「不幸の手紙」改め「不幸のメール」も脅迫罪に | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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「不幸の手紙」改め「不幸のメール」も脅迫罪に

2017年12月20日

今回は、メールを送っただけでも犯罪が成立する場合がある、ということについて解説します。

「“あなたに不幸が続きますように”交通事故の相手メール脅迫 容疑の33歳女逮捕」(2017年12月18日 産経新聞)

物損交通事故の相手に対して嫌がらせメールを連続して送ったとして、埼玉県警新座署は志木市の無職の女(33)を脅迫と県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕しました。

事件が起きたのは、12月16日午後0時40分~1時10分頃。
女は、新座市内で起きた物損交通事故の相手である同市の主婦(38)に対し、「これからあなたに不幸が続きますように」、「明日であなたは終わりですから」などと記載した電子メールを連続して送ったり、不安になるような電話を連続してかけたりしたようです。

女は取り調べに対し、「交通事故の賠償の関係で連絡をとるうちに、いらいらして怖がらせるようなメールを送信した」などと話し、容疑を認めているということです。

 

以前、「不幸の手紙」というものが流行ったことがありました。
ある日、見知らぬ人から手紙が届き、「この手紙と同じ内容の手紙を24時間以内に10人に出さないと、あなたは不幸になる」などと書いてあるというものです。
メールの時代になってからは、こうした内容のメールも出回っているようです。

今回のメールは、そうしたものではなく1人の対象者に向けた脅迫メールですが、該当するのは次の条文です。

「刑法」
第222条(脅迫)
1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

 

・相手に危害を加えることを告げるだけで脅迫罪は成立します。
・その方法は、口頭で直接伝えるだけでなく、文章などの書面でも、態度でもよいとされます。
・相手が知ることができれば、直接ではなく間接的な手段でも成立します。

詳しい解説はこちら⇒「わら人形で脅迫罪に

次に、迷惑防止条例について見てみましょう。

「埼玉県迷惑行為防止条例」
第10条(つきまとい行為等の禁止)
1.何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、不安又は迷惑を覚えさせるような行為であつて、次の各号に掲げるものを反復してはならない。

五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。

 

これに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。

各都道府県では、それぞれが迷惑防止条例を定めており、ストーカー行為の他、粗暴行為、ダフ屋行為、不当な客引き行為、盗撮などを禁止しています。

読者の中には、これくらいの行為で逮捕されるのか、と思う人もいるかもしれませんが、行為の態様によっては犯罪が成立する可能性がありますので注意しましょう。