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時給3万5000円は高すぎるか?
2011年11月11日
原子力関連シンポジウムの「やらせ問題」で経済産業省が設置した第三者調査委員会の委員の時給は、3万5000円だったそうですが、支払い予想額が膨大となり、急きょ時給を3分の1以下に引き下げる事態になったそうです。http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111210-OYT1T00043.htm
過去の調査委員会委員の時給の例を見ると、8910円~3万5000円ということです。
時給3万5000円が高いか、安いか、ということですが、一般の感覚からすると、「かなり高い」ということになるでしょう。
しかし、例えば弁護士の場合、調査委員会の委員を委嘱されるような弁護士は、ある程度経験と実績を積んだ弁護士でしょうから、弁護士業務として考えると、時給3万5000円は、決して高すぎる金額ではありません。
むしろ、「安すぎる」と言われるかもしれません。
しかし、今回のような調査委員会は、ある程度公共の利害に関わることであり、社会貢献の一貫としての業務だとするならば、もう少し安くても良いのかもしれません。
私もテレビのニュースなどで、専門家として出演することがありますが、その際は、専門知識を有する者の責任として、社会貢献すべきとの考え方から、出演料がいくら安くてもOKしています。
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2台にひかれると、誰が犯人?
2011年11月08日7日夜、横浜市で、車2台に次々にひかれ、死亡したそうです。
1台は、逃走中で、ひき逃げ事件として捜査しています。
2台にひかれた場合、どちらの車にひかれたことで死亡したのか、が問題となります。
車の損傷部位と身体の損傷部位、目撃証言などで、どちらの車にひかれたことが死につながったのか、証明できればよいのですが、必ずしも証明できない場合もあるためです。
あるいは、どちらの車も激しく衝突しており、どちらにしても死亡していただろう、という場合もありますし、片方だけでは死亡しなかったはずだが、両方の事故が相まって死亡してしまったという場合もあります。
そのような場合、両方が自動車運転過失致死罪なのか、あるいは両方とも自動車運転過失致傷罪にとどまるのか、それとも、どちらかが致死罪、どちらかが致傷罪なのか、という問題です。
このような場合、車を運転したいた人を、どのような罪で処罰すべきか、について、法律学者が議論を戦わせています。
今回は、どうなるか、捜査の進展を待ちたいと思います。
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給食費滞納には、裁判所からの支払督促
2011年11月07日
給食費の滞納には、法的手続が有効です。滞納額が、10分の1に減ったそうです。
埼玉県八潮市が3年前から小・中学校の給食費を滞納している保護者に対し、簡易裁判所を通じて支払いの督促を始めた結果です。
滞納額は支払いの督促を始める前の平成19年度が672万円だったのに対して、昨年度は77万円とおよそ10分の1に減ったとのこと。
払えるのに、払ってなかったのですね。
対象者は支払能力のある家庭に対してのみということなので、他の市区町村もやった方がいいのではないでしょうか。
給食費に限らず、支払義務があり、かつ支払能力があるにもかかわらず払っていない人に対しては、支払督促なり、少額訴訟なりという法的手続で請求をしていった方がいいかもしれません。
少額の訴訟で弁護士を頼むと足が出ますので、支払督促専門者を育て、集中的に申立をしたらよいのではないか、と思います。
ニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111107/t10013777041000.html -
危険運転致死罪で懲役20年確定
2011年11月02日福岡県の幼児3名死亡事故が、最高裁判決により決着しました。
この事件は、平成18年、福岡市で、飲酒運転で車に追突して海に転落させ、幼児3人を死亡させたとして、危険運転致死傷と道交法違反(ひき逃げ)の罪で起訴された事件です。
第一審の福岡地裁は、検察側が危険運転致死罪で起訴したにもかかわらず、業務上過失致死罪と道交法違反に訴因変更するよう求め、危険運転致死罪を否定して業務上過失致死罪と道交法違反で懲役7年6月を言い渡しました。
福岡地裁は、飲酒の影響で正常な運転が困難とまでは言い切れない、という判断をしたものです。
これに対し、第二審の福岡高裁は、飲酒の影響で正常な運転が困難な状態であったとして、危険運転致死罪を適用し、懲役20年を言い渡しまし、今回の最高裁の結論が待たれていました。
最高裁は、10月31日付で、被告人による上告を棄却したので、懲役20年が確定することになります。
この事件では、私も何度もニュース番組などから取材を受け、危険運転致死罪を否定した第一審判決後には報道ステーションに生出演し、思い切って「検察が控訴すれば、逆転判決の可能性は十分ある」とコメントしました。批判もありましたが、現実になって、ほっと胸をなでおろしています。
それにしても、自動車事故で、懲役20年です。
自動車を運転する方は、くれぐれもご注意いただきたいと思います。
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妻を殴ったら逮捕です
2011年10月01日家庭内の暴力が刑事事件に発展です。
2011年10月29日、別れ話のもつれから妻の顔を数回殴打し、けがを負わせたとして、傷害の疑いで神戸常盤大学短大部の准教授の男性が逮捕されました。夫が妻と離婚について口論となり、顔面を平手で殴り、左眼球損傷の軽傷を負わせたとのこと。家庭内で暴力をふるっても逮捕されないと思っている人が多数います。しかし、家の外と家の中で、刑法の構成要件は区別されていません。頭を叩いてもビンタしても暴行罪です。その結果口の中を切ったりしたら、傷害罪です。傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。気をつけましょう。 -
嫌がらせ電話は犯罪
2011年09月27日福島第1原発事故の損害賠償相談を受け付ける東京電力のコールセンターに、約1800回にわたって嫌がらせ電話をかけたとして、警視庁三田署が偽計業務妨害容疑で、東京都板橋区の会社員の男(41)を逮捕しました。
嫌がらせ電話をかけた理由は、「放射能に汚染された食べ物を食べさせられ頭にきた」とのこと。
http://news.livedoor.com/article/detail/5889229/
このブログにも何度か書きましたが、無言電話や嫌がらせ電話は、偽計業務妨害罪が成立する場合があります。
業務妨害罪(刑法233条)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。偽計というのは、人を欺罔し、または人の不知、錯誤を利用することをいいます。
店の玄関に「本日休業」という貼り紙をして客を帰らせるのも、偽計業務妨害罪です。
店の玄関に「商い中」という看板があるのを裏返しにし、「準備中」にしてしまったことはありませんか?
アブナイですよ。
過去の判例で、中華そば店に970回にわたり無言電話をかけた例に偽計業務妨害罪を適用した例あります(東京高裁昭和48年8月7日判決)。
時々逮捕される例がニュースで流れますが、インターネットの掲示板に無差別殺人予告などをした場合も、警察を警戒出動させて本来の業務を妨害しているので、偽計業務妨害罪です。
匿名だからといって、むやみに書き込みをしてはいけません。
どこから書き込みをしたか、追跡されます。
気をつけていただきたいと思います。
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犯人を匿うと犯罪です。
2011年09月26日「神世界」の霊感商法事件で、神奈川県警の元警視が犯人蔵匿罪の容疑で逮捕されました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110925-00000068-mailo-l14
ニュースによると、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑で教主に逮捕状が出てから1ヶ月ほど、教主の所在が不明になってしまっていましたが、それは、元警視が指示して大阪市内のマンションに教主を匿っていたからだ、とのことです。
犯人隠避罪(刑法103条)
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。蔵匿というのは、場所を提供して匿うこと、隠避とは、蔵匿以外の方法により警察などによる発見・身柄の拘束を免れさせることです。
親しい人が犯罪を犯したことを知った場合、なんとか逮捕を免れさせようとして、自宅に匿ったり、隠れ家を提供したりしたくなるのは人の情かもしれませんが、そんなことをすると、自分自身が犯人蔵匿・隠避罪にとわれますし、何より本人のためになりません。
注意してください。
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あなたも犯人を現行犯逮捕できる
2011年09月23日群馬県桐生市の路上で職務質問を逃れようとした男が車を急発進させ、警察官1人が足を骨折する傷害を負いました。
別の警察官が車のフロントガラスに向けて拳銃を1発、威嚇発砲し、津久井容疑者らは殺人未遂などの疑いで現行犯逮捕されました。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4858647.html
殺人未遂で逮捕されるということは、殺人の「故意」があったということです。相当危険な状況だったのでしょう。
拳銃を発砲していますが、逮捕の過程では、ある程度の実力行使が許されます。今回のように、拳銃の発砲まで認められる場合があります。
ただ、無制限に認められるわけではなく、静かに立っている犯人をいきなり発砲するようなことは認められません。
逮捕に必要な限りにおいて認められるということです。
ところで、逮捕というと警察官を連想しますが、実は、私たち一般人も犯人を逮捕することができます。
刑事訴訟法213条は、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と規定しています。
「何人でも」というのは、「なんにんでも」ということで、10人でも、100人でも、ということではないですよ、「誰でも」ということですよ。念のため。
ただし、逮捕の必要性がある場合(罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれなど)でなければいけませんし、30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の場合は、犯人の住居もしくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合にかぎります。
痴漢や万引を発見した場合、相手が逃げようとしたら、あなたも逮捕できる、ということを憶えておきましょう。
なお、逮捕したらすぐに警察を呼んで身柄を引き渡さなければなりません。
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警視庁が自転車に対する取締強化
2011年09月19日
警視庁によると、自転車の歩道走行に対する取り締まりを徹底し、自転車の車道左側走行の原則を順守させる方針を固めたそうです。そのうえで自転車のルール順守や走行環境の整備なども盛り込み、全国の警察本部で初となる包括的な自転車安全対策の策定作業に入ったとのこと。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111019-00000015-mai-soci
自転車で車道を走っているのを見ると、自動車との接触を予感させ、危険を感じてしまいます。
自転車包囲網が強化されてきていますが、自転車が車道を安全に走行できる環境の整備も急いでいただきたいところです。
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バスの衝突事故はこわい
2011年09月19日
18日18時30分ころ、新潟県上越市の北陸自動車道で、自損事故のため止まっていた乗用車に観光バスが追突し、バスのツアー客ら14人がけがをしました。全員軽傷ということです。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4830000.html
観光バスは、長時間乗るので、眠っている乗客も多いものです。
多くの場合、バスではシートベルトをしませんし、眠っている時に衝突事故を起こすと防御することができず、頸椎(首)などに損傷を負いやすくなります。
職業運転手は、他人の生命身体の安全を預かっていることを認識し、細心の注意をはかっていただきたいと思います。
法律的には、運転手には、自動車運転過失致傷罪が成立します。
14人が怪我をしているので、その治療費や休業補償、慰謝料などの支払い義務が発生します。
バス会社も使用者責任やバスの保有者責任を負担します。
さらに、バスに損傷がある場合は、修理の期間、休車損害も発生します。
会社にも迷惑をかけてしまうということです。
自損事故のため止まっていた乗用車の運転手は外に出ていたために、怪我はなかったということですが、乗用車が損傷したでしょうから、修理費相当額の損害賠償も発生します。
このように、ちょっとした不注意で、多くの法律問題が発生するのです。
くれぐれもお気を付けください。
バスの衝突事故
http://www.youtube.com/watch?v=L-QX8e66J8k&feature=related