職場のいじめは、法律問題です。 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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職場のいじめは、法律問題です。

2014年02月02日


組織のトップ自らが率先してパワーハラスメント(以下、パワハラ)を行っていたという事件が起きました。

「高校校長、教頭に“バカ”“しゃべるな”暴言で処分」(2014年1月30 朝日新聞デジタル)

北海道教育委員会は、むかわ町にある高校の男性校長(60)をパワハラで減給(10分の1)1カ月とする懲戒処分を発表しました。

報道によると、校長は2012年12月ごろから3カ月にわたって、校長室での管理職打ち合わせの際に、「バカ」「しゃべるな」「あんたの給料ください」「おまえをいじめることしか考えていない」などの暴言を繰り返し男性教頭に浴びせかけ、精神的苦痛を与えたということです。

教頭が道教委に文章で訴えたことで発覚したようで、北海道内では校長がパワハラで処分されるのは初めてのケースとなったということです。

職場で起こる問題の中でも、近年、問題になっていることのひとつが「パワハラ」です。

厚生労働省が公表している定義によると、パワハラとは以下のようになります。

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」

パワハラには、上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間などの様々な優位性を背景に行われるものも含まれる、としています。

具体的には次のような分類を挙げています。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

今回は、②の精神的な攻撃と言えるでしょう。職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えた発言をしていますね。

職場のパワハラを予防するために必要なこととしては、以下の5点が挙げられます。

〇トップのメッセージ
〇ルールを決める
〇実態を把握する
〇教育する
〇周知する

今回の件では、学校のトップである校長自らがメッセージを発信するどころか、直接パワハラを実行していたという笑えない事態が発生していたということです。

ちなみに、今回のようなケースで民事で損害賠償を提起した場合には、慰謝料が認められる場合があります。

仮に殴るなどしたなら、もはやパワハラにとどまりません。

「暴行罪「傷害罪」という刑法犯罪になる可能性があります。

「刑法」第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

以前は、「部下に対する上司の指導」という暗黙の了解で表面化してくることが少なかったパワハラですが、ここ数年で社会問題化してきています。

お互いにリスペクトしあっていれば、このような事態にはならないはずですし、お互いに職務に真剣に取り組んでいれば、このような事態にならないはずです。

上司も部下も人間力の向上が肝要。相手を思いやる気持ちが大切ですね。