ブログ | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 43
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
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  • 一緒に飲んだ人も賠償責任(交通事故)

    2006年07月01日

    2001年に、埼玉県坂戸市で飲酒運転の上で起きた交通事故(死亡事故)に関し、2006年7月28日に、東京地裁は、運転者とともに、一緒に飲酒していた同僚、車の所有者である元勤務先に対し、合計5,800万円の損害賠償を命じる判決を出しました。 →ニュース

    裁判所は、一緒に飲酒していた同僚について、「男が正常に運転できない状態だったことを認識していた上、運転して帰宅することも予見できた」と判断して賠償責任を認めました。

    今回の裁判で注目すべきことは、原告は、このほか、家にいて飲酒を知っていながら放置した妻をも同時に訴えたことです。裁判所は、妻は「自宅にいて制止する現実的な方法がなかった」として賠償責任を認めませんでした。

    死亡から5年ですので、かなりもめた裁判だったことが推測されます。このニュースを多くの人が知り、飲酒運転が少しでも減ることを望みます。

  • 放置車両の個人情報

    2006年06月26日

    地方自治体には顧問弁護士はいないのでしょうか。

    改正道路交通法では、放置車両の所有者に対して違反金納付命令ができることとなりました。ところで、125cc以下のバイクについては、市区町村に所有者情報が登録されています。

    ところが、警察が所有者に通知をするために札幌市などに「ナンバー照会」をしたところ、札幌市などは、バイクの所有者情報は守秘義務を理由に所有者情報の開示を拒否していたそうです。

    ニュース

    行政機関は、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」というものに縛られており、個人情報をむやに開示することはできません。

    ここで、個人情報とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。」(同法2条2項)

    ところで、同法律8条は、次のように規定しております。

    「行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。」

    しかし、第三者に提供できる場合もあります。そのうちの1つは、次の場合です。(同法8条2項3号)

    「他の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人に保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。」

    したがって、バイクの所有者情報は、個人情報には該当するけれども、警察が道路交通法に基づいてバイクの所有者に弁明の機会を与え、違反金納付命令をするという事務を行うために照会した時は、その照会に対しては回答してよい情報ということになります。

    総務省も、地方自治体に対して警察からの照会に回答するよう促しているようです。

    地方自治体が回答を拒んだことにより、違反金徴収事務が停滞しています。このような事態を引き起こす法律解釈については、地方自治体は、顧問弁護士や総務省などに照会を行うべきだと考えます。

  • 交通事故による重度後遺症の療護センター設置

    2006年06月25日

    交通事故で頭を打って、脳損傷による重度後遺障害(遷延性意識障害ー植物状態など)が残ってしまうことがあります。この場合には、常時介護が必要となるため、適切な治療と看護を行う必要があります。ご家族は大変です。


    独立行政法人自動車事故対策機構というのがあるのですが、同機構では、このような交通事故による重度後遺障害者専門の「療護センター」を設置し、運営しています。全国の4カ所あります。


    千葉、仙台、岡山、岐阜です。→ココ

    国土交通省は、交通事故で重い後遺症を負い、遷延性意識障害(植物状態)などに陥った患者の治療を担う専門病床を札幌市と福岡市に新設することを明らかにしました。

    北海道と九州には療護センターがなかったので、よかったと思います。


    自動車事故対策機構では、「介護料支給」や「生活資金貸付制度」もありますので、交通事故により重度後遺障害を負った被害者のご家族は、ぜひご利用を。
    ココ

    ちなみに、ここで支給された介護料は、損害賠償責任とは無関係のものであり、損害の填補にあたらず、加害者等に対する損害賠償額から控除されることはないと解されております(別冊判例タイムズ16号4頁)。

  • 改めて車のこわさ

    2006年06月24日

    2006年7月22日に、神奈川県大和市で、道路脇でビニール製のボールに座って話をしていた9歳と10歳の少女が、突然突っ込んできた乗用車にはねられ、重傷を負ったそうです。

    ニュース

    調べによると、運転者(37歳)は、「アクセルとブレーキを踏み間違えた。」と供述している模様。

    道路脇で話をしているときに、誰が乗用車が突っ込んでくることを予想できるでしょうか。改めて車のこわさを感じます。

    乗っている方は、「アクセルとブレーキを踏み間違えただけ」です。しかし、突っ込まれた被害者は、重傷です。打ち所によっては長期間入院し、後遺症が残るでしょう。一生の問題になります。

    ほんの些細な注意を怠ることにより、他人の一生に影響を与えるような大事故につながってしまうのです。車を運転する際には、この点を決して忘れてはならないでしょう。

    ニュースを自分の教訓にするには、自分の愛する人が被害者になったと想像すると、すぐに身近に感じられます。恐ろしいことです。

    七田式超右脳イメージトレーニング
    隼君は8歳だった―ある交通事故死

     

  • 弁護士資格は

    2006年06月23日

    現役弁護士(35)が痴漢で有罪判決だそうです。

    この男性弁護士は、2006年2月27日午前8時45分ころ、地下鉄有楽町線の社内で女子高生のスカートの中に手を入れ、体を触ったとのことで、東京都迷惑防止条例違反罪で起訴されていました。

    東京地裁は、6月20日、同弁護士に、懲役3月、執行猶予2年(求刑懲役4月)の判決を言い渡しました。

    ニュース

    喧嘩などで、相手が殴りかかってくるのでやむを得ず、とはワケが違います。朝の電車内です。やめようと思えばいつでもやめることができたはずです。

    判決が確定した場合、苦労して取得したであろう弁護士資格が吹っ飛びます。周りの人たちも悲しむでしょう。

    司法試験に合格するために色々なものを犠牲にして勉強したはずです。しかし、今度は、そうやって苦労して取得した資格を犠牲にして犯罪に手を染めてしまいました。

    切なくなります。

    「原因」と「結果」の法則
    ぼくは痴漢じゃない!―冤罪事件643日の記録

  • 2006年上半期死亡事故者数

    2006年06月20日

    2006年1月から6月までの交通事故による死者数が警察庁より発表されました。

    2005年より6.5%減の2922人でです。上半期としては1955年以来51年ぶりに3000人を下回ったとのことです。

    ニュース

    死亡事故が減少するのは大変良いことですが、それでもまだまだ多いですね。1日について約16人もお亡くなりになっていることになります。

    交通事故でお亡くなりになった被害者のご遺族からの相談や依頼を多数受けていますが、その悲しみは甚大です。

    死亡事故の更なる減少を

    新しい交通賠償論の胎動―創立40周年記念講演を中心として

  • 高いか、安いか

    2006年06月19日

    歩行者同士がぶつかって損害賠償780万円っ!?

    2004年8月、東京都世田谷区内の商店街、友人とともに歩いていた25歳の女性が、道路脇の店に気を取られて、右側から歩いてきた91歳女性に気づかずにぶつかったことにより、91歳女性は右足を骨折し、後遺症が残って外出時は車いすが必要となった事件がありました。

    この件で、91歳女性が東京地裁に損害賠償請求訴訟を起こし、6月15日に、東京地裁は、25歳女性に780万円の損害賠償を支払うよう命じました。

    ニュース

    ただ歩いていてぶつかっただけで780万円の賠償金は高いと感じると思います。しかし、それはぶつかった側の感覚です。ぶつかられた方は、780万円では換えがたいものを失っているのが通常です。日本での損害賠償は「控えめな賠償額」になってしまうのです。

    今回の場合、91歳女性は、右足骨折でおそらく入院したでしょうから、入院費、通院費、交通費、入院雑費、車いす代、家の段差をなすく工事費等の実費がかかっているはずです。これに慰謝料などを加え、東京地裁は、約1,000万円の損害を見積もりました。その上で、91歳女性にも過失があったということで3割差し引き、最終的に780万円の損害賠償になったものです。

    仮に、被害者が若い人であり、頭などをうって働けなくなったような場合には、その後働いて得られたであろう利益(逸失利益)が加算され、1億を超える損害額になる可能性もあります。ただし、若い人の場合には過失割合も大きくなるので減額幅も大きいでしょうが、数千万円の損害賠償になる可能性は十分あるということです。この場合、被害者側から見ると、いくらもらっても安いということになるでしょう。

    したがって、この事件、25歳女性から見ると「高い」、91歳女性から見ると「安い」と感じていると思います。

    常に置かれた立場によって感じ方が違うということですね。

    慰謝料算定の実務

     

  • キレる乗客

    2006年06月17日

    突然キレて、駅員や乗務員へ暴力をふるうケースが増加しているそうです。

    JR東日本と大手私鉄など21の鉄道は今月、駅や車内のポスターで暴力防止を呼びかける初の共同キャンペーンを始めたとのこと。

    ニュース

    キレる原因は色々でしょう。駅員の態度が原因となったケースもあるかもしれません。

    しかし、暴力はいけません。暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)に該当する犯罪行為です。JR各社や私鉄各社は、暴力事件に関しては、全件刑事告訴の対象とすべきです。そしてそれを告知すべきでしょう。

    ポスターで暴力防止を呼びかけるだけでは、暴力をふるおうとしている人に対する抑止効果は働かないのではないでしょうか。

    普通の人は、キレそうになっても警察官に暴力をふるうことはほとんどありません。捕まるからです。キレそうになっても損得勘定が働くからだと思います。

    弁護士も相手の怒りは買いますが、暴力はふるわれにくい職業だと思います。その後の法的手続が頭をよぎり、損得勘定が働くのではないでしょうか。

    そのようなキレる寸前の損得勘定にすべりこませる対策を考えるべきだと思います。

    暴力に対しては厳しい態度で望んだ上で、乗客の自尊心を刺激しない接客マニュアル等を策定すべきでしょう。

    子どもたちはなぜキレるのか
    思いどおりに他人を動かす交渉・説得の技術―現役弁護士が書いた

  • 駐車監視員に暴行

    2006年06月17日

    まだ意識が浸透していない。

    6月16日に新宿区西新宿の青梅街道で、文房具を買うために乗用車を駐車していところ、駐車監視員に駐車違反の確認標章をつけられたことに腹をたて、駐車監視員2名の頭を殴ったとして、45歳の男が「公務執行妨害罪」で逮捕されました。ニュースを確認する限り、全国で3例目でしょうか。

    ニュース

    初の例は、次のニュースです。

    6月5日午後4時30分ころ、港区六本木の路上に原付バイクを駐車しようとしたところ、駐車監視員(36歳)が「ここに止めてはいけません。」と注意したことに腹をたて、駐車監視員の右ひざを蹴ったとして、25歳の男が「公務執行妨害罪」で逮捕されました。

    ニュース

    駐車違反の確認標章をつける前に、未然に駐車違反を防止しようとしたのに、逆に暴行を加えるなど、自己中心的であり、逮捕されてしかるべきでしょう。

    2例目は次のニュースです。
     
    6月13日午後4時15分ころ、岡山市の市道で、別の放置車両確認事務を行おうとして車を停車していた駐車監視員の車の後ろに車を駐車しようとしたところ、駐車監視員から「移動してください。」と言われ、「おまえの車はええんか。」などと怒鳴るなどして、監視員の左手に噛みついたとして、55歳の自称行政書士の男が「公務執行妨害罪」で逮捕されました。
     
     
    この自称行政書士の論理は、
     
    「同じく駐車違反をしているお前に、他人の駐車違反を注意する資格はない。自分の駐車違反を正して初めて他人に注意することができるはずだ。」
     
    という論理か、
     
    「なぜ俺の車だけなのか。俺の車が移動しなければならないとすれば、お前の車もただちに移動すべきだ。」
     
    という論理だと思われます。一応の反論にはなっていますが、自分が駐車違反をしようとしていることには変わりなく、法の前では何の反論にもなりません。
     
    しかし、、か、、噛みつくとはっ!?
     
     
    駐車監視員に暴行を加えると、「公務執行妨害罪」で逮捕されていますが、監視員は公務員ではなく、民間人です。なぜ「公務執行妨害罪」かというと、放置車両確認事務という「公務」を受託した放置車両確認機関(放置車両確認事務受託法人)に従事し、放置車両確認事務という公務を遂行するため、この職務を行っている限りにおいて「みなし公務員」として扱われるのです。
     
    そして「みなし公務員」は、刑法第7条「公務に従事する者」として、「公務員」として扱われます。そこで、放置車両確認事務を行っている駐車監視員の職務の執行を妨害する行為が「公務執行妨害罪」に該当するのです。
     
    テレビのニュースやワイドショーなどで、かなりしつこく道路交通法改正問題についてはアナウンスされ、だいぶ意識に浸透しました。
     
    しかし、自分が法に違反していたり、違反しようとしているところを注意されて「腹が立つ」ということは、「悪い意識がない。」あるいは「なんで俺だけ?」というような意識でいるからであり、まだまだ駐車違反に対する意識が変わっていないと言えるでしょう。
     
    さらに駐車違反に対する意識を深く浸透させる必要があります。
     
     

  • 急性アルコール中毒で死亡

    2006年06月14日

    専修大学の19歳の男子学生が、軟式野球サークルの宴会中に酒を飲み、急性アルコール中毒で死亡したそうです。

    ニュース

    イッキ飲みや飲酒強要があったかどうかは捜査中とのことです。

    私は大学時代は体育会の部活だったので、イッキ飲みや飲酒を強要されました。強要はありましたが、度を超えることはなかったので、誰も急性アルコール中毒にはなりませんでした。

    19歳と言えば、これから社会に出て社会の一翼を担っていく萌芽です。

    19歳まで育て上げた末に、飲酒によりご子息を失ったご両親のご無念は察するにあまりあります。

    以下、飲酒強要があった場合を仮定して考えます。

    殺すつもりで飲酒強要することはあまり考えられませんが、もしあったとすれば、殺人罪です。殺すつもりがなくても過失があれば過失致死罪。無理矢理飲ませるのは強要罪。飲酒強要が体を押さえつけて行われたりすれば、暴行罪。急性アルコール中毒になったことを捉えて傷害罪。などが考えられます。

    民事でも、損害賠償請求の対象になる可能性があります。ただ、男子学生にも過失があったとすれば過失相殺により減額の対象になるかもしれません。

    知識ゼロからのワイン入門