東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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弁護士法律解説 リーガルアイ

 

のぞきと犯罪


2017年9月1日

人の好みは十人十色といいますが、中には困った趣味もあります。

たとえば、窃視(せっし)というものがあります。
簡単にいえば、盗撮なども含めた「のぞき」行為のことです。

人間は誰しも、見てはいけないものを見たい、ひそかにのぞき見してみたいという欲求を持っているものかもしれませんが、こうした行為が他人のプライバシーを侵害したり、私生活の平穏を脅かすことになれば問題が生じてしまいます。

もちろん、のぞき行為や盗撮は犯罪にもなるのですが、法的には少しややこしい部分があるので、今回は「のぞき」に関する法律について考えてみたいと思います。

 

じつは、のぞきや盗撮行為については「刑法」に規定がなく、その他にも直接的に取り締まる法律がありません。
そのため、次の3つの法律、条例のいずれかが適用されるというのが現状です。

①「住居侵入罪」
部外者が、盗撮目的で撮影機器設置のために、さく等に囲まれた建造物の敷地に侵入する行為は「住居侵入罪」に該当する可能性があります。

「刑法」
第130条(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

 

②「各都道府県の迷惑行為防止条例」
現在、47都道府県すべてで「迷惑行為防止条例」が定められていますが、この中で「卑猥な行為」や「粗暴な行為」として盗撮を禁止しています。

ここでは、東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(迷惑行為防止条例)を見てみます。

第5条(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
1.何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(2)公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗り物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機、その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、もしくは設置すること。

 

この規定に違反して撮影した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。

ただし、迷惑行為防止条例はあるものの、未だに盗撮を禁止する場所が、原則は道路や公園、電車など、不特定多数の人が出入りする場所に限られており、公共の場所にあってもトイレや更衣室は含まれない、としている自治体もあり、その場合は盗撮犯が不起訴になる場合もあるという問題があるのが現状です。

ちなみに、「平成27年度版 犯罪白書」(総務省)によると、2014(平成26)年の各都道府県の迷惑行為防止条例違反のうち、盗撮事犯の検挙件数は3265件でした。
犯行時間でもっとも多かったのが「15時~18時」(27・9%/909件)、次いで「18時~21時」(19・8%/645件)、犯行場所でもっとも多かったのが「駅構内」(32・2%/1049件)、次いで「ショッピングモール等商業施設」(28・5%/929件)となっています。

 

③「軽犯罪法」
さまざまな軽微な秩序違反行為に対して拘留(1日以上30日未満で刑事施設に収容)、または科料(1000円以上1万円未満)に処する法律です。

第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

23.正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

 

ここでポイントとなるのは、次の2点です。

1.人が通常衣服をつけないでいるような場所
2.ひそかにのぞき見る

条文には、のぞきを禁止している場所として、「住居」「浴場」「更衣室」「便所」が明示されています。
これらの場所では、衣服を脱ぐことは普通にあるわけですから納得がいきます。

問題は、「人が通常衣服をつけないでいるような場所」とはどのような場所を指すのかです。
たとえば、病院の診察室やホテルなどの宿泊施設の部屋などは衣服をつけないでいる時間もあるので該当するでしょうし、寝台列車や客船の個室、試着室なども同様と考えられます。

ただし、注意が必要なのは、裸でいる「ような」場所なので、法的には必ずしも裸でいる場所に限定される必要はなく、また、必ずしも人が裸でいる必要もないということです。

そう考えると、夜の公園や車内で愛し合う男女の行為をのぞいたり盗撮しても、軽犯罪法では処罰できないことになります。
なぜなら、このような場所は通常では裸にはならない場所だからです。

また、正当な理由がないのに他人の住居をのぞいたり盗撮する場合、部屋に人がいなくても本号が適用される可能性があります。
なぜなら、本号には、個人的な秘密、プライバシーの侵害行為を禁止するとともに個人の私生活の平穏の確保という趣旨があるからです。
つまり、個人の住居や部屋はプライバシーや私生活の平穏が守られるべき場所であるから、その場所をのぞき見る、盗撮する行為は法律違反であるということです。

次に、「ひそかに」についてですが、言葉としては、人に気づかれないように、知られないように、こっそりと、という意味です。
ただし、ここでは誰にも見つからないようにということではなく、見られる側の人に気づかれないように、ということになります。

なお、条文には「ひそかにのぞき見る」際の手段や方法についての規定はありませんが、ここでは肉眼で直接見る以外に、望遠鏡や双眼鏡で見ることや、カメラやスマホ等で動画や写真を撮ることも含まれます。

なお、都道府県によって条例は異なります。

衣服の上から撮影するだけなら許されるか、というと、そういうわけではありません。

衣服の上から撮影したとしても、北海道迷惑防止条例のように、「卑わいな言動」として迷惑防止条例となる場合もありますので、くれぐれもご注意ください。

危険な動物を逃がす罪とは?


2017年6月24日

今年(2017年)5月末、静岡県葵区の住宅地で体長約1メートルの大トカゲが目撃され、静岡中央署が注意喚起を呼びかけたという報道がありました。

この大トカゲは付近の住民がペットとして飼っていたもので、インドネシア産のコガネオオトカゲという種。
性格はおとなしく、人間には危害を加える恐れはないということですが、家の近所で突然そんなトカゲと遭遇したら…ちょっと怖いですね。

幸い6月6日には捕獲されたということですが、今回は危険な動物を逃がすと犯罪になる可能性がある、ということについて解説したいと思います。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

12 人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠つてこれを逃がした者

 

本号は、「危険動物解放の罪」とも呼ばれるもので、ポイントとなるのは次の3点です。

①人畜に害を加える性癖
②正当な理由がなく
③解放、または監守を怠って逃がす

人畜とは、人や家畜のことです。
家畜とは、人間が利用するために繁殖、飼育をする動物で、イヌ、ネコ、
ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ニワトリ、アヒルなどをいいます。

条文に「害を加える性癖のあることの明らかな」とあるので、たとえば噛み癖のある犬やライオンなどの猛獣、また鳥獣類ではないですがコブラなどの毒ヘビやワニなども該当するでしょう。

正当な理由かどうかは、事件の発生状況や社会通念などに照らして判断されます。

また、危険動物を解放することは故意犯、監守を怠って逃がすことは過失犯になる可能性があります。

以上のことから考えると、飼い主の過失によって逃げ出した大トカゲでしたが、人間に害を加える恐れのない、おとなしい種類であり、人に危害を加えたわけでもなかったため軽犯罪法違反には問われなかった、ということになると思います。

ちなみに、実際このトカゲが人にケガをさせた場合は、刑法の「過失傷害罪」に問われる可能性があります。

「刑法」
第209条(過失傷害)
1.過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
2.前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

 

詳しい解説はこちら⇒
「犬を散歩させただけで、6300万円の賠償金を払う?」
http://taniharamakoto.com/archives/1872/

 

なお、ペットなどの動物は、法律上は「モノ」になるため、仮に発見者が「これは珍しい!」と捕獲して家に持って帰った場合は、「遺失物等横領罪」になるかもしれません。

第254条(遺失物等横領)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 

動物に関与する方は、このほか、「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)や、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護法)などもチェックしておきましょう。。

ペットなど動物の管理には十分気をつけましょう。

野次馬根性で犯罪者に?


2017年6月17日

毎日、世界中のどこかで、さまざまな災害や事故が起きています。

ちなみに、日本の法律である「災害対策基本法」では、災害を次のように定義しています。

「災害対策基本法」
第2条(定義)
一 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。

 

これらは自然災害といわれるものですが、人為的災害としては次のものなどがあげられます。

・列車事故
・航空事故
・海難事故
・交通事故
・火災
・爆発事故
・石油流出
・化学物質汚染
・原子力事故
・テロ・戦争

さて、今回は災害について解説するわけではありません。
あなたが災害の現場にいた場合、こうした行為をすると犯罪になる可能性があります、ということについて解説します。

たとえば、あなたが自動車を運転していたところ、火災現場に遭遇したとします。
あなたは路上に自動車を駐車して、燃え盛る炎を見ています。

次々と、消防車や救急車が駆けつけています。

すると、前を通りかかった消防士に言われました。
「消火活動の妨げになりますから、ただちに自動車を移動してください」

しかし、あなたはその言葉を無視して火災を見続けていました。

しばらくすると、少し離れたところで消防士と警察官が話しているのが見えました。
二人はチラチラと、こちらを見ています。

そして、警察官があなたのほうに近づいてきて言いました。

「軽犯罪法違反ですので、警察署まで同行してください」

 

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

8 風水害、地震、火事、交通事故、犯罪の発生その他の変事に際し、正当な理由がなく、現場に出入するについて公務員若しくはこれを援助する者の指示に従うことを拒み、又は公務員から援助を求められたのにかかわらずこれに応じなかつた者

 

本号は「変事非協力の罪」とも呼ばれるもので、何かの災害や変事の際に被害の拡大防止や被害者の救助などのために市民が遵守するべき最低限のことに対して、これに応じなかったり拒んだりすることを罰するものです。

今回の事例で考えると、火災現場での消火、救助活動について、公務員である消防士が協力を求めたにもかかわらず、これに応じなかったため軽犯罪法違反に問われた、ということになります。

たとえば、もっと間近で火事を見ようとして立ち入ってはいけない場所に入ろうとして、制止されたのにそれを無視して中に入ったり、立ち入り禁止区域に入っていたところ、立ち退くように言われたにもかからずこれに応じなかったり拒んだりした場合も同様です。

正当な理由があれば処罰はされませんが、どのような理由が正当なものなのかは、その場の状況や社会通念に照らして判断されます。

野次馬根性を出しすぎると、犯罪にまで発展することがある、ということです。

気をつけましょう。

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