行列に割り込むと犯罪!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
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行列に割り込むと犯罪!?

2017年05月28日

行列ができるほど人気のお店がテレビなどで紹介されることがあります。

確かに、それだけの価値があるお店でしょうから並んででも商品をゲットしたい、美味しいものを食べてみたいという人がいるのもわかります。

反対に、行列には絶対に並びたくない、という人もいるでしょう。
その気持ちも、よくわかります。

しかし、わからないのは行列に割り込んでくる人の気持ちです。
少しでも早く買いたい、食べたいという気持ちはわかりますが、どうしたら、みんなが並んでいる行列に割り込むことができるのか?
当然、並んでいる人はムカムカ、イライラすることでしょう。

今回は、そんな人に役に立つ法律を解説します。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

13 公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待っている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者。
軽犯罪法は、軽微な33の秩序違反行為について規定しているもので、その前身は1908(明治41)年に施行された「警察犯処罰令」という法律です。
そのため、条文の内容に時代を感じさせる部分があります。
たとえば、この13号であれば、汽車や乗合自動車、割当物資の配給などですね。
なつかしい昭和の、それも三丁目の夕日的な匂いがします。
それとも、戦後の混乱期の光景でしょうか。

それはさておき、この罪の条文は前半と後半で分けて考えたほうがいでしょう。
ポイントとなるのは次の4点です。

① 公共の場所や乗り物
② 多数の人に対して
③ 著しく粗野もしくは乱暴な言動で迷惑をかける
④ 威勢を示して公衆の列に割り込む

公共の場所や乗り物で、多数の人に対して、著しく粗野もしくは乱暴な言動で迷惑をかける、というのは以前に解説した5号の「粗野・乱暴の罪」と重なる部分があります。

詳しい解説はこちら⇒「暴言を吐くだけで犯罪!?」
https://taniharamakoto.com/archives/2458/

「公共」というのは、国や地方自治体などが所有、管理している場所や施設ということではなく、不特定で、かつ多数の人が自由に出入り、利用できる性質のものをいいます。

「著しく粗野もしくは乱暴な言動」とは、たとえば相手にからんだり、大声を出して周囲の人に迷惑をかけたり、相手を傷つける意思なく物を投げたりというものです。

多数の人に迷惑をかける、ということですので、その時の状況によって判断されるものですが、2、3人では一般的には多数とは言えないでしょう。

次に、とても迷惑な「威勢を示して公衆の列に割り込む」行為についてですが、ここでも公衆の列ですから、2、3人の列では足りず、多数の人が並んでいる列と解釈できます。

また、「威勢」とは辞書によると、人を威圧するような勢い、言語や動作に活気や勢いがあること、とあります。

ということは、無言でススーっと割り込んだり、「すみません…」、「恐縮です…」などと言いながら割り込むような、ちゃっかり行為の場合はこの罪は適用されないということになります。

国によっては行列など関係ない、というところもあるでしょうが、きちんと行列で順番を待つのは日本人の美徳でもあると思います。くれぐれも割り込みはやめましょう。