東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • ペットを捨てても拾っても犯罪になる!?では、どうすれば!?

    2014年05月21日

    jiji43





    夏目麻衣さん(仮名 26歳)は子どもの頃から動物好きで、中でも猫が大好きでした。

    夏目さんの住むマンションではペットを飼うことは禁止されていましたが、猫好きの彼女は、拾ってきた2匹の子猫を内緒で飼っていたのです。

    ところが、ある日、管理人に見つかってしまい、管理組合からペットを飼わないよう要求されました。

    動物愛護センターに届けてしまえば、この子たちは殺処分になってしまうかもしれない……でも、もういっしょにいることはできない……

    悩んだ末、夏目さんは近所の空き地に段ボール箱を置き、その中に2匹の子猫を入れて立ち去りました。

    「ごめんね…許してね…」
    彼女の頬を涙がつたいました。

    数日後、夏目さんの部屋のチャイムが鳴りました。
    「警察ですが」
    突然、彼女の部屋に警察が踏み込んできたのです……


    「捨て猫“逃がして”で書類送検…行政担当者困惑」(2014年5月20日 読売新聞)
    愛知県動物保護管理センター知多支所の男性支所長(53)が、県警東海署の男性職員(59)に対し、同署に届けられた捨て猫を逃がすようそそのかしたとして、動物愛護管理法違反(遺棄)の教唆容疑で名古屋地検に書類送検されていたことがわかりました。

    報道によりますと、事件が起きたのは2013年10月頃。
    愛知県大府市で段ボール箱に入れられ、捨てられているメスの子猫を獣医師が発見。東海署会計課に届けました。

    男性職員が知多支所長に保護を依頼したところ、支所長は「病気やケガがなく、自力で生きていけるような場合は引き取れない」と拒否。「逃がしてください」と、猫を遺棄するようそそのかしたということです。

    そこで男性職員は、近くの畑に子猫を遺棄。支所長と同じく動物愛護管理法違反(遺棄)容疑で書類送検されたとのことです。


    猫を捨てただけで書類送検!? と思う人も多いでしょうが、じつは動物愛護に関する法律があるのです。早速、条文をみてみましょう。

    「動物の愛護及び管理に関する法律」第44条
    1.愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

    3.愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。


    「愛護動物」は、以下のように規定されています。
    ①牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
    ②人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

    金魚など魚類は、愛護動物に含まれないんですね。

    ちなみに、動物愛護管理法の第36条(負傷動物等の発見者の通報措置)では、道路や公園などの公共の場所で病気やケガをした犬や猫、または死体を発見した者は、すみやかに通報しなければならない、とあります。

    発見者には、通報義務(努力義務)があるわけです。これは覚えておいてください。

    ところで、冒頭の夏目さんのケースですが、彼女は初め子猫2匹を拾ってきました。
    じつは、ここにも犯罪の危険性があるのです。

    法律上、ペットは「物」なので、捨て犬や捨て猫を拾ってくると刑法の「遺失物等横領罪」になるかもしれません。

    他人の物を横領した人は、1年以下の懲役、又は10万円以下の罰金、若しくは科料に処される可能性があります。

    とにかく、拾ったものは何でも自分の家に持って帰らずに、届けるようにしたほうがいいですね。


    さて、その後の報道によると今回のようなケースでは、各自治体の対応がバラバラで統一されていないという問題が露呈してきたようです。

    愛知県の大村知事のコメント
    「今回の行為は遺棄にあたるとは考えていない。職員に違法性はない」

    岐阜県生活衛生課の担当者のコメント
    「保護すれば、殺処分される可能性もある。飼い主がいるかもしれない猫をむやみに引き取るわけにはいかない」

    三重県食品安全課の担当者のコメント
    「法律で捨て犬や捨て猫の引き取り義務が明記されている以上、原則として引き取る」

    そのうえで三重県は、飼い主を探したり譲渡先を見つけたりすることに力を注いでいるということで、福岡県や神奈川県も基本的には引き取っていると説明しているようです。

    同じ行為をしても、書類送検になる場合とならない場合があるようでは行政の担当者も困ってしまうでしょう。

    また、札幌市では昨年、飼い猫をノラ猫と間違えて殺処分した例があるようです。

    管轄する環境省では、「遺棄にあたるかどうか、現実には判断が難しいケースもある。問題点があれば対処する必要を感じている」と説明しているようですが、これだけペットを飼う人が多く、また遺棄するケースが増えている現代では、法律の決まりを明確にする必要がありますね。

    少なくとも法律を執行する行政機関で見解がわかれるなど、ナンセンスと言えるでしょう。

    どこからが遺棄にあたり、どこまではあたらないのかの解釈について、環境省から通達発信することを望みます。

    いずれにしても、犬や猫を捨てるのは犯罪である、ということは憶えておきましょう。

  • 女性に「そんなに若いの?」で、逮捕!

    2014年04月10日




    幕末の貧しい農民で、苦労しながらも成功をつかんだ二宮金治郎(尊徳)さんは、少し前まで日本人の勤勉の象徴だった時代がありました。

    子供の頃から、薪を担ぎながら読書をしていたという金治郎さんの銅像を、一度は見た人も多いでしょう。

    その金治郎さんには、さまざまな逸話がありますが、なかにはこんなものもあるそうです。

    「子供の頃、わらじを編んで金を稼ぎ、父のために酒を買った」

    2つの反応があるでしょう。

    「なんて親孝行な子だ!」

    「なんてひどい父親だ!自分の酒のために子を働かせるなんて!」

    あるいは、

    「ふーん」

    かもしれません。

    一つの事実のどの面を見るかに人間性が出ます。


    ところで、12歳なのに夜の街で働いた少女は、働き者なのか悪い子なのか?

    それとも親が悪いのか?

    あるいは、「ふーん」なのか?

    という事件がありました。

    「小6女児接客させた疑い ガールズバー店長再逮捕」(2014年3月31日 産経デジタル)

    埼玉県警川越署は、小学6年の少女(12)をガールズバーで働かせたとして、飲食業の男(28)を児童福祉法違反の疑いで再逮捕しました。

    報道によりますと、男は、市内のガールズバーで店長をしていた2~3月にかけて、無料通信アプリ「LINE」で従業員募集を知ったとみられる少女に接客させた疑いとのことです。

    男は、「18歳未満かもしれないと思っていたが、そんなに若いとは思わなかった」と容疑を一部否認。少女は身長が比較的高く、小学校に通っていたようです。

    店には多い時で少女を含め計6人の女性従業員が在籍しており、容疑者の男は、18歳未満と知りながら無職の女性(17)を働かせたとして、すでに風営法違反容疑でも逮捕されていたということです。

    早速、「児童福祉法」の条文から見ていきましょう。

    「児童福祉法」第1条
    1.すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。
    2.すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。

    さて、「児童」とは何歳のことをいうのでしょうか?

    第4条
    この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。

    1.乳児 満一歳に満たない者
    2.幼児 満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者
    3.少年 小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者

    では今回、どの要件に違反したのでしょうか?

    第34条
    何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

    5.満十五歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為


    飲食店の経営者などは注意してください!

    酒の席で児童に接客させると、3年以下の懲役または100円以下の罰金、あるいはこれらを同時に科されます。(第60条2項)

    ちなみに、「風営法」では風俗営業で18歳未満の者に客の接待をさせたり、客の相手になってダンスをさせること、午後10時~翌日の日の出時までの時間に客に接する(接待しなくても)業務に従事させること、営業所に立ち入らせること、などが禁止されています。

    さらには、労働基準法でも未成年者の雇用に関して規制があります。(第61条)

    18歳未満が疑われる時は、必ず身分証明書を提出させ、年齢確認をする必要があります。そうでないと、逮捕される可能性がありますよ。

    「そんなに若いと思わなかった……」は通用しないということです。

    女性に年齢を聞くのは失礼だ、と言いますが、少なくとも従業員として雇用する場合には失礼を承知で聞く義務がある、ということですね。

    身分証明書を提示させ、それをコピーして保存しておく必要があります。


    さて、

    ガールズバーの女性従業員とかけまして、

    最近の裁判の傾向、と解きます。

    そのココロは・・・・



    「わかい」(若い、和解)が人気です!

  • 給料の不払いが犯罪になる!?

    2014年04月08日




    「足るを知る者は富む」という言葉があります。

    もともとは紀元前の古代中国の哲学者で、老荘思想、道教(タオ)の創始者の一人といわれる老子の言葉とされています。

    人間の欲望は、まったくきりがないが、つねに欲深くならずに分相応のところで満足することができる者は、心が富んで豊かである、という意味です。

    このあとには、次のような一文が続きます。

    「強めて行う者は志有り」

    努力している者は、志ある者である、という意味です。

    私も、まだまだ、頑張らなければいけません!

    (*・`д・)ガンバルッス!!

    ちなみに、京都にある禅宗の龍安寺には「吾唯知足」(われただ足るを知る)の4文字を彫った「つくばい」(茶室に入る前に手を清めるための手水鉢)があることでも有名ですが、これは「水戸黄門」として知られる水戸藩2代藩主の徳川光圀の寄進だといわれているそうです。

    これは、「つくばい」ですが、黄門様が印籠を出すと、みんな「はいつくばい」でしたね。

    m(_ _)m失礼しました。

    さて、「足るを知る」のも大切ですが、仮に一生懸命働いたのに会社が給料を払ってくれない、という事態になった場合、「私は足るを知っているから、それでも十分幸せ♡」などと言える人はいるでしょうか?

    いやいや、自分が働いた分の給料はもらえる権利があるのですから、当然、支払いの請求を主張するべきだし、会社は払わなければなりません。。

    それでも支払わないような社長は……どうなるでしょうか?

    こんな事件がありました。

    「“売り上げ厳しくて…”給料10ヵ月分払わず 神戸の会社、容疑で書類送検」(2014年3月26日 産経新聞)

    報道によると、神戸西労働基準監督署は3月25日、従業員に給料を支払わなかったとして、神戸市の会社社長の男性(66)と、法人としての会社を「最低賃金法違反」の容疑で神戸地検に書類送検しました。

    事務員の女性(60)に対して、総額370万円以上の給料が未払いで、会社は2013年7月には事実上の倒産状態だったということです。

    社長の男性は、「売り上げが厳しくて払えなかった」と容疑を認めているようです。

    「最低賃金法」という法律があることを知らなかった人もいると思いますが、会社の経営者でも知らない人がいるかもしれませんので、簡単に解説しておきましょう。

    「最低賃金法」
    第1条(目的)
    この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

    第4条(最低賃金の効力)
    1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

    第32条(労働基準監督官の権限)
    1.労働基準監督官は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、使用者の事業場に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。

    第34条(監督機関に対する申告)
    1.労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。


    単純にいえば、社長は従業員に国で決められた「最低賃金」よりも多く給料を支払わなければいけないし、もし支払われなければ、労働基準監督署に訴えることができる、ということです。

    これらに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金です。

    ご存じでしたか?

    給料を払わないのは「犯罪」だったのです!

    ちなみに、労働基準監督官の立ち入り検査を拒否、妨害、忌避したり、嘘をついた場合は、30万円以下の罰金になります。

    労働基準監督署を無視する経営者がいますが、甘くみてはいけません。

    検査拒否も犯罪なのです。

    さらに近年、残業代の不払いも大きな問題となっています。

    使用者が労働者に残業代を支払わず、労働者がこれを請求した場合、残業代にプラスして同額の「付加金」を支払わなければならなくなる可能性があります。そういう法律になっているのです。

    結局、2倍の金額を支払うことになるわけですね。

    また、不払いの場合、「労働基準法」第37条及び第119条により、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰もありますから、社長さんは十分気をつけてください。

    ところで、「未払賃金立替払制度」というものがあるのをご存じでしょうか?

    これは、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づき、企業が倒産したために賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、その未払賃金の一定の範囲について、独立行政法人労働者健康福祉機構が事業主に代わって支払う制度です。

    立替払を受けるには、以下の要件を満たしていることが必要です。

    「使用者」
    1.労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業で1年以上事業活動を行っていたこと(法人、個人の有無、労災保険の加入手続きの有無、保険料納付の有無は問いません。)。

    2.法律上の倒産又は事実上の倒産に該当することとなったこと。

    「労働者」
    1.倒産について裁判所への破産申立等(事実上の倒産の場合は、労働基準監督署長への認定申請)が行われた日の6か月前から2年の間に退職していること。

    2.未払賃金があること。

    なお、立替払される賃金の額は8割となっています。

    給料が未払いのまま会社が破産してしまったような場合は、この制度を使って未払い賃金を確保し、労働者の生活費を確保することになります。

    「働かざる者、食うべからず」と言いますが、働いているのに食えない状況にはしなくないものです。


    働いてもらった分の給料とかけまして、

    降りかかる火の粉、と解きます。

    そのココロは・・・・

    払わなければ大変です!

  • SNSでのストーカー行為は犯罪にならない!?

    2014年03月31日




    近年、無料通信アプリの「LINE(ライン)」が人気です。昨年の11月末には、「世界で利用者数が3億人を突破」という報道がありました。

    確かに、通信キャリアや端末が違う人同士が複数人のグループで通話やチャットができるのは便利だし、パケット通信料の定額サービスなどに加入していれば通話料金もかからず無制限に使えるのも魅力です。

    しかし、気軽にコミュニケーションが取れることからの反動で犯罪に使われる危険性が指摘され、小学生を含めた未成年の使用についても社会的に問題になってきています。

    これは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)全般に言えることですが、法律的な側面から見ていくと、まだまだ抜け穴が多く、さまざまな問題が起こっています。

    「ストーカー行為:“また男か”…規制できぬSNS」(2014年3月25日 毎日新聞)

    新聞報道によると、LINEなどのSNSを使ったメッセージの連続送信などの「ストーカー行為」や「つきまとい行為」は法規制の対象外であるため摘発できず、捜査の現場から「法が社会の実態に追いついていない」との声が上がっていると伝えています。

    今年2月、警視庁田無署は無職の男(26)が携帯電話から元交際相手の女性(23)に計2日間に、それぞれ1,589件と1,660件ものメッセージを送信したということです。

    女性からの110番を受けた同署は、まず女性の携帯電話の履歴から男が、「また男か」「シカト?」などの文言をLINEで繰り返し送信していたことを確認。

    しかし、文言には法で禁じている「つきまとい行為」に明確に該当するものが見当たらなかったことから、最終的には男が女性の頭を携帯電話で殴ったなどとする事案に着目し、暴行容疑で逮捕したということです。

    ところで、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(通称、ストーカー規制法)というものがあるのをご存じでしょうか?

    これは、1999(平成11)年に起きた「桶川ストーカー殺人事件」をきっかけに制定された法律で、「つきまとい行為」と「ストーカー行為」について以下のように定義しています。

    第2条(定義)
    1.この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

    ①待ち伏せ、尾行、および自宅や勤務先を見張り、押しかけること。
    ②行動を監視していると告げる行為
    ③面会や交際、その他義務のないことを行うことの要求
    ④著しく粗野、乱暴な言動
    ⑤無言電話、連続した電話・FAX・電子メール
    ⑥汚物・動物の死体等の送付
    ⑦名誉を害する事項の告知
    ⑧性的羞恥心を侵害する事項の告知、わいせつな写真・文章などの送付、公表

    上記の行為を反復して行う時、ストーカー行為となります。

    どれも、されたら嫌なものばかりですが、①~④に関しては「身体の安全、住居などの平穏、名誉が害され」「行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る」とされています。

    ちなみに、ストーカー行為は親告罪(被害者の告訴があってはじめて起訴できる)で、罰則は6ヵ月以下の懲役、または50万円以下の罰金です。

    ところで、⑤には2013年の法改正により電子メールが追加で規定されることになりましたが、LINEやツイッターなどのSNSは依然として対象外となっていて、ここが問題視され始めているということです。

    つまり、今回の事件のように他の容疑が適用できればいいのですが、そうではない場合、被害者は危険にさらされ続ける可能性があるわけです。

    SNSがこれほど普及した時代には、これは大きな問題でしょう。

    若者世代では、電子メールで連絡と取り合うより、LINEで連絡を取り合うことの方が多いのではないでしょうか。

    「時代の流れに合っていない」「法が社会の実態に追いついていない」という声が上がるのも当然のことです。

    折しも先日、神奈川県では県の「迷惑行為防止条例」において、執拗なメールとSNS上のメッセージを、「つきまといなどの禁止」の対象に加える改正案が全会一致で可決されました。

    「SNSも“つきまとい” 迷惑行為防止の県条例改正案を可決」
    (2014年3月25日 神奈川新聞)
    報道によれば、神奈川県の迷惑行為防止条例には、現行の「待ち伏せや押し掛けなどの直接的な行為」と「連続した電話やファクス」に、今回「メールとSNSのメッセージの複数回にわたる送信」を追加。さらに、「改正ストーカー規制法」では、つきまといを恋愛感情などに基づく行為と規定しているところを、前提を設けず、柔軟に対応できるようにしたということです。
    「逗子ストーカー殺人事件」は神奈川県で起きたわけですから、県として規制の強化にいち早く着手したのは評価できる対応でしょう。

    国も法改正に向けて、早急に動くべきだと思います。

    各省庁が、特にインターネットの技術革新や進歩に合わせて法改正を迅速に検討する専門職員を配置することを検討してもよいのではないでしょうか。

    たとえば、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」や「特定商取引法」などの規制に、SNSを盛り込んだ方が良いかどうか、この機会に検討されてもよいように思います。

    技術の革新や進歩が起これば、同時に問題、弊害が起こるというのは世の常、ともいえます。

    最近、話題になったビットコインの問題などもそうですが、時代の変化に合わせて、法律もまた変化、進化していくものです。

    我われ弁護士も絶えず進化、進歩していくために、日々勉強、努力して、法を社会の隅々にまで浸透させていかなければならないと感じています。

  • 線路を自動車が走ると・・・

    2014年03月28日




    線路の上を走るのは……電車ですよね。それは幼稚園児でも知っています。

    ところが先日、男性が線路上で自動車を走らせるという驚くべき事件が起きました。

    一体、どういうことでしょうか? ニュースから見ていきましょう。

    「軽乗用車が線路を300m走行 男性飲酒運転も道交法適用できず」(2014年3月24日 京都新聞)

    3月23日午前4時半ごろ、滋賀県大津市の京阪電鉄石山坂本線の線路内で、軽乗用車を押している男性を通行人が発見。大津署に通報しました。

    同署によると、男性(43)の呼気から基準値以上のアルコールが検出。現場となった浜大津駅は通常の線路と路面電車の線路が交差する場所で、男性は同駅付近の道路から線路に侵入し、約300m走行して止まったとみているようですが、男性は「覚えていない」と供述しているようです。

    同署は、「線路内は道交法の飲酒運転が適用できない」としており、線路進入以前の路上での飲酒運転容疑で調べる方針とのことです。
    なお、車の撤去のため始発の上下計2本が最大約8分遅れた模様です。

    線路内では、「道路交通法」の飲酒運転が適用できないため、男性は線路に進入する前に道路交通法上の道路を飲酒運転したはずだから、そこで検挙しようということですね。

    法律も、「自動車が線路内を走る場合は、飲酒運転をしてはならない」などとは初めから禁止しません。

    想定外ということですね。

    道路交通法は、あくまでも道路における安全や円滑な進行などを守るための法律ですから、線路内のことは想定されていないわけですね。

    ところで、いわゆる「飲酒運転」には、「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2つがあります。

    「酒酔い運転」とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態、と定義されます。
    罰則は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金。
    違反点数は、35点で免許取り消しとなり、3年間は免許取得不可となります。

    「酒気帯び運転」とは、たとえ正常な運転ができたとしても、基準値以上のアルコールを帯びて運転することです。
    罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金。
    違反点数は、呼気1リットル中のアルコール濃度が、0.15mg以上、0.25mg未満の場合の違反点数が13点。0.25mg以上の場合は25点となっています。


    ちなみに、飲酒検知を拒否した場合、「3ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」になりますので注意してください。

    ところで、電車の運行を遅らせてしまった場合、賠償の問題が出てきます。

    鉄道会社としては、走らせるべき電車を走らせることができなかったために被った損害、たとえば乗車券や定期券の払い戻し代、振替輸送代、乗客対応の人件費などを賠償請求することができます。

    駅設備や車両が被害を受けた場合は、修理代や清掃代などを損害賠償金として請求することができます。

    ある意味、都市伝説化していますが、電車への飛び込み自殺では遺族が莫大な損害賠償金を請求されるという話を噂として聞いたことがある人もいるでしょう。

    実際、本人が亡くなっている場合は賠償金を支払えないので、その相続人(家族や親族等)が負債を相続することになります。

    自殺をすると、残された親族に多額の賠償請求がなされる可能性がある、ということです。


    今回は適用されていませんが、電車の運行を故意に邪魔しようとして線路内で自動車を走らせた場合は、「威力業務妨害罪」に問われる可能性があります。

    さらには、鉄道関係ではこんな刑罰もあります。さすがの鉄道オタクの人も、これは知らないのではないでしょうか?

    「刑法」第125条(往来危険)
    1.鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する。

    第126条(汽車転覆及び同致死)
    1.現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。


    最高刑は「無期」です。

    いたずら心で線路に石を置いたりすると、大変なことになります。

    さて今回の事件では、鉄道会社は男性に対して損害賠償請求をするでしょうか?

    始発前の時間帯であり、上下2本の電車の遅延が約8分ということから考えれば、おそらく今回は、損害賠償請求はしないのではないかと考えられます。

    今回の事件は、負傷者も死者も出なくて不幸中の幸いでした。

    いずれにしても、お酒は人間の理性をなくしてしまうことがあります。

    理性のついでに命までなくさないよう、節度を保って楽しむようにしたいものです。

  • 自筆証書遺言の書き方

    2014年03月21日




    最近、年配の方の中には「終活」というものを行う人がいるようです。

    これは「人生の終わりのための活動」の略で、生前に行うべきことをやっておき、終焉を見つめ準備しておくことで、今をよりよく生きようという思いがあるようです。

    葬儀やお墓のこと、財産などの相続のことなど、自分のためだけでなく遺された人たちのためにもやっておくべきことがあります。

    弁護士として、相続問題の相談をよく受けますが、その中に「遺言」があります。(ちなみに、法律用語では通常「いごん」と読みます)

    遺言というと、映画やドラマの世界で資産家の遺言書が原因で殺人事件が起こったりする場面を思い浮かべる人もいるでしょうが、実は、普通の人でも必要となるものです。

    しかし、やはり人間は「自分の死のことなど考えたくない」、「まだいいだろう。もう何年かしたら考えよう」などと、つい後回しにしがちです。

    また、「うちの家族は仲がいいから遺言なんて必要ないよ」と考えている人もいるでしょう。

    ところが、経験上、仲のいい普通の家族でも、いざ相続となったときにもめることが多いのです。

    よく経験するのは、本人は兄弟姉妹間で争いたくないと思っていても、配偶者が「もらえるものはもらうべき。ウチだって苦しい」と言われ、泥沼の紛争に入ってゆくパターンです。

    お金よりも、家や土地が残された場合、その配分でもめるケースが多いですね。

    相続=争族という言葉もあるくらいです。

    そこで今回は、遺言を法的に解説します。

    【遺言の種類】
    遺言には、死期が迫っている、一般社会から隔離されているなど特別な場合の「特別方式」と、通常の場合の「普通方式」があります。

    普通方式には、さらに以下の3種類があります。

    〇「自筆証書遺言」…遺言者が遺言内容の全文、日付、氏名すべてを自分で記載して、捺印をするもの。

    〇「公正証書遺言」…公証人に作成してもらうもの。

    〇「秘密証書遺言」…遺言内容と氏名を自筆し、捺印した書面を封筒に入れ封印したものを公証人に証明してもらうもの。

    私たち弁護士が遺言書の作成を依頼された場合には、「公正証書遺言」の作成を薦めるのが通常です。

    遺言書の作成における弁護士の役割は、遺言者の意思を明確に遺言書に残し、かつ、死亡後の紛争を回避することです。

    公正証書遺言は、公証人が作成するので、証明力が高く、紛争になりにくいからです。

    でも、公正証書遺言では、余計な費用もかかるし、大事だ、ということもあるでしょう。

    あるいは、たびたび書き直したい、ということもあるでしょう。

    そんな時は、取り急ぎ「自筆証書遺言」を作成することになります。

    ここでは、自筆証書遺言について解説していきます。

    【自筆証書遺言の書き方】
    自筆証書遺言として認められるための要件は、「全て自分で書く」ということです。具体的には、①遺言の内容②日付③署名を自筆し、④捺印することです。

    ①「遺言の内容」
    必ず自筆でなければなりません。
    代筆は認められません。ワープロやパソコンのワードで作成した文章は無効となります。

    ②「日付」
    自筆で日付を書かなければなりません。「平成(西暦)〇〇年〇月〇日」と書きます。

    遺言書が複数存在する場合、日付が最終のものが最終意思となり、それより前の遺言書の矛盾する部分は取り消されることになります。

    ③「署名」
    氏名を自筆します。
    必ずしも戸籍上の本名である必要はなく、従来より使用していた雅号、屋号、芸名などの通称でもよいとされています。その場合、他人との混同を避けるため住所を記載するなどして同一性を確認できるようにしておく必要があります。
    万全を期すには、本名の氏と名を自筆で署名すれば安心でしょう。

    ④「捺印」
    使用する印章は実印である必要はありません。認印でもよいとされています。
    病床の人は、たとえば手の震えを抑えるために他人に介添えしてもらったり、他人に命じて押してもらってもよいとされています。


    【遺言書の検認】
    遺言者が亡くなった場合、遺言書の保管者(遺言者から遺言を預っている人)または、これを発見した相続人は、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。(民法第1004条1項 遺言書の検認)

    また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いの上、開封しなければならないことになっています。(民法第1004条3項)

    つまり、裁判所以外では開封してはいけないということです。もし開封してしまうと、5万円以下の過料を受けることがあります。(民法第1005 過料)

    遺言書の検認とは、有効か無効かを確定するものではなく、その外形を保全し、偽造や変造を防止し、遺言書の検証と証拠保全をするための手続き、と考えておけばよいでしょう。

  • 職務質問にどう対応するか?

    2014年03月16日

     

    人間の心理は、外面や行動に現れるものです。

    街で警察官の姿を見ると、何も悪いことはしていないのに、不自然に意識したり緊張する、という人がいます。

    誰にでも心に何かしら、やましい部分があったりするので、たとえ罪を犯していなくても、どこか挙動不審になったりするのかもしれません。

    ところで、警察官の仕事のひとつに「職務質問」があります。

    不審な点がある人を呼び止め、質問したり、所持品をチェックしたりするものですが、職務質問に関連した報道が昨年末にあったので、法的に検証してみましょう。

    「刑法犯件数、11年連続減少へ 121万件、詐欺は増加」(朝日新聞デジタル)

    報道によると、警察庁が発表した2013年1~11月の刑法犯の認知件数は、2012年同期より5.1%少ない121万4004件で、年間件数は11年連続で減少しているとのことです。

    窃盗は90万6095件で、5.8%減。住宅などへの侵入盗や車上あらし、自販機あらしの減少が大きく、一方、詐欺は3万4795件で、9.9%増。振り込め詐欺は8285件で49.6%の大幅増となっています。

    また、容疑者を摘発した割合を示す検挙率は全体で30.4%。2012年同期比で1.7%減少しています。

    警察庁は検挙率低下の要因として、地域警察官の職務質問による事件の摘発の減少などを挙げているとのことです。

    この報道からだけでは、検挙率低下の原因が、職務質問の実施件数自体が減ったからなのか、それとも職務質問する警察官の質が低下したからなのかわかりませんが、とにかく警察庁としては、警察官の職務質問のブラッシュアップを望んでいる、ということなのでしょう。

    確かに、薬物事犯などでは、挙動不審な人に職務質問し、所持品検査をしてみたら、薬物が出てきた、というのは、よく聞くところです。

    職務質問が犯罪の減少に結びついていくのであれば、国民としては当然、大歓迎です。

    しかし、何も悪いことをしていないのに、街で警察官に職務質問され、腹立たしい経験をした人もいるでしょう。

    犯罪を見抜く目や感覚が低下しているならば、検挙率が下がるだけでなく、私たち国民が不当な職務質問を受ける可能性が高まるからです。

    では、私たちが自分の身を守るためにも、職務質問を拒否することはできるのでしょうか?

    そもそも、なぜ警察官は職務質問をするのでしょうか?

    法的根拠を見てみましょう。

    「警察官職務執行法」第2条
    1.警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。

    この法律の規定に基づいて、警察官は職務質問をしている、ということです。

    この条文に、誰に職務質問ができるか、が書かれています。

    以下の2つのどちらかに該当する人に対して職務質問ができます。

    ・異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者

    ・既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者

    これは、素人が見てもわかりそうな怪しい人ですね。

    まず、「異常な挙動そのほか周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯したか、犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」です。

    「うへへ~♪」と言いながら、道路をフラフラ歩いていて、如何にも覚せい剤を使用していたり、留守宅を物色しているように見える場合だったり、包丁を持っていたりしている人、などは、該当しそうですが、普通の格好で普通に歩いていたら、とても犯罪を犯すと疑うに足りる相当な理由があるとは思えないので、職務質問できないはずです。

    また、職務質問では、よく車のトランクを開けさせられたり、バッグの中を見せるように言われたりします。

    しかし、条文には所持品の検査に関する規定は明示されていません。

    なので、たとえばカバンを開けて中身を見せるように言われても、拒否することはできます。が……これを拒むのは、なかなか難しいでしょう。

    警察官は、任意でカバンの中身を自らの意思で見せるように促しますが、見せなければ、職務質問は延々と続く可能性があるからです。

    次のような質問が来ます。

    「何か見せられないような違法なモノが入っているのですか?」

    「入っていません」

    「では、見せてください」

    「嫌です」

    「やましいモノが入ってなければ見せられるはずですね。見せてください・・・・」

    こんなやり取りが続くでしょう。

    反論方法はあるのですが、ここでは割愛します。

    過去の判例では、「米子銀行強盗事件」というものがあります。

    1971年7月、鳥取県米子市で、銀行強盗で盗んだ札束を入れていたバッグを持つ男に対して、職務質問したところこれを黙秘。バッグ開けて中身を見せることも拒否したため、警察官が承諾を得ずに開けると大量の紙幣が見つかり逮捕に至った事件で、最高裁は、「所持品の検査については明文で規定していないが、職務質問に付随して行うことができる場合があると解するのが相当であり、捜査に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り許容される場合がある」「銀行強盗という重大な犯罪が発生し犯人の検挙が緊急の警察責務とされていた状況の下において必要上されたものであって、またバッグの施錠されていないチャックを開披し内部を一べつしたにすぎないものであるから、警職法2条1項の職務質問に附随する行為として許容される」として、所持品検査は違憲、違法はないと判断した。(最高裁判決 昭和53年6月20日 刑集32巻4号670頁)

    微妙で難しい判断ですね。

    これを現場で判断するのは至難の技です。

    ところで、もしあなたが職務質問をされた場合、警察官も職務を遂行するために職務質問をしているわけですから、素直に従い、疑いを晴らすことをおすすめします。

    しかし、前記の要件が全くないにもかかわらず警察官が不当に職務質問をしてきたときは、次のように対応しましょう。

    ①「これは、職務質問ですか?」と聞く。
    ②「違う」と言えば、「では、法的根拠がないので、これで失礼します」と言って立ち去る。
    ③「職務質問だ」と言えば、「私のどこが警職法上の異常な挙動でしょうか?あるいは犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がどこにありますか?もし、それがないのに職務質問したとしたら、違法な職務質問ですよ」と冷静に対応する。ここで暴れたりわめいたりすると、「犯罪を犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由」ができてしまう可能性があります。

    警察官は、この後不用意に踏み込んできにくくなるでしょう。

    しかし、この対応は、決して目出し帽やストッキングを頭からかぶっている時にはしないようにしてくださいね。

    では、最後になぞかけです。

    職務質問とかけまして、

    屋根に降った雨水と解きます。

    そのココロは・・・・

    どちらも「とい」(問い、樋)が必要です。

  • 犬も歩けば賠償金を払う

    2014年03月09日




    犬と人間のつきあいは古く、今から1万5千年ほど前の旧石器時代にまで遡るといいます。

    東アジアから中央アジアあたりで、オオカミから分化したと推定される犬は、徐々に家畜化していき、世界中に広まっていったというのが定説のようです。

    このころ、日本列島でも人間と犬の関係が始まったようで、歴史は下り、縄文時代後期~晩期のものと考えられる、愛知県田原市の吉胡(よしご)貝塚では、乳児と子犬が一緒に埋葬されている骨が2007年に発掘されています。

    縄文時代後期~晩期といえば、紀元前1000年あたり。少なくとも、今から3000年以上前には縄文人たちが犬といっしょに暮していたようです。

    それほど長い人間と犬の関係ですが、最近、犬好きの人にはショックな事件や判決が多発しています。

    「高松:中型犬が登校中児童4人かみつき、1人重傷3人軽傷」(2014年3月7日 毎日新聞)
    2014年3月7日、香川県高松市の路上で、登校中の児童4人が次々と犬にかみつかれ、2年生の男児が両足と左腕などをかまれ重傷。現場から逃げ去った中型犬は首輪をしていた。

    「犬に襲われ死亡…飼い主に5433万円賠償命令」(2014年3月7日 読売新聞)
    2011年8月、山梨県北杜市で、犬に襲われて転倒し脳挫傷で女性(当時56歳)が死亡。遺族が犬の飼い主の男性(71)を相手取って損害賠償を求めた訴訟で、甲府地裁は6日、飼い主に慰謝料など計約5433万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

    「愛犬かみ殺され、賠償訴訟 地裁足利支部」(2014年3月7日 下野新聞)
    栃木県足利市で2013年、近所の飼い犬に愛犬をかみ殺されたとして、飼い主の60代の母親と30代の娘が、かみついた飼い犬の30代女性に慰謝料など約540万円の損害賠償を求めていた裁判の第1回口頭弁論が、6日開かれた。訴状などによると、2012年6月、原告の親子が当時住んでいた足利市内でトイプードルを抱いていたところ、近くの庭で放し飼いにされていた中型犬のボーダーコリーが飛びかかり、母親は転倒して肋骨を折るなど約2カ月間のけがをした。翌年2月、犬の散歩から帰宅した母親にボーダーコリーが再び飛びつき、トイプードルをかみ殺したという。原告側は「家族同様の犬を失った精神的苦痛は大きい」として、親子2人の慰謝料380万円と治療費などを請求している。一方、被告側は請求の棄却を求める答弁書を提出、争う構えをみせている。

    以前、このブログでも、俳優の反町隆史さんと松嶋奈々子さん夫妻の愛犬が隣人をかんだ事件を取り上げましたが、
    http://taniharamakoto.com/archives/1181
    飼い犬の管理は、飼い主の責任です。

    飼い主が損害賠償責任を負います。

    飼い犬が起こした事故というと、「かまれた」ことを想像する人が多いと思いますが、必ずしも、かまれなくても損害賠償請求は可能です。

    今年1月、以下のような判決が出されています。

    2008年1月、男性が原付バイクで走行中、前方から中型犬が近づいてきたため、避けようとしが接触し転倒。左足を骨折した男性が飼い主の女性に対して治療費など損害賠償を求めた裁判で、福岡地裁は「女性は管理義務を怠った過失がある」として、約1500万円の支払いを命じた。
    (2014年1月17日 読売新聞)

    「うちの犬は噛まないから大丈夫」という飼い主の言い分は通用しないということですね。

    飼い犬が第三者に与えた損害は、飼い主が賠償しなければなりません。

    先の例のように、約5433万円もの賠償命令が出されたら、払える人がどれだけいるでしょうか?

    破産するしかありませんね。

    でも、破産したら、噛まれた人は、どうなるでしょう?

    ひどい怪我を負って治療費もかかり、後遺症も残って、お金を払ってもらえないとしたら?

    そんな事態は避けなければなりません。

    さらにこわいこともあります。

    さらに、前出の高松市の事件では、刑法上、飼い主は「重過失傷害罪」に問われる可能性があります。

    重過失とは、重大な過失のことで、「注意義務違反」の程度が著しいことをいいます。

    重過失と認められた過去の判例としては、闘犬用の犬2頭を農作業中に放し飼いにしていたところ、犬が隣接する公園で幼女2名を襲い、うち1名を死亡させ、他の1名に傷害を負わせた事案があります。(那覇地沖縄支判平7・10・31判時1571-153)

    飼い主が、飼い犬の行為で刑罰を受ける可能性がある、ということです!

    「可愛い子には旅をさせよ」と言いますが、可愛い愛犬には、決して旅をさせてはいけません。

    「犬も歩けば賠償金を払う」のです。

    きちんと鎖でつなぎ、決して他人に危害を与えないようしっかり管理しておくことが、愛犬を、そして飼い主を守ることになる、ということを肝に銘じておきましょう。

  • 隣人トラブルから人間性が見える

    2014年03月06日




    10年ほど前、「騒音おばさん」という人が世の中で話題になっていました。

    奈良県に住む主婦が、2年半の間、24時間CDラジカセからユーロビートなどの音楽を大音量で流し続け、ときには「引っ越し、引っ越し」と大声で叫び、近所の住人が健康被害にあったというものでした。

    ワイドショーや週刊誌などで連日報道されていたので、覚えている人も多いでしょう。

    結局、2005年に傷害罪で逮捕され、2007年に最高裁で実刑が確定。懲役1年8ヵ月が言い渡されました。

    その後、千葉や大阪、茨城などでも同様の事例で逮捕された人がいます。

    これは極端な例だとしても、現代社会では隣人トラブルは日常茶飯事で起きています。

    その中でも多いのが、騒音トラブルでしょう。

    鉄道や道路、飛行機の音など公共機関の騒音から、ご近所間の問題まで、さまざまなトラブルが起きています。

    マンション上階の住人の足音、隣の部屋の騒ぐ子供、隣家の飼い犬の鳴き声、大音量のテレビや音楽、自動車やバイクのエンジン音など、自分にとっては騒音ではなくても、相手にとっては不快な音になったりします。

    また、対応の仕方で問題がこじれるケースも多々あります。

    隣室の騒音を注意する意味で壁をドンドンと叩いたら、翌日ものすごい剣幕で隣人が怒鳴り込んできて関係が悪化したとか、感情的になって隣家に苦情を言いに行ったら、さらに騒音がひどくなったり嫌がらせをされた、などということもあります。

    最悪の場合、放火や殺人にまで発展したケースもあります。

    「ピアノ騒音殺人事件」
    1974年、神奈川県平塚市の県営住宅に住んでいた男(当時46歳)が、階下の部屋のピアノの音がうるさいと苦情を訴えた。当時は、子供の習い事としてピアノやエレクトーンが流行していた時代で、騒音問題が取り沙汰されていた時代でもあった。自治体が主導して演奏時間の限定などの自粛を進めていたが、徹底されていたわけではなかった。次第に男は「わざと騒音を立てて嫌がらせをしている」と思い込むようになり、刺身包丁を持って階下の部屋に侵入。演奏していた長女(当時8歳)と次女(当時4歳)を殺害。帰ってきた母親も殺害し、逃亡したが3日後に自首。1977年に死刑が確定した。

    話し合いで解決できたかもしれない問題が、悲惨な結末に発展してしまった例です。

    騒音トラブルでは、まずは双方が冷静に対処することが必要ですが、人間ですからどうしても感情的になってしまうこともあります。

    特に、心安らかに過ごせるはずの自宅で騒音に悩まされると、感情的になりやすいと思います。

    もちろん、法律に訴えることもできますが、騒音トラブルがあるからといって、すぐに訴訟というのは早計です。

    たとえば、隣の部屋の音楽など騒音がうるさければ、まずはマンションの管理会社や管理組合に相談して、第三者から伝えてもらうのがいいでしょう。管理規約、賃貸借契約書などには騒音など迷惑行為の禁止を義務付けているはずです。

    その際、騒音元の部屋の両隣りと上下階の住人がどう感じているかを調査しておくのも有効です。

    それでも騒音が治まらないようであれば、弁護士に相談するのも手です。

    まず、「内容証明郵便」を送ります。効果がなければ「調停」や「訴訟」ということになります。

    訴訟では、「損害賠償の請求」の他、あまりにひどいときは、部屋の使用を禁止する「使用禁止の請求」や、部屋を競売にかけて手放させる「競売の請求」などもあります。

    その際、法律的には「受任限度」が問題になってきます。

    「受任限度」とは、一般人が社会生活で我慢すべき限度のことです。

    多数の人が生活する社会においては、ある程度のことは我慢せざるを得ませんが、一般の人から見ても我慢しがたい事態に至った時は、法が介入する、という考え方です。

    ただ、自分がうるさいと感じているだけでは主張は認められません。訴訟を起こすにしても、客観的な証拠が必要となってきます。

    騒音の内容や時間帯、継続性など、さまざまな要素で判断されますが、その中に、各地方公共団体が条例で定める騒音の規制基準というものがあります。

    たとえば、東京都の「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(通称、環境確保条例)では、以下のように定められています。

    第136条(規制基準の遵守等)
    何人も、第68条第1項、第80条及び第129条から前条までの規定に定めるもののほか、別表第13に掲げる規制基準(規制基準を定めていないものについては、人の健康又は生活環境に障害を及ぼすおそれのない程度)を超えるばい煙、粉じん、有害ガス、汚水、騒音、振動又は悪臭の発生をさせてはならない。

    別表第13には、たとえば一般的な住宅街(第一種区域)の昼間(午前8時~午後7時)では45デシベル、夜(午後7時~11時)では40デシベルが規制基準となっています。

    ちなみに、東京都環境局の資料によると、掃除機の音は約60~76デシベル、テレビで約57~72デシベルとなっています。

    45デシベルなら、場合によっては軽く超えてしまうかもしれません。

    とはいっても、ご近所トラブルはできるだけ穏便に話し合いで解決したいものです。そこに住み続けるならば、今後も日常的に相手と顔を合わせたりしなければいけない場面も想定されるからです。

    あるいは、「こういうことは、きっちりと話をつけないと!」と意気込む人もいるかもしれません。

    ここでどのように対応するかについては、自分の人間性、生き方が問われます。色々な選択肢が考えられます。

    ①訴訟を起こす
    ②殴り込む
    ③壁を叩いて憂さを晴らす
    ④こっちも大きな音を出す
    ⑤隣近所と団結して抗議する
    ⑥柔らかく伝える
    ⑦耳栓をする
    ⑧我慢する
    ⑨引っ越す

    などなどです。

    あなたは、どのタイプですか?

    自分の他人に対するスタンスが影響します。

    たとえば、友人が気に入らないことをした場合、どうしますか?

    ①徹底的に糾弾する
    ②無視する
    ③友達に言いふらす
    ④柔らかく言う
    ⑤我慢する
    ⑥「きっと事情があったんだ」と思い込んで自分を納得させる

    など、さきほどの騒音の例と比較して、同じ人なら、おそらく同じような対応を取るでしょう。

    他人に不満を持った時、どのような対応をするのか、そこには人間性が表われるのです。

    法は、権利を守ってくれるものですが、法を使うのは人間です。

    他人との関わりの中で、自分がどういう人間で、どう生きてゆくのか、そんなことも考えさせられる問題です。

  • 探偵業の適正化は可能か?

    2014年02月20日




    2012年11月、神奈川県逗子市で起きたストーカー殺人事件などに端を発し、現状の規制が被害防止に役立っていないことや多発するトラブルなど、探偵業のあり方が問題になっているようです。

    いわゆる「逗子ストーカー殺人事件」は、元交際相手の男(当時40歳)が当時33歳の女性を逗子市のアパートで刺殺し、その後に首つり自殺をした事件でした。

    男は、女性が他の男性と結婚したことを知ると、1,000通を超えるいやがらせメールを送りつけ、探偵などに依頼して住所をつきとめた末に凶行におよびました。

    その後、他の事件から逗子ストーカー殺人事件は思わぬ展開を見せました。

    2013年11月、千葉県のガス会社の顧客情報が流出した事件で、苦情電話を装い威圧し、巧みに個人情報を奪ったとして東京都目黒区の調査会社の男が不正競争防止法違反(営業秘密侵害)の疑いで逮捕。

    その後の取り調べで、この探偵業の男が逗子ストーカー殺人事件の被害者の住所の割り出しにも関わっていたことがわかったのです。

    「神奈川・逗子の女性殺害:ストーカー殺人 調査会社の男再逮捕 住所不正入手容疑」(2014年1月25日 毎日新聞)

    「探偵業者:虚偽説明で調査依頼のケース…念書形骸化」(2014年2月15日 毎日新聞)

    探偵業の男は、被害者女性の夫になりすまして逗子市納税課に電話。女性の住所を聞き出すなどして業務を妨害した疑いで、今年1月24日に偽計業務妨害容疑で再逮捕されました。

    「刑法」第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    「偽計」とは、人をあざむく計略、策略のことです。

    被害者女性の夫であると欺いて、市の業務を妨害した、ということですね。

    一連の事件の流れを整理すると、探偵業者がストーカー殺人事件にどう関わったのかが見えてきます。以下のようになります。

    元交際相手の男が千葉県の探偵業者に依頼→千葉県の探偵業者が東京都目黒区の調査会社の男に外注→住所聞き出しを実行

    じつは、探偵業には「探偵業の業務の適正化に関する法律」(通称、探偵業法)というものがあります。

    これは、探偵業について必要な規制を定め、業務運営の適正を図り、個人の権利利益の保護に資するための法律です。

    この法律に違反すると、最高で「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」などの罰則と公安委員会による廃業命令などの行政処分があります。

    探偵業に関しては、調査依頼者との間における契約内容などをめぐるトラブルや違法な手段による調査、調査対象者などの秘密を利用した恐喝、従業者による犯罪の発生など、悪質な業者による不適正な営業活動があとを絶たないことから、2007年6月にこの法律が施行されました。
    しかし現実には、探偵業者による犯罪がなくなることはなく、逗子市の事件でも千葉県の探偵業者は探偵業法に基づき、ストーカー目的でないことを確認する文書にも署名させていたようですが、防ぐことができませんでした。

    ストーカーをしようと思っている人が、「ストーカー目的ではない」という書類に署名捺印することに躊躇するでしょうか?

    そうは思えません。もともと効果に疑問のある念書だと思います。

    なお、上記の報道記事によると、ここ数年の探偵や興信所が絡んだ事件やトラブルとして以下のような事件が発生しています。

    東京都渋谷区の女性(当時21歳)の誘拐事件で、容疑者らが事前調査として、対象女性の住所割り出しなど素行調査を探偵に依頼していたことが発覚。(2006年7月)

    警視庁立川署の巡査長が女性を射殺し自殺した事件で、巡査長が女性の素行調査を興信所に依頼していたことが発覚。(2007年8月)

    探偵業者などが弁護士や行政書士に依頼して、戸籍謄抄本を取得していた事案が相次いで発覚。使用目的を明示するよう謄抄本の取得方法が厳格化。(2008年5月)

    「別れさせ屋」をしていた探偵業の男が、離婚工作をした女性(当時32歳)と交際した末、殺害する事件が発生。(2009年4月)

    司法書士やハローワーク、携帯電話販売店などから個人情報を入手していた探偵業者などを愛知県警が摘発。(2011〜12年)

    神奈川県伊勢原市で、女性がDV被害を受けていた元夫に刃物で刺され重傷を負った事件で、元夫が探偵業者に依頼して女性の実家を割り出していたことが判明。(2013年5月)

    加古川市職員が探偵業者に住民情報を漏らし現金を受け取っていたことが判明。県公安委員会は同市の探偵業を45日間の営業停止とした。(2014年1月)

    警視庁の平成23年の資料「探偵業の業務の適正化に関する法律の附則に基づく検討結果について」によると、平成21年度の探偵業の届け出件数は4,953件、法令違反による検挙件数は2件、刑法等の法令違反による検挙件数は6件となっています。
    しかし、これらは氷山の一角でしょう。

    では、どうすれば探偵業界を浄化していけるでしょうか?

    弁護士は依頼を受ける時、依頼目的は当然聞きますし、相手に対する請求が正当かどうかを判断します。

    探偵業法は、業者に対し違法行為が目的ではない旨を確認する書面を依頼者に提出させることを義務付けていますが、形骸化している状況のようです。

    しかし、「秘密」を扱う探偵業者ならば、依頼の理由、背景、事情などを詳細に聞き取る必要が当然あると思います。こうした取り組みによって、犯罪の温床となることをある程度防げることになるでしょう。

    そして、違法行為やストーカー目的が疑われる調査依頼の場合には、その調査を断る義務を課してもよいでしょう。

    業務の適正化については、法務省の監督に服する債権回収会社制度が参考になるでしょう。

    報酬を得て債権回収業務を行うことは弁護士法により、弁護士にしか許されていません。

    特に、債権回収業務は、暴力団などの資金源になりうるところであり、かつ、恐喝などの違法行為が行われやすいところですから、安易に認めるわけにはいかないところです。

    しかし、バブル崩壊による大量の不良債権処理が必要となり、法務大臣の許可を得た債権回収会社は、弁護士法の例外として、債権回収業務を行えるようになりました。

    この債権回収会社が、業務を適法に行うため、会社には必ず1人は取締役に弁護士を就任させ、債務者との交渉を逐一記録・保存させて法務省が立入検査によって監督できるようにしています。

    そこで、この制度を参考に探偵業界の適正化を図ることが想定されます。

    まず、適正に業務するために、探偵業者には必ず弁護士を最低1人取締役として就任させ、どのような依頼を受けて良いのか、どのような調査をしてよいのか、コンプライアンスの観点から監督させると良いでしょう。

    そして、国家公安委員会などの許可法人のみが探偵業を営めるようにし、違法行為があれば許可を取り消すなど公安員会の監督に服する、という形式にすれば悪徳探偵業者は一掃されるように思います。

    さらに、調査費用の過大請求の問題もあります。この点については、探偵業者が行った調査業務を細かく記録して備え付けるよう法律で義務づけ、あとで監査できる体制にし、国会公安員会などの立入検査によって、業務と報酬の妥当性を監査する、という形にすれば法外な請求が防げるでしょう。


    つまり、探偵業者許可法人制への移行ということです。

    罪に対しては、法をもって厳格に対処していくのは当然ですが、罪を未然に防ぐことも重要です。

    法制度の整備と厳格化、制度化が、探偵業界にも必要となっている時期に来ているのではないでしょうか。

    小説や映画、漫画で活躍する探偵たちには、華やかなドラマや奇想天外な仕掛けが求められますが、リアルな現実世界の探偵には、厳格な倫理観に基づいた本物のプロフェッショナルが求められるということです。

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