東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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脱税の量刑解説(法人税法違反、所得税法違反、相続税法違反)


2017年7月12日

2016年度中に全国の国税局が強制調査(査察)を実施し、処理を終えた脱税事件は193件で、前年度比12件増、脱税総額は約161億円で、同約23億円増でした。

このうち、検察庁に告発したのは132件で、不起訴となった事件は2件でした。

ということは、「国税局から検察庁に告発された場合は、ほぼ確実に起訴される」ということがわかりますね。

脱税総額が前年度を上回ったのは2年ぶりとなっています。

脱税の法的な内容が知りたい方は、こちら⇒
「脱税事件で告発されると?」
http://taniharamakoto.com/archives/1882/

これまで、国税庁は個別の告発事件については公表をしていませんでした。
しかし、今後はすべての事件について、法人や個人の名称、告発の概要などを公表する方針を明らかにしています。

そこで今回は、過去の脱税事件に関する量刑についてまとめました。
脱税は、けっして軽い罪ではないことを十分理解していただきたいと思います。

 

「脱税事件:量刑ファイル001」

【事件の概要】
舞台となったのは、レース用自動車やバイクの部品開発で知られる会社の社長(75)が元監査役と共謀し、2000(平成12)年10月期までの3年間に会社の所得約28億円を隠し、約10億円を脱税したとして、2011(平成23)年、法人税法違反罪で社長に懲役2年、法人に罰金2億4000万円が最高裁で確定していた。
2017(平成29)年4月、男性は有罪判決を不服として、東京高裁に再審請求を申し立てた。(会社も同日、さいたま地裁に再審請求)
男性は再審請求書で、「隠したとされた所得は元監査役が会社から不正に引き出したもので、自分はまったく知らなかった」と主張し、元監査役の資金流用が認められた民事訴訟の資料を新証拠として提出した。(元監査役は二審判決で懲役3年)

【判決】
法人税法違反
脱税額:約10億円
社長:懲役2年
監査役:懲役3年
会社:罰金2億4000万円

【引用】
(2017年4月26日 産経新聞)
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/170426/evt17042611420005-n1.html

 

「脱税事件:量刑ファイル002」

【事件の概要】
葬儀会社2社の元実質経営者が、2011(平成23)年の各決算期までの3年間に、架空経費の計上などで計約3億8000万円の所得を隠し、法人税計約1億1000万円を免れたとして法人税法違反罪に問われた。東京地裁は2016年6月、被告の男(65)に対し、懲役1年6月、執行猶予4年、罰金1700万円(求刑懲役1年6月、罰金2千万円)、法人としての2社には、罰金計1050万円(求刑同1200万円)を言い渡した。
被告は、1980年代に流行したキャラクター「なめ猫」の発案者で、裁判長は判決理由の朗読後、「いくら才覚があっても、ルールを守らなければビジネスマンとしては失格です。ルールをなめてはいけません」と説諭した。

【判決】
法人税法違反
脱税額:約1億1000万円
社長:懲役1年6月、執行猶予5年、罰金2000万円
会社(2社):罰金計1050万円

【引用】
(2016年6月9日 産経新聞)
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/160609/evt16060920140020-n1.html

 

「脱税事件:量刑ファイル003」

【事件の概要】
脱税に協力してもらう謝礼として大阪国税局職員に現金を渡したなどとして、贈賄や法人税法違反などの罪に問われた同局OBの元税理士で被告の男(63)の判決公判が大阪地裁で開かれた。
裁判所は、「税理士としての知識を悪用し、脱税工作を主導した」として懲役6年、罰金7000万円(求刑懲役8年、罰金1億円)を言い渡した。
事件が起きたのは2011(平成23)年9月。
顧問先の税務調査の日程を教わるなどした見返りに元国税局職員の被告の男(45歳・加重収賄罪などで1、2審有罪、上告中)に120万円を渡したほか、顧問先の脱税を指南するなどした。
被告側は公判で、贈賄について「謝礼として金を渡したことはない」と無罪を主張したが、裁判長は捜査段階で収賄を認めた元国税局職員の供述を「具体的で信用できる」と判断し、贈賄罪の成立を認めた。
裁判長は、顧問先に指南するなどして脱税した額は計約2億7千万円に上るとし、「税務行政の公正、社会の信頼を著しく害した」と非難した。

【量刑】
法人税法違反
脱税額:約2億7000万円
税理士:懲役6年、罰金7000万円

【引用】
「贈賄、脱税指南の国税OBに懲役6年 国税局汚職事件 大阪地裁」(2016年3月18日 産経新聞)
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/160318/evt16031813440021-n1.html

 

「脱税事件:量刑ファイル004」

【事件の概要】
「ハンドパワーで病気の痛みを取る」と称して資金を集めていたセミナー企画会社(福岡県)の脱税事件で、福岡地裁は法人税法違反などに問われた元社長の女(66)に対し、懲役2年(求刑・懲役3年6月)の実刑判決を言い渡した。
共犯に問われた前社長の男(60)には懲役1年8月(求刑・懲役2年6月)、元役員の女(50)には同1年4月(同・懲役2年)、法人としての同社には罰金1億5000万円(同・罰金2億6000万円)を、それぞれ言い渡した。
被告3人は、2008(平成20)年2月期~2010(平成22)年2月期の3年間で、売り上げの一部を除外し、経費を水増し請求するなどして約27億円の同社の所得を隠し、約8億円の法人税を脱税したなどとして起訴されていた。

【量刑】
法人税法違反
脱税額:約8億円
元社長:懲役2年
前社長:懲役1年8月
元役員:懲役1年4月
会社:罰金1億5000万円

【引用】
(2014年5月29日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20140529-OYS1T50047.html

 

「脱税事件:量刑ファイル005」

【事件の概要】
2010(平成22)年5月~2012(平成24)年12月にかけて、キャバクラなどの飲食店グループの従業員らの給与から源泉徴収した所得税約3億6900万円を脱税し、2010年と2011年分の消費税と地方消費税計約4千万円も脱税したとして、経営者の妻が所得税法違反や消費税法違反などの罪に問われた。
福岡地裁は2017年3月、被告(70)に対して懲役3年、執行猶予5年、罰金2千万円(求刑懲役5年、罰金1億3600万円)の判決を言い渡した。
裁判所は、「被告はグループ全体の金銭管理を統括し、経営者の夫に協力してグループにとって自由になる金を留保し、他の使途に流用する犯行に及んだ。脱税額は高額で、厳しい非難に値する」と指摘。 一方、脱税した約4億円を完納し、関与を認めて反省している点を考慮し、懲役刑の執行を猶予した。

【量刑】
所得税法、消費税法違反
脱税額:所得税約3億6000万円、消費税約4000万円
経営者の妻:懲役3年、執行猶予5年、罰金2000万円
(完納済み)

【引用】
「4億円脱税で女に有罪 福岡地裁」(2017年3月15日 産経新聞)
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/170315/evt17031520270044-n1.html

 

「脱税事件:量刑ファイル006」

【事件の概要】
2017年5月、東京地裁は、印税収入を隠すなどして約2600万円を脱税したとして、所得税法違反の罪に問われた著述業の男(59)に、懲役1年、執行猶予4年、罰金600万円(求刑懲役1年、罰金800万円)の判決を言い渡した。
裁判所は、「個人の脱税として軽視できない規模。長期間、巧妙に秘匿工作をしており悪質だ」と述べ、離婚に備えて資金を残したかったとする被告の動機は「納税しない理由になり得ない」と指摘した。
判決によると、2011(平成23)年~2013(平成25)年、印税を米国の銀行口座に入金させて隠すなどして、所得税計約2600万円を免れた。
被告は、NHK教育テレビ(現Eテレ)の英会話番組に講師として出演していたほか、多くの著書がある。

【量刑】
所得税法違反
脱税額:約2600万円
個人:懲役1年、執行猶予4年、罰金600万円

【引用】
(2017年5月9日 産経新聞)
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/170509/evt17050917160019-n1.html

 

「脱税事件:量刑ファイル007」

【事件の概要】
元社長は2004(平成16)年に約22億円を脱税したとして逮捕、起訴され、2008(平成20)年に懲役4年の判決が確定していた。
法人にも罰金6億円が言い渡され、その後、会社は清算した。

【量刑】
元社長:懲役4年
会社:罰金6億円

【引用】
(2016年2月1日 産経新聞)
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/160201/evt16020108260005-n1.html

 

「脱税事件:量刑ファイル008」

【事件の概要】
2015年7月、東京地裁は、いわゆる霊感商法で得た収入を少なく申告するなどして所得税を免れたとして所得税法違反罪に問われた会社員の男(35)に対し、「納税に対する規範意識の低さは強く非難されるべきだ」として、懲役1年、執行猶予3年、罰金1300万円(求刑懲役1年、罰金1800万円)を言い渡した。
被告は起訴事実を認めており、裁判官は「本税や延滞税を納付し、加算税についても今後納付していくと述べており、反省もしている」として執行猶予とした。
判決によると、被告は実際の所得金額の一部しか申告しない「つまみ申告」の手口などで、2011(平成23)年と2012(平成24年)の個人所得計約1億6500万円を隠したとしている。

【量刑】
所得税法違反
脱税額:不明。所得隠し約1億6500万円
個人:懲役1年、執行猶予3年、罰金1300万円
(完納済み)

【引用】
(2015年7月17日 産経新聞)
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/150717/evt15071719330033-n1.html

 

「脱税事件:量刑ファイル009」

【事件の概要】
さいたま地裁は2015年6月、低額宿泊所の入居者から生活保護費を搾取する、いわゆる「貧困ビジネス」で得た所得から約6184万円を脱税したとして、所得税法違反罪に問われた宿泊所運営者で元機械製造会社社長の男(73)に対し、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金1500万円(求刑・懲役1年6月、罰金2000万円)を言い渡した。
裁判長は、「被告の脱税率が99%を上回り、国の課税権を著しく侵害している」と指摘したが、前科がなく事実関係を争わずに反省していることなどを執行猶予の理由とした。
判決などによると、被告は2009(平成21)年~2010(平成22)年に宿泊所の運営による所得が計約1億6900万円あったにもかかわらず、その大半を知人や親族名義の複数口座に預金するなどして隠し、所得税計約6184万円を免れたとしている。

【量刑】
所得税法違反
脱税額:約6184万円
個人:懲役1年6月、執行猶予3年、罰金1500万円

【引用】
「生活保護搾取「貧困ビジネス」脱税 宿泊所運営者に有罪判決 さいたま地裁」(2015年6月26日 産経新聞)
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/150626/evt15062614150028-n1.html

 

「脱税事件:量刑ファイル010」

【事件の概要】
大阪地裁は2017年1月、和歌山県の社会福祉法人への寄付を装い、相続税約4億9000万円を脱税したとして相続税法違反罪などに問われた元税理士の男(64)に対し、「遺言書を偽造するなど犯行は計画的で悪質」として、懲役3年、執行猶予4年、罰金800万円(求刑懲役3年、罰金1000万円)を言い渡した。
また、大阪地裁は2017年5月、共謀した和歌山県議の男(58)に対し、「立場と人脈を利用して寄付を受け入れさせ、脱税に重要な役割を果たした」として、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金500万円(求刑・懲役1年6月、罰金500万円)を言い渡した。
被告は、「正当な寄付だと考えていた」と無罪を主張したが、裁判長は「相続税対策と知った上で協力した」と指摘し、報酬として計900万円を受け取ったと認定した。
判決によると、この事件は、元税理士の男や和歌山県議の男が、死亡した兄の遺産を相続した男(73歳・相続税法違反罪などで起訴、控訴中)ら5人と共謀して、2014(平成26)年9月、約10億5000万円の遺産のうち約8億5千万円を和歌山県日高川町の社会福祉法人に寄付したように装い、相続税約4億9千万円を不正に免れたというもの。

【量刑】
相続税法違反
脱税額:約4億9000万円
元税理士:懲役3年、執行猶予4年、罰金800万円
和歌山県議:懲役1年6月、執行猶予3年、罰金500万円

【引用】
「4.9億円遺産脱税 元税理士に有罪 大阪地裁判決」(2017年1月11日 産経新聞)
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/170111/evt17011116360016-n1.html

いかがでしょうか。

適正な納税を心がけましょう。

税に不服がある方、脱税で告発された方、税務訴訟をかかえている方のご相談は、こちらから。
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客引きは、飲食店の経営者も摘発対象になります。


2017年7月11日

キャバクラなどでない一般の飲食店の客引き行為で、経営者が書類送検されたという事件が起きたので解説します。

「六本木「赤ケバブ」店で執拗な客引き 風営法違反容疑 33歳トルコ人経営者を書類送検 「青ケバブ」店と競争激化」(2017年7月10日 産経新聞)

「「ケバブ食べよう」と客引き、トルコ人の兄弟を逮捕 六本木」(2017年6月21日 産経新聞)

執拗な客引き行為をしたとして、警視庁麻布署が東京・六本木のケバブ店を経営するトルコ国籍の男(33)を書類送検していたことが捜査関係者への取材でわかったということです。
容疑は風営法違反です。

事件の経緯をまとめます。

・現場は六本木の繁華街の中心部で、周辺では以前からトルコレストランの悪質な客引きが問題となっていた。

・看板の色から、通称「赤ケバブ」と呼ばれる2店はクルド系トルコ人が経営する店。
その2店の間に、トルコ人が経営する通称「青ケバブ」と呼ばれる店があり、客引き競争が過熱していた。

・事件が起きたのは、今年(2017年)5月11日~6月3日。
赤ケバブ店の従業員のトルコ人兄弟(24歳と20歳)が、「ケバブ食べよう」などと言い、路上で通行人の前に立ちふさがったり抱きついたりして執拗に客引きした。

・警視庁麻布署は6月21日、2人を風営法違反(客引き行為)の疑いで逮捕。
レストランの客引き行為を風営法で摘発するのは警視庁で初となった。

・その後、同署は容疑者の兄弟の兄で、2人が働いていたケバブ店の経営者の男(トルコ国籍の33歳)を風営法違反容疑で書類送検。
キャバクラやガールズバーなどではない一般的な飲食店の客引き行為に同法違反容疑を適用し、経営者を摘発するのは全国初となった。

 

居酒屋や飲食店などの悪質な客引き行為については、通常の場合「迷惑防止条例」が適用されますが、今回は風営法違反での立件となっています。
それはなぜか? というのが今回の事件のポイントになります。

まずは、迷惑防止条例から見ていきます。

迷惑防止条例は、公衆に対する迷惑行為や暴力行為などを防止し、生活の安全と秩序を維持することを目的としており、現在では全国の47都道府県すべてで制定されています。

東京都の迷惑防止条例は、正式名称を「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」といい、全部で9条からなる条例です。

その中から今回の事件に関係する条文を見てみます。

「東京都迷惑防止条例」
第7条(不当な客引行為等の禁止)
1.何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

四 前三号に掲げるもののほか、人の身体又は衣服をとらえ、所持品を取りあげ、進路に立ちふさがり、身辺につきまとう等執ように客引きをすること。

 

前三号とは次のようなものです。
・わいせつな見せ物、物品、行為などの販売、提供のための客引き等。
・売春類似行為をするための客引き等。
・異性による接待をして酒類をともなう飲食をさせる行為のための客引き等。

これらに違反した場合、50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます。

次に、「風営法」について見ていきます。

風営法は正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」といい、酒類提供飲食店営業の許可を受けた店を除いて、営業場所や青少年(18歳未満)の立ち入りを規制することにより、風俗業務の適正化を図ることを目的としています。

今回の事件に該当するのは次の条文です。

「風営法」
第22条(禁止行為等)
1.風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。

一 当該営業に関し客引きをすること。
二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。

 

これに違反した場合は、6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処され、又はこれを併科となります。(第52条)

風営法というと、いわゆる性風俗店や、キャバクラ、ガールズバー、ホストクラブなどのような客を接待してお酒を飲ませるお店に関する法律というイメージを持っている人が多いと思いますが、じつはバーや居酒屋、飲食店にも適用されます。

これまでは、迷惑防止条例で対処していました。風営法では、「営業者」が客引きをしたと認定できなければならないのですが、その立証が簡単ではないので、とりあえず客引きという外形的行為をとらえ、迷惑防止条例で対処していた、ということでしょう。

しかし、今回は、客引き行為が悪質であったこと、店の経営者が客引きを行わせていたことの立証が可能だと判断されたこと、また今後は規制を強化していくために店側(経営者など)も摘発の対象としたと考えられます。

訪日外国人の増加や、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催も関係しているのかもしれません。

とにかく、今後は飲食店などの客引きに関しては、従業員だけでなく経営者や店長も逮捕、書類送検の対象になる可能性があることは覚えておいた方がいいでしょう。

親子間での嫌がらせ行為で逮捕


2017年7月5日

お金が絡んだ親子間のトラブルで息子が逮捕された、という事件が起きたようです。

一体、何があったのでしょうか?

「父親に金の無心、2千万円超 容疑で40歳男逮捕」(2017年7月3日 神戸新聞)

兵庫県警伊丹署は、嫌がる父親(72)の元へ再三、金の無心に行ったとして、次男で住所不定、無職の男(40)を逮捕しました。

逮捕に至るまでの経緯を簡単にまとめます。

・容疑者の次男は、高校卒業後は定職に就かず、アルバイトを転々としながら、20歳のころ実家を出て上京。
30歳を前に関西に戻ってきたものの、何度も実家に帰ってきては「金がない」、「仕事が決まった。これが最後」などと父親に懇願して食費や交通費を要求していた。

・今年(2017年)4月、父親が同署に相談。
署員が直接、男に注意したところ、「もう父親のところには行かない」と誓った。

・ところが、6月25日~7月2日、伊丹市の父親宅に毎日押しかけ、2000円~5000円の金を要求するなどしたため、7月2日に父親が「我慢の限界」として被害届を提出。
父親は、「食費や交通費名目で、これまでに2000万円以上を渡していた」と説明。

・7月3日、同署は「嫌がらせ行為」を繰り返したとして次男を兵庫県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕。
同署の調べに容疑を認めているという次男の所持金は10円だった。

同署は、こうした条例を親族間で適用するのは異例としています。

 

現在、迷惑防止条例は、全国の47都道府県すべてで定められているもので、各都道府県民に対する迷惑行為や暴力行為などを防止し、生活の安全と秩序を維持することを目的としています。

各都道府県によって正式名称が異なっているのですが、兵庫県では正式名称を「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」といいます。

まずは条文から見てみましょう。

「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」
第10条の2(嫌がらせ行為の禁止等)
1.何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、執ように又は反復して行う次に掲げる行為(ストーカー行為等の規制等に関する法律第2条第2項に規定するストーカー行為を除く。)をしてはならない。

(1)つきまとい、待ち伏せし、進路に立ち塞がり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること(身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)。

 

これに違反した場合は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金、常習者の場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第15条)

この条項は、第3条の2(卑わいな行為等の禁止)が盗撮等を禁止するために拡大されたこととともに、2016(平成28)年3月23日の条例改正により追加され、同年7月1日から施行されているものです。

今回の事件におけるポイントは、条文の「特定の者に対し、執ように又は反復して行う」という部分です。

つまり、容疑者の次男は父親の家に押しかけて、長期間にわたって、執拗に反復して、何度も金の無心を行なったこと、そして被害者から相談を受けた警察が注意したにも関わらず、容疑者が“嫌がらせ行為”を止めなかったために逮捕された、ということだと思います。

「金の切れ目が縁の切れ目」ということわざがありますが、親子間でもお金が絡むと犯罪にまで発展してしまうことがあるという教訓のような事件でした。

みなさん、気をつけましょう。

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