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  • のぞきと犯罪

    2017年09月01日

    人の好みは十人十色といいますが、中には困った趣味もあります。

    たとえば、窃視(せっし)というものがあります。
    簡単にいえば、盗撮なども含めた「のぞき」行為のことです。

    人間は誰しも、見てはいけないものを見たい、ひそかにのぞき見してみたいという欲求を持っているものかもしれませんが、こうした行為が他人のプライバシーを侵害したり、私生活の平穏を脅かすことになれば問題が生じてしまいます。

    もちろん、のぞき行為や盗撮は犯罪にもなるのですが、法的には少しややこしい部分があるので、今回は「のぞき」に関する法律について考えてみたいと思います。

     

    じつは、のぞきや盗撮行為については「刑法」に規定がなく、その他にも直接的に取り締まる法律がありません。
    そのため、次の3つの法律、条例のいずれかが適用されるというのが現状です。

    ①「住居侵入罪」
    部外者が、盗撮目的で撮影機器設置のために、さく等に囲まれた建造物の敷地に侵入する行為は「住居侵入罪」に該当する可能性があります。

    「刑法」
    第130条(住居侵入等)
    正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

     

    ②「各都道府県の迷惑行為防止条例」
    現在、47都道府県すべてで「迷惑行為防止条例」が定められていますが、この中で「卑猥な行為」や「粗暴な行為」として盗撮を禁止しています。

    ここでは、東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(迷惑行為防止条例)を見てみます。

    第5条(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
    1.何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
    (2)公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗り物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機、その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、もしくは設置すること。

     

    この規定に違反して撮影した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。

    ただし、迷惑行為防止条例はあるものの、未だに盗撮を禁止する場所が、原則は道路や公園、電車など、不特定多数の人が出入りする場所に限られており、公共の場所にあってもトイレや更衣室は含まれない、としている自治体もあり、その場合は盗撮犯が不起訴になる場合もあるという問題があるのが現状です。

    ちなみに、「平成27年度版 犯罪白書」(総務省)によると、2014(平成26)年の各都道府県の迷惑行為防止条例違反のうち、盗撮事犯の検挙件数は3265件でした。
    犯行時間でもっとも多かったのが「15時~18時」(27・9%/909件)、次いで「18時~21時」(19・8%/645件)、犯行場所でもっとも多かったのが「駅構内」(32・2%/1049件)、次いで「ショッピングモール等商業施設」(28・5%/929件)となっています。

     

    ③「軽犯罪法」
    さまざまな軽微な秩序違反行為に対して拘留(1日以上30日未満で刑事施設に収容)、または科料(1000円以上1万円未満)に処する法律です。

    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    23.正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

     

    ここでポイントとなるのは、次の2点です。

    1.人が通常衣服をつけないでいるような場所
    2.ひそかにのぞき見る

    条文には、のぞきを禁止している場所として、「住居」「浴場」「更衣室」「便所」が明示されています。
    これらの場所では、衣服を脱ぐことは普通にあるわけですから納得がいきます。

    問題は、「人が通常衣服をつけないでいるような場所」とはどのような場所を指すのかです。
    たとえば、病院の診察室やホテルなどの宿泊施設の部屋などは衣服をつけないでいる時間もあるので該当するでしょうし、寝台列車や客船の個室、試着室なども同様と考えられます。

    ただし、注意が必要なのは、裸でいる「ような」場所なので、法的には必ずしも裸でいる場所に限定される必要はなく、また、必ずしも人が裸でいる必要もないということです。

    そう考えると、夜の公園や車内で愛し合う男女の行為をのぞいたり盗撮しても、軽犯罪法では処罰できないことになります。
    なぜなら、このような場所は通常では裸にはならない場所だからです。

    また、正当な理由がないのに他人の住居をのぞいたり盗撮する場合、部屋に人がいなくても本号が適用される可能性があります。
    なぜなら、本号には、個人的な秘密、プライバシーの侵害行為を禁止するとともに個人の私生活の平穏の確保という趣旨があるからです。
    つまり、個人の住居や部屋はプライバシーや私生活の平穏が守られるべき場所であるから、その場所をのぞき見る、盗撮する行為は法律違反であるということです。

    次に、「ひそかに」についてですが、言葉としては、人に気づかれないように、知られないように、こっそりと、という意味です。
    ただし、ここでは誰にも見つからないようにということではなく、見られる側の人に気づかれないように、ということになります。

    なお、条文には「ひそかにのぞき見る」際の手段や方法についての規定はありませんが、ここでは肉眼で直接見る以外に、望遠鏡や双眼鏡で見ることや、カメラやスマホ等で動画や写真を撮ることも含まれます。

    なお、都道府県によって条例は異なります。

    衣服の上から撮影するだけなら許されるか、というと、そういうわけではありません。

    衣服の上から撮影したとしても、北海道迷惑防止条例のように、「卑わいな言動」として迷惑防止条例となる場合もありますので、くれぐれもご注意ください。

  • 危険な動物を逃がす罪とは?

    2017年06月24日

    今年(2017年)5月末、静岡県葵区の住宅地で体長約1メートルの大トカゲが目撃され、静岡中央署が注意喚起を呼びかけたという報道がありました。

    この大トカゲは付近の住民がペットとして飼っていたもので、インドネシア産のコガネオオトカゲという種。
    性格はおとなしく、人間には危害を加える恐れはないということですが、家の近所で突然そんなトカゲと遭遇したら…ちょっと怖いですね。

    幸い6月6日には捕獲されたということですが、今回は危険な動物を逃がすと犯罪になる可能性がある、ということについて解説したいと思います。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    12 人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠つてこれを逃がした者

     

    本号は、「危険動物解放の罪」とも呼ばれるもので、ポイントとなるのは次の3点です。

    ①人畜に害を加える性癖
    ②正当な理由がなく
    ③解放、または監守を怠って逃がす

    人畜とは、人や家畜のことです。
    家畜とは、人間が利用するために繁殖、飼育をする動物で、イヌ、ネコ、
    ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ニワトリ、アヒルなどをいいます。

    条文に「害を加える性癖のあることの明らかな」とあるので、たとえば噛み癖のある犬やライオンなどの猛獣、また鳥獣類ではないですがコブラなどの毒ヘビやワニなども該当するでしょう。

    正当な理由かどうかは、事件の発生状況や社会通念などに照らして判断されます。

    また、危険動物を解放することは故意犯、監守を怠って逃がすことは過失犯になる可能性があります。

    以上のことから考えると、飼い主の過失によって逃げ出した大トカゲでしたが、人間に害を加える恐れのない、おとなしい種類であり、人に危害を加えたわけでもなかったため軽犯罪法違反には問われなかった、ということになると思います。

    ちなみに、実際このトカゲが人にケガをさせた場合は、刑法の「過失傷害罪」に問われる可能性があります。

    「刑法」
    第209条(過失傷害)
    1.過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
    2.前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

     

    詳しい解説はこちら⇒
    「犬を散歩させただけで、6300万円の賠償金を払う?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1872/

     

    なお、ペットなどの動物は、法律上は「モノ」になるため、仮に発見者が「これは珍しい!」と捕獲して家に持って帰った場合は、「遺失物等横領罪」になるかもしれません。

    第254条(遺失物等横領)
    遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

     

    動物に関与する方は、このほか、「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)や、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護法)などもチェックしておきましょう。。

    ペットなど動物の管理には十分気をつけましょう。

  • 野次馬根性で犯罪者に?

    2017年06月17日

    毎日、世界中のどこかで、さまざまな災害や事故が起きています。

    ちなみに、日本の法律である「災害対策基本法」では、災害を次のように定義しています。

    「災害対策基本法」
    第2条(定義)
    一 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。

     

    これらは自然災害といわれるものですが、人為的災害としては次のものなどがあげられます。

    ・列車事故
    ・航空事故
    ・海難事故
    ・交通事故
    ・火災
    ・爆発事故
    ・石油流出
    ・化学物質汚染
    ・原子力事故
    ・テロ・戦争

    さて、今回は災害について解説するわけではありません。
    あなたが災害の現場にいた場合、こうした行為をすると犯罪になる可能性があります、ということについて解説します。

    たとえば、あなたが自動車を運転していたところ、火災現場に遭遇したとします。
    あなたは路上に自動車を駐車して、燃え盛る炎を見ています。

    次々と、消防車や救急車が駆けつけています。

    すると、前を通りかかった消防士に言われました。
    「消火活動の妨げになりますから、ただちに自動車を移動してください」

    しかし、あなたはその言葉を無視して火災を見続けていました。

    しばらくすると、少し離れたところで消防士と警察官が話しているのが見えました。
    二人はチラチラと、こちらを見ています。

    そして、警察官があなたのほうに近づいてきて言いました。

    「軽犯罪法違反ですので、警察署まで同行してください」

     

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    8 風水害、地震、火事、交通事故、犯罪の発生その他の変事に際し、正当な理由がなく、現場に出入するについて公務員若しくはこれを援助する者の指示に従うことを拒み、又は公務員から援助を求められたのにかかわらずこれに応じなかつた者

     

    本号は「変事非協力の罪」とも呼ばれるもので、何かの災害や変事の際に被害の拡大防止や被害者の救助などのために市民が遵守するべき最低限のことに対して、これに応じなかったり拒んだりすることを罰するものです。

    今回の事例で考えると、火災現場での消火、救助活動について、公務員である消防士が協力を求めたにもかかわらず、これに応じなかったため軽犯罪法違反に問われた、ということになります。

    たとえば、もっと間近で火事を見ようとして立ち入ってはいけない場所に入ろうとして、制止されたのにそれを無視して中に入ったり、立ち入り禁止区域に入っていたところ、立ち退くように言われたにもかからずこれに応じなかったり拒んだりした場合も同様です。

    正当な理由があれば処罰はされませんが、どのような理由が正当なものなのかは、その場の状況や社会通念に照らして判断されます。

    野次馬根性を出しすぎると、犯罪にまで発展することがある、ということです。

    気をつけましょう。

  • 行列に割り込むと犯罪!?

    2017年05月28日

    行列ができるほど人気のお店がテレビなどで紹介されることがあります。

    確かに、それだけの価値があるお店でしょうから並んででも商品をゲットしたい、美味しいものを食べてみたいという人がいるのもわかります。

    反対に、行列には絶対に並びたくない、という人もいるでしょう。
    その気持ちも、よくわかります。

    しかし、わからないのは行列に割り込んでくる人の気持ちです。
    少しでも早く買いたい、食べたいという気持ちはわかりますが、どうしたら、みんなが並んでいる行列に割り込むことができるのか?
    当然、並んでいる人はムカムカ、イライラすることでしょう。

    今回は、そんな人に役に立つ法律を解説します。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    13 公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待っている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者。
    軽犯罪法は、軽微な33の秩序違反行為について規定しているもので、その前身は1908(明治41)年に施行された「警察犯処罰令」という法律です。
    そのため、条文の内容に時代を感じさせる部分があります。
    たとえば、この13号であれば、汽車や乗合自動車、割当物資の配給などですね。
    なつかしい昭和の、それも三丁目の夕日的な匂いがします。
    それとも、戦後の混乱期の光景でしょうか。

    それはさておき、この罪の条文は前半と後半で分けて考えたほうがいでしょう。
    ポイントとなるのは次の4点です。

    ① 公共の場所や乗り物
    ② 多数の人に対して
    ③ 著しく粗野もしくは乱暴な言動で迷惑をかける
    ④ 威勢を示して公衆の列に割り込む

    公共の場所や乗り物で、多数の人に対して、著しく粗野もしくは乱暴な言動で迷惑をかける、というのは以前に解説した5号の「粗野・乱暴の罪」と重なる部分があります。

    詳しい解説はこちら⇒「暴言を吐くだけで犯罪!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/2458/

    「公共」というのは、国や地方自治体などが所有、管理している場所や施設ということではなく、不特定で、かつ多数の人が自由に出入り、利用できる性質のものをいいます。

    「著しく粗野もしくは乱暴な言動」とは、たとえば相手にからんだり、大声を出して周囲の人に迷惑をかけたり、相手を傷つける意思なく物を投げたりというものです。

    多数の人に迷惑をかける、ということですので、その時の状況によって判断されるものですが、2、3人では一般的には多数とは言えないでしょう。

    次に、とても迷惑な「威勢を示して公衆の列に割り込む」行為についてですが、ここでも公衆の列ですから、2、3人の列では足りず、多数の人が並んでいる列と解釈できます。

    また、「威勢」とは辞書によると、人を威圧するような勢い、言語や動作に活気や勢いがあること、とあります。

    ということは、無言でススーっと割り込んだり、「すみません…」、「恐縮です…」などと言いながら割り込むような、ちゃっかり行為の場合はこの罪は適用されないということになります。

    国によっては行列など関係ない、というところもあるでしょうが、きちんと行列で順番を待つのは日本人の美徳でもあると思います。くれぐれも割り込みはやめましょう。

  • いたずらは、犯罪になりやすい。

    2017年03月22日

    今回は、いたずらも度が過ぎると犯罪になる、ということについて解説します。

    「コンビニでいたずら、動画投稿…男を書類送検」(2017年3月18日 読売新聞)

    富山中央署は、富山市内のコンビニ店でいたずらする様子が動画投稿サイトで公開された事件で、動画を投稿した富山市の20歳代の男を軽犯罪法違反(いたずらによる業務妨害)と富山県迷惑防止条例違反(卑わいな言動)の疑いで富山区検に書類送検しました。

    事件があったのは今年1月。
    男は、富山市内のコンビニ店でズボンの上から股間を触った手で商品のアルコール飲料に触れる様子をスマートフォンで撮影。
    動画を投稿サイトに投稿して店の業務を妨害するなどした疑いだということです。
    まずは、軽犯罪法から見てみます。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    31 他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者
    「いたずらなど」の定義が曖昧ですが、ここでは刑法の偽計業務妨害罪と比較しながら考えてみます。

    「刑法」
    第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
    「虚偽の風説の流布」とは、真実とは異なった内容の虚偽・ウソを不特定多数の人に知れ渡るよう広めることです。
    法律上、噂として広めることでも犯罪が成立しますが、その噂やウソが本当のことだった場合は罪には問われないとされています。

    「偽計」とは、人を欺く、だますことです。

    過去には次のような事件を解説しています。

    「ウソの注文をすると犯罪になります。」
    https://taniharamakoto.com/archives/1957/

    ネットからミカン10箱のウソの注文をしたという事件でした。

    「カンニングが犯罪!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/2351/

    これは、資格試験での集団カンニングが罪に問われた事件でした。

    その他にも次のような判例があります。

    ・新聞社の経営者が他紙の購読者を奪うため同紙と紛らわしい題号に改名し、その題字の体裁を酷似させて発行したもの(大判大4・2・9録21‐81)

    ・バスの乗客に対し「この運転手は癇癪(かんしゃく)を起こすから用心しなさい」と告知したもの(大判昭10・3・14集14‐261)

    ・虚偽内容の仮処分命令の申請書を裁判所に提出し、裁判官を欺罔(ぎもう)して得た家屋明渡しの仮処分命令を執行して、新聞社の社屋を明け渡させたもの(大判昭15・8・8集19‐529)

    ・国籍不明の外国人が近海域に不法入国した旨の虚偽の犯罪事実を通報し、海上保安庁職員を出動させたもの(横浜地判平14・9・5判タ1140‐280)

    これらに比べて、今回の事件のような行為は些細なもの、「いたずらなど」の範疇であると判断されたということでしょう。

    一方、「偽計」には当たらず、「いたずらなど」と判断されて軽犯罪法違反に問われたものには次のような判例があります。

    ・地下歩道内の非常ベルをいたずらで押した(旭川簡判昭50・7・2刑裁月報7・7‐8・795)

    ・百貨店で開催された物産展で飾られていた中国国旗のような旗を引き降ろした(長崎簡略式命令昭33・12・3判時172・15)

    なお、刑法の偽計業務妨害罪は一般人の業務に対する妨害行為が該当し、公務員の業務(公務)に対する妨害には公務執行妨害罪が適用されますが、この軽犯罪法31号の「他人の業務」には、一般人の業務だけでなく、警察官や消防士などの公務も該当するので注意が必要です。

    次に、迷惑防止条例違反についてですが、現在では全国の47都道府県すべてで定められています。
    これは、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為などを防止し、住民生活の平穏を保持することを目的としています。

    富山県の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、第3条に卑わいな行為の禁止として、「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人に対し、正当な理由がなく、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為をしてはならない」と規定されています。

    自分の股間を触った手でコンビニの商品を触ることは、卑わいで人に不安を覚えさせる行為であるということですね。

    いずれにしても、いたずらのつもりで行なったことでも犯罪になるということは、しっかり覚えておいてほしいと思います。

  • ブルース・リーは軽犯罪法違反か?

    2017年03月10日

    格闘技マニア、およびブルース・リーのファンの人たちに朗報です。

    どういうことかといえば……こちらの事件。

    「ヌンチャク所持、逆転無罪 岡山、練習目的に合理性」(2017年3月8日 共同通信)

    2015年、岡山県備前市で乗用車にヌンチャクを積んでいたとして軽犯罪法違反の罪に問われた男性整体師(48)の控訴審判決が広島高裁岡山支部でありました。

    裁判長は、「現代ではヌンチャクは武道や趣味として適法な目的で使用されるのが一般的だ」と指摘。
    「趣味として仕事の合間に練習するためという携帯の目的には相応の合理性があり、正当な理由がないとした一審判決は誤りだ」として、一審玉島簡裁の判決を破棄して無罪を言い渡したということです。
    まずは、軽犯罪法の条文から見てみましょう。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    2.正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
    ポイントは次の4点です。
    ① 正当な理由なく
    ② 刃物、 鉄棒その他人の生命を害し、身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具
    ③ 隠して携帯

    まず、①の「正当な理由」についてですが、業務で使うことがあげられます。料理人が仕事で使うために包丁を携帯するような場合ですね。

    また、警視庁のサイトには、店で刃物を購入して自宅に持ち帰ることなども正当な理由としています。

    しかし、護身用で持っていることは正当な理由にはあたらないとしています。
    そのため、以前から街で職務質問を受けた際、護身用に十徳ナイフ(アーミーナイフ)を持っていただけで警察署に連行され、取り調べを受けるということが起きています。

    なお、ハサミやカッターナイフなどの文房具でも、自宅や居室以外の場所で、正当な理由なしに、すぐに使える状態で持ち歩くと取り締まりの対象になるとしているので注意が必要です。

    ちなみに、過去の判例では、催涙スプレーが本号の「器具」に該当するかどうかで争われた事案で、催涙スプレーは、本号の「器具」に該当する、とした上で、「正当な理由」について次のように判示しています。

    「本号所定の器具を隠して携帯することが、職務上又は日常生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合をいい、これに該当するか否かは、当該器具の用途や形状・性能、隠匿携帯した者の職業や日常生活との関係、隠匿携帯の日時・場所、態様及び周囲の状況等の客観的要素と、隠匿携帯の動機、目的、認識等の主観的要素とを総合的に勘案して判断すべきものと解される」(最判平21・3・26 刑集63・3・265)

    さて、今回の判決に関わるのが②の「人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」とは何か、という問題です。

    刃物が典型的ですが、刃物以外では、該当すると考えられるのは木刀や特殊警棒、野球のバットやゴルフクラブなどでしょう。
    野球のバットやゴルフクラブは、過去にも不良グループ同士や暴力団の抗争、さらには殺人事件にも使われているものです。

    また、前述のように催涙スプレーが「器具」と認められた判決もありますし、スタンガンなども該当するでしょう。

    そこで、今回問題となったヌンチャクです。

    ヌンチャクの起源には諸説あり、はっきりしたことはわかっていないようですが、もともとは中国の福建語でいう双節棍(ヌンチャクン)が琉球に伝わり沖縄古武術の武器となり、またフィリピンの武術「カリ」でも使われるようになったようです。

    武器としてのヌンチャクが有名になったのは、カンフー映画の世界的スターであり武術家の故ブルース・リーが自らの主演映画である「ドラゴンシリーズ」で使ったのがきっかけでした。

    男の子なら、一度はあの有名な「アチョー」という奇声を上げながらヌンチャクを振り回す姿にあこがれ、マネをしたことがあるのではないでしょうか。

    なお、別の報道によれば、今回控訴していた男性も中高生の頃にブルース・リーの影響を受けて、これまで通販で購入したり自作したりして3組のヌンチャクを所有していたようです。

    科料9900円の一審判決を不服として控訴までしていたわけですから、ヌンチャクが人を傷つける器具ではないと法的に認められたことで、溜飲を下げたというところかもしれません。
    ちなみに、③の「隠して携帯」とは、必ずしも自分の身につけている必要はなく、すぐにこれを使用できるような状態で自己の支配下に置いていれば違反とみなされる可能性があります。
    これには、今回のように車のトランクに入れていることも含まれます。

    この判決が出たといって、ヌンチャクの携行自体が許されることになったわけではありません。

    ヌンチャクが「身体に重大な傷害を加えるような器具」と認定されることがあるかもしれません。

    また、喧嘩や決闘に行く際にヌンチャクを携行しているような場合には、正当理由は認められないことになると思いますので、お気をつけください。

    ところで、武田鉄矢さんの主演映画「刑事物語」で使われた、ハンガーヌンチャクは、人の身体に打撃を加えるものではありましたが、それ自体は、人の身体に重大な傷害を加える器具ではないので、違法とはならないでしょう。

    ですから、ヌンチャクはやりたいが、どうしても捕まりたくない、という人は、ハンガーを持ち歩く、という結論になるのかもしれません。

    「Don’t Think.Feel!」(燃えよドラゴン)
    (ハンガーと考えるな、ヌンチャクと感じろ!)

  • 公務員に嘘をつくと罪になる場合があります。

    2017年03月01日

    子供の頃、「うそつきは泥棒の始まり!」、「うそをつくと閻魔様に舌を抜かれるよ!」などと言われて親から叱られた経験がある人もいるでしょう。

    もちろん、泥棒は窃盗という犯罪ですが、じつは、うそつきも犯罪になる可能性があります。

    「“刃物で刺された”実はウソ 26歳男性“会社に行きたくなくて自分で刺した”虚偽申告疑い」(2017年2月25日 産経新聞)

    福岡県久留米市のパン製造販売会社から「同僚が会社近くで見知らぬ男にナイフで刺された」と110番があったのは、2017年2月25日午前6時50分頃。

    刺されたという男性社員(26)は、右肘にケガをして病院に運ばれたということで、強盗致傷事件として久留米署が捜査を開始しました。

    男性は当初、「駐車場で車から降りた直後にリュックを奪われそうになり、抵抗したら刃物で刺された」と署員に話していたようですが、ナイフを持っているなど不自然な点があり、追及したところ「会社に行きたくなくて自分で刺した」と嘘をついたことを認めたため、同署は軽犯罪法違反(虚偽申告)の疑いで事情を聴いているということです。

    男性は右肘に深い刺し傷があるものの、命に別条はないということです。
    では早速、条文を見てみましょう。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
    16 虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
    これは、「虚偽(虚構)申告の罪」とも呼ばれるもので、ポイントとなるのは次の2点です。

    ① 虚構の犯罪、災害の事実
    ② 公務員に申し出た者

    虚構とは、事実ではないことを、あたかも事実であるかのように作り上げることです。

    話を盛って、大げさにする程度では罪には問われませんが、たとえば今回の事件のように、「何者かに刺された」とか「強盗に襲われた」などと言って110番に電話をしたり、嘘の災害通報をすれば処罰される可能性があります。

    なお、無実の第三者を犯人にするために虚構の犯罪の申告をしたような場合は、虚偽告訴罪に問われる可能性があります。

    「刑法」
    第172条(虚偽告訴等)
    人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処する。
    ところで、報道内容からだけでは詳細はわかりませんが、嘘をついた男性は、おそらく「見知らぬ男にナイフで刺された」と会社に電話で連絡し、驚いた同僚が110番をしたのだと思われます。

    であるならば、本人は警察に110番をして公務員に申し出てはいない、という主張が成立するでしょうか?

    その疑問は、この法律の趣旨を考えるとわかります。

    軽犯罪法15号の趣旨は、犯罪や災害に対応する警察官や消防士など公務員の活動を阻害し、公共の利益を害するような行為を防止することにあります。

    そのため、たとえ本人が公務員に直接申告していなくても、事情を知らない第三者を介して公務員に申告するという意思があれば、この犯罪の構成要件に該当すると考えられます。

    なお、虚偽の申告で警察官や消防士の業務を妨害したと判断されれば、偽計業務妨害罪に問われる可能性もあります。

    「刑法」
    第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
    詳しい解説はこちら⇒「カンニングが犯罪!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/2351/
    嘘をついて人を欺いたり、だましたりしても犯罪になる可能性があることは、しっかり覚えておいてほしいと思います。

  • 立ち小便が犯罪になる場所とは?

    2017年02月10日

    今回は、男性はドキリとする内容かもしれません。

    男性なら1度はしたことがあるであろう、ある行為が犯罪になるという件について解説します。

    「ビル駐輪場で立ち小便の男性に逆転有罪判決 “駐輪場は公共スペース”と大阪高裁」(2017年2月7日 産経新聞)

    2015(平成27)年12月8日、大阪市福島区のビルの駐輪場で立ち小便をしたとして、軽犯罪法違反に問われた男性(36)の控訴審判決公判が大阪高裁で開かれました。

    大阪高裁は、「現場が公共スペースに当たらない」とした1審大阪簡裁の無罪判決を破棄し、「現場は街路に当たる」として科料9900円の逆転有罪を言い渡しました。

    現場である駐輪場は、15台ほどの自転車を止められるスペースがあるようで、検察側は「公園その他の公衆の集合する場所」に該当するとして男性を起訴していました。
    これ対して1審判決は、「公園などに比べると、極めて狭い」として違法性を認めなかったようです。

    今回の大阪高裁の判決では、「公衆の集合する場所ではない」として1審の判断を踏襲しつつも、駐輪場が道路に面していることなどから「街路」に当たり、軽犯罪法違反罪が成立するとしたということです。
    では、条文を見てみましょう。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    26 街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者

    ※拘留(1日以上30日未満で刑事施設に収容)、
    科料(1000円以上1万円未満を徴収)

    以前も、この26号について解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒「犯罪になるストレス発散法とは!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1309/

    この事件では、つばを吐きかける行為について解説しましたが、今回、問題になったのは立ち小便です。

    裁判の争点は、現場である駐輪場が条文にある「街路又は公園その他公衆の集合する場所」に該当するかどうかでした。

    地裁判決では、自転車15台分のスペースの駐輪場は「公衆の集合する場所」に該当しないと判断しましたが、高裁判決では、道路に面していることなどから「街路」に当たるとしています。

    では、街路とはどういうものをいうのでしょうか?

    法的な判断としては、文字通り「市街地の道路」ということになります。

    国道や県道、市町村道、また私道の区別はありません。
    道幅が広いか狭いかは関係ありません。
    その時、実際に人が通行していたかどうかも関係ありません。

    普段、多くの人が通行する、利用する市街地の道路を街路といいます。
    ということは、田舎道や山林道で立ち小便をしても、この罪には問われないということになります。

    報道からだけでは実際の状況はわかりませんが、大阪市福島区といえば松下電器産業(現パナソニック)の創業の地だそうで、戦前は中小企業が立ち並ぶ工業地帯で、戦後はオフィスビルが立ち並び、近年では多くの超高層マンションが建設されているそうですから、現場となった駐輪場が面している道路も相当数の通行があるのでしょう。
    そのため、軽犯罪法違反が成立したということだと思います。

    市街地の道路や公園、公衆の場での立小便は犯罪になる可能性があります。
    尿意は生理現象ですから抑えることは難しいものですが、時と場所をわきまえて小便をしなければいけません。

    なお、念のためですが、この法律では、男女を問いませんので、女性も気をつけましょう。

    なお、ママやパパの場合は、上記の場所で子供に大便や小便を「させる」と軽犯罪法に問われる可能性もあるので、十分注意してほしいと思います。

  • 川にチョウザメを放流。これは犯罪か?

    2017年02月06日

    1位:ホタテ、2位:カキ、3位:ブリ、4位:マダイ、5位:カンパチ、6位:クロマグロ、7位:ギンザケ……

    さて、これは何の順位でしょうか?

    寿司屋のネタの人気ランキングではありませんよ。

    正解は、農林水産省が公表している、2015(平成27)年の「日本における養殖の生産量」の順位です。

    日本人には、どれも馴染みのある魚介類ですが、これら以外にも最近では少し変わったものも養殖されているようで、たとえば世界三大珍味のひとつとされる「キャビア」を産むチョウザメの養殖も人気があるようです。

    キャビア、という文字を見ただけで、口の中でジュワッと唾液が出きた人もいると思いますが、この高級食材を求めてチョウザメの養殖を副業として始める企業や、「町おこし」の一環としてスタートさせる地方の公共団体も近年では増えているそうです。

    しかし、こうした養殖業に絡んだ問題も起きています。

    「チョウザメ 新利根川に死骸 河内・養殖会社“衰弱50匹放流”/茨城」(2017年1月24日 毎日新聞)

    茨城県河内町を流れる新利根川で、30匹ほどのチョウザメの死骸が浮いているのを住民が見つけ、調査の結果、養殖をしている建設会社が放流したものとわかったようです。

    報道によると、この建設会社は約500匹のチョウザメを育てていたところ、そのうちの約50匹が衰弱したため川に放流。
    同社の役員は、「調子が悪くなり、このまま死んでしまうのは可哀そうなので放した。生きてくれればいいと思った」と話したということです。

    県環境政策課は、「特定外来生物ではなく放流に罰則はない。企業モラルの問題だ。最後まで責任を持って面倒を見てほしい」と困惑しているということです。
    今回は口頭での厳重注意ということで済んだようですが、この会社の行為、じつは犯罪になる可能性があります。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    27 公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者
    これは、「汚廃物放棄の罪」とも呼ばれるもので、ポイントは①「公共の利益に反して」、②「ごみや鳥獣の死体、汚物、廃物」を、③「みだりに棄てる」という3点になります。

    公共の利益に反するとは、特定の個人ではなく、不特定多数の人が迷惑をする状況ということです。
    たとえば、多くの人が利用する公園や公共スペース、交通機関、河川などに動物の死骸や汚物、廃物などを棄てることは、公共の利益に反する行為ということになります。

    では、汚物・廃物とはどういうものかというと、これは「廃棄物処理法」で規定されているものと同様と考えていいでしょう。

    「廃棄物処理法」
    第2条(定義)
    1.この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。
    みだりにとは、正当な理由や資格もなく、むやみやたらに、という意味となります。

    つまり、なぜ今回の事件でこの会社が口頭での厳重注意で済んだのかといえば次のような理由から、ということになるでしょう。

    ・チョウザメの死骸を遺棄したのではなく、弱っていたが生きた個体を川に放流した
    ・チョウザメは特定外来生物ではないため放流しても罰則がない

    特定外来生物に関する解説はこちら⇒
    「空飛ぶガメラを飼って、芸人が書類送検?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1546/

    また、前述したように遺棄する罪には廃棄物処理法がありますが、軽犯罪法の汚廃物放棄の罪と何が違うのかといえば、程度の違いということになります。

    過去、廃棄物処理法違反に問われた事件としては、河川敷に数十頭の犬の死骸を遺棄したものや、引っ越しの際の廃品約300kgを遺棄したというものなどがあります。

    廃棄物処理法に関する解説はこちら⇒
    「ポストに○○を入れると犯罪に!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1699/

    仮に、飼っていたペットの死骸を公園に遺棄した、自分が使い古したアダルトビデオや雑誌を河原に捨てたということであれば軽犯罪法違反に問われる可能性がありますし、散歩中に出した犬のフンをそのまま放置したら各都道府県が定める条例で罰せられる可能性があります。

    ちなみに、チョウザメは卵がとれるようになるには10年以上もかかることから、途中で養殖をやめてしまう人も多いようです。

    川に放流といえば聞こえはいいですが、生き物を棄てているわけですから許されることではありません。
    責任を持って最後まで飼育するべきです。

    それは、仕事についても同じことが言えるのではないでしょうか。

    「まず計画は、よく行き届いた適切なものであることが第一。
    これが確認できたら断固として実行する。
    ちょっとした嫌気のために、実行の決意を投げ棄ててはならない」
    (シェイクスピア)

  • カラオケ動画をアップすると著作権法違反

    2017年01月24日

    ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。

    「方丈記」の冒頭にこう書いたのは、平安時代末期から鎌倉時代初期の歌人で随筆家の鴨長明(1155年‐1216年)でした。

    多様化する現代社会においても、経済環境や人々の生活、文化、娯楽などは絶えず変化し続けています。

    たとえば、カラオケ。

    1980年代半ば、カラオケボックスというものが現れると、それまでのスナックなどでお酒を飲みながらカラオケを歌うという楽しみ方以外に、ただ純粋にカラオケで歌うという楽しみが生まれました。

    そして今では、一人カラオケもあり、さらには自分がカラオケで歌う姿を動画で撮影し、それをYouTubeなどに投稿することを楽しみにしている人も増えているようです。

    しかし、注意が必要です。

    自分のカラオケ動画を動画共有サイトなどに投稿すると、カラオケ通信機器の会社から権利侵害で訴えられる可能性があります。
    【動画共有サイトに投稿したカラオケ動画に関する訴訟の概要】

    じつは、昨年末の2016年12月20日、業務用通信カラオケ業界大手の第一興商が、自分のカラオケ動画をYouTubeにアップロードしていた個人に対して差し止めを求めていた訴訟の判決が東京地裁で出ていたことがわかりました。

    判決文から概要をまとめます。

    「原告の主張」
    ・原告は、業務用通信カラオケ機器「DAM」シリーズを販売している。

    ・原告は、2016年8月に発売された女性ボーカルグループの楽曲のカラオケ用音源(本件DAM音源)を作成した。

    ・原告は、本件カラオケ音源につき、その音を最初に固定化したレコード製作者として送信可能化権(著作権法第96条の2)を有する。

    ・被告は、カラオケ店舗でDAMの端末を利用して、この楽曲のカラオケ歌唱を行い、その様子を動画撮影し、同年9月にインターネト上の動画共有サイト「YouTube」にアップロードした。

    ・この行為は、原告のカラオケ音源に関係する送信可能化権を侵害する行為に当たる。

    ・被告の動画はすでにYouTube上から削除されているが、今後、被告がほかの動画共有サービスを用いるなどして、この動画の電磁的記録(データ)を送信可能化する可能性がある。

    ・被告による原告の送信可能化権の侵害を防ぐためには、被告が管理する本件動画のデータを消去する必要があるため、本件動画の送信可能化の差し止めと記録媒体(ハードディスク等)からの動画データの消去を求める。
    「被告の主張」
    ・本件動画は自主的にYouTube上から削除した。

    ・そもそも本件動画は、主として被告自身の歌唱の様子を撮影したもので、原告の利益を明確に侵害したとはいい難い。

    ・原告が、差し止め請求等の訴訟を提起したのは適切ではなく、原告は被告に連絡をとって被告が自主的に削除する機会を与えるべきだった。
    「裁判所の判断」
    ・原告が主張する請求原因事実は、すべて認めることができる。

    ・よって原告は被告に対して、本件動画の送信可能化の差し止めと記録媒体からのデータ消去を求めることができる。

    ・現時点では、動画はYouTube上から削除されているが、被告が有する記録媒体から動画データが消去されたことはうかがわれないため、原告の請求の必要性を認める。

    以上から、東京地裁は、個人のカラオケ動画の動画共有サイトへの投稿は、原告の権利を侵害するものと認め、動画のアップロードの禁止と個人の記録媒体からの動画データの消去を命じています。
    なお、この訴訟では原告側は初めから損害賠償請求はしていません。
    【著作権とは?】

    さて、今回の事案に関係する法律は「著作権法」ですが、判決文の中にキーワードがありました。
    それは、「レコード製作者としての送信可能化権」というものです。

    著作権とは文字通り、著作物の創作者である著作者の利益を保護するための権利について定めた法律です。

    著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます。(第2条1項1号)

    具体的には、次のようなものがあげられます。(第10条1項)

    ・小説、脚本、論文など言語の著作物
    ・音楽の著作物
    ・舞踊などの著作物
    ・絵画、版画、彫刻など美術の著作物
    ・建築の著作物
    ・地図、図面、図表、模型など図形の著作物
    ・映画の著作物
    ・写真の著作物
    ・プログラムの著作物

    では、著作権にはどのような権利があるのかというと、以下のものなどがあげられます。

    ・複製権(第21条)
    ・上演権・演奏権(第22条)
    ・上映権(第22条の2)
    ・公衆送信権(第23条)
    ・口述権(第24条)
    ・展示権(第25条)
    ・翻訳・翻案権(第27条)

    著作者には、これらの権利を排他的に占有することが認められているわけです。

    なお、故意に著作権を侵害した場合、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれを併科する(第119条)、となっているので、これはかなり重い刑罰だといえます。
    【著作隣接権とは?】

    ところで、第1条の中に「著作者の権利に隣接する権利」とありますが、じつは、これが今回のキーワードである「レコード製作者としての送信可能化権」と関わってきます。
    なぜなら、著作権法では、著作者の著作権と同時に「著作隣接権」を認めているからです。

    ここでは、音楽を例に考えてみましょう。

    作曲者は音楽の著作物、作詞者は言語の著作物の創作者ですから、それぞれ著作者として著作権が認められます。

    しかし、曲を作ったからといっても、たとえそれがいい曲だったとしても、多くの人に届くわけではありません。
    多くの人に聴いてもらい支持してもらうためには、この曲を広く大衆に広める役割を担う人や事業者が必要です。

    こうした人や事業者に認められているのが著作隣接権で、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利です。(第89条)

    たとえば、歌手は実演家でレコード会社はレコード製作者、テレビ局やラジオ局が放送事業者となり、著作権はありませんが著作隣接権があるわけです。

    今回の訴訟の原告である第一興商などの通信カラオケの会社は、カラオケの音源を制作することからレコード製作者に該当します。

    レコード製作者の権利としては次のものがあげられます。

    ・複製権(第96条)
    ・送信可能化権(第96条の2)
    ・商業用レコードの二次使用権(第97条)
    ・譲渡権(第97条の2)
    ・貸与権(第97条の3)

    これらの権利が侵害された場合、著作隣接権者には著作権者と同じように、「差止請求権」や「損害賠償請求権」が認められています。

    なお、故意に著作隣接権を侵害すると著作権の場合と同様、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれを併科となります。(第119条)

    YouTubeはJASRACなどの著作権管理団体と包括的な契約を結び一定の著作権使用料を支払っています。
    そのため、たとえば個人の投稿者が好きな曲を演奏して動画などを投稿しても、その曲の著作権を著作権管理団体が管理している場合には問題になりません。

    しかし、著作権管理団体は著作隣接権については管理の範囲外のため、今回のような問題が起きるわけです。

    YouTubeに動画をアップする行為は、送信可能化する行為であり、カラオケには、音源を製作した者の著作隣接権があるため、個人が勝手にカラオケをアップすることは許されない、ということです。

    YouTubeを観ると、よく動画や音源が削除されていますが、これはレコード会社などから削除請求が来たということですね。

    もし、どうしても自分が歌う動画をアップしたいなら、自分で(もしくは友人に)演奏してもらうしかないでしょう。
    条文そのものを見てもらうとわかると思いますが、著作権や著作隣接権は複雑な法律です。

    しかし、今回の事例のようにカラオケ動画のアップロードを気軽に行ったり、他人の文章のコピペによる引用が法的に問題になる場合があるので注意が必要です。

    ちなみに、冒頭で「方丈記」の一文を掲載していますが、これは著作権法の第32条に認められている、正当な範囲内での引用ということになります。

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