会社の経費で飲みに行ったら犯罪!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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会社の経費で飲みに行ったら犯罪!?

2014年09月09日

会社の経費が余ったから、同僚や後輩を誘って、そのお金で飲みに行っった経験のある人、いませんか?

最近、ある警察署で、そんな行為が「事件」として問題になったようです。

「捜査諸雑費で同僚や部下と飲食、警部補書類送検」
(2014年9月4日 読売新聞)

捜査諸雑費を私的に流用したとして、山梨県警は韮崎署の男性警部補(56)を業務上横領容疑で甲府地検に書類送検し、同日付で停職6ヵ月の懲戒処分にしたと発表しました。

県警によると、男性警部補は2009年3月~2011年3月にかけて当時勤務していた南甲府署で3回、また、2014年3月に南アルプス署で1回の計4回、捜査諸雑費として支給された現金(計1万868円)を同僚や部下との飲食代に流用して横領した疑い、としています。

今年4月、県警会計課監査室が行った監査で発覚したようで、男性警部補は容疑を認めており、横領した全額を返済、依願退職したとのことです。
以前、「領収書の改ざん」について解説しました。
詳しい解説はこちら⇒ https://taniharamakoto.com/archives/1615

会社に提出する領収書を勝手に改ざんして、使った分以上のお金を手に入れた場合、「詐欺罪」(刑法第246条)や「私文書偽造罪」(刑法第159条)になる可能性があり、さらに「民法」では損害賠償請求され、会社からは懲戒処分を受ける可能性もあるというものでした。

さて今回は、警察の経費を業務以外の飲み代に使ってしまった場合のケースですが、これはなにも警察官がやったから書類送検されたわけではありません。

一般の会社の社員がやっても同じ罪に問われる可能性があるのです。

営業経費として認められているからといって、仲間だけで飲みに行って、会社の領収証をもらって、営業経費として申請し、飲食代金を会社から受け取る、というようなことをしていませんか?

ドキッとした人もいるでしょう。

詐欺罪になる可能性があります。

会社としては、社員が営業として取引先などを接待していると思って飲食代金を支払うのですが、仲間だけで飲みに行くことは、会社を騙していることになるためです。

今回は、詐欺罪ではなく、「業務上横領罪」です。

どんな犯罪でしょうか。

では、条文を見てみましょう。

「刑法」
第253条(業務上横領)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
ちなみに、業務上ではない「横領罪」は第252条にあり、こちらは5年以下の懲役ですから、業務上のほうが罪は重いということになります。

いずれにしても、罰金刑がなく懲役刑のみであることから、横領罪は重い罪だと言えますね。

自分が占有しているお金を私的に流用して横領した、ということなので、詐欺罪ではなく、業務上横領罪になったわけです。

ところで、お金だけでなく会社の備品、たとえばボールペンやハサミ、ホチキスなどを家に持って帰るとどうなるでしょうか?

これは、「業務上横領罪」や「窃盗罪」に問われる可能性があります。

さらに、会社のお金やものを横領すると、領収書の改ざんと同様に、「民法」第703条(不当利得の返還義務)、第709条(不法行為による損害賠償)により会社から損害賠償請求され、さらには懲戒処分を受ける可能性があることも覚えておいてください。

ほんの出来心でやってしまったことで、それまでのキャリアも、職も誇りもすべて失ってしまう恐れがあります。

「これくらいはいいだろう」とか「みんなやってるから大丈夫だろう」と安易に行動すると、後で後悔することになります。

小さなことだと感じるかもしれませんが、会社は法律に基づいて動いています。

会社のものと自分個人のものとは、厳格に区別して取り扱うことが大切です。