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  • 松尾芭蕉が軽犯罪法違反!?

    2016年09月14日

    「漂泊の歌人」と呼ばれる人がいます。

    たとえば、古くは和歌の西行、俳句の松尾芭蕉、連歌の宗祇。
    近代では、俳人の種田山頭火なども全国を放浪しながら俳句を詠んだといわれています。

    文化史のヒーローです。

    しかし現代なら、こうした漂泊の歌人たちは犯罪者になってしまうかもしれません。

    なぜなら、「軽犯罪法」には「浮浪の罪」というものがあるからです。

    「軽犯罪法」
    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    四 生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの
    軽犯罪法では、33個の軽微な秩序違反行為について規定しています。
    その4番目に挙げられているのが、この浮浪の罪です。

    条文にあるように、この罪の成立要件は次の4つです。

    ・生計を立てるための収入がない
    ・働く能力はある
    ・職業に就く意志がない
    ・一定の住居を持たない。

    この4つの要件がすべてそろったうえで、一定の目的もなくあちこちをうろついた場合に、この罪は成立します。

    この犯罪は、法律で働くことを強制しているわけではありません。

    こうした「うろつき行為」は犯罪につながる危険があるために、まずは軽犯罪法で禁止しているわけですね。

    ちなみに、働く能力があるのに就職する意志がないニートと呼ばれる人たちの場合、住む家があり、親から生活費をもらっているならば当然、浮浪の罪には該当しません。

    経営していた会社が倒産して夜逃げした、あるいは自己破産して住む家もなくなって浮浪者のような生活をしているような人は、働く能力があるならば、この罪が該当する可能性があります。

    生きるのがつらいとき、すべてを捨てて放浪の旅に出かけたい、などと思う人もいるかもしれませんが、浮浪者になると逮捕される可能性もあります。

    やはり、額に汗をかいて働くことが大切ですね。

    歴史の勉強が足りず、松尾芭蕉の場合、どうかわかりませんが、もし、現代によみがえり、上記の要件に該当するならば、軽犯罪法違反、という可能性もあります。

    合掌。。

  • 管理者のいない廃墟に立ち入ると犯罪!?

    2016年09月07日

    今回は、読者の質問にお答えします。
    「軽犯罪法」についてです。

    Q)我が家のすぐ近所に空き家があります。所有者が誰なのかわかりません。この数年、よく若者が中に入っているのですが、どうやら肝試しのようなことをしているようです。近隣に住む者としては、治安の問題もあるので心配です。法的に取り締まれないのでしょうか?

    A)このケースでは、「軽犯罪法」が適用される可能性があります。場合によっては、「刑法」の住居侵入罪が適用される可能性もあるでしょう。
    近年では、廃墟マニアと呼ばれる人が全国の廃墟に出かけたり、中には心霊スポットとして肝試しに使われる例もあるようですが、こうした廃墟や空き家などに無断で侵入すると犯罪になる可能性があります。

    「軽犯罪法」は、人がちょっとしたはずみで犯してしまうような軽微な秩序違反行為に対して定めている法律です。

    戦後の1948(昭和23)年に制定されたもので、悪質な重大犯罪を未然に防ぐ目的もあり、全部で33の違反行為が罪として定められています。

    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
    一 人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者
    拘留とは、受刑者を1日以上30日未満で刑事施設に収容する刑罰で、科料とは、1000円以上、1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰です。

    次に、住居侵入罪を考えてみます。

    「刑法」
    第130条(住居侵入等)
    正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
    看守とは、法的には直接その建物に存在して管理する場合は当然ですが、カギをかけてそのカギを保管している場合も当てはまります。(最決昭31・2・28裁集刑117・1357)

    邸宅とは豪邸のような家のことではなく、住居として使用されていない空き家や、閉鎖された別荘、廃家などをいいます。

    建物とは、住宅や邸宅以外の建造物で、たとえば官公庁や学校、事務所、倉庫などが当てはまります。

    つまり、今回のケースでは、人が住んでいなくても管理されている住宅であれば、侵入者は住居侵入罪に問われる可能性がありますが、管理されていない、カギもないような状態で放置されているようなものであれば軽犯罪法が適用される可能性があるということになります。

    たとえば、2016年3月、宮城県山元町にある旧小学校舎に無断侵入してサバイバルゲームをしたとして18~23歳の男性9人が軽犯罪法違反の疑いで任意捜査をされているという報道がありましたが、この事件では、現在は使われていない小学校舎=建物に正当な理由なく侵入したために軽犯罪法での捜査になったということでしょう。

    特に、子供は、誰も管理していない建物に入って遊ぶ、ということが好きなようです。

    お子さんが犯罪に巻き込まれないよう、よく注意しておくことをおすすめします。

  • 18歳未満の児童に対するみだらな行為

    2016年08月31日

    古代ギリシャの哲学者・ソクラテスの言葉に、「無知の知」というものがあります。

    賢い者ほど自分が無知であることを知っている、という意味だといわれています。

    しかし、「知らなかった…」では済まないのが法律の世界です。

    知っていても、知らなくても、法に違反すれば犯罪者になってしまう可能性があります。

    「女子高生にわいせつ“性行為以外は犯罪だと思わなかった”44歳男逮捕 堺」(2016年8月29日 産経新聞)

    京都府警下京署は、18歳未満の女子高校生とみだらな行為をしたとして、堺市に住む会社員の男(44)を、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春)の疑いで逮捕しました。

    事件が起きたのは、2016年5月30日午後4時40分頃。

    容疑者の男は、京都府内のホームセンターの駐車場に停めた車の中で、ツイッターを通じて知り合った京都市内の高校1年の女子生徒(15)に現金1万5千円を渡し、みだらな行為をしたということです。

    京都府警少年課の捜査員が、身分を隠して女子生徒と待ち合わせて指導する「サイバー補導」で、女子生徒を補導して事件が発覚。

    男は、「性行為以外は犯罪だと思わなかった」と容疑を否認しているということです。
    「児童買春・児童ポルノ禁止法」は、正式名称を「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」といいます。

    2014年の法改正により施行されたもので、子供を守るために以前よりも児童ポルノの定義が厳密化されていますが、自分の性的好奇心を満たすための単純所持や、実在しない児童のポルノの問題などの検討課題もあります。

    では、条文を見てみましょう。

    第2条(定義)
    1.この法律において「児童」とは、18歳に満たない者をいう。

    2.この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
    一 児童

    この部分をまとめると次のようになります。

    ◆児童とは18歳未満の子供
    ◆児童買春の対象となるのは、
    ①性交、
    ②性交類似行為、
    ③児童の性器を触る行為、
    ④児童に自分の性器を触らせる行為
    ◆児童買春をした者は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する(第4条)

    18歳未満の児童と性交した場合に犯罪になることを知っている人は多いと思います。

    しかし、それだけではありません。

    今回の事件の容疑者がどのような行為をしたのか、報道からはわかりませんが、児童に対して性交以外のみだらな行為をしても犯罪になるということは、この機会にしっかり憶えてほしいと思います。

    裁判所で、「そんな法律は知らなかった」という抗弁は通用しません。

    法律に関しては、「無知の知」ではなく、「無知の罪」となることを憶えておきましょう。

  • 「ポケモンGO」のチートツールによる法律違反にご用心

    2016年08月23日

    話題のスマホ向けARゲーム「ポケモンGO」で、また新たな法律違反が指摘されているようです。

    今回は、「ずるい行為」だそうです。

    「ポケモンGOでも登場「ずる」する道具、使うと罪?」(2016年8月18日 朝日新聞デジタル)

    今年、人気のオンラインゲーム「パズル&ドラゴン」(パズドラ)で検挙という事件が相次ぎました。
    問題になったのは、「チートツール」(CT)です。

    神奈川県警は今年の6月15日、チートツールを作成し、無償で配布したとして広島市の大学3年生(21)を著作権法違反の疑いで逮捕。
    また、チートツールを乱用してゲームメーカーの業務を妨害したとして、男4人を偽計業務妨害の疑いで書類送検した、とのことです。

    チートツールとは、ゲーム攻略のために「ずるをする道具」のことで、早速、「ポケモンGO」でも登場しているようです。

    「ポケモンGO」は、スマホのGPS機能による現在地情報を使ってポケモンを捕まえるゲームですが、チートツールでGPSのデータを改変することで家にいながら世界中のポケモンを捕まえられるようにするために、ゲームメーカーが提供しているポケモンを捕まえやすくする有料アイテムを購入する必要がなくなってしまうということです。

    こうした事態を受け、神奈川県警は、「1回のチート行為でも罪に問われる可能性がある。絶対に手を出さないで」と呼び掛けているということです。

    「パズドラ」は、パズルで対戦しながら自分のモンスターを育てる無料のゲームで、120円前後のアイテムを購入すれば、より早く、強くなれるそうです。
    ところが、容疑者が作成したチートツールを使うことで一気に無敵状態にすることができるため、40万回以上もダウンロードされていたようです。

    報道によれば、チートツールを使われることで、課金の機会が失われ、またランキングで競っているゲームプレーヤーの間で不公平感が生まれることで、ユーザーのゲーム離れを起こしかねないため、ゲームメーカーは深刻な被害を受けているとしています。

    ゲームメーカーとしては、これまで何度も対策を講じてきたようですが、その度にさらに改良して、技術を誇示するチートツール制作者がいるために、いたちごっこ状態が続いているということです。
    また、警察はサイバーパトロールを行っていますが、チートツールはゲーム上の問題のため、発覚しにくいという特徴があるようです。

    そのため、神奈川県警は取り締まりについて慎重に検討をした結果、メーカーの防御プログラムをかいくぐるプログラムを開発、配布したとしてチートツール作成者を著作権法違反容疑で逮捕。
    乱用に歯止めがかかっていないことから、使用者を偽計業務妨害罪書類送検したとうことです。

    報道では、「偽計業務妨害罪」となっておりますが、むしろ、「電子計算機損壊等業務妨害罪」の方ではないか、という気がします。

    では、この問題を法的に見てみましょう。

    「刑法」
    第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
    偽計業務妨害罪とは、真実ではないウソやデマを不特定多数の人に広めたり、偽計=だますことで人の信用を損なったり、人の業務を妨害する罪です。

    234条の2(電子計算機損壊等業務妨害罪)
    人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

    容疑者らは、正規のアイテムではない偽のチートツールを用いて、ゲームを誤作動させ、ゲーム制作会社の業務を妨害したということになるのだと思います。

    次に、著作権法について見てみます。

    第120条の2
    次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
    一  技術的保護手段の回避を行うことをその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことをその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあつては、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段の回避により可能とする用途に供するために行うものに限る。)をした者

    今回の報道では、著作権法のどの違反か、については書かれていませんが、おそらくは、この規定が適用されたのではないか、と思います。

    少し難しいので、説明は割愛しますが、チートツールを作る行為は、著作権法違反になる可能性がある、ということです。

    そして、憶えておかなければならないことは、チートツールを「使うだけの人」にも、犯罪が成立する可能性があることは、しっかりと認識しておかなければなりません。

    ポケモンGOが流行しており、チートツールがあると、飛びついてしまう未成年者も多いのではないでしょうか。

    子供を持つ親は、しっかりとお子さんに教え込んでおきましょう。

  • 事後強盗って、どんな罪?

    2016年08月18日

    インターネットで「事後」と検索してみると、「事後報告」、「事後承諾」、「事後処理」などに並んで、「事後強盗」というキーワードが出てきます。

    じつは、事後強盗とは犯罪の名称です。
    一体、どのような罪なのでしょうか?

    「事後強盗容疑で保育士逮捕 倉敷署 万引、保安員振り切る」(2016年8月17日 山陽新聞)

    倉敷市内のスーパーで万引し、制止しようとした保安員の腕を引っかくなどして逃走した保育園のパート保育士の女(42)が逮捕されました。
    逮捕容疑は、事後強盗です。

    事件が起きたのは、8月16日午後3時15分頃

    容疑者の女はスーパーで、煮豚や煮卵など食料品17点、計3193円相当を万引。
    呼び止めた同店の保安員女性(36)の腕を引っかいたうえ、駐車場に止めていた乗用車を急発進。
    ドアにつかまっていた保安員を振り切って逃げたようです。

    倉敷署によると、保安員が車の色やナンバーを覚えており、犯行を特定。女は「間違いない」と容疑を認めているということです。

    普通、「強盗」というと、包丁とかを持って銀行に行き「カネを出せ!」などと迫る行為をイメージします。
    しかし、この報道では、単なる万引き犯のように思えます。

    なぜ、「強盗」と名の付く犯罪が成立してしまったのでしょうか。

    条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第238条(事後強盗)
    窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

    たとえば、映画やドラマにも次のようなシーンがあります。

    侵入した家の人に見つかってしまった空き巣の犯人。
    その時、盗んだものを取り返されるのを防ぐため、逮捕されるのを免れるため、あるいは証拠を隠滅するために、犯人が相手に暴行や脅迫を加えている。

    こうした場合に、窃盗犯が相手を殺傷してしまい、重大な犯罪に発展するケースがしばしばあります。
    そのために、処罰としては強盗罪と同様に扱うこととしたのが事後強盗罪ということになります。

    つまり、「事後強盗」という犯罪は、「窃盗犯」だけが犯すことができる犯罪だ、ということです。

    ちなみに、事後強盗は、昏睡強盗(第239条)とともに「準強盗」とも呼ばれることがあります。

    刑罰としては、窃盗罪(第235条)は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですが、事後強盗罪の場合は強盗罪(第236条)と同じく、5年以上の有期懲役となります。

    重いですね。学生時代、初めてこの犯罪を知った時にはビックリしたことを思い出しました。

  • 盗撮は犯罪で、かつ、損害賠償の対象にも。

    2016年08月07日

    パパラッチと呼ばれる人たちがいます。

    芸能人や有名人などのセレブリティと呼ばれる人をつけ回し、プライベート写真を撮影することを仕事にしているカメラマンたちのことです。

    今回は、パパラッチ行為と犯罪、そして損害賠償の関係について法的に解説します。

    「中森明菜さん隠し撮り、小学館などに賠償命じる」(2016年7月27日 読売新聞)

    歌手の中森明菜さんが自宅療養中の姿を隠し撮りした写真を週刊誌に掲載したのはプライバシーの侵害だとして、発行元の小学館と撮影したフリーカメラマンの男性に対して計2200万円の損害賠償を求めて訴訟を起こしていました。

    東京地裁は27日、「編集長は違法性を認識したうえで掲載し、会社も容認した。中森さんの精神的被害は甚大で、歌手としてのイメージも害した」として、同社とカメラマンに計550万円の支払いを命じる判決を言い渡しています。

    写真が撮影されたのは、2013年11月2日夜。

    中森さんは、2010年10月に芸能活動を休止し、東京都内のマンションで療養していたところ、週刊誌『女性セブン』から依頼されたカメラマンがマンション近くのアパート3階の廊下から室内にいた中森さんを撮影。

    そのうちの1枚が、この年の11月21日号に掲載されたようです。

    なお、カメラマンは2014年4月、「隠し撮りの態様は悪質だ」として軽犯罪法違反で東京簡裁から略式命令を受けているということです。
    まずは、刑事事件から見ていきます。

    スマートフォンの普及などにより、近年、隠し撮り(盗撮)に関する犯罪が頻発しています。

    警察庁が公表している統計データによると、盗撮の検挙件数は2012(平成24)年には約2400件だったものが、2014(平成26)年には3000件を大きく超えています。

    ところが、盗撮については「刑法」に規定がなく、その他にも直接的に取り締まる法律がありません。
    そのため、次の3つの法律、条例のいずれかを適用しているのが現状です。

    ①「軽犯罪法」
    さまざまな軽微な秩序違反行為に対して拘留(1日以上30日未満で刑事施設に収容)、科料(1000円以上1万円未満)に処する法律です。

    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    23.正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
    ②「各都道府県の迷惑行為防止条例」

    現在、47都道府県それぞれで「迷惑行為防止条例」が定められています。

    この中で「卑猥な行為」や「粗暴な行為」として盗撮を禁止しています。

    たとえば、東京都の場合は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」があります。

    第5条(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
    1.何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
    (2)公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗り物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機、その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、もしくは設置すること。
    この規定に違反して撮影した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。

    しかし、全国のおよそ3分の1の都道府県では、未だ盗撮を禁止する場所が、原則は道路や公園、電車など、不特定多数の人が出入りする場所に限られているのが現状です。

    そのため、公共の場所にあってもトイレや更衣室は含まれないという、ある種の矛盾が生じており、これらの自治体では軽犯罪法を適用するしかない、もしくは盗撮犯が不起訴になる場合もあるという問題を抱えています。

    ただ、迷惑防止条例は、公共の場所での迷惑行為を防止することを目的とするものなので、迷惑防止条例の改正では対処は難しいところです。

    やはり法律で規制すべきでしょう。

    ③「住居侵入罪」
    部外者が、盗撮目的で撮影機器設置のために、さく等に囲まれた建造物の敷地に侵入する行為は「住居侵入罪」に該当する可能性があります。

    「刑法」
    第130条(住居侵入等)
    正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
    次に、民事事件について考えてみます。

    今回のケースのように、盗撮の被害者は、民事訴訟で加害者に対して損害賠償を請求することができます。

    「民法」
    第709条(不法行為による損害賠償)
    故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
    被害者は、盗撮という不法行為によってプライバシーを侵害され、精神的苦痛を受けた損害に対する賠償を請求することができるということです。
    ところで、今回のケースは、プロカメラマンの盗撮行為でした。

    では、一般のスマホユーザーが盗撮をして、その画像をツイッターやフェイスブックなどに投稿した場合はどうでしょうか?

    この場合もプライバシーが公になり、コピー等されて伝播されてゆくことになります。

    被害者の精神的損害は大きいと言えるでしょう。

    したがって、この場合でも、法律により処罰され、損害賠償請求を受ける可能性があります。

    法律の前では、プロも素人も関係ないということは覚えておいてほしいと思います。

  • オオカミ少年が逮捕!

    2016年07月24日

    「オオカミ少年」というイソップ童話を子供の頃に読んだことがある人は多いでしょう。

    ある村に住む羊飼いの少年が、退屈しのぎに「オオカミが出たぞ!」とウソをついて騒ぎを起こします。

    信じた大人たちは武器を持ってオオカミ退治をしようとしますが、徒労に終わります。

    その後、味をしめた少年は何度もウソをつき、その度に大人たちは騙されますが、ついには少年を信じなくなります。

    ところが、ある日、本当にオオカミが現れますが、大人たちは少年を信じません。

    そのために、村中のヒツジがすべて食べられてしまった……というお話です。

    別バージョンとして、最後に少年がオオカミに食べられてしまうというストーリーもあります。

    ウソばかりついていると、いざ本当のことを言っても誰も信じてくれない。
    普段からウソをつかず、正直に生きていれば人からの信頼を得て、必要な時には助けを得られるものだ、という教訓が込められた寓話として知られています。

    先日、このオオカミ少年のような事件が起きました。

    「“ライオン逃げた”熊本地震直後にうそツイート 男を逮捕」(2016年7月20日 NHK NEWS WEB)

    今年の4月14日、熊本県で最大震度7を記録した地震が発生した夜に、「地震のせいで動物園のライオンが逃げた」などとウソの内容をツイッターに投稿した神奈川県在住の会社員の男(20)が偽計業務妨害の疑いで逮捕されました。

    男は、文章とともに道路上にライオンがうろつく画像も投稿。
    「悪ふざけでやった」と容疑を認めているということです。

    投稿後、このツイートを信じた人などから熊本市動植物園に100件以上の電話の問い合わせがあり、職員が対応に追われたり、飼育員が獣舎などの点検をスムーズに行えなかったほか、警察にも「ライオンが逃げているので避難できない」という相談が相次いだということです。

    警察によると、災害時にデマを流したことによる業務妨害容疑で逮捕されるケースは全国で初めてだということです。

    「刑法」
    第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    嘘のツイートをすることにより、それを信じた職員の業務を妨害したり、警察の業務を妨害した、ということですね。

    オオカミ少年は、信用を失うことにより、自分やヒツジが食べられてしまったわけですが、今回は、信用されたことにより、自分が逮捕されてしまったわけです。
    面白半分でいい加減なことをツイートすると、犯罪になってしまう恐れがあるということですね。

    今回の教訓を、「ライオン青年」という寓話として、後生に語り継ぎたいところです。

    合唱。。。

  • カンニングが犯罪!?

    2016年07月21日

    試験中にカンニングをして、9人が書類送検されたという報道がありました。

    カンニングが犯罪になるとは、一体どういうことでしょうか?

    「“資格ほしかった”運送会社の社員9人で集団カンニング…兵庫県警、容疑で書類送検」(2016年7月20日 産経新聞)

    兵庫県警捜査1課などは7月20日、ドライバーの勤務状況や安全管理などを指導・監督する「運行管理者」の資格試験で集団カンニングをしたとして、同県姫路市の運送会社社員の男9人を偽計業務妨害容疑で書類送検しました。

    事件が起きたのは、2016年3月6日、神戸市東灘区。

    公益財団法人「運行管理者試験センター」(東京)が主催する資格試験で、終了時刻前に会場を出た男(27)が他の8人に携帯電話を使って解答案をメール送信。
    8人のうち1人が不審な様子で、電源が入った状態の携帯電話を所持していたことから、試験官が声をかけたところ不正が発覚したようです。

    その後の調査で、9人の解答がほぼ一致していたことがわかったことから、同センターが県警に被害届を提出。
    9人は、いずれも容疑を認め、「転職に有利な資格がほしかった」などと供述しているということです。

    ちなみに、試験はマークシート方式で、9人が受験した昨年度の試験の合格率は27・4%だったということです。
    カンニングがいけないことだということは当然、みなさん知っていると思いますが、まさか犯罪になるとは思ってもみなかった、という人も多いでしょう。

    では、カンニングの何が法律違反に当たるのか、まずは「刑法」の条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
    「虚偽の風説の流布」とは、真実とは異なった内容の虚偽・ウソを不特定多数の人に知れ渡るよう広めることです。
    法律上、噂として広めることでも犯罪が成立しますが、その噂やウソが本当のことだった場合は罪には問われません。

    次に「偽計」ですが、これは人を欺く、だますことです。

    つまり、今回の事件では、容疑者ら9人が集団カンニングしたことが、試験の合否を審査する職員を欺き、業務を妨害したことになり、かつ事実調査や被害届を提出させたことで「運行管理者試験センター」の業務を妨害した、と判断されたということでしょう。

    詳しい解説はこちら⇒「ウソの注文をすると犯罪になります。」
    https://taniharamakoto.com/archives/1957

    学校の試験でカンニングしただけでは書類送検にはならないでしょうが、入試などでは犯罪になる可能性があります。

    2011年には、京都大学の二次試験の実施中に、受験者(19)が試験問題の一部をインターネット上の掲示板に投稿して、第三者が回答していたことが発覚し、受験者が偽計業務妨害非行事実で京都家裁へ送致されるという事件が起きています。

    資格試験は、一定の知識を有していないと、適正に業務を行うことができない、とされているものです。

    私のような弁護士もそうです。

    カンニングで司法試験に合格して、弁護活動をしたら、どうでしょうか。

    人の一生を左右するような裁判を受任して、法律を十分知らずに法廷活動をしたら?

    恐ろしいですね。

    試験は正々堂々勝負して欲しいものです。

    盗み見るのが許されるのは、学生時代、ほのかに想いを寄せる好きな子の横顔くらいのものです。

  • 他人の毛を無断で抜くと傷害罪?切ると暴行罪?

    2016年06月21日

    人を傷つける罪として、刑法には「傷害罪」と「暴行罪」があります。

    今回は、この2つの罪の違いについて、「抜く」と「切る」をテーマに解説します。

    一体、何を抜くのでしょうか? 何を切るのでしょうか?

    「電車で女性の髪切った疑い 高2男子逮捕、神奈川」(2016年6月20日 産経新聞)

    神奈川県警緑署は、電車内で女性(25)の髪をはさみで切ったとして、横浜市旭区の高校2年の男子生徒(17)を暴行の疑いで現行犯逮捕しました。

    事件が起きたのは、6月20日午前7時40分頃。
    JR横浜線の中山-鴨居間を走行中の電車内で、男子生徒が立っていた女性会社員の髪を背後からはさみで切ったところ、これに気づいた女性が鴨居駅で降りた男子生徒を取り押さえ、駅員に引き渡したようです。

    男子生徒は、「性的欲求を満たすためにやった」と容疑を認めているということです。

    性的欲求は人それぞれですね。

    それは、ともかく
    では、条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第204条(傷害)
    人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
    傷害罪とは、「人の身体を傷害する」ことで成立する罪です。

    通常、傷害というと肉体を傷つけることと思う人が多いでしょう。
    ところが、刑法では「身体」とは肉体と精神的機能の両方をいいます。
    そして、「傷害」とは、人の生理機能に障害を与えること、または人の健康状態を不良に変更することとされます。

    過去の判例には次のようなものがあります。

    ・皮膚の表皮離脱(大判大11・12・16集1-799)
    ・中毒症状・めまい・嘔吐させた(大判昭8・6・5集12-736)
    ・病毒の感染(最判昭27・6・6集6-6-795)
    ・陰毛の毛根からの脱取(大阪高判昭29・5・31高集7-5-752)
    ・失神させた(大判昭8・9・6集12-1593)
    ・処女膜の裂傷(大判大3・7・4録20-1403)
    ・無言電話等により人を極度に恐怖させて精神衰弱症に陥らせた(東京地判昭54・8・10判時943-122)
    ・自宅から隣家に居住する被害者に向けてラジオの音声や目覚まし時計のアラーム音を鳴らし続けて精神的ストレスを生じさせ、慢性頭痛症、睡眠障害等を負わせた(最決平17・3・29集59-2-54)

    一方、カミソリで髪を根元から切り取った場合は、傷害罪よりも軽い暴行罪と認められた判例もあります(大判明45・6・20録18-896)。

    「刑法」
    第208条(暴行)
    暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
    毛を抜けば生理機能に障害を生じるが、切っただけでは生理機能に障害が発生することにはならないと判断されるということです。

    ということは、他人の髪の毛でも眉毛でも鼻毛でも、すね毛でも胸毛でも、故意に抜いたら傷害罪、切ったら暴行罪になる可能性があるわけですね。
    ちなみに、爪も同様です。

    ただし、髪を切った事例で傷害罪にあたるとした判例もあり(東京池判昭和38・3・23)、髪を切った場合に傷害罪なのか、暴行罪なのか、はっきりしません。

    法律って、わかりにくいですね~。

  • 放火をしたのに器物損壊罪で逮捕された真相は!?

    2016年06月15日

    火をつけたのに放火罪にならなかった、という事件が起きたようなので解説します。

    では、何の罪に問われたのでしょうか?

    「“間違いありません”アパートのゴミ箱を燃やした住民の無職女を器物損壊容疑で逮捕 奈良・香芝市」(2016年6月14日 産経新聞)

    奈良県警香芝署は6月13日、自分が住むアパートのごみ箱に火をつけて焼損させたとして、同県香芝市の無職の女(41)を器物損壊容疑で逮捕しました。

    女は、「間違いありません」と容疑を認めているということです。

    事件が起きたのは、6月10日午前6時頃。
    女は自分が居住するアパートの敷地内に置かれた金属製のごみ箱(高さ115センチ、幅122センチ、奥行き63センチ)内のごみに火をつけ、ごみ箱の一部を焼損させたようです。

    同署によると、防犯カメラから容疑者が浮上。
    5月26日と6月3日にも同じごみ箱が燃える不審火があったことから、同署で関連を調べているということです。
    さて、この事件について1つの疑問が湧きます。
    容疑者の女は火をつけているのに、なぜ放火罪ではなく器物損壊罪なのでしょうか?

    まずは、放火罪から見ていきましょう。

    放火罪については以前にも解説しています。
    「放火は殺人より罪が重い!という都市伝説の真相は!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1624

    刑法では「放火及び失火の罪」として、第108条から第118条に規定されています。
    以下に簡単にまとめます。

    ・第108条(現住建造物等放火罪)…実際に人が住居として使用しているか、人が中にいる建造物等に放火して焼損させる罪。

    ・第109条(非現住建造物等放火罪)…実際に人が住居として使用していないか、人が中にいない建造物等に放火して焼損させる罪。

    ・第110条(建造物等以外放火罪)…前2条に規定するもの以外の物に放火して焼損させる罪。

    ・第111条(延焼罪)…他人所有の現住建造物や非現住建造物などに延焼させた場合に加重される法定刑。

    ・第112条(未遂罪)
    ・第114条(消化妨害罪)
    ・第116条(失火罪)
    ・第117条(激発物破裂罪)
    ・第118条(ガス漏出等罪)

    今回の事件で抵触する可能性があるのは第110条です。

    「刑法」
    第110条(建造物等以外放火)
    1.放火して、前2条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
    2.前項の物が自己の所有に係るときは、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
    この罪には、「よって公共の危険を生じさせた」ことが必要となっています。
    放火するだけでは足りず、具体的な公共の危険が発生することを必要とすることから、「具体的危険犯」といわれます。

    「公共の危険」とは、不特定・多数人の生命・身体・財産に脅威を及ぼす状態であるとされています(最高裁平成15年4月14日判決)。

    たとえば、駐車場内で放火した場合、近くの自動車やごみ集積場などの可燃物に延焼してハリウッド映画のような危険が及ぶ場合には、放火罪が成立します。

    報道によると、今回の事件は、

    「居住するアパートの敷地内に置かれた金属製のごみ箱内のごみに火をつけ、ごみ箱の一部を焼損させた」

    ということなので、近くの住居や樹木等に延焼する危険があるとはいえなかった、ということで「公共の危険を生じさせた」とまでは言えないと判断され、放火罪の適用が見送られたのではないでしょうか。

    そして、炎でゴミ箱の一部を毀損した、ということで、器物損壊容疑での逮捕になったのだと思います。

    第261条(器物損壊等)
    前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
    ちなみに、放火罪は前述の第108条では最高刑が死刑で、現行法上では「殺人罪」(第199条)と同じ法定刑である重罪ですから、絶対にやってはいけません。

    火をつけるべきは、自分のハート、やる気のスイッチですね。