【昔話法律講座】「金太郎その1」~里に下りて大騒動 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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【昔話法律講座】「金太郎その1」~里に下りて大騒動

2017年09月26日

現代に伝わる昔話には、古の人々の知恵や教訓が詰まっています。

現代で解釈しなおすと、それは、法的な知恵や教訓を教えてくれる物語ともなりえます。

以下は、フィクションです。

タイトルは、【金太郎】。

足柄山に住んでいた力自慢の金太郎は、熊と相撲を取ったりしながら山の動物たちと仲良く暮らしていました。
その後の金太郎は、源頼光という武将にスカウトされ、坂田金時という名の武士になり、酒呑童子という鬼を退治するために丹波の国の大江山に向かうというお話です。

「金太郎、里に遊びに行って大騒動の巻」

昔々、相模国の足柄山の山奥に「金太郎」という名前の少年が母親と暮らしていました。

金太郎は生まれた時から並外れた怪力の持ち主で、重い石臼を引きずってハイハイするほどでした。

金太郎が歩き始めた頃、母親は真っ赤な腹掛けを作ってくれました。
着けてみると、まだ大きくブカブカな感じでしたが、金太郎は気に入って、いつも真っ赤な腹賭けをかけて、森の動物たちを相手に遊んでいました。

しばらくすると、さらに力強くなった金太郎に母親は“まさかり”を手渡して、こう言いました。
「お前は力が強いから、このまさかりで薪割りの手伝いをしておくれ」

数年が経ち、金太郎と動物たちは少し大人になっていました。

すると、ある日、サルが言いました。
「なぁ金ちゃん、みんなで里に遊びに行ってみないか?」
「さと?」

金太郎は山でしか暮らしたことがないので里のことを知りませんでしたが、なにやら楽しそうです。
「人里は危険だ」という意見もありましたが、冒険心に火がついた一行は“善は急げ”とばかりに早速、山を下ることにしました。

麓の村にはたくさんの人たちがいて、にぎやかです。
子供たちは楽しそうに竹で作った不思議なおもちゃで遊んでいました。
見たこともない食べ物を美味しそうに頬張っている人もいます。

その様子を物陰から見ていた金太郎たちのところに、どこからともなく美味しそうな匂いが漂ってきました。
金太郎は辛抱たまらず、引き寄せられるように、ふらふらと無意識のうちに村の通りの真ん中に歩み出てしまいました。

すると、一瞬の静寂の後、女たちの悲鳴が村に響き渡りました。
「キャアァァァ~、変態ぃぃぃ~、誰か捕まえて~!」

それを聞きつけた村のお役人が2人、急いで駆けつけました。

そこには、おかっぱ頭の金太郎が立っていたのですが、真っ赤な腹掛けがブカブカで、下半身が露出していたのです。

そして、手には大きなまさかりが。

お役人は叫びました。
「公然わいせつ罪、および、銃刀法違反で逮捕する!」
2人のお役人は金太郎に飛び掛かかると、縄で体を縛り付けようとしました。

一体、何が起きているのかわからない金太郎でしたが、縛られるのはイヤなので、「ヒョイッ」とお役人を振りほどくと、2人はもんどりうって地面に叩きつけられてしまいました。

薄れゆく意識の中で、お役人はつぶやきました。
「こ…公務…執行…妨害……」

物陰に隠れていたサル、シカ、ウサギ、リスは慌てて飛び出し、金太郎を回収して山の隠れ家にかくまいました。

お役人は、さらに薄れゆく意識の中で、夢を見ました。
「サルたちよ。お前らもか・・・犯人蔵匿罪・・・」

こうしてお尋ね者となった金太郎とゆかいな仲間達は、またしばらく山で暮らすことになりました。

つづく…

 

【法律メモ】

「刑法」
第174条(公然わいせつ)
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

詳しい解説はこちら⇒
「公然わいせつ罪」と「身体露出の罪」の違いとは?

 

「銃刀法」
第22条(刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物の携帯の禁止)
何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。

 

これに違反をした場合、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金。(第31条の18の3号)

詳しい解説はこちら⇒
日本刀の模造刀でも銃刀法違反!?

 

「刑法」
第95条(公務執行妨害及び職務強要)
1.公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2.公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

 

詳しい解説はこちら⇒
ひき逃げが殺人罪に!?

 

「刑法」
第103条(犯人蔵匿罪及び隠避罪)
罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

詳しい解説はこちら⇒
犯人を匿うと犯罪です