安全配慮義務を怠ると会社は損害賠償請求される!?
中華料理店の料理人が、重い鍋を振りすぎて体を壊したとして会社を訴えた訴訟の判決が出たようです。
裁判所は、どのような判決を下したのでしょうか?
「鍋振り続け脚の骨損傷…餃子の王将と男性が和解」(2015年6月5日 読売新聞)
「重い中華鍋を立ったまま振らされ続け、脚の骨を損傷した」として、中華料理チェーン「餃子の王将」の大阪府内のフランチャイズ店で働いていた男性(40歳代)が運営会社に対し約3600万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁であり、運営会社が男性に400万円を支払う条件で和解が成立したようです。
報道によると、男性は2009年7月から調理場スタッフとして週6日、1日約12時間勤務。
1回に15~20人前の食材が入った中華鍋を振っていたところ、股関節に負担がかかり、痛みを訴えたが調理を続けさせられ、2011年1月に退職。
その後、病院で「脚の付け根の骨の一部が壊死している」と診断され、人工股関節を入れたということです。
男性は、「鍋の重さは食材を含め5キロ以上あり、過酷な業務で症状が悪化した。店には安全配慮義務違反があった」と主張。
運営会社は、「業務との因果関係はない」と反論していたようです。
なお、和解について運営会社は取材に応じず、フランチャイズ契約を結ぶ王将フードサービスは「コメントできない」としているということです。
5キロ以上の中華鍋を1日に何度も振り続ける仕事を、体感的に想像するのは未経験者にとっては難しいですが、大変な重労働であることはわかります。
しかし、男性が体を壊す前に会社も本人も、できることはなかったのでしょうか?
今回の事案でポイントとなったのが「安全配慮義務違反」です。
労働契約法では、使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならないとされています。
この安全配慮義務に違反した結果、労働者に傷病が発生した場合には、会社は、債務不履行責任として損害賠償義務を負担します。
その損害賠償とは、今回の例で言うと、治療費、入院看護費用、入院雑費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料、後遺症に基づく慰謝料、逸失利益、などです。
その合計が、400万円という和解金となった、ということですね。
仕事上、労働者が怪我をしたり、病気になった場合には、労災保険給付がされることがありますが、これ以外にも、会社に前記のような安全配慮義務違反があった場合には、別途会社は損害賠償責任を負担する可能性があります。
したがって、会社は、常に、労働者の安全に配慮しなければならない、ということです。
餃子の王将も、本件を契機として、再発防止策を社内で策定しているのではないでしょうか。
問題が起こった時は、その問題に対処すると同時に、再発防止策を検討、策定することがとても重要です。
労働問題の相談は、こちら。
http://roudou-sos.jp/