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葉山のひき逃げ交通事故は発覚免脱罪?
2015年08月24日2015年8月23日夕方、神奈川県葉山町で海水浴帰りの男女3人がひき逃げされ死傷した事件がありました。
男性一人が死亡したほか、女性が意識不明の重体、男性一人も大けがをしました。
逮捕された男性からは、アルコールが検出されましたが、「事故を起こして自宅に戻ったあと、怖くなって酒を飲んだ」と説明しているということで、警察は友人らから話を聴くなどして当時の状況を詳しく調べています。酒を飲んで人身事故を起こした、ということであれば、当然「危険運転致死傷罪」が疑われますが、危険運転致死傷罪に問うことができるためには、事故を起こす時に、「酒に酔って正常な運転ができない状態」で運転したことを検察側が立証しなければなりません。それは、今回、難しいでしょう。しかし、法律では、酒に酔って自動車の運転に支障が生じるおそれがある状態で事故を起こし、その発覚を防ぐために酒を飲んだような場合には、「発覚免脱罪」として、罪を問われます。危険運転致死傷罪(死亡)の場合が最高懲役20年に対し、発覚免脱罪は、最高懲役12年です。しかし、発覚免脱罪は、たいてい「ひき逃げ」が加わります。発覚免脱罪に「ひき逃げ」が加わると、最高懲役18年になります。今回は、おそらく危険運転致死傷罪の適用は難しいでしょう。しかし、事故前に相当程度飲酒したことが認定できるのであれば、この「発覚免脱罪」と「ひき逃げ」の併合罪で、最高懲役18年、の適用が可能となるかもしれません。警察および検察の捜査を待ちたいと思います。 -
自転車保険の契約者が急増中!その理由とは?
2015年07月16日今年に入って、自転車保険の契約をする人が増加しているようです。
今回は、その背景について考えてみたいと思います。「自転車保険、契約ペース倍増 賠償金の高額化など背景に」(2015年7月13日 朝日新聞デジタル)
自転車で人にケガをさせたときに損害賠償金などが補償される「自転車保険」の契約件数が、前年の2倍以上のペースで伸びていると新聞が報じています。
以前は、自転車の賠償責任保険といえば自動車保険や火災保険の「特約」が主流でした。
しかし、近年では損保各社がコンビニで申し込める保険や、スマホなどインターネットから加入できる自転車単独の保険を本格的に売り出していて、昨年の2倍以上の伸びを示しているようです。年間保険料が4490円で1億円を保証するプランや、最大補償額2億円のプランなどもあり、各社とも事故の相手への賠償だけでなく、自分がケガをしたときの補償や自転車以外の交通事故、日常生活でモノを壊した際の賠償保障などもついているのが特徴だということです。
自転車保険への加入が増加している背景には、自転車事故での損害賠償金の高額化など、さまざまな理由が考えられます。
具体的に見ていきましょう。【なぜ高額賠償金の判決が増えているのか?】
以前、自転車事故の高額賠償金について解説しました。
詳しい解説はこちら⇒
「自転車での死亡事故が多発中!損害賠償金は一体いくら?」
https://taniharamakoto.com/archives/1648特に注目されたのは、兵庫県での判例でした。
2008年9月、神戸市の住宅街の坂道で当時11歳の少年がマウンテンバイクで走行中、知人と散歩をしていた60代の女性に正面衝突。
女性は頭を強打し、意識不明のまま寝たきりの状態が続いていることから、家族が損害賠償を求めて提訴。
2013年、神戸地裁は少年の母親(当時40歳)に約9500万円の支払いを命じたというものです。子供が起こした自転車事故の場合、親には監督責任があるため多額の損害賠償金は親が支払わなければいけません。
しかし、仮に保険に加入していなければ最悪は自己破産の可能性もあり、被害者も金銭的補償を得られず救済されないという問題が起こります。
そうした万が一のときのために自転車保険は有効だということです。では、なぜ損害賠償額が高額化しているのでしょうか?
最近になって裁判所の基準が変わったわけではありません。
賠償額は、被害の程度に応じて高額化します。
つまり、損害賠償額が高額化しているということは重大な被害を生じる自転車事故が増えているということになります。たとえば、上記の損害賠償額9500万円について見てみます。
内訳は以下のようになっています。
・将来の介護費用:3940万円
・事故で得ることができなくなった逸失利益:2190万円
・ケガの後遺症に対する慰謝料:2800万円
・その他、治療費など。介護費用は、「女性の1日あたりの介護費8000円×女性の平均余命年数」、で算出されていますが、今後、将来にわたって毎日介護が必要となることを考えれば、介護者の精神的、金額的な負担は相当なものになります。
逸失利益については、事故に遭わなければ将来得られたであろう収入ですから、専業主婦であったとしても、かなりの金額になります。
また、後遺症に対する慰謝料としては事故状況を考えて高額になっています。
9500万円は高すぎるのでは? と思う人もいるでしょうが、弁護士の立場からすれば、決して高くはない妥当な金額だといえます。
【自転車の危険運転の罰則は厳罰化の方向に進んでいる】
そこで、悪質で危険な自転車運転に対する罰則を厳しくするために2014年6月1日に「改正道路交通法」が施行されています。詳しい解説はこちら⇒「自転車の危険運転に安全講習義務づけに」
https://taniharamakoto.com/archives/1854信号無視や酒酔い運転、歩道での歩行者妨害、遮断機が下りた踏切への立ち入り、携帯電話を使用しながら運転するなどの安全運転義務違反等、14項目の危険行為を規定し、これらに違反した14歳以上の運転者は、まず警察官から指導・警告を受け、交通違反切符を交付されますが、3年以内に2回以上の交付で安全講習が義務づけられることになりました。
仮に受講しないと5万円以下の罰金が科せられることになります。
【自転車保険の加入を義務化した県もある】
これらの流れを受けて、なんと自転車保険の加入を県民に義務化した県もあります。詳しい解説はこちら⇒「兵庫県条例で自転車保険の加入が義務化!」
https://taniharamakoto.com/archives/1911兵庫県では、自転車が加害者となる事故が増加傾向にあるため、利用者の意識向上と被害者救済を目的に、県条例で今年(2015年)の10月からの保険加入が義務づけられました。
ちなみに、知らない人もいると思いますが、2013年には東京都と愛媛県で「保険加入を努力義務とする」条例が制定されています。
交通事故の件数自体は年々減少傾向にありますが、警察庁が公表している統計資料「平成26年中の交通事故の発生状況」によると、自転車関連の事故は10万9,269件で、この数年、交通事故全体に占める割合は約2割のまま推移しています。不測の事態で困らないために保険に加入しておくのは大切なことですが、その前に大切なことは当然、事故を起こさないことです。
手軽で便利だからといって、軽い気持ちでスピードの出し過ぎや、ながら運転、ひき逃げなどの危険行為はしないように十分気を引き締めて自転車に乗ってほしいと思います。
万が一の自転車事故のご相談はこちらから
⇒「弁護士による自動車事故SOS」
http://www.jikosos.net/ -
北海道の4人死亡事故に危険運転致死傷罪を適用できるか?
2015年06月12日6月6日、北海道砂川市の国道12号で起きた交通事故で、運転していた会社員の男性とその家族、計4名が死亡しました。
捜査が進むにつれ、事故の全容が徐々にわかってきていますが、今回は、この衝突事故において「危険運転致死傷罪」の適用があるかどうか、について検討したいと思います。
「北海道4人死亡事故:飲酒は複数の店か 100キロ超走行」(2015年6月11日 毎日新聞)
車2台が衝突するなどして一家4人が死亡した北海道砂川市で起きた事故で、死亡した長男(16)を車で引きずって逃げたとして、道交法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕された男が、事故前、砂川市内の複数の飲食店で飲酒していたとみられることが関係者への取材でわかったようです。
また、事故現場近くの防犯カメラの映像を解析したところ、死亡した家族の乗った軽ワゴン車に衝突した乗用車と、ひき逃げをしたトラックが法定速度(時速60キロ)を上回る時速100~110キロで走行していたとみられることもわかったようです。
北海道警砂川署は、容疑者の男が飲酒運転とスピードオーバーをしていた可能性があるとみて、事故前の行動を含め捜査しているということです。
この事故について、まずは時系列で概要をまとめておきます。・6月6日午後10時35分ころ、北海道砂川市の国道12号の交差点付近で、乗用車と軽ワゴン車の出会い頭の衝突事故が発生。
・7人が病院に搬送され、軽ワゴンを運転していた男性(44)と妻(44)、長女(17)が死亡。次女が重体。乗用車に乗っていた3人もケガをした。
・その後、現場から800メートル離れた路上で、長男(16)が死亡しているのが発見される。衝突事故で車外に投げ出された後、別の車に引きずられたとみて、ひき逃げの疑いで捜査が進められる。
・7日午前、ひき逃げをしたとして、男(26)が出頭。男は事故を起こした乗用車の後ろをピックアップトラックで走行していた。
・8日、道警砂川署は衝突現場に両方の自動車のブレーキ痕がないことから、どちらかが信号無視をした可能性があるとして捜査を続行。なお、乗用車は炎上、軽ワゴン車は現場から約60メートル飛ばされていた。
・現場付近の防犯カメラの映像から、乗用車と後続のトラックが猛スピードで走行していたことと、乗用車の進行方向側が赤信号だった可能性が判明。
・9日、ひき逃げをしたトラックが蛇行運転をしていた疑いが浮上。トラックに引っかかった被害者を振り落とそうとしていた可能性もあるとみて捜査を継続。なお、トラックの運転手と乗用車の運転手は幼なじみの友人であることが判明。
・出頭した男を、道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕。現場から立ち去った理由について、「任意の自動車保険に加入していなかった」と供述。
また、事故前に同乗者と居酒屋でビールを飲んだと話したことから、飲酒の検知を避けるために逃げた可能性もあるとみて、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)容疑等での立件も視野に捜査。
・11日、乗用車に乗っていた3人とトラックに乗っていた2人、計5人が事故当日の夜、居酒屋で飲食していたことが判明。また、砂川署は容疑者の男を札幌地検岩見沢支部に送検した。同署は、乗用車を運転していた男性(27)ら3人のケガの回復を待って事情を聴く方針。
では、現段階で判明していることから考えていきます。1.「危険運転致死傷罪」と「過失運転致死傷罪」の違いとは?
2014年5月20日に施行された「自動車運転死傷行為処罰法」の中でもっとも重い罪が危険運転致死傷罪です。
これは、以下の6つの行為を「故意」に行うことで成立します。
①アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状態で走行
②進行を制御することが困難高速度で走行
③進行を制御する技能を有しないで走行
④又は車の通行を妨害する目的で走行中の自動車の直前に進入その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転
⑤赤色信号等を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転
⑥通行禁止道路を進行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転最高刑は懲役20年です。
一方、過失運転致死傷罪は、前方不注視や後方確認義務違反などの「過失」によって自動車事故で人に怪我をさせたり死亡させたりした場合に成立します。
法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。詳しい解説はこちら⇒「自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(2)」
https://taniharamakoto.com/archives/1236
2.容疑者に危険運転致死傷罪を適用することはできるか?
前述の通り、故意か過失かによって刑の重さは格段に違ってきます。
まずは、ひき逃げをした容疑者のケースから見ていきます。今回の事故では、報道内容から危険運転致死傷罪の要件である、①飲酒運転、②スピードオーバーでの走行、⑤赤信号の無視、という可能性が指摘されています。
また、ひき逃げをしていることから、アルコールの発覚免脱罪の可能性もあります。ところで、すでに容疑者は、道路交通法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕されていますが、「引きずっていることを知らなかった」と供述しているようです。
しかし、蛇行運転をしていることから、仮に引きずった認識がなく蛇行運転をしたならば、飲んでいた量が「ビールジョッキ一杯」ではなく、大量に飲酒していたために「正常な運転が困難だった」となっていた可能性も視野に入ってくるでしょう。となると、危険運転致死傷罪と、ひき逃による道路交通法違反(救護義務違反)の併合罪となる可能性があります。
また、飲酒の量が証明できず、危険運転致死傷罪に問うことができなくても、飲酒事故の発覚を免れるために逃げた、ということができれば、発覚免脱罪とひき逃げの併合罪で、最高刑18年の懲役、という可能性もあります。
仮に引きずっている認識があり、振り払うために蛇行運転していたなら、「未必の故意」による殺人罪の目も出てくることになります。
未必の故意とは、ある行為が犯罪の被害を生むかもしれないと予測しながら、それでもかまわないと考え、あえてその行為を行う心理状態をいいます。
つまり、今回の事故では、容疑者が被害者を引きずることで死亡するかもしれないことをわかっていながら、蛇行運転をして振り払おうとしたかどうかの判断、ということになります。
3.追突した乗用車の運転手の罪はどうなる?
では、4人が死亡した軽ワゴン車に衝突した乗用車の運転手の罪はどうなるでしょうか?警察は、運転手ら3人の回復を待って事情聴取をするとしていますが、現段階でわかっているのは、飲酒運転、スピードオーバー、赤信号無視の可能性です。
赤信号による交差点進入が立証できれば、危険運転致死傷罪が成立する可能性が高いでしょう。
今回の事故現場は、約29キロの直線が続く「日本一長い直線道路」として知られ、とくに夜間はスピードを出す車が多く、これまでも度々、交通事故が起きていたようです。
道警交通企画課によると、北海道内で4人以上が亡くなった事故は1990年以降、約20件あり、その4割が直線の国道で起きているようです。
また、法定速度を30キロオーバーした場合の致死率は、そうでない場合と比較して63倍にもなるという分析結果があるとのことです。
現代において、自動車は日常生活に欠かせない便利なものですが、同時に人の命を奪う凶器にもなりうることを今一度認識して、ドライバーのみなさんには安全運転に努めていただきたいと思います。
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兵庫県条例で自転車保険の加入が義務化!
2015年03月23日交通事故において、加害者と被害者双方の「その後」に大きく関わってくるもののひとつに「保険」があります。
じつは、保険の歴史は古く、古代ローマ時代にまでさかのぼるといわれています。
日本では、明治維新の頃に欧米の保険制度を導入して、現在の保険の仕組みができたようです。
かの福澤諭吉が、著書の中で「生涯請合」(生命保険)や「火災請合」(火災保険)、「海上請合」(海上保険)の仕組みを紹介しているそうです。ところで先日、ある県が条例で、ある保険への県民の加入の義務化を決定したようです。
全国初の試みです。
「自転車にも賠償保険義務づけ、全国初の条例化」(2015年3月18日 読売新聞)
兵庫県議会で18日、自転車の利用者に対し、歩行者らを死傷させた場合に備える損害賠償保険への加入を義務づける全国初の条例が可決・成立しました。
自転車が加害者となる事故が増加傾向にあるため、利用者の意識向上と被害者救済を目的にしているとのことです。
施行は2015年4月1日で、周知期間を設けるため義務化は10月1日から。
なお、県交通安全協会では4月1日から、年間1000~3000円の保険料で5000万~1億円が補償される保険への加入を受け付けるということです。
このブログでも以前から、自転車事故に関して解説をしてきました。詳しい解説はこちら⇒
「自転車での死亡事故が多発中!損害賠償金は一体いくら?」
https://taniharamakoto.com/archives/1648⇒「子供が起こした事故の高額賠償金、あなたは支払えますか?」
https://taniharamakoto.com/archives/1217今回の兵庫県の条例成立には、2013年のある裁判の判決がきっかけのひとつになっていると思われます。
2008年9月、神戸市の住宅街の坂道で当時11歳の少年がマウンテンバイクで走行中、知人と散歩をしていた60代の女性に正面衝突。
女性は頭を強打し、意識不明のまま寝たきりの状態が続いていることから、家族が損害賠償を求めて提訴。
2013年、神戸地裁は少年の母親(当時40歳)に約9500万円の支払いを命じました。判決では、少年の前方不注視が事故の原因と認定。
さらに、子供がヘルメットをかぶっていなかったことなどからも、「指導や注意が功を奏しておらず、親は監督義務を果たしていない」としました。損害賠償金の内訳は以下の通りです。
・将来の介護費用:3940万円
・事故で得ることができなくなった逸失利益:2190万円
・ケガの後遺症に対する慰謝料:2800万円
・その他、治療費など。この報道を知って、多くの人が驚かれたと思います。
同時に、さまざまな意見や思いを持つ人がいたでしょう。「子供が起こした自転車の事故で9500万円とは高すぎないか?」
「被害者は意識不明の状態が続いているのだから高額賠償金は当然だ」
「なぜ親が支払わなければいけないのか?」
「うちはとても、そんな金額は払えない。自己破産だ」
「怖くなったので自転車の保険に加入しようと思う」実は、9500万円という金額は、法律家の立場からすると、けっして高額ではない、ということは言えます。
車に轢かれようと、自転車に轢かれようと、生涯にわたって治らない後遺症が残った場合には、その補償をしてもらうのが当然です。金額に差異はありません。
事故が起きたことは不幸なことですが、この事故と裁判は示唆に富み、我々に多くの教訓を与えてくれました。
・ヘルメットをかぶらせるなど、親には子供の「監督責任」があること。
・坂道を高速で下るなど、交通規則に反する行為が重大な事故を引き起こす可能性があること。
・自転車でも、ケガを負わせたり死亡させたりすれば高額な損害賠償金を支払わなければいけないこと。
・保険に加入していなければ、万が一の事故のときに加害者側は自己破産する可能性があること。
・加害者が自己破産してしまえば、被害者は補償を得られず金銭面でも救われないこと。
ところで、今回の兵庫県の条例では、次のことが定められたようです。
・通勤・通学やレジャー、観光など、県内で自転車を運転するすべての人を対象とする。
・未成年者の場合は保護者に加入を義務化。
・営業など従業員が仕事で使用する場合は企業に加入を義務化。
・自転車の販売業には客に販売する際に保険加入の確認を義務化し、未加入の場合は加入を促進させる。
・レンタルサイクル業も販売業と同様。ただし、無保険を取り締まるのは困難なことから、①自動車のような登録制度はない、②違反者への刑罰は設けない、としています。
実際、違反者への刑罰がないことからも、どの程度の効果があるのかは今後の状況を見守っていく必要があるでしょう。
しかし、被害者救済は重要なことですし、自転車利用者1人ひとりの意識も変わっていくだろうと思います。
自転車が歩行者を負傷させた事故は、2014年には全国で2551件あり、2001年の1・4倍に増えたという統計データもあります。
また、自転車保険の加入については、京都府や愛媛県など4都府県が条例で努力義務を定めています。
私としては、自転車にも自賠責保険を「法律で」義務づけて欲しいと思っています。
自転車事故は他人事ではありません。
各保険会社などが提供する自転車保険は以前よりも増え、補償内容も充実してきています。
また、火災保険や自動車保険、傷害保険の特約で自転車保険をつけられる場合もあります。備えあれば患いなし。
ご自身のためにも、また子供のためにも、これからは自転車保険の検討をする必要があるでしょう。万が一の自転車事故のご相談はこちらから
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「自動車運転死傷行為処罰法」の施行9ヶ月の適用状況
2015年02月21日悪質な運転に対する罰則を強化した、「自動車運転死傷行為処罰法」が施行されてから9ヵ月が経ちました。
交通事故に関わる人間にとって、その適用状況はつねに気になるところですが、今回、警察庁が摘発件数などを取りまとめ公表したようです。
納得できるところもあり、一方で意外な結果に驚く部分もありました。
さて、どんな結果だったのでしょうか?
「全国の昨年5~12月の摘発210件 自動車運転処罰法」(2015年2月19日 中日新聞)
警察庁は19日、「自動車運転死傷行為処罰法」について、施行された2014年5月から12月末までの全国の警察での適用状況について明らかにしました。
自動車運転死傷行為処罰法では、新しい犯罪類型が規定されたのですが、その中で、適用がもっとも多かったのは、酒や薬物、さらには病気の影響で「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」で運転をして人身事故を起こしたケースで、摘発件数は128件。
事故現場から逃走することで飲酒運転などの発覚を免れる「逃げ得」対策として新設された「発覚免脱」容疑の摘発は72件でした。
また、210件のうち14件は無免許だったため、刑が重くなる「無免許運転による加重」を適用されたようです。
2014年は、従来の規定を適用しての危険運転致死傷容疑の摘発も前年(2013年)より10件多い353件に上ったことを踏まえ、警察庁の担当者は、「適用しやすい新規定に流れたのではなく、厳しく処罰すべき対象の摘発を純粋に増やせた。今後も力を入れていく」と話したということです。
では次に、その摘発内容や件数について見ていきながら、詳しく解説していきます。「アルコールによる影響」
・けが/94件(うち無免許3件)
・死亡/9件(うち無免許1件)
計103件「薬物による影響」
・けが/11件
・死亡/1件
計12件「病気による影響」
・けが/13件(うち無免許2件)
・死亡/0件
計13件「発覚免脱」
・けが/67件(うち無免許7件)
・死亡/5件
計72件「通行禁止道路の進行」
・けが/9件(うち無免許1件)
・死亡/1件
計10件
【酒・薬物・病気による影響とは?】
「自動車運転死傷行為処罰法」の危険運転致死傷容疑は、酒や危険ドラッグなどの薬物、さらには病気の影響で「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」で運転して人身事故を起こしたケースにも適用できるようになったため、今回もっとも摘発件数が多くなったようです。ちなみに、「危険運転致死傷罪」は、致傷の場合には懲役15年以下、死亡の場合には20年以下の懲役。
「準危険運転致死傷罪」は、致傷の場合には懲役12年以下、死亡の場合には15年以下の懲役となっています。
【発覚免脱とは?】
アルコールや薬物の影響で交通事故を起こした後に事故現場から逃走することで飲酒運転などの発覚を免れようとすることを「発覚免脱」といいます。
いわゆる「逃げ得」対策として新設されたものです。逃げ得とは、たとえば酒で泥酔状態になって人身事故を起こした場合には危険運転致死傷罪が適用されますが、逃げて翌日に逮捕された場合、その時点では体内のアルコール濃度は減少しているため、危険運転致死傷罪が適用できず、過失運転致死傷罪と道路交通法違反(ひき逃げ)しか適用できないことで、刑が軽くなってしまうという問題です。
ちなみに、発覚免脱罪の最高刑12年に、ひき逃げの最高刑10年が併合されると、最高18年の懲役刑を科すことが可能になっています。
【通行禁止道路の進行とは?】
「通行禁止道路」とは、具体的には以下のようなものです。
〇自転車及び歩行者の専用道路
〇一方通行道路(の逆走)
〇高速道路(の逆走)
〇スクールゾーンなどで通行を禁止されている場合この罪が成立するには、通行禁止道路を走行するという認識が必要なため、たとえば、一方通行道路だと知らずに逆走した場合は、この罪は成立しないということになります。
【無免許運転による加重とは?】
「無免許運転による加重」も新たに加えられた犯罪類型です。
以下の罪を犯した者が、事故のときに無免許だった場合に成立します。〇危険運転致傷罪(死亡の場合や、「進行を制御する技能を有しない」犯罪類型を除く。死亡の場合を除くのは、すでに最高刑が規定されているため)
〇準危険運転致死傷罪
〇過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪
〇過失運転致死傷罪過去、無免許のよる重大事故が発生したにもかかわらず、「自動車運転過失致死傷罪」と「道路交通法違反」という軽い罰則しか科せられず社会的批判が高まったことから、世論の後押しもあって新たに規定されたものです。
警察庁のコメントによれば、「厳しく処罰すべき対象を摘発している」とのことで、自動車運転死傷行為処罰法の施行で一定の効果が出ているようですが、危険運転は、まだまだなくなってはいません。まずは身近なところから。
このブログの読者に危険運転についての知識や法律を少しでも学んで理解していただくことで、危険運転や悪質運転が少しでもなくなっていくことを望んでいます。
「自動車運転死傷行為処罰法」の詳しい解説はこちら⇒
https://taniharamakoto.com/archives/1236 -
平成26年度統計から見える交通事故の現状と問題点とは?
2015年01月10日昨年の交通事故についての統計「平成26年中の交通事故死者数について」が、警察庁から発表されました。
交通事故の件数、死傷者数ともに減少していますが、新たな問題が浮き彫りになってきたようです。「昨年の交通死4113人…高齢者の割合過去最高」(2015年1月5日 読売新聞)
平成26(2014)年の全国の交通事故の死者は4113人で、前年よりも260人(5・9%)少なかったことが警察庁のまとめで分かりました。
死者数は、平成13(2001)年から14年連続で前年より減少していますが、目立っているのは65歳以上の高齢者で、2193人が死亡。
死者の総数に占める割合は53・3%で、統計がある昭和42(1967)年以降で最も高かったようです。原因について警察庁は、高齢者の人口が増えていることや、体力が衰えた高齢者の場合、事故にあった後に死亡する確率が若い世代に比べて高いためと分析しているということです。
前者の理由はわかりますが、後者の理由は、死亡事故における高齢者の占める割合が増加した理由にはなりませんね。
高齢者の体力が衰えているのは、昔も今も変わらないわけですから。
さて、この統計からは交通事故に関するさまざまな事象が読み取れます。
順番に見ていきましょう。【事故件数】
まず事故件数ですが、前年より5万4783件少ない57万3465件で、昭和62(1987)年以来、27年ぶりに60万件を下回っています。ちなみに昭和23(1948)年以降のデータを見ると、ピークは平成16(2004)年の95万2709件で、比較すると約40%も減少しています。
【死者数】
死者数は4113人で、前年(平成25年)よりも260人(5・9%)減少しています。
死者数のピークは、昭和45(1970)年の1万6765人だったことから比較すると、75.5%減少しています。【負傷者数】
負傷者数は、70万9989人で前年よりも7万1505人の減少。
ピーク時は、平成16(2004)年の118万3616人ですから47万3627人減少しています。【月別交通事故死者数】
12月が440人で最多、ついで10月の400人、11月の377人と続きます。
最少は8月の301人となっています。過去15年分のデータを見ても、年末に死者数が増加する傾向は変わっていません。
【都道府県別交通事故死者数】
最も多かったのは愛知県で204人。
ついで、神奈川県の185人、千葉県・兵庫県の182人、埼玉県の173人の順となっています。ちなみに、最も少なかったのは島根県の26人、ついで徳島県の31人、鳥取県の34人。
都市部に多いことからも、人口と死者数は比例している傾向があります。【高齢者の死者数】
65歳以上の高齢者の死者数は2193人で、死者の総数に占める割合は53・3%になりました。
これは、統計がある昭和42年以降で最も高く、この10年間は毎年増加傾向にあります。【飲酒事故件数】
飲酒運転による事故件数は、この10年で見ると、平成16(2004)年が最多で1万5180件。
平成25(2013)年の飲酒事故件数は4335件ですから、この10年ほどで1万件以上減少しています。また、昨年の飲酒運転による死亡事故は227件で、統計がある平成2(1990)年以降で最少となっています。
これには、ドライバーの安全運転への意識が向上していることや、飲酒運転の厳罰化が影響していると考えられます。
以上、統計データから読み取れる現状の交通事故の問題点には以下のことが挙げられます。〇交通事故数、死者数ともに毎年減少しているが、交通事故死者数の減少幅は縮小している。
〇交通事故による死者における高齢者の割合は年々増加傾向にある。
〇「自動車運転死傷行為処罰法」(2014年5月施行)の悪質運転への抑制効果は確認できたが、依然として飲酒運転はなくならず、また危険ドラッグによる悲惨な死亡事故が増加している。「自動車運転死傷行為処罰法」の詳しい解説はこちら
⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236
こうした統計を踏まえ、ドライバーの人たちには、さらなる安全運転への意識向上を目指してほしいと思います。我々も新年を迎え、今一度気を引き締め、今年も交通事故被害者の救済に全力を尽くしていきたいと思っています。
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自転車での死亡事故が多発中!損害賠償金は一体いくら?
2014年09月28日自転車による死傷事故が続発しています。注意してください!
「自転車:女子高生が下り坂で衝突、歩行者が死亡 京都」(2014年9月18日 毎日新聞)
京都府の府道で17日午後7時10分ごろ、歩いて横断していた女性(79)が府立高校2年の女子生徒(16)が運転する自転車と衝突。
女性は頭を強く打ち、病院に救急搬送されたが約6時間後に急性硬膜下血腫などで死亡。
女子生徒も転倒し、あごの骨にひびが入るなどの重傷とのことです。府警によると、府道は西から東に向かう下り坂で、女子生徒はクラブ活動の帰りに坂を下っている途中で衝突したとみられ、「ブレーキをかけたが間に合わなかった」と話しているようです。
府道は西から東に向かう下り坂。
散歩が日課の女性は当日、横断歩道や信号のない場所を横断していたようで、府警は女子生徒が前方をよく見ていなかった可能性もあるとして、重過失致死罪などの容疑で調べているとのことです。
「自転車同士が衝突 高齢の女性死亡、男子高校生重傷 旭川の歩道」(2014年9月16日 北海道新聞)
旭川市の道道の歩道上で、男子高校生(16)の自転車と、70代とみられる女性の自転車が正面衝突。女性は頭を強く打ち、脳挫傷のため搬送先の病院で約6時間後に死亡。
男子高校生は鼻の骨を折る重傷を負ったということです。道警によると、現場は道路の片側のみにある平たんな歩道で、歩道幅は約2メートル。
事故当時はすでに薄暗く、2人の自転車はともに無灯火だったとみられ、自転車のブレーキ痕はなかったということです。
以前、子供が起こした交通事故などの高額賠償金について解説しました。詳しい解説はこちら⇒「子供が起こした事故の高額賠償金、あなたは支払えますか?」
https://taniharamakoto.com/archives/1217
交通事故の加害者には3つの責任が科せられます。
「刑事責任」「民事責任」「行政責任」です。京都府の事件を例にとると、刑事では「重過失致死罪」に問われ、民事では損害賠償が発生します。
法定刑は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。
重過失とは、どんな結果となるのか容易にわかる場合や著しい注意義務違反のために、起こる結果を予見・回避しなかったことをいいます。
また、未成年者の損害賠償責任について法的には、その未成年者に物事の是非善悪を理解する能力がある場合には、その未成年者本人が賠償義務を負い、その能力がない場合には親などが責任を負う、とされています。
「その能力」は、11~12歳くらいが境界線とされているので、今回の事故での女子生徒は16歳ですから本人が損害賠償をしなければいけません。
では、その金額は一体いくらになるでしょうか?
おおよその概算で計算してみます。今回のケースは、ご高齢の方でしたが、ご高齢の場合、条件次第で金額にばらつきが出てしまうので、ここでは、専業主婦の女性(30)が、自転車事故で死亡してしまった場合を計算します。
そうすると、なんと、概算で7,400万円もの賠償金を支払わなければならなくなります。
自転車の危険性を認識せず、注意を怠ってしまったばかりに、人を死亡させてしまったことで約7,400万円もの損害賠償金を支払わなければいけないのです。
現状、この女子生徒に支払い能力があるとは考えられないので、親が7,400万円もの損害賠償金を支払うことになるでしょう。
一般的な家庭にとっては大変な金額です。
簡単に支払えるものではないですね。仮に、この親が自己破産してしまった場合、被害者の女性の遺族は賠償金を回収できなくなってしまいます。
このブログでは何度も書いてきましたが、交通事故では被害者も加害者も、お互いが不幸な結果になってしまいます。
自転車は手軽で便利なものですが、一歩間違えば凶器にもなることを大人も子供も、今一度認識してほしいと思います。
また、交通事故は、ある日突然起きるものですから、まさかの時の備えとして自転車保険への加入などを検討するべきだと思います。
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薬を飲んだだけで「危険運転致死傷罪」!?
2014年09月25日飲酒運転が、もちろん犯罪であることは誰でも知っているでしょう。
また、危険ドラッグに関する報道は最近特に多いので、使用が疑われる運転が発覚した場合、事故を起こしていなくても現行犯逮捕されることを知っている人も増えていると思われます。
詳しい解説はこちら⇒「脱法ハーブで危険運転致死傷罪か!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1530「危険ドラッグで自動車運転しただけで現行犯逮捕です」
https://taniharamakoto.com/archives/1592では、市販薬を服用して自動車を運転した場合はどうでしょうか?
先日、薬物による危険運転致傷容疑で書類送検されるという事故が起きました。
ドラッグストアで普通に買えるクスリを飲んで起こした自動車事故で書類送検とは、一体どういうことでしょうか?
「鎮静剤12錠飲み運転、追突事故…女を書類送検」(2014年9月18日 読売新聞)
宮崎北署は、鎮静剤を大量に服用し、正常な運転が困難な状態で車を運転していたとして、宮崎市在住の女を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致傷)容疑で宮崎地検に書類送検しました。
報道によると、容疑者の女は6月16日午後1時10分頃、同市の市道で乗用車を運転中、薬物の影響で正常な運転が困難になり、赤信号で停車していた軽乗用車に追突。
男性(41)に首の捻挫など6日間のけがを負わせた疑いとのことです。女は運転前に、「1回1錠、1日3錠まで」と服薬方法が書かれた市販の鎮静剤を12錠飲んでいたようで、男性の110番で捜査員が現場に駆けつけた際、運転席で意識がもうろうとしていたということです。
鎮静剤を一度に12錠も服用するとは、やはり飲みすぎです。
今回の事故、まさにそこがポイントとなります。もちろん、鎮静剤を飲んで自動車事故を起こしただけでは「自動車運転死傷行為処罰法」の「危険運転致死傷罪」には該当しません。
鎮静剤を大量に飲むことによって意識がもうろうとなり、“正常な運転が困難”になることを“認識しながら”運転したかどうかが問題となります。
「自動車運転死傷行為処罰法」
第2条(危険運転致死傷)
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。1. アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
第5条(過失運転致死傷)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
「危険運転致死傷罪」と「過失運転致死傷罪」の違いは、「故意」か「過失」が問題になります。現段階では書類送検であり、まだそこまで認定されているわけではないので、今後の捜査次第ですが、容疑者がこれまでも12錠飲んで、意識がもうろうとなっていたにも関わらず、あえて今回も運転したなら危険運転致傷罪が適用される可能性があります。
一方、今回初めて大量に飲んだので効き目がわからず、自分では正常に運転できる、と思っていた場合には、過失運転致傷罪が適用される可能性があります。
いずれにしても、クスリは使用上の注意をよく守って服用しなければいけません。
自分の身体のために飲むクスリですが、自動車を運転するときは要注意ですね。
自動車を運転するときは、「クスリはリスク」なのです。
逆から読んでも「クスリはリスク」ですから、くれぐれも気をつけなければなりませんね。(;´Д`)アウ…
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危険運転はなくならない!?-自動車運転死傷行為処罰法施行1ヶ月
2014年06月29日危険・悪質な運転による死傷事故を厳罰化するために新設された「自動車運転死傷行為処罰法」が施行されて1ヵ月が経ちました。
「自動車運転死傷行為処罰法」の詳しい解説はこちら
⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236この度、警視庁がまとめた1ヵ月の摘発状況が公表されたのですが、果たして、どのような結果だったのでしょうか?
「新規定で18件摘発=悪質事故厳罰化1カ月―警察庁」(2014年6月26日 時事通信)
警察庁の発表によると、自動車運転死傷行為処罰法の施行から1ヵ月間の摘発状況をまとめたところ、18件に適用されたということです。
内訳は、「アルコール、薬物、病状の影響で運転に支障が生じる恐れを認識していた危険運転致死傷罪」が最多の8件、「通行禁止道路を進行した危険運転」が1件、「アルコールや薬物の影響の発覚を免れようとする免脱罪」は6件、さらに、これらの違反者が「無免許運転だった場合の罰則の加重」は3件あったとしています。
そもそも、自動車運転死傷行為処罰法は、栃木県鹿沼市で起きた、てんかん患者の運転手の発作により小学生6人をはねて死亡させた「鹿沼市クレーン車暴走事件」(2011年4月)や「京都祇園軽ワゴン車暴走事故」(2012年4月)、無免許・居眠り運転が原因で起きた「亀岡市登校中児童ら交通事故死事件」などの重大事故の遺族の方などが危険運転の罰則の見直しを望んだことから世論の後押しもあって新設されたものです。
しかし、単純計算すると、この1ヵ月では40時間に1件の割合で、危険・悪質事故が起きたことになります。
先日、発生した脱法ハーブに絡んだ池袋の死傷事故など、依然として危険・悪質事故は絶えません。
詳しい解説はこちら⇒「脱法ハーブで危険運転致死傷罪か!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1530新しい法律を作っても、それを国民に広く知らしめなければ、抑止効果は薄いと思います。
今回の自動車運転死傷行為処罰法の施行については、国民に対する告知が足りないように感じています。
危険な運転をすると、いかに重い処罰を受けることになるのか、広く国民に知ってもらい、少しでも悲惨な事故が減少するよう祈ります。
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脱法ハーブで危険運転致死傷罪か!?
2014年06月25日6月24日の夜、池袋の路上で脱法ハーブを吸った男が自動車を運転し、8人が死傷するという事故を起こしたようです。
「“全く記憶がない”池袋脱法ハーブ事故、逮捕の男 危険運転致死傷適用検討」(2014年6月25日 産経新聞)
24日午後8時前、池袋駅近くの路上で自動車が歩道に突っ込み、歩行者を次々にはねながら約40メートルにわたって走行。20代の女性が死亡、男女3人が重傷、4人が軽傷を負いました。
運転していた埼玉県の飲食店経営の男(37)は調べに対し、「池袋で脱法ハーブを買い、運転前に車の中で吸った。途中からまったく記憶がない」と供述。
目撃者によると、男は事故後、酒に酔ったような状態で運転席からなかなか出ようとせず、よだれを垂らして口の周りには泡があふれた状態だったということです。
警視庁交通捜査課は当初、男を自動車運転処罰法違反の「過失運転致傷」の容疑で現行犯逮捕。
その後、死亡者が出たことから「過失運転致死傷」容疑に切り替えて調査していましたが、薬物の影響で正常な運転ができない状態だったとみて、さらに罰則の重い「危険運転致死傷」容疑の適用を検討しているようです。
自動車運転処罰法違反で危険運転致死傷罪となると、死亡の場合、最長で懲役20年です。
ところで、「過失運転致死傷」と「危険運転致死傷」の違いは何でしょうか?
大きく、2つのポイントがあります。
〇アルコールや薬物(脱法ハーブも含む)などの影響により、正常に運転ができない状態だった。
〇過失ではなく、故意に危険運転をした。今回の事故で容疑者の男は、「脱法ハーブを吸った」「人をはねたのは間違いない」「脱法ハーブを車の中に置いてある」「過去にも吸ったことがある」「途中からまったく記憶がない」などと供述していることから、危険運転致死傷罪が成立する可能性は高いでしょう。
「自動車運転死傷行為処罰法」の
詳しい解説はこちら⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1236近年、脱法ハーブによる事件が多発しています。
また、こうした薬物の吸引が原因とみられる交通事故も増加しています。「後絶たぬ脱法薬物交通事故 昨年の摘発は前年比2倍超」(2014年6月25日 産経新聞)
報道によりますと、平成25年の脱法ハーブを含む薬物の吸引が原因とみられる事故は前年比で2倍以上に増加。
今年4月施行の「改正薬事法」では、販売だけでなく所持にも罰則が科せられ厳罰化が進められていますが、乱用に歯止めがかからないとしています。
今後、脱法ハーブにも、新たな法整備が必要とされる事態も考えられます。
まずは脱法ハーブの危険性と違法性を十分に理解すること、そして安易な考えで車の運転をしないことの徹底が大切だと思います。