課税庁が文理解釈を誤った裁判例 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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課税庁が文理解釈を誤った裁判例

2019年06月16日

憲法30条は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う」とし、84条で、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」として、租税法律主義を定めています。

そして、租税法律主義は、課税要件法定主義、課税要件明確主義を要請します。

課税要件は、納税義務ないし租税債務が成立するための要件です。

課税要件法定主義および課税要件明確主義からは、納税義務を成立されるための要件は、法律又はその具体的・個別的委任による政省令等で定められることが必要であり、かつ、その定めは可能な限り一義的で明確である必要があります。さらに、その明確に定められた要件は、その文理に従って解釈されなければなりません。

したがって、租税法規の解釈は、文理解釈が原則となります。

過去には、課税庁が、文理解釈を誤ったことにより、納税者が勝訴した裁判例がいくつかあります。

最高裁平成22年3月2日(百選第6版13事件)のホステス源泉所得税事件は、パブクラブを経営する納税者が、使用しているホステスに対して半月ごとに支払う報酬にかかる源泉所得税を納付するに際し、5000円に半月間の全日数を乗じて各月分の源泉所得税額を算出し、それに基づいて計算した額を納付していたところ、税務署長が、半月間の全日数ではなく、実際の出勤日数を乗ずべきであるとして納税告知および不納付加算税の賦課決定を行った事案です。

この事案では、所得税法施行令322条の「当該支払金額の計算期間」が問題となりました。

この「期間」についての法解釈について最高裁は、「一般に、『期間』とは、ある時点から他の時点までの時間的隔たりといった、時的連続性を持った概念であると解されているから、施行令322条にいう『当該支払金額の計算期間』も、当該支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時的連続性をもった概念であると解するのが自然であり、これと異なる解釈を採るべき根拠となる規定は見当たらない」「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきものではなく・・・・『当該支払金額の計算期間』は、本件各集計期間の全日数となるものというべきである」として、納税者勝訴判決を出しました。