債務整理における司法書士の業務範囲についての最高裁判決 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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債務整理における司法書士の業務範囲についての最高裁判決

2016年06月29日

借金をした人の債務整理の際に、司法書士が弁護士に代わって取扱いができる金額の上限を争点とした訴訟について、最高裁判決が出たので解説します。

「債務整理、司法書士の業務可能範囲は個別債権額140万円以下 最高裁が初判断」(2016年6月27日 産経新聞)

弁護士と司法書士の債務整理業務に関する境界について争われた訴訟で、最高裁第1小法廷は、司法書士が弁護士の代わりに担当できる金額の範囲を「個別の債権額が140万円以下」とする初判断を示しました。

まずは、事の経緯を整理してみます。

・和歌山県の多重債務者らが、依頼した司法書士が業務可能な範囲を超えて違法な非弁行為を行ったとして報酬の返還や損害賠償を請求。
司法書士法が定める上限「140万円を超えない額」の解釈が争点となった。

・1審の和歌山地裁では、司法書士の業務範囲を広く見て、司法書士側の主張を採用。
司法書士側の主張は、債務の圧縮や弁済計画の変更などで、個々の業者ごとに依頼者が実際に受ける利益が140万円以下なら、債権額や請求額の総額が140万円超でも司法書士が担当可能である、というもの。

・これに対し多重債務者側は、債務整理の対象とされた全ての債権の総額又は債務者ごとにみた債権の総額が140万円を超える場合には、司法書士は担当できないと主張。
2審は司法書士側敗訴。
そこで、今回の最高裁判決では次のように指摘しています。

・司法書士法は、裁判外の紛争代理権を司法書士に認めているが、その範囲は、簡易裁判所の民事訴訟代理権に付随するものとして認められたものである。

・そうだとすると、裁判外で代理できる紛争は、簡易裁判所の民事訴訟代理権の範囲内と考えるべきである。

・複数の債権の債務整理は、最終的には個別の債権の裁判が起きる可能性があるから、代理できる範囲は債権総額ではなく、個別の債権額で判断すべきである。

・簡易裁判所の民事訴訟代理権は、個別の債権額が140万を超えるかどうかで判断される。

・司法書士が代理できる範囲は、客観的かつ明確な基準で判断されるべきである。

以上より、司法書士が裁判外で代理できる範囲は、個別の債権額が140万円を超えない場合である。

この「上限140万円」というのは、そもそもは2002(平成14)年の司法書士法の改正により規定されました。
司法書士も簡易裁判所での民事訴訟や裁判外の債務整理などについては140万円以下であれば代理人として担当することが可能になったわけです。

その後、2006(平成18)年に最高裁が「グレーゾーン金利」を違法と判断します。
すると、借金をした人がこのグレーゾーン金利で多く支払ったお金、いわゆる「過払い金」を取り戻すための請求訴訟を起こし、訴訟件数が急増しました。
そのため、弁護士と司法書士はそれぞれの解釈によって、ここまで業務を担当してきたわけです。

これまで、今回の最高裁判決とは異なる解釈で業務を行ってきた司法書士にとっては厳しい判決ですね。

現在、受任している案件も、個別の債権額が140万円を超える債務については、司法書士は業務を行うことができなくなるわけですから、解約しなければならないので、その処理も大変です。

なお、債務整理を専門家に依頼しようと考えている人は、それぞれの貸金業者からの請求額が140万円を超えるような場合には、司法書士には依頼できないので、ご注意ください。

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