「ポケモンGO」で起きる可能性がある6つの犯罪 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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「ポケモンGO」で起きる可能性がある6つの犯罪

2016年07月26日

話題のスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」の日本国内配信が7月22日に始まりました。

事前に予想されていた通り、全国各地でこの数日間、さまざまな事故や問題が起きているようです。

そこで今回は、「ポケモンGO」の使用によって、どんな犯罪が起きる可能性があるのか、また起きた事件や事故はどんな犯罪になるのかを法的に解説します。

①過失致死傷罪
まずは、もっとも身近な危険行為「歩きスマホ」での「ポケモンウォーク」による事故です。
これまでも歩行中のスマホ使用の危険性が指摘されてきましたが、「ポケモンGO」に夢中になった人たちが他の歩行者にぶつかった場合、相手にケガを負わせてしまう危険性が高まります。

私たちは道路を歩行中、他人の進路を妨害したり、ぶつかっていったりしないよう前方左右を注意していなければならないわけですから、仮に、ポケモンウォークで相手にケガをさせてしまった場合は、「過失傷害罪」で30万円以下の罰金又は科料に処される可能性があります。(刑法第209条1項)
なお、死亡させてしまった場合は「過失致死罪」となり、50万円以下の罰金に処されます。(刑法第210条)

人混みなどの場合には、「重過失」と認定される可能性さえあるでしょう。

その場合は、「重過失致死傷罪」(刑法211条)となり、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
②過失運転致死傷罪
「運転中に“ポケモンGO”、追突…3台玉突き」(2016年7月25日読売新聞)

滋賀県大津市の県道で、男性会社員(21)が運転する車が信号待ちをしていた乗用車に追突。
はずみで前方に停車していた車も巻き込まれ、3台の玉突き事故になった。
追突した男性は、「ポケモンGOをしていて夢中になってしまった。急ブレーキを踏んだが間に合わなかった」と話している。

これは、「ポケモンドライブ」による交通事故です。
前方不注視や後方確認義務違反などの過失によって、自動車事故で人にケガをさせたり死亡させたりした場合、「自動車運転死傷行為処罰法」により「過失運転致死傷罪」に問われる可能性があります。
法定刑は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
③道路交通法違反
「ポケモン運転、6人摘発 名古屋ではひったくりも」(2016年7月24日 共同通信)

「ポケモンGO」をしながら車やミニバイクを運転したとして、岡山や佐賀、兵庫、宮城の各県で計6人が道交法違反で摘発されたことが各県警への取材でわかった。
岡山県警では23~24日、スマホを操作しながら乗用車を運転したとして、男女計3人に交通反則切符(青切符)を交付した。
これは、「ポケモンドライブ」による道路交通法違反です。
この場合は、道路交通法の第71条5の5(運転者の遵守事項)の違反になります。
自動車の停止中以外での携帯電話の使用や画面注視は、交通反則切符(青切符)を切られてしまいます。
違反点数は2点、反則金は原付バイクが5000円、普通車などは6000円、大型車の場合は7000円です。

道路における交通の危険を生じさせた場合は、3月以下の懲役または5万円以下の罰金です(道交法119条9の3)
④自転車事故での道路交通法違反
「道内初か“ポケモンGO”事故 札幌・手稲区で自転車同士衝突」(2016年7月25日 北海道新聞)

7月24日、札幌市の歩道で、自転車に乗りながらスマートフォンを操作していた男児と衝突したと、女性(19)から6時間半後に札幌手稲署へ通報があった。
男児は小学校高学年くらいで、「見つけた!」と叫びながら女性の自転車に近づき、衝突。
膝に擦り傷を負ったが、そのまま走り去った。
スマホ画面には「ポケモンGO」が表示されていた。
女性にはケガはなかった。
こちらは、「ポケモンサイクリング」での事故です。

自転車を運転する時は、他人に衝突しないよう前後左右を注視しなければいけないわけですから、ポケモンサイクリングをしていて、他人に怪我をさせたり、死亡させたりした場合は、「過失」あるいは「重過失」があるとして、ポケモンウォークの場合と同様、「過失致死傷罪」や「重過失致死傷罪」に問われる可能性があります。

ちなみに、東京都道路交通規則(道路交通法71条6号に基づく)では、携帯電話での通話や画面注視は、5万円以下の罰金となっています。
⑤住居侵入罪
「ポケモンGO 中国人2人が市営住宅敷地に侵入 宮城 立ち入り禁止の熊本城にも トラブル相次ぐ」(2016年7月22日 産経新聞)

宮城県大崎市の市営住宅の敷地に中国人男性2人が侵入し、住民とトラブルになり、警察官が駆け付ける騒ぎがあった。
「ポケモンGO」のプレー中に敷地内に入ったところ、住民の男性が注意したが立ち去らなかったため110番した。

京都市上京区の京都御所では、ゲームに夢中になった大学1年の男子学生(18)が塀に近づき、侵入防止用の警報音が鳴る騒ぎがあった。

熊本市の熊本城でも、20代とみられる男性が、案内人に「ポケモンGOをプレーしたい」と伝え、立ち入り禁止区域内へ侵入しようとした。
これらは、「エンター・ザ・ポケモン」です。
正当な理由がないのに、他人の家やマンション等の住居に無断で侵入した場合は「住居侵入罪」、店舗や公共建造物等の看守者がいる建物に侵入した場合は「建造物侵入罪」、また要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は「不退去罪」に問われる可能性があります。(刑法第130条)
これに違反した場合は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。
⑥プレーヤーが犯罪に巻き込まれる危険性
「ポケモンGO熱中の女子大生、ひったくり被害」(2016年7月24日 読売新聞)

名古屋市瑞穂区の路上で、自転車に乗りながら「ポケモンGO」に熱中していた女子大生(22)が、後ろから近づいてきた原付きバイクの男に前かごの手提げカバン(中には現金2000円など)をひったくられた。
女子大生にケガはなかった。
「ポケモン中の女性暴行 男逮捕」(2016年7月25日 毎日新聞)

東京都渋谷区道玄坂の路上で、「ポケモンGO」をしていた女性の腕をつかんだとして、千葉県の職業不詳の男(27)が暴行容疑で現行犯逮捕された。
女性が、ポケモンが映ったスマホの画面を保存するため「スクリーンショット」を操作したところ、自分が撮影されたと勘違いした男が「写真を消せ」と言いながら腕をつかんだという。

ゲームに熱中しすぎて周囲への認識がおろそかになっていると、自分自身が被害者になってしまう危険性もあります、注意しましょう。
自動車や自転車を運転しながらのプレーは重大事故に直結するおそれがあります。

歩行中も危ないですね。

他人にぶつかり、相手が転んで頭を打って、死亡したり、重度障害が生じたり、ということもありますし、道路等に不用意に歩き出すと、自動車やバイクが回避のための急なハンドル操作で大事故につながる危険もあります。

ゲームは、ルールの中で楽しむものです。

それは、ゲームのルールだけでなく、現実社会のルールをも含むものだ、という認識が必要だと思います。