いたずらは、犯罪になりやすい。 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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いたずらは、犯罪になりやすい。

2017年03月22日

今回は、いたずらも度が過ぎると犯罪になる、ということについて解説します。

「コンビニでいたずら、動画投稿…男を書類送検」(2017年3月18日 読売新聞)

富山中央署は、富山市内のコンビニ店でいたずらする様子が動画投稿サイトで公開された事件で、動画を投稿した富山市の20歳代の男を軽犯罪法違反(いたずらによる業務妨害)と富山県迷惑防止条例違反(卑わいな言動)の疑いで富山区検に書類送検しました。

事件があったのは今年1月。
男は、富山市内のコンビニ店でズボンの上から股間を触った手で商品のアルコール飲料に触れる様子をスマートフォンで撮影。
動画を投稿サイトに投稿して店の業務を妨害するなどした疑いだということです。
まずは、軽犯罪法から見てみます。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

31 他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者
「いたずらなど」の定義が曖昧ですが、ここでは刑法の偽計業務妨害罪と比較しながら考えてみます。

「刑法」
第233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
「虚偽の風説の流布」とは、真実とは異なった内容の虚偽・ウソを不特定多数の人に知れ渡るよう広めることです。
法律上、噂として広めることでも犯罪が成立しますが、その噂やウソが本当のことだった場合は罪には問われないとされています。

「偽計」とは、人を欺く、だますことです。

過去には次のような事件を解説しています。

「ウソの注文をすると犯罪になります。」
https://taniharamakoto.com/archives/1957/

ネットからミカン10箱のウソの注文をしたという事件でした。

「カンニングが犯罪!?」
https://taniharamakoto.com/archives/2351/

これは、資格試験での集団カンニングが罪に問われた事件でした。

その他にも次のような判例があります。

・新聞社の経営者が他紙の購読者を奪うため同紙と紛らわしい題号に改名し、その題字の体裁を酷似させて発行したもの(大判大4・2・9録21‐81)

・バスの乗客に対し「この運転手は癇癪(かんしゃく)を起こすから用心しなさい」と告知したもの(大判昭10・3・14集14‐261)

・虚偽内容の仮処分命令の申請書を裁判所に提出し、裁判官を欺罔(ぎもう)して得た家屋明渡しの仮処分命令を執行して、新聞社の社屋を明け渡させたもの(大判昭15・8・8集19‐529)

・国籍不明の外国人が近海域に不法入国した旨の虚偽の犯罪事実を通報し、海上保安庁職員を出動させたもの(横浜地判平14・9・5判タ1140‐280)

これらに比べて、今回の事件のような行為は些細なもの、「いたずらなど」の範疇であると判断されたということでしょう。

一方、「偽計」には当たらず、「いたずらなど」と判断されて軽犯罪法違反に問われたものには次のような判例があります。

・地下歩道内の非常ベルをいたずらで押した(旭川簡判昭50・7・2刑裁月報7・7‐8・795)

・百貨店で開催された物産展で飾られていた中国国旗のような旗を引き降ろした(長崎簡略式命令昭33・12・3判時172・15)

なお、刑法の偽計業務妨害罪は一般人の業務に対する妨害行為が該当し、公務員の業務(公務)に対する妨害には公務執行妨害罪が適用されますが、この軽犯罪法31号の「他人の業務」には、一般人の業務だけでなく、警察官や消防士などの公務も該当するので注意が必要です。

次に、迷惑防止条例違反についてですが、現在では全国の47都道府県すべてで定められています。
これは、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為などを防止し、住民生活の平穏を保持することを目的としています。

富山県の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、第3条に卑わいな行為の禁止として、「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人に対し、正当な理由がなく、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為をしてはならない」と規定されています。

自分の股間を触った手でコンビニの商品を触ることは、卑わいで人に不安を覚えさせる行為であるということですね。

いずれにしても、いたずらのつもりで行なったことでも犯罪になるということは、しっかり覚えておいてほしいと思います。