嫌がることを無理にやらせると犯罪
今回は、人に対して義務のないことをやらせる罪について解説します。
「知人女性宅侵入し“4人から交際相手選べ”と強要 男を逮捕」(2017年12月8日 神戸新聞)
20代の知人女性宅に侵入し、質問を記載した紙を置いて回答させようとしたとして、兵庫県警捜査1課と西宮署は尼崎市の会社員の男(37)を住居侵入と強要未遂の疑いで逮捕しました。
事件が起きたのは、12月4日。
男は西宮市の女性会社員宅に侵入し、自分を含む4人の名前を記載したうえで、「4人の中から交際相手を選んでメールせよ」、「回答がなければ個人情報を拡散する」などと記した用紙を机の上に置き、回答させようとしたようです。
同署は、同日夜に回答を催促するメールが女性の携帯電話に届き、そのアドレスから男を特定。
男は、取り調べで「自分の方に女性の気を向けたかった」と供述し、容疑を認めているということです。
まずは、該当する条文を見てみましょう。
「刑法」
第130条(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
第223条(強要)
1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3.前2項の罪の未遂は、罰する。
今回の事件では、被害者女性が男の質問に答えずに警察に通報したことで、強要未遂罪になったということでしょう。
強要罪については以前にも解説しています。
これは、サイトで知り合ったゲーム仲間に対して転居するように脅迫して、無理矢理に転居させた事件でした。
これは、衣料品店の「しまむら」で客が従業員に対して土下座を強要した事件でした。
強要罪は、相手に義務のないことを強要して、やらせた場合に成立します。
では、どのようなことをやらせると罪になるのか、過去の事件から抜粋してみました。
・同居していた女性(47)と共謀し、長女(当時16)の舌をペンチでひっぱり、火のついたたばこを数回押しつけるなどの暴行をしたり、両手首を二段ベッドの柵にロープで縛り付けて監禁し右手首を骨折させたり、飼育していた多数の金魚の死骸を食べさせるなどの虐待を繰り返した男が逮捕監禁致傷、暴行、強要などの罪に問われ、福岡地裁久留米支部に懲役10年(求刑懲役14年)を言い渡された。(2017年1月24日 朝日新聞)
・ラインで知り合った県内の高校生の少女(17)を脅して裸の画像を送らせた大阪市の男(42)が、強要罪と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)罪で起訴された。(2017年1月19日 朝日新聞)
・北九州市漁協の理事が、中学生に切断した指を見せて丸刈りを強要した。(2014年6月3日 読売新聞)
・防衛大学校の上級生が、下級生に裸で腕立て伏せをさせて写真を撮り、LINE(ライン)上で公開した。(2014年8月7日 産経新聞)
・岡山西署刑事2課の巡査部長が、交際していた20代の女性に対し、LINE(ライン)で「電話かけてこい」、「すべての罪を犯さすんやな。脅迫 殺人 業務妨害 放火」などと送信したり、女性の裸の画像を送信したりして脅迫し、電話に出ない女性に電話をかけさせた。(2016年2月15日 産経新聞)
嫌がる相手に強要すると犯罪になる可能性があります。
みなさん、気をつけましょう。
無理矢理ではなく、相手から自然に「イエス」を引き出す方法を知りたい方はこちら。
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