管理者のいない廃墟に立ち入ると犯罪!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
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管理者のいない廃墟に立ち入ると犯罪!?

2016年09月07日

今回は、読者の質問にお答えします。
「軽犯罪法」についてです。

Q)我が家のすぐ近所に空き家があります。所有者が誰なのかわかりません。この数年、よく若者が中に入っているのですが、どうやら肝試しのようなことをしているようです。近隣に住む者としては、治安の問題もあるので心配です。法的に取り締まれないのでしょうか?

A)このケースでは、「軽犯罪法」が適用される可能性があります。場合によっては、「刑法」の住居侵入罪が適用される可能性もあるでしょう。
近年では、廃墟マニアと呼ばれる人が全国の廃墟に出かけたり、中には心霊スポットとして肝試しに使われる例もあるようですが、こうした廃墟や空き家などに無断で侵入すると犯罪になる可能性があります。

「軽犯罪法」は、人がちょっとしたはずみで犯してしまうような軽微な秩序違反行為に対して定めている法律です。

戦後の1948(昭和23)年に制定されたもので、悪質な重大犯罪を未然に防ぐ目的もあり、全部で33の違反行為が罪として定められています。

第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
一 人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者
拘留とは、受刑者を1日以上30日未満で刑事施設に収容する刑罰で、科料とは、1000円以上、1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰です。

次に、住居侵入罪を考えてみます。

「刑法」
第130条(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
看守とは、法的には直接その建物に存在して管理する場合は当然ですが、カギをかけてそのカギを保管している場合も当てはまります。(最決昭31・2・28裁集刑117・1357)

邸宅とは豪邸のような家のことではなく、住居として使用されていない空き家や、閉鎖された別荘、廃家などをいいます。

建物とは、住宅や邸宅以外の建造物で、たとえば官公庁や学校、事務所、倉庫などが当てはまります。

つまり、今回のケースでは、人が住んでいなくても管理されている住宅であれば、侵入者は住居侵入罪に問われる可能性がありますが、管理されていない、カギもないような状態で放置されているようなものであれば軽犯罪法が適用される可能性があるということになります。

たとえば、2016年3月、宮城県山元町にある旧小学校舎に無断侵入してサバイバルゲームをしたとして18~23歳の男性9人が軽犯罪法違反の疑いで任意捜査をされているという報道がありましたが、この事件では、現在は使われていない小学校舎=建物に正当な理由なく侵入したために軽犯罪法での捜査になったということでしょう。

特に、子供は、誰も管理していない建物に入って遊ぶ、ということが好きなようです。

お子さんが犯罪に巻き込まれないよう、よく注意しておくことをおすすめします。