メルマガ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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  • 自ら風を起こそう。

    2025年07月07日

    大関マサキは、今日も浜辺で海を見ていた。

    年の頃は六十を過ぎていただろう。

    マサキは、二十代の頃から起業を夢見ていた。

    本を読み、計画を練り、時間があると、ずっと起業のことを考えてきた。

    しかし、資金、人、世の中の流れが、まだ十分ではない。

    そのうち、友人たちは次々と何かを始めていった。失敗する者もいれば、成功して町を出て行った者もいた。

    だがマサキは動かなかった。風が吹いたら、潮が変わったら、自分も航海に出よう——そう信じて。

    ある日、ひとりの少女マユミがマサキに声をかけた。

    「おじさん、毎日なにしてるの?」

    マサキは少し笑って、答えた。

    「風を待ってるんだ。」

    「どんな風?」

    「…夢に向かう風さ。」

    少女は少し考えて言った。

    「私、風を起こす方法を知ってるよ。風は、自分で走れば起きるよ。」

    そう言って、少女は走り出した。少女の髪が風にたなびいていた。

    マサキは、雷に打たれたような衝撃を受けた。

    自分は何も行動を起こさずに、周りがお膳立てをしてくれるのをずっと待っていただけだった。

    責任を風に押し付けて、自分で責任を取ろうとしなかったのだ。

    その夜、マサキは久しぶりに眠れなかった。

    翌朝、浜辺にマサキの姿はなかった。

    数週間後、就職・転職サイトの募集欄に記事が掲載されていた。

    「共に風を起こそうとする人を募集します!」

    マサキが会社を立ち上げたのだ。

    行動を起こさなければならないとわかっているのに、いつまでも言い訳をして、行動を起こさない人がいます。

    しかも、そのような人は、あくまで私の感覚ですが、かなり割合が多いように感じます。

    理由は色々とあるでしょう。

    ・失敗がこわい。
    ・お金や時間が無駄に終わるのが耐えられない。
    ・完璧主義である。
    ・「風が吹くのを待っている」(マサキ)

    しかし、行動を起こさなければ、結果を出すことはできません。

    とにかく行動することが大切です。

    成功率が1%しかないタスクがあったとします。

    このタスクに2回取り組むと、(99%×99%=98.01%)となり、成功率が約2倍になります。

    459回目では、成功率は99%になるとのことです。

    「行動、行動、行動!」です。

    但し、次の言葉も心に刻んでおきましょう。

    「思いつきだけで行動するのは・・・愚か者のすることだ」(ゴルゴ13)

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  • 水が不足すると、脳はこうなってしまう。

    2025年06月30日

    今回は、脳と水の関係です。

    脳の約80%は水分で構成されているとされており、水分が不足すると、脳機能に異常をきたします。

    脳の水不足には、例えば、以下の悪影響があります。

    ・軽度の脱水(体重の1〜2%の水分損失)でも、注意、実行機能、短期記憶、長期記憶の想起、精神運動能力といった認知機能が低下する。

    ・集中力が低下する。

    ・反応時間が遅延する。

    ・感情が悪化(イライラ、疲労感、不安感など)する。

    ・脳活動の効率が低下する。

    ・認知症リスクの可能性がある。

    これは、避けなければなりませんね。

    特に、それほどの労力なしにこれらの悪影響を防ぐことができるのに、そうしないのは、人生の多大なる損失となります。

    そこで、毎日、適切に水分を摂取する必要があります。

    1日の推奨水分摂取量は、男性約3.7L、女性約2.7Lであるとされています。

    もちろん、個人差がありますし、気温によっても異なるので、一応の目安です。

    効果的な水分補給の方法としては、以下が挙げられます。

    ・喉が渇く前に水分を摂取する(喉が渇いてからでは遅い)。

    ・食事の際の水分摂取を心がける。

    ・尿の色が濃い時は、水分が不足している可能性があるので、水分を摂取する。

    ・汗をかいたら、多めに水分を摂取する。

    ・アルコールやカフェインには利尿作用があること、アルコール分解に水分が必要であることから、これらを飲んだ時は、多めに水分を摂取する。

    ・睡眠中に水分が失われることから、就寝前に水分を摂取し、起床後多めに水分を摂取する。

    これらは、たいした労力を必要としませんが、注意すべきは、意識的に行わないと、実行できない可能性が高い、ということです。

    何も考えないで過ごしていると、喉が渇いて始めて水分を摂取することとなり、脳の水不足が生じる可能性がある、ということです。

    そして、特に外的なストレスがないのに、なぜかイライラしたり、集中力が低下したり、ということが生じる可能性がある、ということです。

    このようなことは本当にもったいないです。

    私は夜、飲酒をしますが、意識的には水分を摂取せずに就寝してしまい、朝、大量に水分摂取しています。

    自戒の念も込めて、あえてメルマガでお伝えさせていただいた次第です。

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  • 記憶すること、しないこと

    2025年06月23日

    かつて、私は、メモ等の効用は、覚えることではなく、「忘れる」ことにあると書いたことがあります。

    例えば、ある時間に、誰かに電話しなくてはならないといった、ちょっとした用があるとき、それを覚え続けるのは意志がいることです。こういった用事について、ほかの仕事をしている時に頭を占めているのはとても無駄なことです。

    つまり、仕事に完全に集中できていないのであり、脳を効率的に使っていない、ということになります。

    この用事をメモに書き、目の前においておくと、「これからすべきことはメモに書いてあるから、忘れていても大丈夫」という安心感につながります。メモという外部記憶に情報を投げ込むことで、自分の頭がクリアになり、ほかのあらゆる仕事に対する集中力が高まるのです。

    そこで、注意すべきことがあります。

    2011年の「science」誌に発表されたある研究では、コンピューターなどに記録があることがわかっているとき、人は記憶する努力をしないようにする傾向にあるそうです。

    ですから、なんでもかんでもメモを書いたり、スマホや外部記憶装置に記録して、「記録してあるから大丈夫」という習慣をつけてしまうと、記憶することが望ましいことすら記憶しないという可能性がある、ということです。

    それは、知識の減少をもたらします。

    知識の減少は、私の場合ですと、仕事に致命的なダメージを生じさせます。

    たとえば、世の中のこと、人間のことを知っていないと、相談者の話を聞いても、理解が不足したり、適切な質問ができない可能性があります。

    判例や法律論文、書籍を探すにしても、一定の知識がないと、適切な検索キーワードを設定することができません。

    AIを使用する場合、最も重要なことの一つは、「適切な質問をすること」です。

    しかし、知識がなければ、適切な質問ができず、その結果、望まない回答しか得られない、という可能性があります。

    このような観点からすると、全てにおいて「調べればすぐわかる」という感覚を持つことは危険であり、今の社会では、

    ・記憶すべきこと
    ・記憶する必要のないこと

    を選別し、振り分ける努力が必要になる、と考えています。

    そして、記憶すべきことについては、外部記憶装置に記録があろうとなかろうと、「積極的に」記憶しようと「努力」することが望ましい、ということになります。

    当たり前のことを書いているようですが、漫然と生活していると、いつの間にか、無意識のうちに、検索やAIに頼り切り、その結果、それらすらも適切に利用できなくなる可能性があるのではないか、と考えています。

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  • 努力は報われるか?

    2025年06月16日

    こんにちは。弁護士の谷原誠です。

    「努力は必ず報われる」という言葉を自分の信条にしている人がいます。

    あなたは、この言葉、どう思いますか?

    「もちろん、その通りだ!」と思うでしょうか。

    「努力なんかしても、全然報われないよ!」と思うでしょうか。

    この言葉は、受け取る人によって、全く異なる意味になるので要注意です。

    例えば、私は運良く司法試験に合格できましたが、私が受験した35年前は、司法試験の合格率はわずか2%でした。

    中には、10年間受験し続けても合格できない人もいました。

    その人は、「いくら努力しても報われない」と感じていたでしょう。

    この場合の「報われる」とは、自分の期待する結果が出ることを意味しています。

    しかし、自分の期待する結果は、自分が勝手に設定するものであり、それを必ず実現できる努力など存在しません。

    私がどんなに努力しても、大リーグの大谷選手のような成績は残せないわけです。

    私も自分なりには色々と努力をしたつもりではいますが、自分の期待する結果が出たことなどは、ほんのわずかしかありません。

    また、「努力は必ず報われる」という言葉から、「じゃあ、報われるなら努力しよう」という思考にも注意が必要です。

    自分の行動に常に見返りを求める思考につながってしまうからです。

    この思考の危険性については過去に書きましたが、また、別の機会にも書きたいと思います。

    では、「努力は必ず報われる」という言葉を自分の信条にすることは望ましくないのか、というと、そんなことはないと考えています。

    そもそも努力せずに、全くの運だけで、自分の望む結果を得られることは稀です。

    努力せずに報われることなどないと考えていた方が良いでしょう。

    そして、「努力は必ず報われる」と強烈に信じ込むことによって、膨大な努力をすることが可能になります。

    したがって、「努力は必ず報われる」という信条を持つことによって、報われる結果に近づくことができる、ということです。

    その意味で、「努力は必ず報われる」という信条を持つことを大いに奨励したいと思います。

    こんなことを考えていたら、頭に「筋肉は裏切らない」という言葉が浮かんできて、夜も眠れなくなりました。( -`д-´)キリッ

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  • 2本の刀

    2025年06月09日

    戦国時代、武将の谷尻北斎は、病で寝込んでいた。谷尻には、息子が2人おり、長男は剣心、次男は、左之助だった。

    ある日、谷尻は、家宝の二振りの刀を持ってこさせ、2人の息子に選ばせた。

    「どちらを選ぶかは自由だ。だが、選び方を誤れば、命を落とすことになるぞ」

    谷尻は刀の説明をした。

    「万用の刀」 – すべての頼みに応えられるが、持つ者は自由を失う。
    「選択の刀」 – 斬れないものが多いが、本当に斬るべきものだけは斬れる。

    左之助は「万用の刀」を手にした。

    「武士とは民と主君のために尽くすもの。この刀こそ、私にふさわしい」

    彼は城の守備、民の訴えの対応、兵の指導、果ては雑用まで全てを引き受けた。

    確かに彼の評価は高まったが、時間も体力も削られ、やがて戦場での鍛錬さえ満足にできなくなった。

    戦が始まったとき、彼は疲労のあまり刀を握る手が震えていた。敵の斬撃を受け、彼は無念の最期を遂げた。

    剣心は黙って「選択の刀」を取った。

    「この刀は、多くのものは斬れないということか・・・」

    彼は考えた。すべての戦いに臨むのではなく、「本当に斬るものだけを斬る」。

    戦が始まると、剣心は、自分がどうするべきか考えた。

    仲間が言った。
    「最前線で戦おう!」
    「東の門に応援に来てくれ!」
    「鉄砲の弾が足りない。持ってきてくれ!」

    しかし、剣心は、それに応じなかった。

    剣心は、仲間からの評判を落としてしまった。

    剣心は、「自分は、主君の近くにいて、主君をお守りしよう」

    戦況が悪化し、敵が本丸に迫ってきた。

    しかし、そこには、体力を温存し、気力が充実した剣心が守っていた。

    剣心は、乱戦で疲れた敵を次から次へと斬り捨て、主君を守ることに成功し、また仲間からの評判が上がった。

    剣心が他の仲間達の呼びかけに応じていたら、主君を守れなかっただろう。

    ==============

    選択の刀は、私達の時間です。

    万用の刀のように、他人から頼みに全て応じ、やりたいこと全てに手を出していたら、疲弊して、本当にやりたいこと、やるべきことに時間を使えなくなってしまいます。

    選択の刀のように、やることをなるべく少なくし、大切なことに時間を使うことで、人生が豊かになるのだと思います。

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  • 独りよがりになっていないか。

    2025年06月02日

    ある村に二人の兄弟がいた。

    兄は快活で村の子どもたちの中心的な存在だったが、弟は静かに本を読むのが好きな少年だった。

    兄は弟の面倒をよくみており、弟を外へ連れ出して遊んでやっていた。

    ある日も『山に行こう』と誘った。

    弟は黙って兄の顔を見ていた。

    兄は、『山の景色は素晴らしいよ!今日は天気がいいから、特に見晴らしがいいと思うよ』

    兄は弟に景色を見せて喜ばせてやりたかった。

    兄が弟を連れて山に登る途中、弟は海の方を見ていた。

    山の頂上に着くと、素晴らしい景色が広がっていた。

    兄は言った。『どうだ。いい景色だろう!』

    弟は、黙って頷いた。

    数日後、弟はぽつりと兄に言った。

    『僕は、兄さんがどこへ行きたいかは、いつもよく分かる。でも、僕の心がどこへ行きたいか、兄さんは考えたことある?』

    兄は驚いた。今まで弟は文句を言わずについてきていたから、不満などないと思っていた。

    しかし、その夜、兄はふと気づいた。弟が見たかった景色を何も知らなかったことに。

    弟は、海が見たかったのだ。

    =================

    私達は、相手のためを思って、色々なことをしてあげようとしたり、助言をしたりすることがあります。

    「この方が、きっと相手のためになる!」

    「相手は喜ぶはずだ!」

    しかし、それが独りよがりなのではないか、考えたことがあるでしょうか。

    「私はいつも相手のことを考えている。私は正しいことをしている」

    そう断言できる人ほど、実は、独りよがりになっている可能性が高い、という可能性もあります。

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  • とにかく今を生きる

    2025年05月26日

    私達は、日々、自分の人生にとって、一見無駄と思えるようなことを繰り返しています。

    それは、単調な仕事かもしれません。家事かもしれません。その他の雑用かもしれないし、勉強かもしれません。

    しかし、アップルのスティーブ・ジョブズが大学時代にカリグラフィーの勉強をしたことが、後日、アップルの世界的成功に寄与したのと同様、私達の無駄と思える作業も、将来、点と点がつながる可能性があります。

    LinkedIn創業者リード・ホフマンは、大学時代、哲学を学んでいました。

    私などは、「さすがに哲学は社会に出てからの仕事には役立たないのではないか」などと考えてしまいます。

    ところが、そうではなかったようです。

    彼は、大学教授になろうと考えていたようですが、ある疑問を抱きます。

    「学問的探求は本当に多くの人に届くのか」という点でした。

    哲学の論文は専門家の間でしか読まれないのではないか、ということに疑問を持ったそうです。

    そして、彼は、個人や社会がどのように相互作用し、ネットワークを形成していくのか、アイデンティティとは何かといった根本的な問いを探求しました。

    彼は、このような哲学的な思考プロセスが、LinkedInのような人と人との繋がりを核とするサービスの構想や、複雑なビジネス戦略を練る上で役立ったと語っています。

    抽象的な思考訓練が、具体的なビジネスモデルの構築に応用されたということです。

    本当に、自分の経験の何が、どのような形で将来役立つかわかりませんね。

    私も幼少期にいじめに対して「我慢」を憶えたおかげで、司法試験受験時代に誘惑を「我慢」できて司法試験に合格し、いいか悪いかは別として、今も怠惰という誘惑を「我慢」して周囲からはストイックだと言われています。

    全く、何が役に立つのか、全くわかりません。

    この意味でも、私達は、今を一生懸命生きるべきだと思います。

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  • 人は、こうして手を抜く

    2025年05月19日

    私達は、なるべく楽をしようとします。

    手を抜こうとします。

    1913年にマクシミリアン・リンゲルマンが行った綱引き実験というものがあり、これを、NHKの番組で再現したことがあるそうです。

    実験では、屈強な男性5名に「トラック引きの挑戦」とだけ伝えて綱引きをしてもらいました。

    まず、1人ずつ引いてもらったところ、その力は、平均は106kgだったそうです。

    次に、ロープを3本に増やして3人で引いた場合は、平均は100.2kgだったそうです。

    さらに、ロープを5本に増やして5人で引いた場合は、平均は97.9kgになったそうです。

    つまり、人数が多ければ多いほど、手を抜いた、ということです。

    他のチームでも同じ結果が出ました。

    「他の人がやってくれる」と考えてしまうと、力が弱まってしまうのです。

    そこで、他人に仕事や作業をさせようとする場合は、共同責任にするのではなく、一人一人に責任を与える方が個人の力を引き出せそうだ、ということになります。

    では、共同で頼まないといけない場合は、どうするか?

    実験では、チアリーダーが登場し、綱引き中に応援したところ、1人ずつの時とほぼ同程度の力を出すことができたそうです。

    つまり、何らかのモチベーション維持の施策を実行することにより、個人の力を引き出せそうだ、ということです。

    そして、注意すべきことがあります。

    「特定の1人だけ名前を呼んで応援」した場合、応援した人だけ手抜きをせず頑張ったが、他の人はもっと手を抜いてしまった、ということです。

    不公平な態度は、不公平と感じた人の力を大きく減らしてしまう、ということです。

    気をつけましょう。

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  • 他人の強み、自分の強み

    2025年05月12日

    こんな話があります。

    「これからの社会で求められるのは、リーダーシップです」

    大学のキャリア講座で、講師は何度も繰り返した。

    「率先して意見を言える人、周囲を巻き込める人、決断できる人。そんな力が、企業では強く求められています」

    リョウヘイは、前の席で真剣にうなずく学生たちを見ながら、少し気が重くなっていた。
    彼は、自分の意見を言うこと、リーダーシップは大の苦手だった。

    サークルでもゼミでも、必ずリーダー的な存在がいたが、リョウヘイは、それを静かに見守り、ときどき意見を整理してメモを取るくらいだった。

    そう思いながら迎えた就活シーズン。
    リョウヘイは、ある中堅企業のインターンシップに参加することになった。

    インターンでは、5日間で実際の経営課題に対して提案を作成するグループワークが行われた。

    初日、すぐにチーム内でリーダー役を名乗り出た学生がいた。
    自信たっぷりで発言力もあり、他のメンバーも自然と従う形になった。

    リョウヘイは、まず他の人の話をじっくり聴いてメモをとった。やはり、発言するのは気が引けた。

    3日目、議論が堂々巡りになっていたので、それまで一言も喋らなかったリョウヘイが勇気を振り絞って整理して出した一言がチームの方向性を決定づけた。

    「今の話を一度整理すると、私たちが本当に解決したいのは“顧客満足度”じゃなくて、
     “顧客との継続的な関係性”ですよね。なら、提案の軸も変えるべきだと思います」

    それを聞いたリーダー役の学生が、ぽんと手を打った。

    「それだ。やっと見えた気がする!」

    最終日、チームのプレゼンは見事にまとまり、参加企業の中でも高く評価された。

    終了後、リョウヘイはひとり帰ろうとしていたとき、声をかけられた。
    インターンを担当していた人事部の社員だった。

    「君、リョウヘイくんだよね?
     実は、チームの中で一番印象に残ってるのが君だった」

    「君のように、人の話をよく聴き、要点を整理し、チーム全体の流れを整えられる人材は、うちの会社にとってものすごく貴重なんだ」

    そして彼は、こう続けた。

    「うちの選考にぜひ来てほしい。現場のマネージャーにも紹介したい人材だと思ったよ」

    数か月後、リョウヘイはその企業から内定をもらった。

    人と競い合うのではなく、人の力を引き出す力。
    誰かの意見を形にし、場を落ち着かせ、着実に進めていく力、実は、目立たないけれど、それも評価されるリーダーシップの一つの形だった。

    今、リョウヘイは胸を張って言える。

    「自分にも、社会に必要とされる“強み”があった」

    それは他人と比べることで見つかるものではなく、
    自分の中にある“静かな力”に気づいたときに、ようやく見えてくるものだった。

    =====================

    社会に出ると、自分の物差しで他人の評価をする人が増えてきます。

    「リーダーシップがないやつはダメだ」
    「会議でどんどん意見を言えないようじゃダメだ」
    「他人の話なんか聞いているようじゃだめだ。自分で決めてどんどんやるんだよ」

    しかし、人の強みはそれぞれです。

    「リーダーを支えられるようじゃなきゃダメだ」
    「会議で他人の意見を聞けないようじゃダメだ」
    「自分の狭い世界でばかり考えず、他人に教えを乞うて学ばないようじゃダメだ」

    とも言えるわけです。

    他人は他人、自分は自分です。

    自分だけの強みを見つけましょう。

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  • 会話の中心をどこに置くか

    2025年05月05日

    先日、You Tubeで動画を観ました。

    私は、運動系の番組を観ることが多いのですが、その中で、他人にある運動をさせて、それに関して、番組の中の先生がコメントしていました。

    「初めてでこんなにできるなんて、すごいですね。さすがです!」

    これに対して、生徒さんは、喜んでいました。

    「めちゃくちゃ褒められて、嬉しいです!」

    先生「私、褒めるタイプなんですよ!」

    生徒さん「そうなんですね!」

    さて、あなたは、この会話をどう読みますか?

    会話の中心を自分にするか、相手にするか、という観点です。

    生徒さんが、褒められて嬉しいと発言をした時に、この先生は、自分のこととして、「そうなの。自分は生徒を褒めるタイプなのよ」と思って、「私、褒めるタイプなんですよ!」と普通に返したのでしょう。

    しかし、もし、この先生が、生徒を褒めることにより、生徒の承認欲求を満たしたり、自己評価を上げることによって、より運動に対するモチベーションをアップさせたい、などという目的で褒めているとしたら、どうでしょうか。

    会話の中心を相手にすることになります。

    そうすると、生徒さんが、「めちゃくちゃ褒められて、嬉しいです!」と言ったら、「初めてで、これだけできる人は、滅多にいないんですよ!」などと、引き続き、会話の中心を相手にすることでしょう。

    なぜなら、先生が「私、褒めるタイプなんですよ!」などと言ってしまうと、生徒さんは、「ああ、そうなんだ。誰でも褒めるのであって、自分は特別じゃないんだ」と感じ、承認欲求が満たされず、自己評価がアップしない結果となってしまうためです。

    私は、どちらがいいと考えているわけではありません。

    その人それぞれの考えでコミュニケーションをすれば良いと思います。

    しかし、自分の内心は、ちょっとした会話で表に出るものだということは知っておく必要があります。

    今回は、他人を褒める、というテーマですが、他人を褒めて、それが相手に伝わるためには、まず、心から他人を称賛できるような強い人間になる、ということが大切だと思います。

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