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ホームズの推理における6つの段階とは?
2010年07月12日
シャーロック・ホームズ Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)
クチコミを見る映画「シャーロック・ホームズ」を観た。
ホームズの推理は見事というほかないが、直感で犯人を見つけているわけではない。そこには論理が存在する。
まず、ホームズの推理は観察から始まる。
人や証拠を観察し、その観察した結果から仮説を立てる。
そして、その仮説はことごとく当たっている。
す、すごい・・・
「四つの署名」(コナン・ドイル)には、次のような場面がある。
ある日、ワトソンが外出先から戻ってきた時、ホームズは、ワトソンが何も言わないのに、ワトソンがどこで何をしてきたかをズバリと言い当てる場面がある。
「ワトソン君、君は郵便局に行って電報を打ってきたね」と言うように。
ホームズは、どのような推理でワトソンの行動を推理したのだろうか。
まず、ホームズは、ワトソンを「観察」した。すると、次の事実が浮上した。
・ワトソンの靴の甲には、妙な色の赤土が少しついている。
・郵便局への道はこのごろ敷石を外して土を掘り返している。
・妙な色の赤土は郵便局への道以外では見られない色である。ホームズは、この「観察」結果から、仮説を立てる。
「ワトソンは、郵便局に行ってきたのだろう。」
次に、ホームズは、問題提起をする。
「では、ワトソンは、郵便局に何をしに行ったのか?」
そこで、仮説を立てる。
・手紙を出す。
・切手を買う。
・はがきを買う。
・電報を打つ。4つの仮説が立てられた。
その後、ホームズは、それぞれの仮説が証拠と矛盾しないかどうかを検証する。
・ワトソンは、朝手紙を書いていなかったから、手紙を出しに行ったのではない。
・ワトソンの引き出しには切手やはがきがあったから、切手やはがきを買いに行ったのではない。
・電報を打ちに行くことと矛盾するような証拠はない。
「よって、ワトソンは、郵便局に電報を打ちに行ってきた」
以上をまとめると、このホームズの思考は、次のような過程をたどっている。
・問題提起
・複数の仮説を立てる
・観察と記憶により関連する証拠を集める
・それぞれの仮説と証拠が矛盾しないかどうか調べる
・仮説と証拠が矛盾するときは、仮説を排除する
・全ての証拠と矛盾しない仮説が真実である上の思考過程が完全にできれば、ホームズの誕生である。
ところで、この思考は、裁判官が判断するプロセスにも似ている。
民事裁判では、原告と被告が争っている。訴状により、問題提起がされるわけである。(問題提起)
そして、原告と被告それぞれが異なったストーリーを提示し、異なった判決を求める。(複数の仮説)
次に原告と被告それぞれが証拠を提出する。
裁判官は、原告と被告のストーリーと証拠が矛盾しないかどうかを調べる。
原告あるいは被告のストーリーと証拠が矛盾している場合には、そのストーリーを排除する。
残ったストーリーが真実であると判断して、判決を下す。
この、ホームズの推理思考を身につければ、周りから「頭の良い人」と見られること請け合いである。
ちなみに、映画では、武闘派のホームズも観ることができる。
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「高次脳機能障害と損害賠償実務」増刷決まりました。
2010年07月08日
交通事故訴訟における高次脳機能障害と損害賠償実務
クチコミを見る「交通事故訴訟における高次脳機能障害と損害賠償実務」(ぎょうせい)の増刷が決まりました。
この本は一般向けの本ではなく、法律家や保険会社等の交通事故の専門家向けに書いた本です。
このような本が増刷されるのは、そんなによくあることではありませんので、自分としては、一定の評価をいただいたものと感じております。
高次脳機能障害は、裁判実務としては色々と難しい問題を含んでおり、今後も裁判例の積み重ねにより、研究が進んでゆくものと思われます。
当事務所でも、高次脳機能障害については、今後も研究していきたいと考えております。
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誰がリスクを負うべきか?
2010年07月07日現代自動車は、広告で、次のようなキャッチコピーを出した。
「現代自動車を購入してから1年以内に仕事を失った場合には、車を返納しても代金はすべてお返しします」
史上最悪の経済危機の影響で、米国の自動車市場は昨年、厳しい販売不振に陥ったが、現代自動車は、米国で前年比8.3%増の43万台以上を販売し、今年も過去最大の業績達成が有力視されているという。
現代自動車米国法人が2010年8月6日に発表したところによると、ここ1年半の間に実際に払い戻しが行われた件数は、100件にも満たないという。つまり、大成功をおさめたわけだ。
http://news.livedoor.com/article/detail/4932567/
通常、このような企画が持ち上がると、「失業率は10%に達している。払い戻しが殺到したら、どうするんだ」という反対意見が出る。もっともだ。誰もリスクを背負い込みたくない。
反対に消費者の方はどうだろう。
「車は欲しい。でも、ローンで買って大丈夫だろうか。失業率は10%に達している。もし、来年、いや来月でも失業してしまったら、ローンを払えないぞ。やはり買うのは控えておこう」やはり、消費者もリスクを背負い込みたくないのだ。
これを解消するのがリスクリバーサルという考え方だ。
販売者の方が、消費者が感じているリスクを負担することにより、購入障壁をなくして購入意欲を高めようという仕組みである。
たとえば、「商品購入後、ご使用いただき、気に入らなければ商品購入後30日以内にご返品ください。理由の如何をとわず、代金を全額返金致します」というものだ。
これは、消費者の「損をしたくない」というリスクを販売者側が引き受けることにより、購入障壁をなくして購入意欲を高めているものである。
商品やサービスを購入するのは、自分のお金よりも、購入する商品やサービスの方が価値があると思うからだ。
人は、自分が与えるよりも、より大きな見返りを求めるものである。
先日、漫画喫茶に通っている知人は、「漫画喫茶では、飲み放題なので、できるだけ単価が高そうなものを飲む。もとは取らなきゃ」と言っていた。
だから「損をするかもしれない」という感情は、購入を思いとどまらせるブレーキとなる。
このリスクを除去してあげれば、購入する確率は格段に上がるだろう。
私の法律事務所でも、このリスクリバーサルを取り入れた。
交通事故の被害者向けサービスで、
「すでに保険会社から提示されている示談金額から増額できなかった時は、いただいた着手金は、全額返還致します。」
というものだ。これで、クライアントが弁護士に依頼するリスクは除去される。
今では、それを更に一歩進めて「フリー」の考え方を取り入れ、着手金を無料にして完全成功報酬制にしている。
現代自動車も、このリスクリバーサルの考え方を取り入れた。
経済不況により自動車の販売が低迷するのは、将来に対する不安からだ。
「ここでお金を使って、職を失ったらどうなる?」
「ローンを組んで職を失ったらどうなる?」消費者は、そのリスクを自分で背負い込むことはしないのだ。
そこで、現代自動車は、「仮に今後職を失っても大丈夫ですよ。車を返してくれさえすれば、代金を全額返しますから、あなたが損をすることはありません。」というリスクリバーサルを使って、購入意欲を高めたのだ。
人は、誰も損をしたくない。人に与えるよりも多くのモノを得ようとするのだ。
消費者は、現代自動車のリスクリバーサルにより、損を回避することができた。車を買うことにより、自分が与えたお金より多くの利便性を手に入れた。
では、現代自動車は損をしたのか?
いや、現代自動車は、消費者に対して安心を与えることにより、多くの利益を手に入れたのだ。
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気がつけば10万部突破
2010年07月05日書店に行ったら、私が以前出した「するどい『質問力』」(三笠書房)が置いてあり、帯に「10万部突破!」と書いてありました。
知らないうちに、結構売れているようです。
今日も同じ事務所の水村弁護士が、人にあげるということで、なんと11冊も買ってました。
内輪で売れていたのか・・・
するどい「質問力」! 図解問題を1秒で解決する
クチコミを見る -
遺言書を書く人が増えているようですね
2010年06月29日京都新聞によると、遺言を書く人が増えているようです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100629-00000018-kyt-l26大手文具メーカーのコクヨの子会社コクヨS&Tが2009年6月に発売した遺言書作成の解説や用紙などが入った「遺言書キット」2万5千部余りも売れたそうです。
約25,000人が自分の財産について、遺言を書くことを検討した、ということです。
特に不動産や中小企業の株を所有している場合、遺言書を書いておかないと、相続人の間で遺産分割でもめることが多くあります。
私たち弁護士は、相続人間で激しく争い合う人達を見ています。
自分は争いたくなくても、配偶者などからの意見などもあり、やむを得ず紛争に突入してゆく人もいるように見受けます。
自分の死後、親族が争わないためにも、遺言を書いておくことをおすすめします。
また、遺言を遺言信託にしておくと、さらに分け方にバリエーションが出てきますので、ご検討ください。
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信託で相続争いをなくす方法
2010年06月27日信託法という法律を聞いたことがあるでしょうか?
日常的には「投資信託」くらいしか聞いたことがありません。
しかし、実は、信託はとても使い勝手の良い制度です。
経営が順調な時に利用すれば、将来の経営リスクに備えて、自宅などの財産を保全することができます。
自分の死後、財産を自由に移転させることができます。
ここでは、遺言信託について少しだけ説明します。
たとえば、アパートを持っている人が、遺言をしようとすると、そのアパートの半分を妻に、半分を長男に、などと取り決めます。
妻が死亡した時の相続は、妻が生前に遺言をするか、あるいは死後の遺産分割で決められます。
自分が関与することはできません。
たとえば、遺言で自分の死後の財産は妻に全て渡すことにします。
(ここまでは今までの遺言書でもできます)しかし、今までの遺言書では、ここまでしか決められません。
妻は、自分の死後、妻の両親に財産を渡す遺言を書くかもしれません。
そうすると、財産は、子供達には引き継がれなくなっていきます。
ところが、信託は、この問題点を解消しました。
すなわち、一旦妻に帰属させた財産(受益権)は、妻が死んだら長男に全て渡すことにし、長男が死んだら次男に渡すことにする、ということを、自分が生前に決めておくことができるのです。
これは、今まででは考えられないことです。
自分で、生前に、自分の財産をどうやって継がせてゆくかを決めることができ、それによって死後の紛争を防止することができるのです。
他にも色々なことができます。
もし、信託に興味がある方は、メールで相談希望である旨を書いてお送りください。
tanihiara@mirailaw.jpあなたの財産を守る方法、あなたの死後、家族が争わない方法が見つかるはずです。
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弁護士の論理的な会話術を出版しました。
2010年06月26日私の新刊です。
「弁護士の論理的な会話術」(あさ出版)
数年前に出した「『わたしと仕事、どっちが大事?』はなぜ間違いか?」(あさ出版)のリメイク版です。
少し内容を加筆・修正しています。
議論や交渉に役立つ1冊となっています。
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研ぎ立てのナイフのような一杯
2010年06月24日今さらながら、開高健氏の「珠玉」を読みました。
短編「掌のなかの海」の中で、あるバーで、マーティニを飲む場面があります。発音は「マティーニ」ではなく、「マーティニ」です。どことなくオシャレです。
作り方としては、
「氷を白のヴェルモットで洗い、お余りをいさぎよく捨てる。ヴェルモットの薄膜で氷片を包むという形である。それを手早く水夫用のどっしりしたグラスに入れ、あらかじめ瓶ごと冷蔵庫で冷やしてあったジンを注ぎ、レモンの一片をひねってあるかないかぐらいの香りをつける」
という代物です。
開高氏は、このマーティニを「研ぎたてのナイフの刃のような一杯」と表現します。
読むだけで、食道から胃にかけて、熱いジンがゆっくりと通ってゆく感触が甦ってきます。
マーティニは、ジンとヴェルモットの種類や配分などによって、200種類を超える種類があるそうです。
奥が深い・・・
マーティニと言えば、他には「007」の「ウォッカマティーニ」、いわゆる「ボンド・マティーニ」を好んで飲んだ時期もありました。
これは、マーティニで使うジンをウォッカに替え、シェイカーでシェイクするカクテルです。
いずれにしても、パンチが効いています。
たまに、仕事帰りにふらりとバーに立ち寄り、マーティニのパンチにKO寸前になりながら帰途につくのもよいものです。
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増刷が決まりました。
2010年06月23日先月出した「弁護士の論理的な会話術」(あさ出版)が増刷になりました。
この本で説明しているテクニックの一部は次のとおり。
「仮に話法」
「立証責任の押し付け」
「門前払いの手法」
「そもそも式論法」
「異同論法」
「誤導尋問」
ぜひご一読を。
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今日は信託法の講師をしてきました
2010年06月18日今日は、20人くらいの税理士の先生方を対象に、信託法の講義をしてきました。
信託には、「倒産隔離機能」があり、将来の倒産時に資産を保全することができます。
将来リスクに備えたい方、ぜひご活用ください。