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  • 質屋で嘘を書くと犯罪!?

    2017年01月06日

    あけましておめでとうございます。

    みなさんは、無事に新たな年を迎えられたことと思いますが、中には年を越すお金がない…ということで昨年末には大変な思いをした人もいるかもしれません。

    そんな時、以前であれば質屋にお金を借りに行ったという経験をした人もいるでしょう。
    しかし、近年では質屋の数が右肩下がりに減少している、という記事をネットで見かけました。

    「消えゆく質屋、4割が商売自体を“知らない”」(2016年12月21日 ダイヤモンド・オンライン)

    鎌倉時代から続くともいわれる質屋業は、1958(昭和33)年の2万1539店がピークで、その後は減少し続け、2015(平成27)年には3034店と85%以上も減少しているそうです。

    主な原因は、消費者金融(サラ金)やカードローンなど金融サービスの多様化、ブランド品や宝石などの買い取り店・リサイクルショップの増加、そして中国経済の衰退などが指摘されています。

    質屋の商売の形態は、物を担保(質)にして金を貸し、期限までに借主が返済できなければ貸した金の代わりにその物の所有権を得て、「質流れ」として現金に換えるというものです。

    利用者としては、売却してしまえば2度とその品物は自分の元には返ってきませんが、大切な物であれば質入れ後に元金と質料を支払えば返ってくるわけです。

    しかし、近年では質屋を知らないという若者も増加しており、大阪で行われたアンケートでは44%が質屋でお金を借りることができるのを知らないという結果が出たようです。

     

    「質屋営業法」は、質屋の営業者を規制する法律ですが、「軽犯罪法」に、質屋の利用者に関する罪が定められておりますので、解説したいと思います。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    十七 質入又は古物の売買若しくは交換に関する帳簿に、法令により記載すべき氏名、住居、職業その他の事項につき虚偽の申立をして不実の記載をさせた者
    これは、「氏名等不実申告の罪」とも呼ばれるもので、ポイントは次の2点です。

    ① 虚偽の申し立てをする
    ② 不実の記載をさせる

    あなたが質屋でお金を借りるために、自分が持っていたブランド品のバッグや時計などを質に入れたとします。
    その際、質屋は「質屋営業法」で定められた質物台帳や質取引人名簿などの帳簿に必要事項を記載しなければいけません。

    「質屋営業法」
    第14条(帳簿)
    質屋は、内閣府令で定める様式により、帳簿を備え、質契約並びに質物返還及び流質物処分をしたときは、その都度、その帳簿に左に掲げる事項を記載しなければならない。

    一 質契約の年月日
    二 質物の品目及び数量
    三 質物の特徴
    四 質置主の住所、氏名、職業、年令及び特徴
    五 前条の規定により行つた確認の方法
    六 質物返還又は流質物処分の年月日
    七 流質物の品目及び数量
    八 流質物処分の相手方の住所及び氏名
    たとえば、あなたが氏名、住所、職業などを偽って質入れしたりすれば軽犯罪法違反になります。

    質屋で氏名、住所、職業などをそのまま書くのは恥ずかしいかもしれません。しかし、嘘を書くと犯罪になることを憶えておきましょう。

     

    とろこで、不倫カップルが不倫旅行をして、旅館に宿泊する際、配偶者にバレないようにと、虚偽の氏名や住所を記載すると、犯罪になるのをご存じでしょうか?

    「旅館業法」という法律があります。

    第6条  営業者は、宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の事項を記載し、当該職員の要求があつたときは、これを提出しなければならない。
    2  宿泊者は、営業者から請求があつたときは、前項に規定する事項を告げなければならない。

    第12条  第六条第二項の規定に違反して同条第一項の事項を偽つて告げた者は、これを拘留又は科料に処する。

    かといって、本当の名前を書いて、配偶者にバレた場合は離婚原因となり、不倫の相手は損害賠償の対象となります。

    嘘をつくも地獄、本当のことを言うも地獄です。

    心当たりのある方、くれぐれもご注意ください。

    合掌。

  • 馬(ポニー)が渋谷の道路を走った件。犯罪?

    2016年12月16日

    今回は、馬が渋谷の街を爆走!? という「事件」について法律解説します。

    映画やTVドラマのロケではないようです。
    一体、何が起きたのでしょうか?

    「“道路をポニーが走っている” 渋谷でミニチュアホース脱走…捕獲、けが人なし」(2016年12月16日 産経ニュース)

    事件が起きたのは、12月15日午後7時頃。

    東京都渋谷区のJR恵比寿駅近くで、複数の通行人から「ポニーが道路を走っている」との110番通報があり、渋谷署の警察官が捜索したところ、約15分後に駅から1キロ離れた国学院大学渋谷キャンパス内で発見され、捕獲されたということです。

    報道によると、街を疾走したポニーは3歳で、体高約1.2メートルのオスのミニチュアホース。
    渋谷区内のペットショップのおりから逃げ出したようで、連絡を受けた店員が連れて帰ったということです。

    発見時、ミニチュアホースはおとなしく草を食べており、ケガ人はいなかったということです。

    彼も自由になりたかったのでしょうか? 気持ちはわかります。
    何はともあれ、ケガ人も逮捕者もいなかったのでよかったですね。

    今回は以上です。
    というわけにはいきませんね、法律解説します!

    じつは、動物の逃走に関する法律もちゃんとあります。

    まずは、条文を見てみましょう。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    三十 人畜に対して犬その他の動物をけしかけ、又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者

    ※拘留=受刑者を1日以上30日未満で刑事施設に収容する刑罰
    科料=1000円以上、1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰

    軽犯罪法は、軽微な33の秩序違反行為について規定しているもので、もともとは1908(明治41)年に施行された「警察犯処罰令」が前身の法律です。

    警察犯処罰令は、1948(昭和23)年に軽犯罪法が施行されたのに伴って廃止されています。

    さて、条文にあるように、この罪でポイントとなるのは次の3点です。

    ①犬やその他の動物とは?
    ②けしかけるとは?
    ③馬や牛を驚かせるとは?

    まず、どんな動物が該当するのかというと、前段に犬その他の動物とあるように特に種類は限定されません。

    「けしかける」とは、相手をおだてたり、そそのかしたりして自分の思う通りのことをさせる、あるいは相手を攻撃させるという意味です。

    つまり、どんな動物でも、けしかけることで人や家畜に危害を及ぼすのであれば、けしかけた人が罪に問われるわけです。

    たとえば、自分が飼っている犬をけしかけて人や他の飼い犬などを襲わせた場合などが該当します。

    ところで、条文の後段に「馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者」とあります。

    馬や牛は、通常は人間に危害を加えるような動物ではありませんが、特に馬などは敏感で臆病なため、棒などで突く、大声をあげる、物を投げて当てるなどして驚かせれば、当然、逃げて走り出し危険な状態になってしまうでしょう。

    今回の事件は、この後段に該当する可能性があったわけですが、ケガ人はいなく、警察官に見つかった時はおとなしく草を食べていたということで、ペットショップで驚かされたり、虐待されたという事実もないようなので、お咎めなしということになったのだと思います。

    仮に、ミニチュアホースが暴れて人にケガをさせた場合、飼い主は「過失傷害罪」(刑法第209条)、死亡させてしまえば「過失致死罪」(刑法第210条)に問われる可能性があります。
    ペットショップのように業務上の過失であれば、「業務上過失致死傷罪」(刑法第211条)に問われる可能性もあります。
    馬に罪はないでしょうし、今回は大事に至らなくてよかったですが、いずれにしても、飼い犬のリードは離さない、飼い馬の手綱はしっかり握っておくことが大切です。

    世の奥様方であれば、旦那の手綱はキュッと締めて、財布のひももしっかり締めておけば完璧でしょう。

  • ストーカー規制法が改正!SNSへの書き込みも規制対象に!

    2016年12月09日

    以前から問題点も指摘されていた「ストーカー規制法」の改正案が成立したようなので解説します。

    「ストーカー規制、SNSも対象 罰則強化の改正法が成立」(2016年12月6日 朝日新聞デジタル)

    ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やブログなどへのメッセージ送信もからんだ深刻な被害が後を絶たないことを受け、新たにSNS上での執拗な連続書き込みなどによる「つきまとい行為」を禁止する「改正ストーカー規制法」が衆院本会議で全会一致で可決されました。

    SNSなどインターネット上の新たなコミュニケーションツールの発達、広がりにともなって被害の態様が多様化していることが改正の背景にあります。

    「ストーカー規制法」は2000年の成立以降、今回が2度目の改正になりますが、今回は罰則の強化や禁止命令の手続きの迅速化なども盛り込まれたようです。
    そもそも、ストーカー規制法は1999(平成11)年に起きた「桶川ストーカー殺人事件」をきっかけに、2000(平成12)年11月に制定された法律です。
    その後、2012(平成24)年に発生した「逗子ストーカー殺人事件」を受けて、2013(平成25)年6月に1回目の改正法が成立しています。
    今回の改正は、今年(2016年)5月に東京都小金井市で起きた、音楽活動をしていた女子大生に対しファンを自称する男がツイッターなどのSNS上でストーカー行為を繰り返したあげく、ナイフで20カ所以上を刺して重体に陥らせた事件がきっかけのひとつでした。

    被害者の女性は、男がSNSへ執拗な書き込みを続けていることについて警視庁に相談していたにもかかわらず事件を防げなかったことに対して社会的な批判が相次いだのは記憶に新しいところです。

    では、主な改正内容について具体的に見ていきましょう。

    「規制行為の改正点」
    今回、新たに次の「つきまとい行為」が規制対象に追加されています。

    ・拒まれたにもかかわらず、連続してSNSやブログにメッセージを送ったり、書き込んだりし続ける行為(第2条)

    ・住居付近をみだりにうろつく行為(第2条)

    これまでの現行法では、「つきまとい行為」として次の8つの行為が規定されていました。

    ①待ち伏せ、尾行、および自宅や勤務先を見張り、押し掛けること。
    ②行動を監視していると告げる行為。
    ③面会や交際、その他義務のないことを行うことの要求。
    ④著しく粗野、乱暴な言動。
    ⑤無言電話、連続した電話・FAX・メール。
    ⑥汚物・動物の死体等の送付。
    ⑦名誉を害する事項の告知。
    ⑧性的羞恥心を侵害する事項の告知、わいせつな写真・文章などの送付、公表。

    電話とFAXの他に、2013(平成25)年の改正法からメールが新たに規制行為に追加されていましたが、SNS上の書き込みについてはその内容に違法性がなければ取り締まれなかったため、ストーカー規制法の不備が指摘されていたわけです。

    また、今までは「住居等に押し掛けること」のみを規制していましたが、改正案では「住居等の付近をみだりにうろつくこと」も新たに規制されることになります。
    「罰則の改正点」
    ・ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処す。(第18条)

    ・都道府県公安委員会の禁止命令に従わない場合は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処す。(第19条)

    ・親告罪規定を撤廃(第13条から削除)

    現行の罰則の上限は、6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金となっていますが、これでは刑法の強要罪(3年以下の懲役)や脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)と比較して刑が軽いという指摘もあったことから、改正法では2倍重くなっています。

    また、警察はストーカー行為者に対して警告をすることができるのですが、この警告に従わない場合、都道府県公安委員会は禁止命令を出すことができます。

    これにも従わない場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金だったので、こちらも2倍に刑が重くなっています。

    さらに、本法は被害者からの告訴が必要な「親告罪」だったのですが、今後は告訴なしに加害者を起訴できるようになります。
    「禁止命令の手続きの改正点」
    前述のように、これまではまず警察が警告を出し、それでもストーカー行為者が従わない場合に公安委員会の禁止命令が出されるという段取りでしたが、今後は緊急の場合は警告なしに禁止命令を出すことができるようになります。(第5条)

    また、禁止命令は警察本部長や署長に委任して行わせることも可能になったことで迅速な対応ができるようになります。
    「情報提供の禁止について新設」
    何人(なんぴと)もストーカー行為をする、または繰り返す恐れのある者に対して、被害者の名前、住所などの情報を提供することを禁止する条項が新設されます。(第7条)

    ということで、SNSやブログのメッセージや書き込みで、恋愛感情などをもとに、本人から拒まれているにもかかわらず連続して送信している人は、今後、刑事責任を問われる可能性があります。

    そして、警察としては、この改正を周知するため、早期に第一号の適用を目指すと思われます。

    くれぐれも違反にならないよう、相手に拒まれたら、いさぎよく諦めましょう。

  • 死体を放置して軽犯罪!?

    2016年11月25日

    今回は、「要扶助者・死体等不申告の罪」といわれる犯罪について解説します。

    あまり馴染みのない罪かもしれません。
    しかも死体とは、何やら不穏なものを感じますが、これは「軽犯罪法」に規定されているものです。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    十八 自己の占有する場所内に、老幼、不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら、速やかにこれを公務員に申し出なかつた者
    ポイントは次の3点です。

    ①自己の占有する場所内
    ②扶助を必要とする者、死体、死胎
    ③速やかに公務員に申し出る

    以前、タクシー運転手が泥酔して寝込んだお客を路上に放置して死なせたために保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された事件について解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒
    「タクシー運転手が客を置き去りにして逮捕?」
    https://taniharamakoto.com/archives/2468

    「刑法」の第217条から第219条には「遺棄」に関する罪が規定されていますが、今回の「要扶助者・死体等不申告の罪」とは何が違うのでしょうか?

    まず「遺棄」とは、保護を必要とする者を保護のない状態にさらす犯罪ですが、刑法では遺棄する場所については特に規定はありません。
    つまり、公道でも公園でも山林でも遺棄になるわけです。

    一方、軽犯罪法第18号の「要扶助者・死体等不申告の罪」では、「自己の占有する場所内」と規定されています。
    たとえば、縁起でもないですが、自宅の庭に老人が迷い込んで倒れて立ち上がれないような場合には、すぐに警察などに通報しなかったときは、この罪に問われる可能性があるということです。

    次に、「扶助を必要とする者」ですが、「老幼」については絶対的な年齢の基準があるわけではなく、事件ごとに相対的判断されます。

    また、どのような状態の人が、扶助が必要と判断されるかについては、病気やケガの人以外にも次のような状態の場合、要扶助と認められた判例があります。

    ・泥酔者
    ・極度に疲労している者
    ・知的障碍者
    ・麻薬等の薬物により正常な意識を失っている者
    ・飢餓者
    ・麻酔状態にある者
    ・催眠術にかかっている者
    ・産褥期(産後1、2ヵ月)の女子

    ちなみに、要扶助者に保護者がついている場合は、警察などに通報しなくてもこの罪は該当しません。

    ところが、たとえばあなたが自分の所有する土地に倒れている人を発見し、介抱したり保護したりすれば、法律上あなたは保護義務を負うことになります。
    そして、途中から介護、介助を止めてしまって放置した場合は、刑法
    第218条の保護責任者遺棄罪や、第219条の遺棄致死傷罪に問われる可能性があります。

    保護責任者というと親や子などの親族をイメージするかもしれませんが、それには限りません。
    なお、保護責任者遺棄罪の法定刑は3ヵ月以上5年以下の懲役です。当然、軽犯罪法違反と比較すれば重い刑に処されるわけですから、注意が必要です。

    ところで、条文に「速やかに」とありますが、どのくらいの時間経過のことをいうのでしょうか?

    速やかにとは、時間をおかずにできるだけ速くという意味です。
    具体的な時間の定義があるわけではありませんが、扶助者の存在を知ったなら、その状態や発見時刻などの具体的な状況から判断して、できるだけ速く警察などに通報するべきです。

    これから忘年会シーズンに突入します。

    わざわざ自宅周辺を巡回する必要はありませんが、もし、見つけたら、なるべく早く警察等に通報するようにしましょう。

    それが、その人のためでもあり、自分のためでもあるのです。

  • 法律事務は、弁護士でなければできません。

    2016年11月03日

    資格がないにもかかわらず弁護士業務を行っていた男が逮捕されたという報道があったので解説します。

    「〝無資格〟弁護士の会社役員を逮捕 民事訴訟受任し書類作成…大阪地検特捜部」(2016年11月1日 産経新聞)

    大阪地検特捜部は、弁護士の資格がないのに法律事務を行ったとして、大阪市鶴見区の会社役員の男(68)を弁護士法違反(非弁活動)の疑いで逮捕しました。

    2015年4月から8月頃、容疑者の男は弁護士資格がないにもかかわらず報酬を得る目的で、貸金返還や損害賠償請求といった3件の民事訴訟を受任し、訴状などの書類を作成して大阪地裁などに提出していたようです。

    特捜部は、容疑者の男が非弁活動を継続的に繰り返していた可能性もあるとみて調べているということです。
    非弁活動(非弁行為)とは、法律で認められている場合をのぞいて、弁護士資格を持たないのに「弁護士法」の第72条に規定される行為(弁護士業務)を、報酬を得る目的で反復継続して行うことです。

    「弁護士法」
    第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
    弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
    これに違反した場合、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。(弁護士法第77条3号)

    過去、非弁活動により弁護士法違反に問われた事件には、通称「スルガ地上げ事件」と呼ばれるものがあります。

    「スルガ地上げ事件」
    2008年3月、弁護士資格がないにもかかわらず、大阪市の建設・不動産会社の社長らがオフィスビルの立ち退き交渉をしたとして、弁護士法違反で逮捕された。
    もともと、このビルは商業ビル経営の「秀和」が所有していたもので、その後、モルガン信託銀行に移り、2005年9月、横浜市にあった建設・不動産会社の「スルガコーポレーション」(東証二部上場)が買収した。
    その際、暴力団との関わりを持つ不動産会社に、いわゆる「地上げ」による立ち退き交渉を委託し、多額の報酬を支払っていたという。
    スルガコーポレーションは、2007年9月までにビルを解体し、更地にした後に高値で広島市の商業施設開発会社「アーバンコーポレイション」に売却していた。

    これは、いわゆる、地上げ、土地転がしに関連して、地上げ屋が多額の報酬を得て立ち退き交渉という法律事務を行ったために弁護士法違反に問われたものでした。

    非弁活動による違反行為については、他にも以下のような判例があります。

    「行政書士による弁護士法違反」
    行政書士が、交通事故被害者から自賠責保険の申請手続、書類作成およびこれに付随する業務に関する依頼を受け、報酬の支払いを求めた控訴審の事例。
    裁判所は、行政書士の請求を棄却した原審の判断を維持し、本件契約が法律事務に当たり、弁護士法第72条に違反する非弁行為に該当することから、公序良俗に反して無効であるとして行政書士の請求を棄却した。
    (大阪高裁平成26年6月12日判決・判例時報2252号61頁)

    遺産分割についての紛争が生じている場合に、他の相続人と折衝することは行政書士の業務の範囲外であると判断された事例。
    (東京地裁平成5年4月22日判決・判例タイムズ829号227頁)
    「司法書士による弁護士法違反」
    本人訴訟による約1300万円の過払金返還請求の訴え提起について、司法書士による代理行為によるものであり、民事訴訟法54条1項、
    弁護士法72条に違反する違法なものであるとして、不適法却下された事例。
    (富山地裁平成25年9月10日判決・判例時報2206号111頁)
    なお、過払金返還請求に関しては司法書士以外にも逮捕されている事件があります。
    2013年に宮城県で弁護士資格のない夫婦が、2年間で約1000人から過払金返還請求を請け負い、約12億円を回収して約3億円の報酬を得ていたとして逮捕されています。

    よく、お金を貸したのに返してくれない、というときに、弁護士じゃない人が、「代わりに取り立ててあげようか?そのかわり、取り立てたお金の半分ちょうだいね」などと言って取り立てに行くことがありますが、これも貸金請求の交渉という法律事務になるので、弁護士法違反です。

    反対に、借金の返済ができないときに、会社や個人の代理人として、報酬を得て返済条件の交渉などをするのも、弁護士法違反です。

    思わぬところで弁護士法違反となる可能性があります。

    法律上の問題は、必ず弁護士に相談するようにしましょう。

  • 特定空き家の基準が決定!空家対策特別措置法が施行

    2015年05月28日

    近年、放置されたままの空き家が問題になっています。
    そこで成立したのが「空家対策特別措置法」ですが、先日、完全施行されたので解説します。

    「建物の傾斜、臭気で判断=“危険空き家”基準公表-国交省」(2015年5月26日 時事通信)

    空き家対策を進める特別措置法が26日に完全施行されたのに合わせ、国土交通省は、周辺環境に悪影響を及ぼし撤去命令などの対象となる「特定空き家」の判断基準を示した市町村向けガイドラインを公表しました。

    著しく傾いているなど建物自体の問題に加え、ごみの放置による臭気など衛生上有害なケースも対象になり得るとしたということです。

    特措法は、危険な放置空き家について、市町村に立ち入り調査の権限を付与。
    特定空き家に認定した場合は、所有者に修繕や撤去などの勧告、命令を行えるほか、最終的に行政代執行による撤去もできると定めています。
    空家対策特別措置法は、「適切な管理がされていない空き家が防災、衛生、景観などで地域住民の生活環境に深刻な影響をおよぼしていることから、その生命、身体、財産を保護するとともに、空き家の活用を促進する」(第1条)ことを目的としています。

    詳しい解説はこちら⇒「増え続ける空き家に空き家対策法が施行」

    増え続ける空き家に空き家対策法が施行



    空家対策特別措置法は、2015年2月26日に一部が施行されたのですが、「特定空き家」に関する部分は施行されていませんでした。

    特定空き家とは、以下のものをいいます。(第2条2項)
    ・倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態
    ・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
    ・適切な管理が行われないことにより、著しく景観を損なっている状態
    ・その他、周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

    ボロボロに傷んだ廃墟のような空き家は、いつ倒壊するかわからず近隣住人に危険を及ぼしかねません。
    また、不衛生で汚く、見た目も悪いため、市町村が持ち主に修繕や撤去を命令でき、これに従わない場合や持ち主不明の場合は、強制撤去できるわけです。

    ただ、どこまでが普通の空き家で、どこからが特定空き家なのかの基準が必要になるわけですが、この基準が公表されたので以下にまとめます。
    1.「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」
    ①建築物が著しく保安上危険となるおそれがあるもの
    (a)建築物が倒壊等するおそれがあるもの
    ・建築物の著しい傾斜(柱の傾斜など)
    ・建築物の構造耐力上主要な部分の損傷等(基礎・土台や柱・はり等の破損、変形、腐朽など)

    (b)屋根、外壁等が脱落、飛散等するおそれがあるもの
    ・屋根の変形等(ふき材の剥落、軒の腐朽など)
    ・外壁の剥離、破損、脱落等(貫通する穴が生じている、外壁の仕上材料の剥離、破損など)
    ・看板、給湯設備、屋上水槽等の剥離、破損、脱落等
    ・屋外階段、バルコニーの腐食、破損、脱落等
    ・門、塀のひび割れ、破損等

    ②擁壁(ようへき)が老朽化し危険となるおそれがあるもの
    ・擁壁表面の水のしみ出し、流出
    ・水抜き穴の詰まり
    ・ひび割れの発生
    ※擁壁=斜面の土砂がくずれるのを防ぐために設ける土留め構造物
    2.「そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態」
    ①建築物又は設備等の破損等が原因で以下の状態にあるもの
    ・吹付け石綿等が飛散し暴露する可能性が高い状況
    ・浄化槽等の放置、破損等による汚物の流出、臭気の発生があり、地域住民の日常 生活に支障を及ぼしている状態
    ・排水等の流出による臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態。

    ②ごみ等の放置、不法投棄が原因で以下の状態にあるもの
    ・ごみ等の放置、不法投棄による臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障を 及ぼしている状態。
    ・ごみ等の放置、不法投棄により多数のねずみ、はえ、蚊等が発生し、地域住民の 日常生活に支障を及ぼしている状態。
    3.「適切な管理が行われていないことで著しく景観を損なっている状態」
    ①適切な管理が行われていない結果、既存の景観に関するルールに著しく適合しない状態にあるもの
    ・景観法に基づき景観計画を策定している場合において、当該景観計画に定める建築物又は工作物の形態意匠等の制限に著しく適合しない状態となっている。
    ・景観法に基づき都市計画に景観地区を定めている場合において、当該都市計画に定める建築物の形態意匠等の制限に著しく適合しない、又は条例で定める工作物の形態意匠等の制限等に著しく適合しない状態となっている。
    ・地域で定められた景観保全に係るルールに著しく適合しない状態となっている。

    ②周囲の景観と著しく不調和な状態であるもの
    ・屋根、外壁等が、汚物や落書き等で外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている状態。
    ・多数の窓ガラスが割れたまま放置されている状態。
    ・看板が原型を留めず本来の用をなさない程度まで、破損、汚損したまま放置されている状態。
    ・立木等が建築物の全面を覆う程度まで繁茂している状態。
    ・敷地内にごみ等が散乱、山積したまま放置されている状態。
    4.「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」
    ①立木が原因で以下の状態にあるもの
    ・立木の腐朽、倒壊、枝折れ等が生じ、近隣の道路や家屋の敷地等に枝等が大量に散らばっている状態。
    ・立木の枝等が近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている状態。

    ②空家等に住みついた動物等が原因で以下の状態にあるもの
    ・動物の鳴き声その他の音が頻繁に発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態。
    ・動物のふん尿その他の汚物の放置により臭気が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態。
    ・敷地外に動物の毛又は羽毛が大量に飛散し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態。
    ・多数のねずみ、はえ、蚊、のみ等が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている状態。
    ・住みついた動物が周辺の土地・家屋に侵入し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある状態。
    ・シロアリが大量に発生し、近隣の家屋に飛来し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある状態。

    ③建築物等の不適切な管理等が原因で以下の状態にあるもの
    ・門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている。
    ・屋根の雪止めの破損など不適切な管理により、空き家からの落雪が発生し、歩行者等の通行を妨げている状態。
    ・周辺の道路、家屋の敷地等に土砂等が大量に流出している状態。

     

    ポイントは、ただ建物が傾いている、屋根がはがれているなどで倒壊しそうな状態だけでなく、ゴミや汚物が放置されていて臭い、排水などがあふれて臭いといった臭気や、壁の落書きや割れた窓ガラス、建物を覆う樹木などの見た目、さらには住み着いた動物の鳴き声や糞尿、ネズミやハエ、蚊などの害獣・害虫なども規制の基準になっているところに注意が必要です。

    なお、税制改正で、倒壊の恐れのある危険な空き家にも今までの6倍の固定資産税がかかるようになります。
    つまり、今まで住宅用地に認めていた固定資産税の軽減措置が空き家は受けられなくなるということですから、気をつけてほしいと思います。

    いずれにせよ、親から受け継いだ土地と建物などが空き家状態になっている人は、一度しっかりと確認、把握をすることをおすすめします。

    空き家は、相続の際にも揉める原因となります。

    不動産であるだけでモメますし、空き家は誰も欲しがりませんし、キャッシュを生み出さないので、相続税の支払いに困難を来す場合さえあります。

    相続対策はお早めに。

    ご相談は、こちらから。
    http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/

  • 一度書いた遺言書を変更したくなったら!?

    2014年06月07日

    自分が死んだ後の財産の処分について、遺言書を書くことは大切なことです。

    しかし、一度遺言書を書いたものの、その後で遺言書の内容を変更したくなったらどうしたら良いでしょうか?

    以前、「遺言書の書き方」について解説しました。

    解説記事はこちら→ https://taniharamakoto.com/archives/1372

    今回は、「遺言書の加筆・訂正・変更の仕方」について解説したいと思います。


    【自筆証書遺言の加筆・訂正・変更】
    遺言者が自分で書いた「自筆証書遺言」の内容を訂正・変更するには、厳格な方式が定められています。なぜなら、偽造や変造を防止するためです。
    「民法」第968条では、遺言者が行うべき以下の要件が定められています。

    ①変更した場所を指示する。
    ②変更した旨を付記する。
    ③これに署名をする。
    ④変更した場所に印を押す。

    この4つの条件を正しく守ることで、加筆・訂正した遺言状に効力が生じます。


    【遺言の撤回】
    加筆・訂正する箇所が広範で詳細な内容におよぶ場合は、既存の遺言をいったん撤回して新たに書き直すほうがいい場合があります。
    その際、民法では以下のように規定されています。

    「民法」第1022条(遺言の撤回)
    遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。


    「民法」第1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等)
    1.前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
    2.前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。


    「民法」第1024条(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
    遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。


    わかりやすくまとめると、以下のようになります。

    ①前の遺言の方式いかんを問わず、すべての方式の遺言で、いつでも撤回することができる。

    ②どの方式・種類の遺言に変更してもよい。

    ③遺言は、その一部でも全部でも撤回できる。

    ④前の遺言で定めた内容について、同一の対象を後の遺言で異なった定めをした場合、その部分に関しては前の遺言は撤回されたことになる。

    ※たとえば、前の遺言書に「不動産Aを長男に相続させる」とあったものが、後の遺言書では「不動産Aを次男に相続させる」となっている場合、長男への相続の遺言は撤回されたことになります。

    ⑤遺言者の死後に相続する予定だったものを生前処分(売却や贈与など)した場合、遺言は撤回したものとみなされる。

    ⑥遺言者が故意に、遺言書の全部または一部を破棄した場合、その部分の遺言は撤回したものとみなされる。

    ※たとえば、遺言書を焼き捨てたり、判別できないほど黒く塗りつぶした場合などが当てはまります。

    ⑦遺言者が故意に、遺贈の目的対象物を破棄した場合、その部分についての遺言は撤回されたとみなされる。
    ※たとえば、父親が家にわざと火をつけたり、土地に劇薬を撒いたり…


    人は誰しも間違いがあったり、後から変更したいことが出てくるものです。

    サクサクっと消しゴムで消して書き直せばOK! ならば簡単でいいのですが、遺言書はそうはいきません。
    法律をしっかり守って変更してください。

    間違っても「消せるボールペン」で書いてはいけませんよ。

    この機会に正しい遺言書の訂正・変更の仕方を覚えて、万が一の事態に備えておくのも大切なことだと思います。

  • 自筆証書遺言の書き方

    2014年03月21日




    最近、年配の方の中には「終活」というものを行う人がいるようです。

    これは「人生の終わりのための活動」の略で、生前に行うべきことをやっておき、終焉を見つめ準備しておくことで、今をよりよく生きようという思いがあるようです。

    葬儀やお墓のこと、財産などの相続のことなど、自分のためだけでなく遺された人たちのためにもやっておくべきことがあります。

    弁護士として、相続問題の相談をよく受けますが、その中に「遺言」があります。(ちなみに、法律用語では通常「いごん」と読みます)

    遺言というと、映画やドラマの世界で資産家の遺言書が原因で殺人事件が起こったりする場面を思い浮かべる人もいるでしょうが、実は、普通の人でも必要となるものです。

    しかし、やはり人間は「自分の死のことなど考えたくない」、「まだいいだろう。もう何年かしたら考えよう」などと、つい後回しにしがちです。

    また、「うちの家族は仲がいいから遺言なんて必要ないよ」と考えている人もいるでしょう。

    ところが、経験上、仲のいい普通の家族でも、いざ相続となったときにもめることが多いのです。

    よく経験するのは、本人は兄弟姉妹間で争いたくないと思っていても、配偶者が「もらえるものはもらうべき。ウチだって苦しい」と言われ、泥沼の紛争に入ってゆくパターンです。

    お金よりも、家や土地が残された場合、その配分でもめるケースが多いですね。

    相続=争族という言葉もあるくらいです。

    そこで今回は、遺言を法的に解説します。

    【遺言の種類】
    遺言には、死期が迫っている、一般社会から隔離されているなど特別な場合の「特別方式」と、通常の場合の「普通方式」があります。

    普通方式には、さらに以下の3種類があります。

    〇「自筆証書遺言」…遺言者が遺言内容の全文、日付、氏名すべてを自分で記載して、捺印をするもの。

    〇「公正証書遺言」…公証人に作成してもらうもの。

    〇「秘密証書遺言」…遺言内容と氏名を自筆し、捺印した書面を封筒に入れ封印したものを公証人に証明してもらうもの。

    私たち弁護士が遺言書の作成を依頼された場合には、「公正証書遺言」の作成を薦めるのが通常です。

    遺言書の作成における弁護士の役割は、遺言者の意思を明確に遺言書に残し、かつ、死亡後の紛争を回避することです。

    公正証書遺言は、公証人が作成するので、証明力が高く、紛争になりにくいからです。

    でも、公正証書遺言では、余計な費用もかかるし、大事だ、ということもあるでしょう。

    あるいは、たびたび書き直したい、ということもあるでしょう。

    そんな時は、取り急ぎ「自筆証書遺言」を作成することになります。

    ここでは、自筆証書遺言について解説していきます。

    【自筆証書遺言の書き方】
    自筆証書遺言として認められるための要件は、「全て自分で書く」ということです。具体的には、①遺言の内容②日付③署名を自筆し、④捺印することです。

    ①「遺言の内容」
    必ず自筆でなければなりません。
    代筆は認められません。ワープロやパソコンのワードで作成した文章は無効となります。

    ②「日付」
    自筆で日付を書かなければなりません。「平成(西暦)〇〇年〇月〇日」と書きます。

    遺言書が複数存在する場合、日付が最終のものが最終意思となり、それより前の遺言書の矛盾する部分は取り消されることになります。

    ③「署名」
    氏名を自筆します。
    必ずしも戸籍上の本名である必要はなく、従来より使用していた雅号、屋号、芸名などの通称でもよいとされています。その場合、他人との混同を避けるため住所を記載するなどして同一性を確認できるようにしておく必要があります。
    万全を期すには、本名の氏と名を自筆で署名すれば安心でしょう。

    ④「捺印」
    使用する印章は実印である必要はありません。認印でもよいとされています。
    病床の人は、たとえば手の震えを抑えるために他人に介添えしてもらったり、他人に命じて押してもらってもよいとされています。


    【遺言書の検認】
    遺言者が亡くなった場合、遺言書の保管者(遺言者から遺言を預っている人)または、これを発見した相続人は、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。(民法第1004条1項 遺言書の検認)

    また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いの上、開封しなければならないことになっています。(民法第1004条3項)

    つまり、裁判所以外では開封してはいけないということです。もし開封してしまうと、5万円以下の過料を受けることがあります。(民法第1005 過料)

    遺言書の検認とは、有効か無効かを確定するものではなく、その外形を保全し、偽造や変造を防止し、遺言書の検証と証拠保全をするための手続き、と考えておけばよいでしょう。

  • 職務質問にどう対応するか?

    2014年03月16日

     

    人間の心理は、外面や行動に現れるものです。

    街で警察官の姿を見ると、何も悪いことはしていないのに、不自然に意識したり緊張する、という人がいます。

    誰にでも心に何かしら、やましい部分があったりするので、たとえ罪を犯していなくても、どこか挙動不審になったりするのかもしれません。

    ところで、警察官の仕事のひとつに「職務質問」があります。

    不審な点がある人を呼び止め、質問したり、所持品をチェックしたりするものですが、職務質問に関連した報道が昨年末にあったので、法的に検証してみましょう。

    「刑法犯件数、11年連続減少へ 121万件、詐欺は増加」(朝日新聞デジタル)

    報道によると、警察庁が発表した2013年1~11月の刑法犯の認知件数は、2012年同期より5.1%少ない121万4004件で、年間件数は11年連続で減少しているとのことです。

    窃盗は90万6095件で、5.8%減。住宅などへの侵入盗や車上あらし、自販機あらしの減少が大きく、一方、詐欺は3万4795件で、9.9%増。振り込め詐欺は8285件で49.6%の大幅増となっています。

    また、容疑者を摘発した割合を示す検挙率は全体で30.4%。2012年同期比で1.7%減少しています。

    警察庁は検挙率低下の要因として、地域警察官の職務質問による事件の摘発の減少などを挙げているとのことです。

    この報道からだけでは、検挙率低下の原因が、職務質問の実施件数自体が減ったからなのか、それとも職務質問する警察官の質が低下したからなのかわかりませんが、とにかく警察庁としては、警察官の職務質問のブラッシュアップを望んでいる、ということなのでしょう。

    確かに、薬物事犯などでは、挙動不審な人に職務質問し、所持品検査をしてみたら、薬物が出てきた、というのは、よく聞くところです。

    職務質問が犯罪の減少に結びついていくのであれば、国民としては当然、大歓迎です。

    しかし、何も悪いことをしていないのに、街で警察官に職務質問され、腹立たしい経験をした人もいるでしょう。

    犯罪を見抜く目や感覚が低下しているならば、検挙率が下がるだけでなく、私たち国民が不当な職務質問を受ける可能性が高まるからです。

    では、私たちが自分の身を守るためにも、職務質問を拒否することはできるのでしょうか?

    そもそも、なぜ警察官は職務質問をするのでしょうか?

    法的根拠を見てみましょう。

    「警察官職務執行法」第2条
    1.警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。

    この法律の規定に基づいて、警察官は職務質問をしている、ということです。

    この条文に、誰に職務質問ができるか、が書かれています。

    以下の2つのどちらかに該当する人に対して職務質問ができます。

    ・異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者

    ・既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者

    これは、素人が見てもわかりそうな怪しい人ですね。

    まず、「異常な挙動そのほか周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯したか、犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」です。

    「うへへ~♪」と言いながら、道路をフラフラ歩いていて、如何にも覚せい剤を使用していたり、留守宅を物色しているように見える場合だったり、包丁を持っていたりしている人、などは、該当しそうですが、普通の格好で普通に歩いていたら、とても犯罪を犯すと疑うに足りる相当な理由があるとは思えないので、職務質問できないはずです。

    また、職務質問では、よく車のトランクを開けさせられたり、バッグの中を見せるように言われたりします。

    しかし、条文には所持品の検査に関する規定は明示されていません。

    なので、たとえばカバンを開けて中身を見せるように言われても、拒否することはできます。が……これを拒むのは、なかなか難しいでしょう。

    警察官は、任意でカバンの中身を自らの意思で見せるように促しますが、見せなければ、職務質問は延々と続く可能性があるからです。

    次のような質問が来ます。

    「何か見せられないような違法なモノが入っているのですか?」

    「入っていません」

    「では、見せてください」

    「嫌です」

    「やましいモノが入ってなければ見せられるはずですね。見せてください・・・・」

    こんなやり取りが続くでしょう。

    反論方法はあるのですが、ここでは割愛します。

    過去の判例では、「米子銀行強盗事件」というものがあります。

    1971年7月、鳥取県米子市で、銀行強盗で盗んだ札束を入れていたバッグを持つ男に対して、職務質問したところこれを黙秘。バッグ開けて中身を見せることも拒否したため、警察官が承諾を得ずに開けると大量の紙幣が見つかり逮捕に至った事件で、最高裁は、「所持品の検査については明文で規定していないが、職務質問に付随して行うことができる場合があると解するのが相当であり、捜査に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り許容される場合がある」「銀行強盗という重大な犯罪が発生し犯人の検挙が緊急の警察責務とされていた状況の下において必要上されたものであって、またバッグの施錠されていないチャックを開披し内部を一べつしたにすぎないものであるから、警職法2条1項の職務質問に附随する行為として許容される」として、所持品検査は違憲、違法はないと判断した。(最高裁判決 昭和53年6月20日 刑集32巻4号670頁)

    微妙で難しい判断ですね。

    これを現場で判断するのは至難の技です。

    ところで、もしあなたが職務質問をされた場合、警察官も職務を遂行するために職務質問をしているわけですから、素直に従い、疑いを晴らすことをおすすめします。

    しかし、前記の要件が全くないにもかかわらず警察官が不当に職務質問をしてきたときは、次のように対応しましょう。

    ①「これは、職務質問ですか?」と聞く。
    ②「違う」と言えば、「では、法的根拠がないので、これで失礼します」と言って立ち去る。
    ③「職務質問だ」と言えば、「私のどこが警職法上の異常な挙動でしょうか?あるいは犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がどこにありますか?もし、それがないのに職務質問したとしたら、違法な職務質問ですよ」と冷静に対応する。ここで暴れたりわめいたりすると、「犯罪を犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由」ができてしまう可能性があります。

    警察官は、この後不用意に踏み込んできにくくなるでしょう。

    しかし、この対応は、決して目出し帽やストッキングを頭からかぶっている時にはしないようにしてくださいね。

    では、最後になぞかけです。

    職務質問とかけまして、

    屋根に降った雨水と解きます。

    そのココロは・・・・

    どちらも「とい」(問い、樋)が必要です。

  • 中傷投稿やツイートに対抗する法的手段とは?

    2014年01月29日




    SNSにおける投稿者情報の開示に関する案件

    近年、多くの人が利用し、便利、楽しいと同時にさまざまな問題の原因にもなっている、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。

    先日、「ツイッター」を舞台にした、ある異例な判決が出されました。

    <「詐欺師」「自己中」「ぶさいく」中傷ツイートの投稿者情報、開示求める 東京地裁>(2014年1月21日 産経ニュース)

    ツイッターで「詐欺師」などと中傷された静岡県の男性(62)が、投稿者を特定するため、アメリカのツイッター社に対して接続情報の開示を求める仮処分を東京地裁へ申し立て、認められていたことが分かりました。

    原告側の代理人によると、男性は平成23年ごろからツイッター上で特定の人物から、「この詐欺師!」「自己中ぶさいく」などの中傷投稿を繰り返し行われていたということです。

    そこで2013年4月、ツイッター社に対して投稿者の接続情報を開示するよう求める仮処分を申請。

    東京地裁は同年7月、男性への名誉棄損を認め、ツイッター社に対して「IPアドレス」(ネットワーク上の識別用の番号、住所)の開示を命じたようです。

    その後、原告側は開示された情報をもとに、プロバイダー(接続事業者)であるソフトバンクBBに対して投稿者の氏名や住所の開示を求める訴えを起こし、今月16日、東京地裁は開示を認める判決を言い渡したということです。

    既に投稿は削除されているようですが、原告側は投稿者と直接連絡を取り、今後は中傷しないように求めるようです。

    報道では、今まで接続情報の開示は「2ちゃんねる」などの掲示板が多かったのですが、ツイッターに対して開示が認められたのは極めて異例なこととしています。

    実際、ネット上の掲示板やツイッターなどの中傷投稿で困っている人もいると思いますので、本件をサンプルとして、投稿者に対する不法行為(名誉棄損)に基づく「発信者情報開示請求」について、ここでその手続き方法等を簡潔に解説しておきましょう。

    投稿者の特定のための請求

    ネット上の掲示板などは、通常、匿名での書き込みのため、投稿者に対して損害賠償請求を行うためには、まずは当該加害者を特定する必要があります。
    そのために、発信者情報開示請求ができます。(プロバイダ責任制限法4条1項)

    開示請求することができる発信者情報

    ①氏名又は名称
    ②住所
    ③電子メールアドレス
    ④IPアドレス
    ⑤侵害情報の係る携帯電話端末又はPHS端末からのインターネット接続サービス利用者識別符号
    ⑥侵害情報に係るSIMカード識別番号(個体識別番号)
    ⑦IPアドレスが割り当てられた電気通信設備、⑤又は⑥に係る携帯電話端末等から情報送信された年月日及び時刻(タイムスタンプ)

    発信者情報開示請求の手順

    一般的に、掲示板等に書き込みをする場合、どのような仕組みなのかを簡単に説明しておきます。

    ①インターネット接続契約をしている経由プロバイダに接続
    ②経由プロバイダにおける認証サーバがIPアドレスの割り当て、タイムスタンプを記録
    ③当該経由プロバイダを経由して、掲示板管理者であるコンテンツプロバイダに接続
    ④コンテンツプロバイダのウェブサーバにおいて当該IPアドレス及びタイムスタンプを記録

    以上のように、通常、掲示板を管理するコンテンツプロバイダのウェブサーバには、タイムスタンプと経由プロバイダから割り振られたIPアドレス等が記録されるのみで、投稿者の氏名や住所などの情報は記録されません。

    そのため、投稿者を特定するための発信者情報開示請求は、2段階に分けて行う必要があります。

    ステップ1

    掲示板管理会社(コンテンツプロバイダ)に対する、IPアドレス及びタイムスタンプなどの発信者情報開示請求

    情報を得たIPアドレスについて「WHOIS」検索を行い、これを保有する経由プロバイダを特定

    ステップ2

    経由プロバイダに対して、投稿者の氏名・住所・メールアドレス等の発信者情報開示請求

    その際、プロバイダ責任制限法4条1項に基づく請求であるため、以下の要件を主張する必要があります。

    ①「請求権者」
    特定電気通信(プロバイダ責任制限法2条1号)による情報の流通によって自己の権利を侵害された者であること

    ②「被請求権者」
    開示関係役務提供者(当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者)であること

    ③侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであること

    ④当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合、その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること

    注意点

    ①通常、大手プロバイダのアクセスログ保存期間は2週間~3ヵ月程度という短期間とされているので、手続を迅速に行う必要があります。

    ②経由プロバイダが判明したとしても、その時点でのアクセスログの保存期間満了の問題が心配されます。まずは内容証明郵便による通知をして個別の保存対応をしてもらうよう求めましょう。

    ③任意の保存に応じられないという回答の場合は、コンテンツプロバイダのときと同様に、発信者情報の保存の仮処分命令の申立てを行うことになります。


    投稿の削除請求

    掲示板上に不法な投稿が掲載されたままでは、名誉棄損による被害が継続されることになります。そのため、民法723条(名誉棄損における原状回復)等に基づく差止請求として、該当する記載投稿の削除請求をすることができます。

    これは、掲示板管理者に対しても可能ですが、膨大な量の書き込みを掲示板管理者が随時チェックして検討するのは物理的、現実的に困難であることから、過去の判例では、掲示板管理者の場合は、被害者から具体的な削除請求を受けた後も不当にこれを放置した場合のみ削除義務が認められるとされています。(東京高判平成13年9月5日判タ1088号94頁、東京地判平成11年9月24日判タ1054号228頁等)

    いずれにしても、やはり複雑な手続きが必要となってくるため、費用がかかったとしても、弁護士を代理人として事に当たるのがいいでしょう。

    SNSによって誰もが全世界に情報を発信できるようになりました。

    非常に便利なツールです。

    しかし、反面、故人がとても簡単に名誉毀損や侮辱、信用毀損などをしたりすることもできてしまいます。

    原子力発電と原子力爆弾の関係もそうですが、人間にとって有益な発明は、その裏側に必ず弊害を伴うものですね。

    人間の善なる心を信じたいものです。