窃盗か占有離脱物横領か
2007年04月26日
ゴルフ場に忍び込み、池ポチャボールを拾って新品同様に磨き上げ、売りさばいていた男(62)が逮捕、起訴されたそうです。
15年間で数千万円の利益を得たとのこと。経費はゴルフ場までの交通費や磨くための費用、売却費用だけなので、ほとんどが利益ということでしょう。
この場合、窃盗罪が成立するか、占有離脱物横領罪が成立するか、という問題があります。
窃盗罪は、「他人の財物を窃取」することであり、事実上の所持(占有)を侵害するところに本質があります。10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法235条)。占有離脱物横領罪は、占有を離れた他人の者を横領した場合であり、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金もしくは科料です(刑法254条)。
池ポチャボールは、元の所有者であるゴルファーは、これを取り返す意思は放棄しているのが通常であり、ゴルファーの占有は離れているといえるでしょう。
しかし、池はゴルフ場が管理する敷地内にあり、その池の中のボールはゴルフ場が占有するボールと言うことができます。そうすると、池ポチャボールを盗み出すことは、ゴルフ場がボールに対して持っている事実上の所持(占有)を侵害していることになり、窃盗罪が成立します。
このような観点から、過去の判例では、客が旅館内の便所でなくした財布は旅館主の占有にあるので窃盗罪としたものがあります。
それにしても、池ポチャボールを盗んで10年以下の懲役又は50万円以下の罰金であることを考えると、先日成立した「自動車運転過失致死傷罪」で、人を死亡させた場合でも、その罰則が、懲役7年以下の懲役または禁錮もしくは100万円以下の罰金であるのは軽い気がします。