日本刀の模造刀でも銃刀法違反!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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日本刀の模造刀でも銃刀法違反!?

2015年10月24日

今回は、彼女が最近ハマっている、ある趣味が法律違反なのではないか? と心配する男性からの相談です。

一体、どんなことにハマッているのでしょうか?

Q)最近、「日本刀ブーム」だそうで、特に女性に人気があるらしく、私の彼女もハマっています。先日、誕生日のプレゼントは何が欲しいか訊いたところ、「日本刀の模造刀!」ということで、その後は延々とその魅力について聞かされました…。ところで、法律的には模造刀の所持については犯罪にならないのでしょうか? 職務質問ではナイフを持っているだけで逮捕される、という話も聞きますが、実際どうなのでしょうか?

A)刃物を所持していると「軽犯罪法」、もしくは「銃刀法」違反として逮捕される可能性があるので注意してください。
また、日本刀の模造刀であっても携帯して持ち歩くと犯罪になる可能性があります。
以下に解説していきます。
軽犯罪法は、1948(昭和23)年に施行されたもので、のぞきや露出、騒音、迷惑行為など、軽微な秩序違反行為に対する法律です。
さまざまな行為が規定されており、全部で33の行為が罪として定められています。

条文を見てみましょう。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

2.正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
「拘留」とは、受刑者を刑事施設に1日以上、30日未満(最長29日間)の範囲で拘置する刑罰です。
同じような刑罰に「禁固」がありますが、拘留は禁固とは違い執行猶予が付されないため、必ず実刑になります。
また、懲役刑のように、刑務所などの刑事施設での所定の作業を行う必要はありませんが、禁固と同様に受刑者が望めば作業を行うこともできます。

「科料」とは、1000円以上、1万円未満(9999円以下)の金銭を強制的に徴収するという刑罰です。
1万円以上の金額の刑罰の場合は「罰金」になります。
なお、科料の場合も検察庁が保管する「前科調書」に記載されるため、「前科」がついてしまいます。

ちなみに、警視庁のサイトでは条文にある「正当な理由」としては、店で刃物を購入して自宅に持ち帰ることなどを挙げていて、繁華街等でからまれたときに身を守るための護身用に持ち歩く、というのは正当な理由にはあたらないとしています。

また、ハサミやカッターナイフなどの文房具でも、自宅や居室以外の場所で、正当な理由なしに、すぐに使える状態で持ち歩くと取り締まりの対象になるとしていることにも注意が必要です。
では次に、「銃刀法」について見ていきましょう。

「銃刀法」は、正式名称を「銃砲刀剣類所持等取締法」といい、1958(昭和33)年に銃や刀剣などの取り締まりを目的として施行された法律です。

「銃刀法」
第2条(定義)
2.この法律において「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフをいう。
第3条(所持の禁止)
何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲又は刀剣類を所持してはならない。

1.法令に基づき職務のため所持する場合
第4条(許可)
次の各号のいずれかに該当する者は、所持しようとする銃砲又は刀剣類ごとに、その所持について、住所地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。
わかりやすくまとめると、次のようになります。
・刃渡り15cm以上のものは「刀」、5.5cm以上のものは「剣」。
・法令に基づき職務のために所持する場合以外は、原則として所持は禁止。これに違反した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金。(第31条の16の1号)
・所持するには、都道府県公安委員会の許可を受けなければいけない。
・18歳未満の者、精神障害等の政令で定めた病気がある者、アルコールや麻薬中毒者、住居が定まらない者などは所持を許可されない。

また、刀剣については所持だけでなく携帯の禁止についても規定されています。

第22条(刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物の携帯の禁止)
何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。
これに違反をした場合、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。(第31条の18の3号)

さらには、模造刀に関する規定もあります。

第22条の4(模造刀剣類の携帯の禁止)
何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、模造刀剣類(金属で作られ、かつ、刀剣類に著しく類似する形態を有する物で内閣府令で定めるものをいう。)を携帯してはならない。
つまり、質問者の彼女の場合、趣味として日本刀の模造刀を手に入れて、家で触ったり、眺めたりするのは問題ありませんが、外に持ち出してしまうと銃刀法違反で逮捕、20万円以下の罰金(第35条の2号)に処される可能性があるということです。

「刀剣女子」と呼ばれるマニアの人たちには、いくら模造刀とはいっても、その扱いには十分注意して法律を遵守して、趣味の世界を楽しんでほしいと思います。