大声を出すだけで犯罪が成立する場合とは? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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大声を出すだけで犯罪が成立する場合とは?

2016年10月16日

迷惑な隣人トラブルの中でも、もっとも多いもののひとつに「騒音トラブル」があげられます。

マンションの上階や隣室からの騒音、隣家からの赤ちゃんや飼い犬の鳴き声、自動車やバイクのエンジン音、ピアノの音や近所のスナックのカラオケの音など、本人にとっては騒音でなくても近隣住民にとっては不快な音になり得るものはたくさんあります。

騒音が原因で寝られない、うつ状態になったといった健康被害が出たり、最悪のケースでは殺人事件にまで発展することもあります。

こうした騒音トラブルにどう対応したらいいのか、また民事裁判での判断基準などについては以前にも解説しています。

詳しい解説はこちら⇒「隣人トラブルから人間性が見える」
https://taniharamakoto.com/archives/1340

では、こうした騒音トラブルを刑事事件として取り締まる法律はないのでしょうか?

じつは、軽犯罪法違反になる可能性があります。
まずは条文を見てみましょう。

「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

十四 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者

軽犯罪法は、軽微な33の秩序違反行為について規定している法律です。
その中の14番目に規定されているのが、「静穏妨害の罪」と呼ばれるものです。

これに違反すると、拘留又は科料となります。
※拘留=受刑者を1日以上30日未満で刑事施設に収容する刑罰
科料=1000円以上、1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰

条文にあるように、静穏妨害の罪でポイントとなるのは次の3点です。

①公務員の制止をきかない
②音を異常に大きく出して静穏を害する
③近隣に迷惑をかける

たとえば、隣家などで宴会のようなものが行われていて、酔っ払いたちの大声や音楽などの騒音があり、限度を超えていたため警察に通報したとします。

駆けつけた警察官が注意したのに、その後もその制止を聞かずに騒音を出した場合、上記①が当てはまります。

次に上記②について考えてみます。
異常に大きな音とは、どの程度の音をいうのでしょうか。

その場で音の大きさを計測するわけにもいかないと思いますが、基本的には、社会通念上、一般の人が我慢できない大きな音、騒音と感じるレベルの不必要な音ということになるでしょう。
最後に、上記③について考えてみます。
近隣とあるので隣家、隣室だけでなく、また騒音に迷惑している人は1人ではなく、最低でも近所の数人は必要であると考えられます。

迷惑の基準も明確にできるものではありませんが、たとえば騒音のために家族で会話ができない、テレビやラジオの視聴ができない、イライラして仕事ができない、寝られないといったことが当てはまるでしょう。

なお、近隣といっても住宅だけではなく、たとえばスナックや居酒屋などの店舗の営業や選挙の街頭演説、ライブパフォーマンスなども含まれます。

騒音を出しているほうには、得てして相手に迷惑をかけているという意識がない場合があると思います。
最近では、「家飲み」する人も増えているようですが、ハメを外して友人と盛り上がりすぎていると、場合によっては騒音を出すことで犯罪となる可能性があるので、十分注意してほしいと思います。