医療事故の情報開示
千葉県の日本医科大千葉北総病院で、重い脳障害を負った2歳の男児の出産時の処置について、院内の調査委員会の結論が「医療過誤はなかった」となったことから、男児の母親が院内の調査委員会の議事録の開示を求めたところ、病院側は、個人情報保護法の例外規定を理由にこれを拒否した、とのことです。
医療事故が起こった場合に、医師が故意にミスを犯したと考える患者はいないでしょう。しかし、それでもクレームや医療過誤訴訟が多発する理由は、病院側の対応に問題があるケースが多いように思います。
つまり、患者側としては、とにかく「真実が知りたい」という気持ちが一番です。もちろん医療過誤があれば損害賠償に発展するのでしょうが、それよりも真実を知りたい欲求が極めて強いように感じます。
ところが、病院側としては、「賠償請求されないようにしたい。」という気持ちが強く、情報を隠そうとします。「情報がなければ訴えられることもないだろう。」というわけです。あるいは「何も悪くないのだから、見せる必要もない。」と考えることもあるでしょう。しかし、情報を隠せば隠すほど、患者の病院に対する不信感は、どんどんと膨れあがっていきます。
そして、不十分な情報のもとで、患者側が他人や他の医師の助言を得ると、情報が少ないが故に「医療過誤の疑いがある」と無責任な助言をされることもあります。
その結果、患者の病院に対する不信感は増大し、「医療過誤があったのではないか。だから隠そうとするのではないか。」という気持ちに支配されていきます。そして、弁護士事務所に駆け込み、紛争へと発展していくケースがあります。
後で公開されることが前提になると、会議での発言も変わってきたりするので、今回、議事録を開示しないのはやむを得ないにしても、別の方法で患者側に対し、正確な情報を伝えることが、患者側にとっても病院側にとっても望ましい方向に向かうものと考えます。