パースペクティブ・ゲッティング
こんにちは。弁護士の谷原誠です。
「相手の立場に立って考えなさい」
これは、デール・カーネギーの時代から対人関係の黄金律とされてきた教えです。
ビジネスの世界の名言でもあります。
ヘンリー・フォード「成功の秘訣というものがあるとしたら、それは他人の立場を理解し、自分の立場と同時に他人の立場からも物事を見ることのできる能力である。」
心理学やコミュニケーションの分野では、これを「パースペクティブ・テイキング(視点取得)」と呼びます。
しかし、科学的な検証は、この直感的に正しそうなアプローチに潜む意外な「罠」があると主張しています。
シカゴ大学のニコラス・エプリーらの研究によると、相手の視点を頭の中で「想像する」だけでは、相手の心を読む精度は上がらないどころか、かえって低下するという結果が出たそうです。
私たちは自分の経験や偏見というフィルターを通して相手の気持ちを推測してしまうため、「自分と同じように考えるはずだ」という過剰な自信を生み出したり、意見が対立している場面では相手の身勝手さを過大評価したりしてしまうというのです。
例えば、誰かが「心が重い」と漏らした場合、その人の立場に立って、「どんな辛いことがあったのですか?」と声をかけるのは、相手の立場に立っているでしょうか。
将来への不安を抱いているかもしれません。その場合、過去を尋ねても意味がありませんね。
では、間違えないように、「元気出しなよ!」と声をかけるのはどうでしょうか。
うつ状態だったら、どうでしょうか。逆効果かもしれませんね。
このようなケースでは、自分では、「相手の立場に立っている」と信じ込んでいるわけですが、実は、どっぷりと「自分の立場に立っている」わけです。
そして、自分の考えを押し付けていることになります。
ここで検討すべきは、「パースペクティブ・ゲッティング(視点獲得)」というアプローチです。
これは、相手の心を自分の頭の中で勝手に推測するのをやめ、直接質問する、という方法です。
「どうしたの?」
と自由回答を求めることで、徐々に核心に迫っていきます。
ここでも質問力の重要性が発揮されます。
この、想像から質問へのパラダイムシフトで、日常のコミュニケーションがスムーズになり、すれ違いを防ぐ鍵となるかもしれません。













