ブログ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 33
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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  • ベローチェが講談社に損害賠償請求

    2008年02月14日

    コーヒーチェーン「カフェ ベローチェ」を運営するシャノアールが、月刊誌「おとなの週末」に掲載されたコーヒーチェーンのランキングで最下位に評価されたことで、名誉を傷付けられたとして、出版元の講談社に対して、1100万円の損害賠償と出版差し止めなどを求める訴訟を東京地裁に提起したそうです。

    ニュースによると、シャノアール側の主張は次のとおり。

    ◇ランキングが一般的評価に基づくものではなく、担当したライターの個人的感想に基づいている
    ◇このランキングについて、個人の主観的評価であることを示す記載が目立たず、わかりにくい
    ◇記事の内容が客観的事実であるかのような印象を読者に与えている

    これで全部ではないでしょうが、これだけでは説得力が十分とは感じられません。読者は、雑誌に影響を受けるでしょうが、そんなに雑誌の言うなりにはならないと思います。

    また、シャノアール側は、「店舗や作る人によって味にばらつきがあった」などの評価に対して、「マニュアルによる指導を徹底しており、そのようなことはないように努めている。表現は事実に反する」と反論しているそうです。

    この部分については、記事が個人の主観なので、「あくまで個人的な感想だ」などの表現による配慮が必要だと思いますのが、シャノアール側でこの部分を立証するためには、マニュアルや指導の内容を開示しなければなりませんが、マニュアルなどは企業秘密ではないのか、ちょっと心配です。

    店の評価をおとしめるような悪意に基づくランキング記事が許されないのは当然ですが、利用者に判断材料を提供するためのランキング記事を掲載することは表現の自由の範囲内であり、許される行為です。

    ニュースを読む限りでは、表現の自由の範囲を踏み越えるものとは感じられません。

    請求が認容される可能性は高くないものと予想します。

    しかし、これで話題性が高まり、来店した人たちがそれぞれブログなどで評価をすれば、正しい評価が出るのではないでしょうか。

    新・名誉毀損―人格権と企業価値を守るために

  • 割りばし事件判決

    2008年02月13日

    平成11年に、当時4歳の少年ののどに割りばしが刺さって、その後死亡した事件に関し、幼児の両親が、当時診察した医師と病院に対し、医療過誤を理由として、約9000万円の損害賠償を求めた事件について、東京地裁は、2008年2月12日に、「診察に過失はなかった」として両親の訴えを棄却する判決を出しました。両親は控訴する方針。

    刑事事件では、業務上過失致死罪で起訴。1審東京地裁は2006年3月、過失を認める一方、延命可能性を認めず無罪としました。民事では、この過失すら認めませんでした。

    民事事件で過失が認められなかった理由について、報道によると、次のとおり。

    1 これまでに報告のない症例
    2 神経障害などの症状が見られなかった
    3 折れた割りばし片が口の中で確認困難だった

    よって、当時の医療水準や受傷状況から、割りばしが脳を損傷させた可能性は診断できなかったとのことです。

    民事損害賠償において、医師の過失が認められるためには、診察当時の医療水準において、割りばしが脳を損傷させることを予見できたかどうかが必要となります。

    自動車の事故の場合には、通常の運転者として事故が予見できたかどうかが問われます。したがって、青信号を直進していて、信号無視の車にぶつかっても、過失を問われることがありません。

    医師の場合には、専門家であることから、高度の注意義務が課されます。しかし、その義務は無限ではなく、医療水準を限度とします。法は不可能を強いるものではないので、医療水準を満たしていれば、過失はなくなるのは当然です。

    今回は、幼児の死という悲惨な結果が生じてしまっており、その責任をどこかに求めています。だからといって、誰かが必ず責任を取らなければならないわけではないし、また、医療過誤訴訟の立証が難しいという結論にもなりません。

    ご両親は控訴するということですので、控訴審を見守りたいと思います。

    断罪された「医療事故隠し」―都立広尾病院「医療過誤」事件

     

  • 新・知的生産術

    2008年02月10日

    効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法

    経済評論家・公認会計士の勝間和代さんが書いた「効率が10倍アップする新・知的生産術」(ダイヤモンド社)を読みました。

    著者は、19歳で公認会計士2次試験を突破し、2005年、ウォール・ストリート・ジャーナルから「世界の最も注目すべき女性50人」に選ばれ、2006年、エイボン女性大賞を史上最年少で受賞したスーパー・パーソンです。

    時間は、万人に平等に、有限に割り当てられています。その中で抜きん出るためには、有限な時間をいかに最も効率よく使うか、ということが必要でしょう。

    この本を読んで、自分をグーグル化して効率的に仕事をすることに成功したとします。しかし、時間が余った分早く帰ってテレビを見ているのでは、あまり意味がないように思います。

    グーグル化するのは、あくまでも手段に過ぎません。まず目的地があり、そこにたどり着くために業務を効率化する必要があるから、グーグル化する必要がある、ということではないかと思います。

    ハウツー本というよりも、「自分もまだまだ甘い。もっと頑張ろう!」とモチベーションが上がった本でした。

  • 日弁連会長選挙

    2008年02月09日

    2008年2月8日(金)に日本弁護士連合会の会長選挙がありました。

    大阪弁護士会元会長の宮崎誠弁護士(63)と元青年法律家協会議長の高山俊吉弁護士(67)の一騎打ちで行われましたが、宮崎誠弁護士の勝利に終わり、次期の日弁連会長には、宮崎誠弁護士が内定しました。

    仮集計によると、投票率66.52%(投票者数1万6679人)で、宮崎弁護士9402票、高山弁護士7043票でした。

    現在行われている司法改革において、法曹人口の増加問題や裁判員制度問題などが争点となっておりました。

    宮崎弁護士は、法曹人口問題においては、「法曹人口増員のスピードダウンを提言する」との公約でした。現在、新しく法曹資格を取得する新人達の就職問題が大きな問題となっております。登録審査をしている弁護士から聞いたところによると、就職先がなく、自宅を事務所として弁護士登録をする人も多いと聞いています。

    どんな仕事もそうですが、私たち弁護士の仕事も失敗が許されません。一般民事の事件は、試験に受かったからといって、法律知識だけですぐに適正な処理ができるほど甘くありません。最初は経験を積んだ弁護士の指導を受けながら事件処理を憶えていかなければ、なかなか事件処理のバランス感覚が身に付いていきません。

    法曹人口増員のスピードダウンをどう実現するか、についてもそうですが、すでに人口増員によって就職できなかった弁護士についてどのような対応をするのか、見守っていきたいと思います。

    弁護士の就職と転職―弁護士ヘッドハンターが語る25の経験則

  • ホールインワン

    2008年02月06日

    私の事務所の弁護士が、ゴルフでホールインワンをした、ということで、大量のクオ・カードを作って皆に配っています。私もいただきました。

    私はゴルフをほとんどしないので知りませんでしたが、ホールインワンをした人は、周りの人に食事をご馳走したり、プレゼントをあげたりするのが慣わしだそうで、そのための費用を出す「ホールインワン保険」まであるとのことです。

    嬉しいはずのホールインワンですが、出費を伴うとなると、必ずしも喜んでばかりもいられませんね。

    なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?

  • 立ち退き代行は弁護士法違反

    2008年02月04日

    東証2部上場の不動産会社「スルガコーポレーション」(横浜市)が立ち退き交渉を依頼していた大阪市の建設会社の社長および社員10人が、弁護士法違反で2008年3月4日に逮捕されたそうです。

    容疑は、弁護士法72条違反。弁護士法72条は、次のように規定しています。

    弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

    つまり、立ち退き交渉は法律事務であって、弁護士以外の者は、報酬をもらって立ち退き交渉をしてはいけない、ということです。罰則は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金です。

    このニュースは、報酬を得て立ち退き交渉を行っている業者には驚愕のニュースでしょう。

    どんな場合にいくら払う!?立退料の決め方 全訂版―借地・借家の立退料がわかる!

  • 医療費未収金回収に動き(保険者徴収制度)

    2008年02月03日

    医療機関の医療費未収金問題については、全国の医療機関において深刻な問題となっており、厚生労働省がついに腰を上げました。

    ニュースによると、厚生労働省は、国民健康保険などの保険運営者(市町村や企業の健康保険組合など)に治療費回収の肩代わりを求める「保険者徴収制度」の運用を強化するため、訪問回収や資産差し押さえを含めた法整備に乗り出す方針を固めたとのことです。

    この問題については、国民健康保険法で次のような規定があります。

    「保険医療機関又は保険薬局は、前項の一部負担金(患者負担です。)の支払を受けるべきものとし、保険医療機関又は保険薬局が善良な管理者と同一の注意をもってその支払を受けることに努めたにもかかわらず、なお療養の給付を受けた者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないときは、保険者は、当該保健医療機関又は保険薬局の請求に基づき、この法律の規定による徴収金の例によりこれを処分することができる。」(健康保険法第74条2項)

    この「善良な管理者と同一の注意をもってその支払いを受けることに努めた」といえるための要件を明確にし、保険者による徴収を制度化することと、その制度を全国の医療機関に周知することが当面の課題となるでしょう。

    みらい総合法律事務所では、複数の病院から未収金回収を受託して医療費の回収業務を行っております。また、病院と顧問契約を締結させていただき、クレーム問題、労働問題、医療事故問題などにも積極的に取り組んでいます。

  • マスコットに批判の声

    2008年02月02日

    平城遷都1300年祭のマスコットキャラクターに「かわいくない」と批判の声があがっているとのニュースを発見しました。

    珍しいので、取り上げてみました。

    ニュース

     

  • 公訴時効と消滅時効

    2008年02月02日

    福井県敦賀市で、2003年4月に2歳の男児を車でひき逃げし、死亡させた事件に関し、福井県警は、2008年1月29日に、業務上過失致死罪で加害者の男を逮捕しました。

    刑事訴訟法には、公訴時効というものが定められており、犯罪行為が終わったときから一定期間を経過すると、起訴ができなくなります。時効期間は、犯罪の刑罰によって次のとおり定められています。(刑訴法250条)

    1 死刑にあたる罪             25年
    2 無期懲役または禁固          15年
    3 長期15年以上の懲役禁固      10年
    4 長期15年未満の懲役禁固       7年
    5 長期10年未満の懲役禁固       5年
    6 長期5年未満の長期禁固または罰金 3年
    7 拘留または科料              1年

    今回は、業務上過失致死罪とひき逃げということですが、業務上過失致死罪は、5年以下の懲役または禁固もしくは100万円以下の罰金、ひき逃げも当時は5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。したがって、公訴時効はともに5年ですから、2008年4月で時効が完成し、罪に問うことができなくなるのです。

    ちなみに、現在はひき逃げは、法定刑が重くなり、10年以下の懲役または禁固もしくは100万円以下の罰金となりましたので、公訴時効は7年となります。

    ちなみに、刑事事件における公訴時効の他に、民事の消滅時効というものがあります。これは、被害者の遺族が、加害者に対し、交通事故の損害賠償請求をするときに、その請求ができる期間のことです。

    民法724条では、被害者は、損害および加害者を知ったときから3年間で損害賠償請求権は時効消滅すると定めていまうす。

    今回は、ひき逃げで加害者が誰かわからなかったのですから、この逮捕により、「加害者を知った」ということになります。したがって、ここから3年間、被害者の相続人は、加害者に対して損害賠償請求をすることができます。

    しかるべき請求をすべきでしょう。

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  • 2007年の交通事故死者数

    2007年12月03日

    警察庁の発表によると、2007年の交通事故の結果は次のとおりです。

    ・交通事故発生件数 83万3,019件(2006年は88万6,864件)

    ・交通事故による死者 5,743人(2006年は6,352人)

    ・交通事故による負傷者 103万4515人(2006年は109万8,199人)

    2006年と比較すると、全体的に減少傾向にあります。しかし、そのような比較で安心してはいけません。

    1日平均になおしてみると、次のとおりになります。

    ・交通事故発生件数 2,282件

    ・交通事故による死者 15人

    ・交通事故による負傷者 2,834人

    ナント、毎日毎日平均15人もの方が交通事故によって亡くなっています。今日もきっとそうでしょう。そして、毎日平均2,834人の方が交通事故により負傷しているのです。

    この結果には毎年驚かされます。皆さんもいつ交通事故に遭うかもしれませんし、私もまた同じです。

    今年は、更に交通事故が減少することを祈ります。

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