR西日本の遺族や被害者に対する補償問題(損害賠償問題)が出てきます。
     
    民事上の責任としては、運転士の過失に基づいて脱線したならば、運転士に不法行為に基づく損害賠償義務が発生します。
     
    その場合、JR西日本は、運転士を事業のために使用していたものですから、使用者としての損害賠償義務が発生します。また、JR西日本は、乗客との間で旅客運送契約を締結していますが、安全に運送するという債務も契約に含まれていますから、債務不履行に基づく損害賠償義務も発生します。
     
    運転士に過失がなかったとしても、線路に何らかの瑕疵があった場合には、土地工作物の所有者・占有者としての損害賠償義務が発生する可能性があります。
     
    また、列車は動産ですから、列車が通常有すべき安全性を欠いていた場合には、製造物責任法も検討する余地があります。
     
    マンションの住民側からは、マンションの瑕疵があったかどうかも検討することになるでしょう。