迷惑防止条例 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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  • フジテレビ「とくダネ!」出演

    2015年06月09日

    2015年6月9日放送のフジテレビ「とくダネ!」から取材を受け、法律専門家としてコメントしました。

    内容としては、住居侵入罪および迷惑防止条例についてです。

  • 写真撮ったら逮捕しちゃうぞ!?

    2014年07月01日

    デジタル技術の進化によって、写真撮影は以前より格段に身近なものになりました。
    今ではスマホで誰もが気軽に撮影して、写真を楽しんでいますね。

    しかし、その気軽さゆえに見知らぬ人を撮影したら犯罪になってしまった!? そんな事件が起きました。

    「女性の上半身を撮影、逮捕された町職員の供述」(2014年6月30日 読売新聞)

    神奈川県警大礒署は、大礒市内のスーパーで買い物中の40代女性の上半身をスマートフォンで撮影したとして、神奈川県中井町の職員の男(36)を現行犯逮捕しました。
    容疑は、県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)とのことです。

    報道によりますと、撮影されたことに気づいた女性が店の外に待っていた知人男性とスーパーの店長に連絡。
    容疑者の男が店外に出てきたところを知人男性が取り押さえたようです。

    男は、「女性の胸元に興味があった。撮影したことは間違いありません」と供述、容疑を認めているということです。

    以前、盗撮について解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒「法がダメなら条例で!京都府が盗撮を禁止へ」
    https://taniharamakoto.com/archives/1307

    盗撮を直接取り締まる法律が「刑法」にはないため、全国の各都道府県は「迷惑行為防止条例」を適用している、というものでした。
    しかし、今回の事件は、盗撮ではないようです。
    報道内容からだけでは詳しい状況が分かりませんが、女性が胸の写真を撮られていることに気づいたということですから、容疑者の男は堂々と正面から写真を撮っていたのでしょうか?
    それとも、気づかれていないと思いながら横から狙ったのでしょうか?
    何はともあれ、「神奈川県迷惑行為防止条例」の条文を見てみましょう。

    第3条(卑わい行為の禁止)
    1.何人も、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗っている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。

    具体的な禁止行為は、以下のようになっています。
    〇服の上から、もしくは直接人の身体に触れること
    〇人の身体や下着を見たり、映像を記録するためにカメラを設置したり人に向けること
    〇その他の卑わいな言動

    違反をすると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。

    容疑者の男は、さすがにカメラを向けることまではしなかったけれど、スマホの気軽さで女性の胸を撮影するという「卑わいな言動」をしてしまった、ということなのでしょう。

    注意してください!
    相手が羞恥や不安を感じるような状況で、スマホで安易に他人を撮影すると、それは犯罪になるかもしれませんよ。

    「相手の本心を知りたければ、相手の顔をじっと見つめることだ。」(チェスター・フィールド)

    しかし、自分の本心に忠実に、相手の胸をじっと見つめていると、逮捕されるかもしれないので、十分気をつけたいところです。

  • 握手しただけで逮捕されるってマジですか!?

    2014年05月09日

    愛し合う恋人たちは手を握ります。
    商談が成立したビジネスパーソンも、がっちり握手をします。
    手を握るのは人としての親愛の証です。

    ところが、電車の中で握手をしただけで逮捕されてしまうという事件が起きました。

    一体、どういうことでしょうか?

    「女子高生と“握手したかった”塾経営者、電車内で右手つかみ逮捕」(2014年5月7日 スポーツ報知)

    宮崎県警えびの署は、電車内で女子高校生(16)と握手したとして、鹿児島県日置市の学習塾経営の男(34)を県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕しました。

    報道によると、男はJR吉都線の普通列車内で女子高校生の前に座り、「高校はどこ?」、「かわいいね」、「握手しよう」などと話しかけ、断り切れずに出した女子高校生の右手をガッチリつかんだとのことです。

    驚いた生徒が背面側に座っていた知人の女子高校生に助けを求めると、その生徒も容疑者から握手を求められ、拒否した直後だったようです。

    同署は、「ほかにも同じようなケースが数件あった」としています。ちなみに、男が個人で経営している塾の生徒は数人だったということです。

    早速、今回の事件を法律的に見ていきましょう。

    「公衆に著しい迷惑をかける行為の防止に関する条例」
    (通称:宮崎県迷惑行為防止条例)
    第2条(卑わいな行為の禁止)
    何人も、道路、公園、広場、駅、興行場その他の公共の場所(以下「公共の場所」という。)又は電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、人に対し、卑わいで不安等又は著しいしゅう恥を覚えさせるような言動をしてはならない。
    これに違反した者は、6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金、常習者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。

    今回の場合、手を握ったことが「電車の中で、卑わいで不安や羞恥を覚えさせる行為」と判断されたということでしょう。

    また、他のも同じようなケースが数件あったということで、常習者と判断されたと考えられます。

    胸やお尻をさわれば犯罪だというのは、みなさんも知っているでしょうが、手を握っただけでも逮捕される可能性があることは初めて知った人も多いのではないでしょうか。

    相手が望まない形での身体の接触には注意してほしいと思います。

    ちなみに、「迷惑行為防止条例」は名称の違いはありますが、全国47都道府県すべてで施行されています。

    「法律」と「条例」の違いを訊かれることがありますが、簡単に言うと、「法律」は国が定めるルールで、「条例」は地方自治体が法令に反しない範囲で定めることができるルールということになります。

    ところで、「握手」が仕事のひとつという職業の人もいます。
    アイドルや演歌歌手、それから政治家などですね。

    選挙期間中、候補者が、なかば無理矢理握手してまわるのは犯罪か? という疑問が出てきますが、大抵の場合、「羞恥または不安を覚えさせて」はいないので、無罪ということですね。

    不安なのは、「当選するかどうか」という政治家の方ですね。

    男性は、女性の身体を触りたい衝動にかられることがあるかもしれませんが、必ずしも胸やお尻などを触る場合だけが犯罪になるのではなく、手や背中、頭などを触る場合も犯罪が成立することがある、と憶えておいてください。

    最後になぞかけです。

    恋人の心とかけまして、

    政治家の握手と解きます。

    そのココロは・・・

    どちらもガッチリとつかむことが大切です。

     

  • 法がダメなら条例で!京都府が盗撮を禁止へ~

    2014年02月03日


    カメラやビデオなど撮影機器の性能が進化したせいもあるでしょう、近年、「盗撮」による犯罪が増加しているように思います。

    ニュースを見ると、毎日全国のどこかで誰かが盗撮している始末。

    そんな状況の中、京都府警が盗撮を禁止する場所を学校や職場など「公衆の目に触れる場所」にまで拡大する府迷惑行為防止条例の改正案を2月議会に提出すると発表しました。

    「学校、職場でも盗撮禁止へ 京都府警、初の条例案」(2014年1月29日 産経ニュース)

    報道によりますと、現行の条例は、盗撮を禁じるスペースを誰でも出入りできる商業施設や駅、電車、バスの中など「公共の場所または公共の乗り物」と規定。

    そのため、平成24年、京都市の中学校の元教諭が校内で盗撮をしていたことが発覚した際、条例が適用できず立件を見送り、路上での盗撮行為で逮捕したことなどの経緯から、条例改正を検討してきたようです。

    改正案では、規定を「公衆の目に触れるような場所」に拡大し、学校や塾の教室、職場、病院や、公衆浴場、公衆便所、デパートの試着室、プールの更衣室など服を着ていない場所も新たに規制対象とするとしています。

    また、罰則も「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」から「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に引き上げる考えのようです。

    ところで、多くの人は何か腑に落ちない気がするのではないでしょうか?

    そもそも、公共の場であろうが、公衆の目に触れる場所だろうが、盗撮は犯罪じゃないのか? ということです。

    じつは、盗撮行為は「刑法」には直接抵触しないのです。

    現状、卑猥目的の盗撮行為を取り締まるには、つぎの3つのどれかで法の裁きを下すしかありません。

    「軽犯罪法」
    さまざまな軽微な秩序違反行為に対して拘留(1日以上30日未満で刑事施設に収容)、科料(1,000円以上1万円未満)に処する法律です。

    第1条
    左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

    23.正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

    各都道府県の「迷惑行為防止条例」
    現在、47都道府県すべてで定められています。
    ここでは、京都府の条例をひとつの例として記しておきます。

    「京都府迷惑行為防止条例」
    第3条
    何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しくしゅう恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。

    (4) みだりに、着衣で覆われている他人の下着又は身体の一部(次号において「下着等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又はこれらの行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、若しくは着衣の中が見える位置に鏡、写真機等を差し出し、置く等をすること。

    第10条
    第3条、第6条又は第8条の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
    2 常習として第3条、第6条又は第8条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

    「住居侵入罪」
    部外者が、盗撮目的で機器設置のために、さく等に囲まれた建造物の敷地に侵入する行為は「住居侵入罪」に該当します。

    「刑法」第130条(住居侵入等)
    正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

    よく学校やデパートなどの女子トイレに侵入して盗撮した人が住居侵入罪で逮捕していますね。

    こうした現状を踏まえてメディアの報道を読むと、今回の京都府警の改正案がなぜニュースになったのか?

    その理由が見えてくるでしょう。

    今は、誰もがいつでも盗撮し、インターネットで瞬時に世界にばらまかれる危険性をはらんでいます。

    法律や条令で取り締まるのも仕方ありませんね。

    法律は完璧ではありません。

    さまざまな事象から議論を重ね、法律の改正をしながら、よりよい社会のために一歩ずつ前進していくものなのです。

    そうしたことを知ると、法律のおもしろさがまたひとつ、わかってくるのではないでしょうか。

    法律や条令などを作ったら、それを伝えるのが政府、地方自治体、マスコミの役割です。

    私もこうやってブログを書き、少しでも法を社会の隅々に届けたいと思っています。

    ルールに則った住みやすい社会になることを祈ります。