会社破産と代表者・経営者の法的責任は?
会社破産と代表者・経営者の法的責任は?
会社の資金繰りが悪化し、買掛金や銀行等への支払ができなくなった場合、破産手続を選択することがあります。
この場合は、会社は、破産し、「破産管財人」がついて、会社資産をお金に換え、債権者に配当することになります。
では、この場合、会社の代表者・経営者、どうなるのでしょうか?
何らかの法的責任が発生するのでしょうか?
【原則として代表者は責任を負わない】
まず、原則としては、代表者は、会社の債務について支払う責任がありません。
法律では、法人は法人、個人は個人と、「法人格」が異なります。
法人で負担した債務は法人が支払い、個人が負担した債務は個人が支払う、というのが原則です。
したがって、債権者から「会社が払えないなら、社長であるお前が払え!」と言われても、「いいえ、私個人には支払う義務はありません」ということになります。
しかし、例外もあります。
それは、
①会社の連帯保証をしている場合
②経営において悪意または重過失で会社や債権者に損害を与えた場合
です。
【会社の連帯保証をしている場合】
日本の中小企業の金融実務では、会社が銀行その他の金融機関から融資を受ける場合、代表者が連帯保証をするのが通常です。
したがって、会社が銀行から3億円の借入がある、ということになると、通常は、代表者は3億円の連帯保証をしていることになります。
そうなると、会社が破産した場合には、金融機関は連帯保証人に請求することになりますので、代表者の自宅に金融機関から内容証明郵便が届くことになります。
自宅が担保に入っている場合には、銀行等から「任意売却」を求められたり、競売の通知が届いたりすることでしょう。
連帯保証は、「債務者が払えない時は、私が払います」という約束なので、この場合には、会社を破産させても代表者は債務を逃れることはできません。
会社の破産申立と同時に、代表者個人も破産申立をするのが通常です。
そうすると、会社と同じ破産管財人が選任されて、会社の財産の換価と同時に個人資産も換価されていくことになります。
【役員に対する損害賠償】
会社が破産しても、連帯保証をしていない限り、代表者は会社の債務について責任を負わないのが原則です。
しかし、代表者は、取締役として、会社に対し、忠実義務・善管注意義務を負担しています。
つまり、会社をきちんと経営し、損害を与えないようにする義務がある、ということです。
ところが、代表者が、取締役としての職務を行うに当たって,債権者に損害を与えることを知りながら,または,少し調査等をすれば容易に分かったはずであるのに調査等をせずに,不要な仕入れをしたり、不当に安く商品を売りさばいたりなど、明らかに不合理な経営判断をして,会社を破産させた場合には、破産管財人から損害賠償を請求される場合があります。
破産までしない場合は、債権者や株主などから損害賠償請求される場合もあります。
【代表者が破産すると、どうなるか?】
さて、中小企業の場合、会社と同時に代表者も破産することが多いのですが、この場合、どのように進んでいくのでしょうか?
まず、弁護士に依頼して、破産申立をします。
そうすると、破産管財人が選任され、代理人の弁護士と一緒に面接をします。
そして、色々指示をされますので、それに従って破産処理を手伝うことになります。
破産管財人は、会社と代表者の資産をお金に換え、債権者に配当することになります。
自宅が担保に入っている場合は、まず任意売却で売れるどうかやってみて、売れない場合には、担保権者である金融機関等が競売手続をすることになります。
また、破産すると、次のようなことに注意が必要です。
①破産の事実が官報に掲載されます
破産をすると,その事実が官報に掲載され公示されます。
②銀行等の金融機関からの融資が受けづらくなります。
破産をすると,その情報が信用情報機関に事故情報として登録され,5年~7年間は銀行等の金融機関から原則として、融資を受けることができなくなります(預貯金の口座開設や公共料金引落としは可能です)。
③一定の仕事に就くことができなくなります
破産をすると,破産・免責手続が終了するまで警備員や生命保険の募集人などの他人の財産を管理する仕事や,弁護士などの士業,宅地建物取引管理者,旅行業務取扱主任者、商工会議所の会員労働者派遣事業者、風俗営業者等につくことができなくなります。
④原則として20万円を超える財産は処分されます
破産手続は,破産手続開始時の財産を処分・換価して債権者に配当する手続きですから,原則として20万円を超える財産は管財人により処分されます(東京地裁の場合、他の裁判所では運用が違うので注意が必要です)。
⑤郵便物が破産管財人へ転送されます
破産者に宛てた郵便物は,破産手続開始決定の日と同日に,破産管財人に配達することを嘱託する決定がされ,破産管財人に配達された郵便物は,破産管財人が破産財団に関するものかどうか内容をすべて調査されます。
⑥住所の変更や旅行の際に管財人の同意を得なければなりません
破産者が,破産手続中,住所を変更したり,居住地を離れたりする場合(海外旅行,長期の国内旅行)は,その旨を書面で破産管財人に申請し,破産管財人の同意を得る必要があります。破産管財人の同意を得ないで転居等した場合には,免責が許可されないことがあります。
⑦破産管財人に対して説明を拒むことはできません
破産手続が開始された場合,破産者は,破産管財人等の請求により破産に関して必要な説明をしなければなりません。
説明を拒んだり,偽りの説明をした場合には刑事上の罰を受けたり,免責が許可されなかったりします。
⑧その他にも免責がされなかったり,刑事上の罰を受けたりする場合があります
破産財団に関する財産を隠したり,壊したり,仮装譲渡したり,債権者の不利益に処分すると,詐欺破産罪で処罰されたり,免責が許可されなかったりします。
破産者の業務や財産の状況に関する帳簿や書類などを隠したり,偽造したり,変造した場合も同様です。
⑨免責許可決定が確定してから7年以内に再度の免責許可申立はできません
以上のことを頭に入れて、会社を破産させるのかどうか、その際、代表者個人も破産するのかどうか、検討するのがよいと思います。
情報がないと、自分では判断しようがないと思いますので、弁護士に相談が必須です。
ご相談は、こちらから。
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