バレンタインデーのチョコで公職選挙法違反!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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バレンタインデーのチョコで公職選挙法違反!?

2016年02月23日

バレンタインデーの歴史は3世紀中頃のローマ帝国にまで遡るという説があるようです。

日本での起源にも諸説あるようですが、それはともかく、今回はバレンタインデーにチョコレートをあげると法律違反になる可能性がある!? という報道について解説します。

恋人たちの日に法律違反とは穏やかではないですが、一体どういうことでしょうか?

市内の支援者21人にバレンタインデーのチョコレートを配っていた、兵庫県の市議の行為が、公職選挙法が禁じる寄付行為に当たる恐れがあるとして、兵庫県警三木署が事実関係を調べているようです。

2月13日、市議は後援会幹事らの自宅を訪問。
近況報告の手紙に、約500円のチョコレートを添えて配ったということで、手紙には「支援者のお一人お一人のご恩情に報いることのできるよう、襟を正して活動して参ります」などと書かれていたようです。

市議は、バレンタインデーのプレゼントを支援者に贈ったのは初めてだったとし、「普段からお世話になっている人ばかりで、寄付行為に当たる認識がなかった。反省している」、「今後は一層注意をしたい」と話しているということです。
公職選挙法では、選挙の有無に関わらず、公職の候補者等が選挙区内の人に対して、どのような名義であっても一切の寄附を禁止しています。

第199条の2(公職の候補者等の寄附の禁止)
1.公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この条において「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域。以下この条において同じ。)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。(後略)
これに違反した場合、3年以下の禁固又は50万円以下の罰金に処されます。(第248条)

今回の市議会副議長の行為、つまりバレンタインデーに支持者に対してチョコを贈ることも「寄付行為」にあたるのではないか、ということが問題になっているわけですね。

一般的な感覚では、数百円のチョコをあげるくらい問題ないだろうと考える人もいると思いますが、寄付行為の禁止は公職選挙法における基本のひとつですから、「知らなかった」「認識がなかった」というのでは勉強不足、政治家の資質を問われてもしょうがないことです。

では、どのような行為が寄付行為となるのでしょうか。
総務省のホームページの「選挙・政治資金」のコーナーでは次のものなどが寄付禁止の対象になるとしています。

・お祭りへの寄付・差し入れ
・落成式・開店祝等の花輪
・秘書が代理で出席する場合の葬式の香典
・葬儀の花輪・供花
・入学祝・卒業祝
・病気見舞い
・町内化会の集会・旅行等の催物への寸志・飲食物の差し入れ
・秘書等が代理で出席する場合の結婚祝
・地域の運動会・スポーツ大会への飲食物等の差し入れ

その他、政治家の後援団体(後援会など)からの寄付や、政治家が役職員や構成員である会社や団体からの政治家の名前を表示した寄付なども禁止されています。

詳しい解説はこちら⇒
「祭りへの寄附が問題に! 公職選挙法が定める規制とは?
https://taniharamakoto.com/archives/1619

なお、例外として寄付が認められているものに「親族に対して行う寄付」があります。
親族とは民法上の親族と同じで、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族となっています。

ちなみに、いとこは4親等、はとこは6親等。
3親等の姻族としては、兄弟姉妹の配偶者の子や配偶者の伯父・叔父・伯母・叔母、配偶者の甥・姪などがあげられます。

3月には、「ホワイトデー」があります。

バレンタインデーにチョコレートをもらった公職の候補者等は、ホワイトデーにクッキーを渡すと、今回と同じように公職選挙法違反になる可能性がありますので注意が必要です。

また、クリスマスも同様です。

「クリスマスパーティがあるから、各自プレゼント持参で」と言われ、プレゼントを持っていくと、公職選挙法違反になる可能性があります。

プレゼントは、親族だけにしましょう。