自転車保険の契約者が急増中!その理由とは? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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自転車保険の契約者が急増中!その理由とは?

2015年07月16日

今年に入って、自転車保険の契約をする人が増加しているようです。
今回は、その背景について考えてみたいと思います。

「自転車保険、契約ペース倍増 賠償金の高額化など背景に」(2015年7月13日 朝日新聞デジタル)

自転車で人にケガをさせたときに損害賠償金などが補償される「自転車保険」の契約件数が、前年の2倍以上のペースで伸びていると新聞が報じています。

以前は、自転車の賠償責任保険といえば自動車保険や火災保険の「特約」が主流でした。
しかし、近年では損保各社がコンビニで申し込める保険や、スマホなどインターネットから加入できる自転車単独の保険を本格的に売り出していて、昨年の2倍以上の伸びを示しているようです。

年間保険料が4490円で1億円を保証するプランや、最大補償額2億円のプランなどもあり、各社とも事故の相手への賠償だけでなく、自分がケガをしたときの補償や自転車以外の交通事故、日常生活でモノを壊した際の賠償保障などもついているのが特徴だということです。
自転車保険への加入が増加している背景には、自転車事故での損害賠償金の高額化など、さまざまな理由が考えられます。
具体的に見ていきましょう。

【なぜ高額賠償金の判決が増えているのか?】
以前、自転車事故の高額賠償金について解説しました。
詳しい解説はこちら⇒
「自転車での死亡事故が多発中!損害賠償金は一体いくら?」
https://taniharamakoto.com/archives/1648

特に注目されたのは、兵庫県での判例でした。

2008年9月、神戸市の住宅街の坂道で当時11歳の少年がマウンテンバイクで走行中、知人と散歩をしていた60代の女性に正面衝突。
女性は頭を強打し、意識不明のまま寝たきりの状態が続いていることから、家族が損害賠償を求めて提訴。
2013年、神戸地裁は少年の母親(当時40歳)に約9500万円の支払いを命じたというものです。

子供が起こした自転車事故の場合、親には監督責任があるため多額の損害賠償金は親が支払わなければいけません。
しかし、仮に保険に加入していなければ最悪は自己破産の可能性もあり、被害者も金銭的補償を得られず救済されないという問題が起こります。
そうした万が一のときのために自転車保険は有効だということです。

では、なぜ損害賠償額が高額化しているのでしょうか?

最近になって裁判所の基準が変わったわけではありません。
賠償額は、被害の程度に応じて高額化します。
つまり、損害賠償額が高額化しているということは重大な被害を生じる自転車事故が増えているということになります。

たとえば、上記の損害賠償額9500万円について見てみます。

内訳は以下のようになっています。
・将来の介護費用:3940万円
・事故で得ることができなくなった逸失利益:2190万円
・ケガの後遺症に対する慰謝料:2800万円
・その他、治療費など。

介護費用は、「女性の1日あたりの介護費8000円×女性の平均余命年数」、で算出されていますが、今後、将来にわたって毎日介護が必要となることを考えれば、介護者の精神的、金額的な負担は相当なものになります。

逸失利益については、事故に遭わなければ将来得られたであろう収入ですから、専業主婦であったとしても、かなりの金額になります。

また、後遺症に対する慰謝料としては事故状況を考えて高額になっています。

9500万円は高すぎるのでは? と思う人もいるでしょうが、弁護士の立場からすれば、決して高くはない妥当な金額だといえます。
【自転車の危険運転の罰則は厳罰化の方向に進んでいる】
そこで、悪質で危険な自転車運転に対する罰則を厳しくするために2014年6月1日に「改正道路交通法」が施行されています。

詳しい解説はこちら⇒「自転車の危険運転に安全講習義務づけに」
https://taniharamakoto.com/archives/1854

信号無視や酒酔い運転、歩道での歩行者妨害、遮断機が下りた踏切への立ち入り、携帯電話を使用しながら運転するなどの安全運転義務違反等、14項目の危険行為を規定し、これらに違反した14歳以上の運転者は、まず警察官から指導・警告を受け、交通違反切符を交付されますが、3年以内に2回以上の交付で安全講習が義務づけられることになりました。
仮に受講しないと5万円以下の罰金が科せられることになります。
【自転車保険の加入を義務化した県もある】
これらの流れを受けて、なんと自転車保険の加入を県民に義務化した県もあります。

詳しい解説はこちら⇒「兵庫県条例で自転車保険の加入が義務化!」
https://taniharamakoto.com/archives/1911

兵庫県では、自転車が加害者となる事故が増加傾向にあるため、利用者の意識向上と被害者救済を目的に、県条例で今年(2015年)の10月からの保険加入が義務づけられました。

ちなみに、知らない人もいると思いますが、2013年には東京都と愛媛県で「保険加入を努力義務とする」条例が制定されています。
交通事故の件数自体は年々減少傾向にありますが、警察庁が公表している統計資料「平成26年中の交通事故の発生状況」によると、自転車関連の事故は10万9,269件で、この数年、交通事故全体に占める割合は約2割のまま推移しています。

不測の事態で困らないために保険に加入しておくのは大切なことですが、その前に大切なことは当然、事故を起こさないことです。

手軽で便利だからといって、軽い気持ちでスピードの出し過ぎや、ながら運転、ひき逃げなどの危険行為はしないように十分気を引き締めて自転車に乗ってほしいと思います。

万が一の自転車事故のご相談はこちらから
⇒「弁護士による自動車事故SOS」
http://www.jikosos.net/