税法 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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  • インボイス開始で振込手数料を負担して欲しいと言われた。

    2023年10月27日

    今回は、【税理士を守る会】の質疑応答事例をご紹介します。

    (質問)

    インボイス制度開始された後、仕入先より振込手数料を民法485条に基づき、買手(振り込む側)が負担して欲しい旨の申し入れを複数受けています。

    そこで、この要請に応じる必要があるのか、法的見解を教えてください。

    (回答)

    1 契約書がある場合

    契約書を締結している場合には、弁済費用の負担について定めてあることが多く、その場合は契約書に従うことになりますので、契約書をご確認ください。

    たとえば、次のような条項です。

    「甲は、毎月末日までに、前項の報酬を乙の指定する銀行口座宛振り込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。」

    この「振込手数料は甲の負担とする。」が弁済費用の負担であり、契約書に従って負担します。

    2 契約書がない場合

    民法485条は次のように定めています。

    「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。」

    したがって、1のような当事者間の特約がない場合は、原則として、支払義務を負う者(振り込む側)が振込手数料を負担します。

    そして、1の特約が、「別段の意思表示」ということになり、別段の意思表示が優先します。

    では、契約書に別段の意思表示がない場合にはどうなるか、・・・・

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  • 税理士法人と会計法人

    2023年08月03日

    今回は、【税理士を守る会】での質疑応答を一般化してご紹介します。

    (質問)

    私は個人開業税理士ですが、株式会社である会計法人(私が代表者)を持っており、記帳代行業務を外注しております。

    現在、税理士法人化を検討しているのですが、この業務形態で注意すべきことはあるでしょうか。

    (回答)

    税理士法人化する場合ですが、記帳代行業務を会計法人に再委託する場合には、税理士が会計法人の取締役に就任すると、税理士法違反となります。

    税理士法人で記帳代行業務を受託して、・・・・

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  • 課税処分に対する不服申立期間

    2023年02月02日

    今回は、税務調査の結果、更正等の処分がされた時の不服申立の期限について解説します。

    以下は、原則的手続です。

    正当な理由がある場合の例外のルールは割愛しています。

    1 再調査の請求

    更正等の処分の通知を受けた日の翌日から起算して3ヶ月以内に、税務署長に対して再調査の請求をすることができます(国税通則法75条1項)。

    2 審査請求

    (1)更正等の処分の通知を受けた日の翌日から起算して3ヶ月以内に、いきなり国税不服審判所長に対し、審査請求をすることができます(同条同項)。

    (2)再調査の請求を行って、再調査の決定がされた場合には、再調査決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1ヶ月以内に、国税不服審判所長に対し、審査請求をすることができます。

    (3)再調査の請求を行ったにもかかわらず、3ヶ月を経過しても再調査決定がない場合には、国税不服審判所長に対し、審査請求をすることができます(国税通則法75条4項1号)。

    3 原処分取消訴訟

    (1)国税不服審判所長による裁決があったことを知った日から6ヶ月以内に出訴することができます(行政事件訴訟法14条1項)。

    (2)裁決があった日から1年を経過したときは、出訴できません。

    (3)国税不服審判所長に対し、審査請求をした日の翌日から3ヶ月を経過しても裁決がないときは、出訴することができます(国税通則法115条1項1号)。

    不服申立期間が経過しないようご注意ください。

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  • 少額減価償却資産の判定単位

    2022年03月31日

    今回は、少額減価償却資産の判断基準について、裁判例から検討してみたいと思います。

    中小企業の場合、取得価額が30万円未満である減価償却資産について、一定の要件のもとに損金算入を認める特例があります。

    この特例の適用においては、他の資産と一体として30万円以上の資産になるのか、あるいは、当該資産が独立した資産として30万円未満の資産となるのか、という論点があります。

    この点、最高裁平成20年9月16日判決は、PHS電話事業において、エントランス回線利用権が一回線毎に少額減価償却資産となるのか、あるいは、PHS接続装置等と一体として30万円以上の減価償却資産となるのかが争われました。

    最高裁は、減価償却資産の判定基準として、

    (1)1単位として取引されているか

    (2)資産としての機能を発揮して、収益の獲得に寄与するものか

    の2点を検討すべきとしました。

    そして、

    (ア)エントランス回線は1回線でも取引の対象となり、

    (イ)エントランス回線1回線に係る権利一つでもって、被上告人のPHS事業において、上記の機能を発揮することができ、収益の獲得に寄与するものということができる。

    と判示しました。

    したがって、減価償却資産の判定単位について迷ったら、上記基準に当てはめて検討していただくのがよろしいかと思います。

    なお、上記最高裁以前にも同じ論点が争われている事例もありますが、最高裁以降は、全て上記基準によって判断されることになりますので、過去事例を上記最高裁基準にあてはめて考えていくことになります。

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  • 破産と債務免除益

    2022年03月17日

    今回は、【税理士を守る会】でされた質疑応答をご紹介します。

    (質問)

    顧問先が債務超過に陥ったため、法的整理手続きを進めています。

    顧問先が委任した弁護士は特別清算を検討しているようですが、特別清算の場合には、債務免除益が発生し、税金を払いきれない可能性があります。

    破産の場合には、債務免除益を計上しなくていいと聞いたことがあります。

    これは正しいのでしょうか。

    正しいとすると、社長からの借入金や未払い給与についても同様でしょうか。

    (回答)

    特別清算については、和解型か協定型かにかかわらず、債権者との合意によって、債権が放棄される、という構成をとります。

    したがって、債務が債権者側から免除されたことになり、債務免除益の計上が必要となります。

    しかし、破産の場合は、債権者が債権届出をし、破産管財人が破産会社の財産で換価できた範囲内で配当を実施し、残余の債権が残ったまま破産手続が終結します。

    この場合、「会社が破産宣告を受けた後破産終結決定がされて会社の法人格が消滅した場合には、これにより会社の負担していた債務も消滅するものと解すべき」(最高裁平成15年3月14日判決(民集57巻3号286頁)、とされており、債務が消滅する時点では、すでに債務免除益が生ずべき法人が存在しないことになります。

    つまり、・・・

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  • 損害賠償金と消費税

    2022年02月17日

    今回は、【税理士を守る会】でされた質疑応答をご紹介します。

    (質問)

    顧問先の社員が独立し、顧問先の顧客を奪取したことから、損害賠償を請求し、違約金を受け取りました。

    そこで、この違約金が消費税基本通達5-2-5(損害賠償金)
    「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に
    伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」

    に該当するかあるいは、

    「但し、(2) 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無
    体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は資産の譲渡等の対価に該当する

    になるか、悩んでおります。

    見解をお教えください。

    (回答)

    通達にいう「無体財産権」の侵害に該当するかどうかは別として、資産の譲渡等の対価に該当すると考えます。

    「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」とされている趣旨は、当該損害により、心身又は資産につきマイナスが生じ、損害賠償金を受領することにより従前の状態に戻るだけであって、「担税力」が生じない、というところにあると解されます。

    そうだとすると、損害賠償金であっても、本来売上や収入に替わるものであって、担税力を生ずるものであれば、資産の譲渡等の対価と解すべきとなります。

    この観点から、5-2-5(1)は、・・・

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  • 【税理士向け】税と民事の時効の違い

    2021年12月30日

    今回は、【税理士を守る会】の質疑応答をご紹介します。

    先生方の参考になるのではないか、と考えるためです。

    (質問)

    他社から借り入れた債務がある場合に、何年もその状態になっていて、先方からも督促がされない場合に、時効のようなものが成立して債務が消滅することはありますでしょうか?

    インターネットで調べると、法人の場合は5年となっているようです。

    また、この時効成立がある場合に、このタイミングで債務免除益として税務上は益金算入が必須になるという理解になりますでしょうか?

    (回答)

    ご指摘のように、「消滅時効」という概念があります。

    法人同士の貸金債務の場合、債務の承認や督促等がなければ5年で消滅時効が完成します。

    この点、租税の時効と民事上の時効は異なりますので、ご注意ください。

    租税債権の徴収権は、【原則として】、法定納期限から5年間です(国税通則法72条1項)。

    5年経過すれば、何らの手続きを要せず、当然に消滅します。

    しかし、民事上の債権は、たとえば、消滅時効期間が5年だったとしても、5年を経過しただけでは、当然には消滅しません。

    債務者側が「援用」をしない限り、債権は存在し続ける、ということになります。

    「援用」の手続きとしては、内容証明郵便等で、債権者に対し、「債権は時効で消滅したので、消滅時効を援用します」と送れば完了です。

    法律上は、消滅時効の援用により、起算日である「権利を行使できる時」、たとえば、支払日などに遡って消滅し、その時からなかったことになります。

    しかし、税務上の処理については、・・・

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  • 【税理士向け】令和4年度税制改正大綱

    2021年12月16日

    先週発表された令和4年度税制改正大綱で、税理士法や附帯税関連でいくつか気になるものがありました。

    (1)税理士事務所の該当性の判断の見直し

    税理士法基本通達40-1は、「法第40条に規定する『事務所』とは、継続的に税理士業務を執行する場所をいいます。そして、継続的に税理士業務を執行する場所であるかどうかは、外部に対する表示の有無、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実によって判定するものとする。」と規定しています。

    改正では、このうち、

    ・設備の状況

    ・使用人の有無

    などの物理的な事実により判断しない運用を行う、としています。

    (令和5年4月1日より)

    (2)懲戒と廃業

    これまで懲戒処分を受けそうな時に、自主廃業して税理士資格を喪失することによって懲戒を免れる、という方法がとられてきましたが、この方法は今後取れません。

    「税理士であった者」に対して「懲戒すべきであった」旨の決定がされる制度に変わるためです。

    そして、この決定を受けた場合には、税理士業務の禁止の場合には、欠格事由に、税理士業務の停止の場合には、一定期間登録拒否事由に該当することになります。

    (令和5年4月1日以降の違反行為に適用)

    (3)懲戒処分の除籍期間

    懲戒の事由があったときから10年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができない、とされています。

    (令和5年4月1日以降にした違反行為に適用)ということなので、当分無関係です。

    (4)法人版事業承継税制

    特例承継計画の提出期限は令和5年3月末でしたが、1年延長し、令和6年3月末となりました。

    適用期限の令和9年12月末は延長されません。

    (5)過少申告加算税等の加重

    (一)税務調査において、帳簿提示提出拒否または帳簿に記載すべき売上等の金額の2分の1以上が記載されていない場合には、10%が加算されます。

    (二)税務調査において、帳簿に記載すべき売上等の金額の3分の1以上が記載されていない場合には、5%が加算されます。

    (6)隠蔽仮装行為があった場合の損金不算入

    隠蔽仮装行為があった場合、明らかな取引及び金額など以外は損金算入が否定されます。

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  • 税務調査での和解は許されない

    2021年08月19日

    今回は、税務調査での妥協についてです。

    税務調査で、見解の対立が生じ、租税職員との間で、交渉が行われます。

    その結果、「ここを認めて修正申告してくれれば、そっちは見逃そう」というように、双方が妥協する場面があります。

    これは、一見、双方の譲歩による和解が成立しているようにも見えます。

    しかし、課税の場面では和解は許されません。

    民事訴訟では和解が多いですが、税務訴訟では和解は許されず、判決になります。

    それは、課税の場面では、「合法性の原則」があるためです。

    合法性の原則は、租税法は強行法規であるから、課税要件が充足されている限り、租税行政庁には租税の減免の自由はなく、また租税を徴収しない自由もなく、法律で定められたとおりの税額を徴収しなければならない、という原則です。

    したがって、税務調査の場面でも、課税要件が充足されている限り、「ここは見逃そう」ということは許されないわけです。

    では、なぜ、税務調査の場面で、和解のようなことが行われているのか、というと、理論的には、「課税要件を充足していないと認定した」ということになります。

    合法性の原則により、課税要件が充足している限り、課税を行わなければならないので、課税要件が充足していないと判断する必要がある、ということになります。

    税務調査の立ち会いを行っていると、課税庁と和解をしているように感じることもあると思いますが、理屈ではどうなるのか、について考えてみました。

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  • 審査請求を活用しよう

    2021年08月10日

    今回は、もっと国税不服審判所に対する審査請求を利用した方がいいのではないか、ということです。

    税務調査の結果、修正申告の勧奨に応じない場合には、更正がされる場合があります。

    この場合、再調査の請求あるいは国税不服審判所に対する審査請求ができます。

    どうせダメだろう、と思うかもしれませんので、今回は統計をお知らせします。

    まずは令和元年度。

    審査請求の処理件数は、2,846件です。

    そのうち、全部又は一部が認容(納税者が主張が認められた)件数は、375件。

    つまり、13.2%です。

    そして、令和2年度。

    審査請求の処理件数は、2.328件です。

    そのうち、全部又は一部が認容(納税者が主張が認められた)件数は、233件。

    つまり、10%です。

    これが高いと感じるか、低いと感じるかは、人それぞれです。

    しかし、すでに更正がされており、納税を済ませているはずですので、審査請求をすることに、課税上の不利益はありません(税理士又は弁護士報酬の出費はありますが)。

    それで、10分の1の確率で請求が認められる、というのであれば、もっと審査請求を活用してもよいのではないか、と思います。

    特に、私の感覚では、重加算税について、「隠ぺい又は仮装」の要件を満たしていない賦課決定がされていることが多いです。

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