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  • 朝型勤務でも残業代は発生するのか?

    2016年05月02日

    今回は、朝型勤務と残業代について解説します。

    長時間労働の改善、仕事の効率アップ、仕事以外の時間と生活の充実などを実現するために、朝型勤務を導入・実施する企業や個人が増えているようです。

    昨年(2015年)、厚生労働大臣は「夏の生活スタイル変革」との要望書を経団連に提出し、経済界が朝型勤務の導入を図るよう要請しました。
    そこで、7月1日には国家公務員22万人を対象に夏の朝型勤務「ゆう活」がスタートし、8月末までの実施で、勤務時間を1~2時間前倒しすることで、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」の実現を目指す取り組みが行われました。

    こうした取り組みには賛否両論あるようですが、今年も実施の方向で動いているようです。

    「“ゆう活”16年も導入 総活躍相、朝型勤務進める」(2016年4月18日 日本経済新聞)

    加藤勝信・一億総活躍相は、朝型勤務を進める東京都内の伊藤忠商事を視察した際、国家公務員の勤務時間を朝型にシフトする「ゆう活」を2016年も導入する考えを記者団に示しました。

    今春から中央省庁で始めた、始業・退勤時間を自由に選べる「フレックスタイム制」との組み合わせも検討しながら、開始時期などは今後詰めるとしています。

    なお、昨年の取り組みについて総活躍相は、「ゆう活は残業時間の縮減に成果があった」と語ったということです。
    実際、大手商社の伊藤忠商事は2014年5月から朝型勤務を導入しています。
    2016年3月期の純利益が3300億円超との予想もあり、長年トップの座にある三菱商事を追い抜いて商社で初のトップが確実とされているのには、朝型勤務の好影響があるのではないかともいわれているようです。

    データを見ていくと、朝型勤務導入前に比べ、早朝勤務を含む残業時間は10%減、支給する残業代は7%減、朝食支給などを含むトータルの残業代は4%減で、東京本社の電気代も6%の節約になっているといいます。

    また、純利益は導入前の2450億円(2014年3月期)から今期予想の3300億円へ850億円も増加しています。

    朝型勤務は、会社にとっても社員にとってもいいことばかりのように思えます。
    しかし、じつは思わぬ問題が潜んでいる可能性があります。

    それは、労働トラブルの火種です。
    【未払い残業代に関する労働トラブルが急増!?】
    厚生労働省の公表している統計資料「平成26年度過重労働解消キャンペーンにおける重点監督実施状況」によると、以下のような結果が出ています。

    ・違法な時間外労働があったもの:2304事業所(50.5%)
    ・そのうち、時間外労働の実績がもっとも長い労働者の時間数が、
    月100時間を超えるもの/715事業場(31.0%)
    ・月150時間を超えるもの:153事業所(6.6%)
    ・月200時間を超えるもの:35事業所(1.5%)
    ・賃金不払残業があったもの:955事業所(20.9%)

    違法な時間外労働があった会社は半数以上、残業代の未払いがあった会社は5社に1社もあるということです。

    では、これらの行為はなぜ問題になるのでしょうか。
    そもそも残業とはどういうものをいうのでしょうか。
    【残業と割増賃金について】
    会社が守らなければいけない最低限の労働条件を定めたものに「労働基準法」があります。
    この法律は、会社に比べて立場の弱い労働者の保護を図る目的があります。

    内容を詳しく見ていきます。

    「法定労働時間」
    会社が、従業員を働かせることができる労働時間を「法定労働時間」といいます。
    原則として、1週間で40時間、かつ1日8時間までとなっています。
    (労働基準法第32条)

    「割増賃金」
    法定労働時間外の勤務をさせたとき、会社は従業員に「割増賃金」を支払わなければいけません(同法第37条)
    割増賃金は、「時間外労働(残業)」、「休日労働」、「深夜労働」などによって発生します。
    なお、時間外労働をさせて割増賃金(残業代)を支払わなかった場合、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

    「法定休日」
    原則として、会社は従業員に対し1週間に少なくとも1日は休日を与えなければなりません。
    これを「法定休日」といいます。
    会社が法定休日に従業員を働かせた場合、「休日労働」として割増賃金を支払わなければいけません。
    同様に、会社が午後10時から午前5時までの間に従業員を働かせた場合、「深夜労働」として割増賃金を支払わなければいけません。

    「36協定」
    会社は、過半数組合または過半数代表者との書面による労使協定を締結し、かつ行政官庁にこれを届けることにより、その協定の定めに従い労働者に時間外休日労働をさせることができます。
    これは、労働基準法第36条に定められているため、「36協定(さぶろくきょうてい)」と呼ばれます。
    36協定の届け出をしないで時間外労働をさせた場合も、労働基準法違反として、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されるので注意が必要です。
    【残業代の算出方法】
    「割増賃金(残業代)の割増率」
    会社が従業員に支払わなければならない割増賃金(残業代)の割増率は、以下のように規定されています。
    ここを間違うと、当然に法律違反となります。

    ①1ヵ月の合計が60時間までの時間外労働、及び、深夜労働については2割5分以上の率(125%)

    ②1ヵ月の合計が60時間を超えて行われた場合の時間外労働については5割以上の率(150%)(例外あり)

    ③休日労働については3割5分以上の率(135%)

    ④深夜労働については、それぞれ2割5分以上の率

     

    【割増率一覧】

     

    ④深夜労働

    時間内労働

    100%

    125%

    ①時間外労働(1か月60時間以内分)

    125%

    150%

    ②時間外労働(1か月60時間超分)

    150%

    175%

    ③休日労働

    135%

    160%

     

    「残業代の計算式」
    残業代は次の計算式によって求められます。

    「残業代」=「基礎賃金」×「割増率」×「残業時間数」
    ※基礎賃金は通常の労働時間又は労働日の賃金
    【朝型勤務にも残業代は発生するのか?】
    ところで、ここで疑問が湧きます。
    朝型勤務の時間は、法定時間外労働にならないのでしょうか。

    仮に、9時始業、18時終業(休憩時間1時間)の会社があり、Aさんは7時に出勤して仕事をしているとします。
    7時から9時までの2時間に残業代は発生しないのでしょうか。

    朝型勤務が業務命令で、しかも就業規則にも明示されている会社であれば、多くの場合、始業時間が2時間早い7時になれば、就業時間も2時間短縮されて16時になるでしょう。
    そうであれば、朝の2時間には残業代は発生しません。
    効率よく仕事をすることで、夕方からの時間を自由に使うことができます。

    しかし、朝型勤務の導入が業務命令ではなく就業規則にも定められていない会社では、従業員の自由意思ということで朝の残業代を支払っていないというのがほとんどなのではないでしょうか。
    労働基準法に照らせば、当然、会社は従業員に対して残業代を支払わなければいけないにもかかわらずです。

    また、朝型勤務に切り替えたとしても、就業時間内に仕事が終わらなければ従業員は残業せざるを得なくなり、結局は残業が増えることになってしまいます。

    前述の伊藤忠商事では、20:00~22:00の残業を原則禁止、22:00以降は禁止としています。
    その代わりに、朝の5:00~8:00の賃金には深夜残業並みの50%増、8:00~9:00は25%増となり、6:30~8:00までは無料で軽食を食べることができるそうです。

    ただし、朝型勤務が制度化されていない現状では、業界や会社によって対応がまちまちであるため、個別に見ながら対応していかないといけなくなります。
    【どのような場合に朝型勤務の残業代が認められるのか?】
    次に、朝型勤務での残業代が認められるかどうか、ケースごとに見ていきます。

    「朝型勤務が業務命令の場合」
    労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間のことをいいます。
    そのため、会社や上司の命令で朝型勤務をするのであれば、上記のように時間外手当が発生する場合があります。

    「掃除・着替え・点呼・準備などのための朝出勤」
    業務内容によっては、業務の準備、後片付け、事業所の掃除、休憩時間中の電話番や店番などがある会社もあるでしょう。
    これらの作業が、使用者の指揮命令下にある時間と評価される場合は、労働時間にあたると考えられます。
    なぜなら、使用者の指揮命令は明示だけではなく、黙示の場合も含むからです。

    「朝の研修や勉強会への出席」
    会社の研修や勉強会への出席が義務づけられている、または強制参加の場合、あるいは出席しないことで賃下げ・配転などの不利益がある場合は労働時間にあたると考えられます。

    「社長や上司に合わせて朝型勤務をする場合」
    社長や上司の出勤が朝早いため、自分も早朝出勤しなければいけない状況の場合はどうでしょうか。
    命令がある場合や、社長や上司だけでは仕事ができないために自分も出社する必要がある場合などは労働時間にあたると考えられます。
    しかし、社長や上司に気を使って朝早く出社しているような場合では、労働時間とは認められないケースもあるでしょう。

    「自己都合での早朝出勤」
    ラッシュアワーを避けるために朝型勤務をしている人もいると思いますが、この場合、使用者の指揮命令下ではなく、かつ通勤時間は労働時間ではないため時間外手当は発生しません。
    以上、朝型勤務と残業代について解説しました。

    法律に違反した場合、会社側には刑罰が科せられ、民事では未払い残業代にプラスして同額の「付加金」を従業員側に支払わなければならなくなる可能性があります。

    一方、働き過ぎといわれる日本のビジネスパーソンですが、上記のように法律上は残業代を手にすることは労働者の権利ですから会社に遠慮することはないのです。

    今年もGWに突入しています。
    せっかくの長い休養時間ですから、法律知識を学び、これからの自身の働き方について見つめ直してみるのもいいかもしれませんね。
    未払い残業代に関する相談はこちらから⇒
    http://roudou-sos.jp/(経営者の方)
    http://roudou-sos.jp/zangyou2/(労働者の方)

  • 労働基準監督官が社長を逮捕!?

    2016年03月24日

    労働基準監督官が社長を逮捕することがあるって知ってましたか?

    「外国人実習生に違法な長時間労働させた疑い 社長ら逮捕」(2016年3月22日 朝日新聞デジタル)

    岐阜労働基準監督署は22日午前、外国人技能実習生に違法な長時間労働をさせたなどとして、岐阜県岐南町の婦人・子供服製造会社社長(50)と、岐阜市の技能実習生受け入れ事務コンサルタントの男(50)を最低賃金法と労働基準法の違反容疑で逮捕しました。

    報道によると、2014年12月~15年8月、2人は共謀し中国人技能実習生4人に対し、岐阜県の最低賃金(当時は時給738円)に満たない額で、しかも1日8時間の法定労働時間を超えて働かせ、割増賃金も支給していなかったようで、不払いの賃金の合計は約475万円になるということです。

    容疑者の2人は、技能実習生の帳簿の改ざん、労働基準監督署の立ち入り調査に応じず無視、虚偽説明の繰り返しなどをしていたことから、悪質性が高いと判断されたようです。

    技能実習生は、午後10時~翌午前5時の深夜帯や休日にも働かされていたということで、1ヵ月当たり133~187時間の時間外労働があり、2015年9月に労働基準監督署に申告したことで、今回の発覚につながったとしています。

    技能実習生に対する労働基準法違反などでの逮捕は異例だということです。
    今回のポイントは次の3点です。

    1.違法な長時間労働・割増賃金の不払いによる労働基準法違反
    2.最低賃金以上の額を支払わなかったことによる最低賃金法違反
    3.労働基準監督署の権限の範囲について

    残業代の不払いについては以前、解説しました。

    1週間で40時間、かつ1日8時間の「法定労働時間」を超えて「時間外労働」(残業)させた場合や休日労働・深夜業を行わせた場合、使用者は労働者に「割増賃金」(残業代)を支払わなければいけません。

    労働基準監督署へ届け出をしないで時間外労働をさせたり、時間外労働をさせて割増賃金を支払わなかったりした場合、労働基準法違反で6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

    ただし、労使間で「36協定(さぶろくきょうてい)」を結んでいる場合は、その限りではありません。
    次に、最低賃金法についてです。

    使用者は労働者に対して、国で決められた「最低賃金」よりも多く給料を支払わなければいけません。

    都道府県ごとに定められたものを「地域別最低賃金」、特定産業に従事する労働者を対象に定められたものを「特定最低賃金」といいます。
    使用者は、いずれかのうち高いほうの最低額以上を労働者に支払わなければいけません。

    最低賃金が支払われない場合、労働者は労働基準監督署に訴えることができます。

    「最低賃金法」
    第4条(最低賃金の効力)
    1.使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

    これに違反した場合も、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

    そして、これらの法律に基づいて、労働者の最低労働基準や職場の安全衛生を守るために企業を調査・監督し、法律が守られていなければ使用者を指導するのが労働基準監督署です。

    労働基準監督署には、厚生労働省の専門職員である「労働基準監督官」が所属していて、企業への立ち入り調査(臨検)などをします。

    計画的に対象企業を選定して調査することを「定期監督」、労働者からの申告・告発を受けて調査することを「申告監督」といいます。
    概ね次のような流れで現場での任務を遂行します。

    「労働基準監督官の仕事の流れ」
    1.企業を訪問
    2.立ち入り調査/臨検(使用者や労働者への事情聴取、帳簿の確認など)
    3.法律違反が認められた場合、「文書指導」、「是正勧告」、「改善指導」、「使用停止命令」などを実施
    4.企業からの是正・改善報告を受けて、是正・改善が確認できれば指導は終了
    5.是正・改善が認められない場合、再度監督を実施し、重大・悪質な場合は送検

    ちなみに、立ち入り調査を拒んだり、妨げたりした場合、30万円以下の罰金に処される可能性があります。

    さて、労働基準監督官は、労働基準法の番人、司法警察官、労働Gメンなどとも呼ばれます。
    それは、労働基準監督官が「労働基準法」や「最低賃金法」、「労働安全衛生法」などの法律違反について「刑事訴訟法」に規定する司法警察員の職務を負っているため、警察官と同じような権限を行使することができるからです。

    労働基準監督官の主な権限は次の通りです。
    ・事業場への予告なしの立ち入り調査(臨検)
    ・帳簿書類の提出要求と確認
    ・使用者や労働者への尋問
    ・使用者や労働者への報告・出頭命令
    ・監督指導
    ・法令違反者の送検・逮捕

    通常、労働基準関係法令に違反し、改善が認められない使用者などは送検(刑事事件として起訴するかどうかを決定するために検察官に事件を送ること)されることが多いのですが、今回のケースではさらに悪質だと判断されたことで逮捕になったと思われます。

    送検や逮捕となれば、刑罰を科せられるのはもちろん、会社名や個人名を公表される場合があり、場合によっては今回のように全国に報道されることにもなりますから、会社が被る損害は甚大になります。

    経営者は、ただ利益を上げればいいというわけではありません。
    法令を遵守し、従業員を守り、職場の安全を確保していくことが求められるのです。
    未払い残業代に関する相談はこちらから⇒
    http://roudou-sos.jp/(経営者の方)
    http://roudou-sos.jp/zangyou2/(労働者の方)

  • 仕事中の待機時間に賃金は発生するのか?

    2015年05月22日

    「路線バス折り返しの待機中は“労働時間” 福岡地裁判決」(2015年5月20日 朝日新聞デジタル)

    北九州市営バスの嘱託運転手14人が、路線バスの終点到着後、折り返し運転で発車するまでの待機時間の賃金支払いを求めた訴訟の判決が福岡地裁でありました。
    原告側が2012年に提訴していたものです。

    原告側は、「待機中も忘れ物の確認や車内清掃、乗客の案内をしており、労働から解放された休憩時間にはあたらない」と主張し、「待機時間も労働時間にあたる」として2年間の未払い金を請求。

    一方、市側は「バスから離れて自由に過ごすことが許されている。休憩時間中に乗客対応をすることは求めていない」と主張。

    裁判長は、「待機中も乗客に適切に対応することが求められており、労働時間にあたる」と認定。
    市に対し、2010~11年分の未払い賃金として1人あたり約36万~120万円、計約1241万円を支払うように命じました。

    市長は、「大変厳しい判決。内容を早急に検討し、今後の対応を決めたい」とのコメントを発表したということです。
    さて労働時間については、「労働基準法」に定められています。
    条文を見ながら解説していきます。

    【労働基準法とは?】
    労働基準法とは、会社に比べて立場の弱い労働者の保護を図る目的で制定されたもので、会社が守らなければいけない最低限の労働条件などを定めた法律です。
    【労働時間とは?】
    労働時間とは、休憩時間を除いた、現に労働させる時間(実労働時間)のことで、これには規定があります。

    「労働基準法」
    第32条(労働時間)
    1.使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
    2.使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
    これを、「法定労働時間」といいます。
    仮に、会社が法定労働時間外の勤務を従業員にさせた場合、「割増賃金」として残業代などを払わなければいけません。
    【休憩時間とは?】
    会社が従業員に自由に利用させなければいけないもので、これにも規定があります。

    第34条(休憩時間)
    使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
    【労働時間と休憩時間の違いとは?】
    法令の所轄行政官庁の具体的判断、または取扱基準として発せられるものに「行政解釈」というものがあります。

    たとえば、労働基準法に関するものであれば、厚生労働省から労働局や労働基準監督署に対して通達されるため、一般に「通達」とも呼ばれます。

    過去の行政解釈に以下のものがあります。

    「休憩時間とは、単に作業に従事しない手待時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいう」
    (昭和22年9月13日 発基17)

    これは、実際には作業を行っていなくても、使用者からいつ就労の要求があるかわからない状態で待機している場合は、休憩時間に含まれず、労働時間になるということです。

    次に、労働時間に関する判例を見てみましょう。

    「労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」
    (三菱重工業長崎造船所事件 最高裁一小平成12年3月9日民集54巻3号801頁)

    つまり、労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間は労働時間になるということです。

    なお、使用者の指揮命令は明示だけではなく、黙示の場合も含みます。
    具体的には、業務の準備、後片付け、事業所の掃除などが義務づけられているならば指揮命令下にある時間となりますし、休憩時間中の電話番や店番なども、労働から解放されているわけではありませんので、使用者の指揮命令下にある時間と評価でき、労働時間にあたると考えられます。
    【労働時間と認められる業務について】
    以上のことからなど、労働時間にあたると考えられる業務についてまとめます。

    ・業務の準備、着替え、後片付け、事業所の掃除が義務づけられている場合。
    ・休憩時間中の電話番や店番など。
    ・所定労働時間外の社内研修等の参加時間(出席が義務づけられている場合や、実質的に出席の強制があると思われる場合)。
    ・仮眠時間(警備の業務に従事している労働者が、仮眠中でも警報が鳴った場合等には直ちに業務に就くことを求められているような場合など)。
    よって、今回の訴訟のケースでは、バスの運転手が待機時間に行っていた業務、たとえば忘れ物の確認や車内清掃、乗客の案内などは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間」=「労働時間」にあたると判断されたということです。

    会社は、従業員の労働時間と休憩時間をきちんと管理しなければいけないことは肝に銘じておきましょう。

    労使双方の行き違いやコミュニケーション不足、または労働法に関する知識の不足など、労働問題の原因はさまざまですが、労働時間については法律でしっかり定められているのですから、会社も従業員も、この機会に労働法をしっかりと覚えて、仕事にも生かしていただきたいと思います。

    労働問題のご相談はこちら⇒ http://roudou-sos.jp/

     

  • 2倍!2倍!未払い残業代の付加金とは?

    2015年02月26日

    2015年も、労働トラブルに関する報道が相次いでいます。
    今回は、未払い残業代の「付加金」について解説します。

    「佐川急便で残業代未払い 付加金も命じる 東京地裁」(2015年2月20日 産経新聞)

    佐川急便の元運転手2人が、「残業代の一部が未払いだ」として割増賃金などの支払いを会社に求めた訴訟の判決で、東京地裁は、制裁金に当たる付加金も含め計約215万円の支払いを命じました。

    元運転手の2人は、平成21年11月~24年に佐川急便の都内の営業所に勤務。
    IDカードで出退勤時刻を管理していたが、「記録上の時間より早く出勤し、遅く帰宅する日もあった」と主張していたようです。

    裁判官は、2人が通勤に使っていた高速道路の料金所通過記録と、記録上の出退勤時刻に差があることなどから、「記録上の時間は必ずしも実際の勤務時間を反映していない。営業所の勤務時間の管理が適切ではなかった」と指摘したということです。
    【未払い残業代の付加金とは?】
    労働に関する法律の中に「労働基準法」があります。
    これは、会社が守らなければいけない最低限の労働条件を定めたもので、会社に比べて立場の弱い労働者の保護を図る目的があります。

    この中に「法定労働時間」が定められています(第32条)。
    会社(使用者)が、社員(労働者)を働かせることができる労働時間は、原則として一週間で40時間、かつ1日8時間(法定労働時間)までというものです。
    (※ただし、36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出れば、労働者が法定労働時間を超えて働いても労働基準法には違反しません)

    この基準以上の時間、つまり法定労働時間外の勤務をさせたとき、会社(使用者)は社員(労働者)に「割増賃金」を支払わなければいけません(第37条)。

    割増賃金は、時間外労働(残業)、休日労働、深夜労働などによって発生します。
    今回の事案では、元社員が会社に管理され、記録されていた出退勤時間より実際は早く出勤し、遅く帰宅していたとして、その時間分の残業代が認められたわけですが、判決の中に「付加金」というものがありました。

    では、この「付加金」とは一体何でしょうか?
    条文を見てみましょう。

    「労働基準法」
    第114条(付加金の支払)
    裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第7項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から2年以内にしなければならない。
    付加金とは、簡単にいうと違反を犯したことへの制裁金ということになります。

    ところで、民事で労働者側が「未払い残業代」による訴訟を起こし、訴えが認められた場合、会社(使用者)が支払うものには次の3つがあります。

    ①「未払い残業代の支払い」
    認定された残業代の未払い分の全額を支払わなければいけません。

    ②「付加金の支払い」
    裁判所が必要と認めた場合、未払い残業代と同額を上限とした付加金を支払わなければいけません。
    会社側の違反が悪質な場合などでは、全額が認められるケースも多くあります。

    付加金は会社への制裁金という意味合いがあるため、裁判で判決までいったときに初めて付加されます。

    また、付加金は違反があったときから2年以内に請求しなければ無効となります。
    なお、「労働審判」では付加金はつかないので注意が必要です。

    ③「遅延損害金の支払い」
    未払い残業代と付加金には利息がつきますが、これを「遅延損害金」といいます。

    利息の利率は、社員(労働者)が在職中であれば6%、退職している場合は14.6%と2倍以上になります。
    人気アニメ『セーラームーン』では、「月に代わっておしおきよ!」の名セリフが有名ですが、未払い残業代で裁判にまで至ってしまった場合、会社(使用者)は法律におしおきされてしまいますから、経営者の方は十分注意してください。

    2倍得をするならいいですが、2倍のお金を支払わなければいけない可能性もあるのですから、労働時間に関して経営者の方は、社員の勤務時間の管理をきちんと行い、法律を順守することが大切です。

    残業代請求が認められるかどうかは、かなり難しい法律問題となりますので、労働者も、会社も、適切な専門家などに相談をした方がよいでしょう。

    労使双方が、お互いを尊重しながら、社員は働きやすい環境で十分能力を発揮することで、会社の業績も上がり、会社も社員もお客さんも得をする、まさに「三方よし」となることを願っています。

    未払い残業代の問題のご相談はこちら⇒
    http://roudou-sos.jp/

  • なんと、違法残業の会社が半数以上!?

    2015年01月30日

    およそ1年前の2013年12月に、厚生労働省が若者の使い捨てなどが疑われる、いわゆる「ブラック企業」についての実態調査を行ったことについて解説しました。

    詳しい解説はこちら⇒
    「8割以上の企業が労働基準法違反!あなたの会社は?」
    http://taniharamakoto.com/archives/1239

    5111の事業所に対して監督・調査を実施した結果、82%にあたる4189事業所で何らかの労働基準関係法令違反が見つかった、というものでした。

    さて、1年経って状況はどう変わったでしょうか?

    「2304事業所で違法残業 厚労省が是正指導」(2015年1月27日 共同通信)

    厚生労働省は、2014年11月に実施した「過重労働解消キャンペーン」における重点監督の実施結果について取りまとめ公表しました。

    これは、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業所や、若者の「使い捨て」が疑われる事業所など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業所に対して集中的に実施したもので、対象は全国の4561の事業所。

    その結果、約半数の2304事業所で、時間外労働に必要な労使協定を結ばないなどの違法な残業をさせており、是正を指導したということです。

    違法な残業をさせていた事業所で、最も長く働いていた従業員の時間外労働が、過労死ラインとなる月100時間超だったのは715事業所におよび、中には月200時間を超えたケースもあったということです。

    厚生労働省は、今後も長時間労働が疑われる事業所への監督を徹底する方針だとしています。
    ちなみに、「過労死ライン」とは、健康障害リスクが高まるとする時間外労働時間を指すもので、厚生労働省によると月80時間。
    1ヵ月の労働日数を20日とした場合、1日に4時間の時間外労働が続く状態をいいます。

    過労死の労災認定基準として、脳血管疾患及び虚血性心疾患等について、「発症前1ヵ月間におおむね100時間又は発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」とされています。

    さて、1年前に公表された資料では、以下のような結果でした。

    〇違法な時間外労働があったもの:2241事業場(43.8%)
    〇賃金不払残業があったもの:1221事業場(23.9%)
    〇過重労働による健康障害防止措置が実施されていなかったもの:71事業場(1.4%)

    また、「健康障害防止措置」と「1か月の時間外・休日労働時間が最長の者の実績」についての結果は以下のとおりです。

    〇過重労働による健康障害防止措置が不十分なもの:1120事業場(21.9%)
    〇労働時間の把握方法が不適正なもの:1208事業場(23.6%)
    〇1か月の時間外・休日労働時間が80時間超:1230事業場(24.1%)
    〇うち100時間超:730事業場(14.3%)
    次に、今回の調査を具体的に見ていきましょう。

    「主な違反内容」
    ①違法な時間外労働があったもの:2304事業所(50.5%)

    そのうち、時間外労働の実績がもっとも長い労働者の時間数が、
    月100時間を超えるもの/715事業場(31.0%)
    そのうち、月150時間を超えるもの:153事業所(6.6%)
    そのうち、月200時間を超えるもの:35事業所(1.5%)

    ②賃金不払残業があったもの:955事業所(20.9%)

    ③過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:72事業所(1.6%)
    「主な健康障害防止に係る指導の状況」
    何らかの労働基準関係法令違反があった3811事業所のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業所数

    ①過重労働による健康障害防止措置が 不十分なため改善を指導したもの:2535事業所(55.6%)

    そのうち、時間外労働を月80時間以内に削減するよう指導したもの:
    1362事業所(53.7%)

    ②労働時間の把握方法が不適正なため指導したもの:1035事業所(22.7%)

    ※業種別では、製造業がもっとも多く1032人、次いで商業802人、以下、その他の事業、接客娯楽業、保健衛生業の順となっています。
    報道にはありませんでしたが、今回公表された資料によると、何らかの労働基準関係法令違反があったのは、3811事業所で、全体の83.6%にも及ぶということですから、1年前の82%と比較して改善されたどころか、増加していることがわかります。

    ちなみに、厚生労働省によれば、重点監督は、数多く寄せられた情報の中から過重労働の問題があることについて、より深刻で詳細な情報のあった事業所を優先して対象としている、ということです。

    そのため、相対的に違反のあった事業所の割合が高くなっているということだと思いますが、それにしても相変わらず労働問題の「種」を社内に抱えている会社や経営者の方が多いのが実情のようです。

    最近では、未払い残業代請求、長時間労働、不当解雇、パワハラ、セクハラなどの労働トラブル関連の報道がない日はない、というほどマスメディアでも取り上げられています。

    会社としては、未払残業代やそれに付随する付加金などの支払いのために予期せぬ出費を強いられ、最悪の場合は倒産の可能性もあります。
    また、会社名が世間に公表されたり、取引先との信用を失うなど労働問題は、会社にとって大きな損失になりかねないという事実を経営者の方には今一度知っていただきたいと思います。

    あなたの会社が抱える労働問題の「種」は、もしかして、時限爆弾かもしれませんよ……。

    労働問題に関する相談は、こちらから⇒ http://roudou-sos.jp/

  • 経営者向けの労働セミナー2本開催

    2015年01月06日

    IT労働セミナー

    会社経営者向けの労働セミナー2本のご案内です。

    【セミナーその1】

    最近、退職した社員から、裁判や労働審判などの法的手続を申し立てられることが増えています。

    なぜでしょうか?

    それは、「残業代」の請求です。

    労働基準法では、1日8時間・週40時間を超えて労働させた場合には、残業代が発生することになっています。

    また、そもそも残業をさせるには、「36協定」を締結し、労働基準監督署に提出しておかないと、刑罰を受けることにもなります。

    特に、IT企業や運送業、営業社員、形式上管理職にしている社員などから、訴えられる例が目立っていますね。

    そして、その場合、会社側が敗訴する例が多いのです。

    なぜなら、いくら会社が社員との間で、

    「残業代は発生しない」

    「残業代は放棄する」

    「給料の中に、残業代は全て含まれている」

    と合意しても、無効になってしまうからです。

    したがって、会社としては、社員から残業代請求をされないよう、しっかりと対策を立てておく必要があるのです。

    そのためのセミナーを企画しました。

    残席わずかですので、お早めにお申し込みください。
    労働時間管理と残業代問題
    【1月21日(水)開催 定員20名】

    ⇒ http://myhoumu.jp/seminar/roudou07.html
    【セミナーその2】

    一生懸命働いてくれる社員は、会社の宝です。

    しかし、中には、

    「なるべくサボろう」

    「仕事時間中もばれないようにネットサーフィンや私用メールで時間をつぶそう」

    「会社の備品を少しくらい持って帰ってもいいだろう」

    「採用されるためなら、少しくらい経歴を詐称して履歴書に書いても許されるだろう」

    など、問題行動を起こす社員もいます。

    そのような社員がいると、他の社員の士気が下がり、会社の業務に支障が出てきます。

    給料を払っていることすら無駄に思えてきたりもします。

    では、そのような問題社員を解雇すれば解決するのでしょうか?

    これまで解雇しても、あまり問題にならなかったかもしれませんが、実は、法律では、解雇には厳しい制限が課せられています。

    解雇しても、労働組合に加入されて団体交渉を申し込まれたり、解雇無効の仮処分、裁判などを起こされる例が増えています。

    では、問題社員には、どのように対処すればよいでしょうか?

    その内容をセミナーにしました。

    こちらは、まだまだ残席がありますが、これから告知していきますので、お早めにお申し込みください。
    問題社員対応で間違えやすいポイント
    【2月2日(月)開催 定員20名】

    ⇒ http://myhoumu.jp/seminar/roudou10.html

  • 営業社員など労働時間を管理できない社員に対する労働時間管理は!?

    2014年12月28日

    社員の労働時間を管理しなければならないことはわかっていても、外回りの営業だったり、直行直帰だったりして、なかなか労働時間の管理ができない場合がありますね。

    しかし、厚生労働省の通達や裁判実務では、社員の労働時間の管理は会社の責任であるとされています。労働時間の管理をいい加減にしていては、社員から突然、残業代を請求されるかもしれません。

    「労働時間を管理しろと言われてもうちは外回り営業の社員が多いから管理なんてできないよ。社員のために直行直帰も許可しているし。営業職としての手当てがついているから問題ないはずだ。」とおっしゃる方がいるかもしれません。

    しかし、営業手当をつけているだけでは、その外回り営業職の社員がたとえば「毎日夜遅くまで営業で歩き回っていた」と主張して残業代を請求してくるリスクを完全に排除することはできません。

    では、このように会社が社員の仕事の実態や労働時間を正確に把握することが困難な場合は、どうすればよいでしょうか?

    「事業場外みなし労働時間制」という制度があります。

    事業場外みなし労働時間制は、次の2つの要件を満たす場合に、その社員は所定の時間分、仕事をしたとみなすことができるという制度です。

    ①社員が労働時間の全部、または一部について、事業場の外で業務に従事していたこと
    ②その労働時間の算定が困難であること

    この制度を活用すれば、会社は、労働時間の算定が難しい営業職の社員などに対して、残業代の支払を回避できることになります。

    もっとも、外回りの営業職社員などであっても、事業場外みなし労働時間制を適用することができないケースもありますので注意が必要です。裁判例上、「随時会社の指示を受けながら労働している場合」などは、社員の労働時間の算定が困難であるとはいえないため、前述②の要件を満たさず、事業場外みなし労働時間制を適用することができないとされているのです。

    過去の裁判例としては、「阪急トラベル・サポート事件」があります。

    事案の概要としては、旅行会社が企画・催行する国内・国外ツアーのために派遣業者から派遣されたツアー添乗員の添乗業務の遂行について、ツアー添乗員から会社に対し、未払時間外割増賃金等が請求された事案でした。

    その中で、会社側は事業場外みなし労働時間制の適用を主張し、時間外割増賃金等の支払義務がないことを主張しました。

    外回り営業職社員などと同じく、ツアー中の添乗員の行動の詳細を把握することは困難ですから、事業場外みなし労働時間制の適用があるようにも思えます。

    しかしながら、裁判所は、事業場外みなし労働時間制の適用はない、と判断しました。

    その理由は、以下のとおりです。

    ①添乗員が旅行会社から各ツアーの出発から帰着までの詳細な行程とその管理の仕方を指示されている
    ②そのできるだけの順守を守らなければならない
    ③実際の行程についても添乗報告書に詳細に記載して提出しなければならない
    ④海外ツアーの場合は国際通話可能な携帯電話を持たされ、行程変更等の場合には会社への連絡・相談を必要とされていた

    以上より、労働時間の算定が困難とはいえないとして、事業場外みなし労働時間制の適用を否定しました。

    外回り営業職の社員であれば、例えば訪問先や営業の方法などについて、会社から逐一指示を受けている場合は、随時会社から指示を受けながら労働していると言えるので、事業場外みなし労働時間制の適用できません。

    これに対し、単に連絡できる環境にいるだけ、あるいは実際に必要なときに事務的な連絡が行われるだけなら、随時会社の指示を受けながら労働しているとはいえませんので、事業場外みなし労働時間制の適用は可能です。

    最近は、社員が携帯電話を所持していることが当たり前になっていますので事業場外みなし労働時間制を適用できるか否かは、慎重に検討する必要があります。

    なお、事業場外みなし労働時間制を導入するには、労働基準法上、過半数労働組合または労働者の過半数の代表者と協定を締結し届け出なければならないとされています。

    安易に制度設計をして、後で社員に訴えられると、多額の支払が生じることになりますので、制度設計前には、必ず弁護士に相談されることをおすすめします。

    みらい総合法律事務所へのご相談は、こちらから。
    http://roudou-sos.jp/

  • 業務委託なのに、残業代を支払う!?

    2014年12月28日

    正社員にすると、労働法の色々な規制がかかってきたり、残業代を支払う義務が発生したり大変なので、正社員ではなく、「業務委託」という形にして仕事を委託している会社が少なからずあるようです。

    会社は、社員が残業をした場合には、当然残業代を支払う必要がありますが、業務委託先に対しては、委託先が長時間働いたとしても残業代を支払う必要はありません。

    例えば、個人事業主として、自己所有のトラックを持ち込んで輸送業務に従事する運転手や、建設業における一人親方などに対しては、会社は残業代を支払う必要はありません。

    そのため、会社は、社員を雇用するのではなく、業務委託の形式で作業させることで、残業代の支払いを免れて人件費を削減することができます。

    しかし、当該社員(ないし業務委託先)が、会社が残業代の支払義務を負う「労働者」であることを否定するためには、単に当該社員(ないし業務委託先)と会社との契約の名称を「業務委託契約」や「請負契約」などとしておけば良いというわけではありません。

    この「労働者」性が否定されるためには、当該社員(ないし業務委託先)が、実態として、「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」ではないことが必要であります。

    いくら「業務委託契約」を締結していても、実態が「労働者」とみなされると、残業代を支払う義務が発生する、ということです。

    そして、この労働者性の判断基準ですが、

    ・時間・場所の拘束の有無、程度(拘束の程度が強ければ労働者性を肯定する事情と評価されます

    ・契約に対する諾否の事由の有無(自由がなければ労働者性を肯定する事情と評価されます)

    ・契約内容の遂行に当たっての指揮命令の有無(指揮命令に従っている場合には労働者性を肯定する事情として評価されます)

    ・経費の負担の有無(受託者が経費を負担するような場合には労働者性を否定する事情として評価されます)

    等の種々の事情を考慮して判断されます。

    したがって、例えば、自己所有のトラックを持ち込んで業務に従事する運転手であっても、会社の仕事しかすることができず、始業・就業時間が決まっており、経費も会社持ちであるような場合には、会社は運転手からの残業代の請求を拒むことができません。

    また、例えば、独自に飲食業を営む者としての立場でクラブとの間で入店契約を締結したホステスについては、業界の慣習や所得税の申請において個人事業主として扱われているとしても、クラブへの出店が義務付けられていることや、クラブからの報酬が事業者性を認める程高額でないこと、衣装代はホステスの負担であるものの、その他の経費はクラブ側が負担していることなどを理由に、クラブはホステスからの残業代の請求を拒むことはできないとした裁判例もありますので、注意が必要です。

    会社が雇用契約ではなく、業務委託契約の形式をとっている場合、往々にして、当該社員(ないし業務委託先)の残業時間は長時間となってしまっているのが実情です。

    そのため、もし当該社員(ないし業務委託先)が会社が残業代を支払わなければならない「労働者」であるとされてしまうと、会社は、非常に多額の残業代の支払いを余儀なくされてしまう場合が多いです。

    このようにならないよう、会社は、「業務委託契約」を締結する場合には、上述のさまざまな事情を考慮して、就労のさせ方を慎重に検討する必要があるでしょう。

    このあたりは、法律の素人では判断が難しいので、弁護士に相談することをおすすめします。

    みらい総合法律事務所へのご相談は、こちらから。
    http://roudou-sos.jp/

  • 労働セミナー2015年1月21日開催です。

    2014年12月20日

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    【会社経営者の方へ】
    近年、社員が起こした労働トラブルによって、
    会社(経営者)が大きな損害をこうむるケースが増えています。

    残業代の請求、解雇トラブル、機密情報の流出などなど。

    そのなかでも、残業代請求は、近時増加しており、
    賃金体系をどうするか、労働時間管理をどうするか、
    そして、残業代請求に対してどう対処するか、
    などについて企業は頭を悩ましています。

    企業は労働時間を管理する義務があり、
    労働時間の把握を怠ると、裁判上不利に働きます。

    そこで、労働時間管理と残業代問題について、
    裁判例を分析しつつ、適切な制度設計を解説します。

    適切に対処しなければ、経済的な損失だけではなく、
    他の優秀な社員や今まで築き上げた
    社会的な信用まで失ってしまうかもしれません。

    労働時間の把握を怠ったために、
    何千万もの出費を余儀なくされるケースもあります。

    そこで、「労働時間管理と残業代問題」について
    弁護士解説セミナーを行います。

    【1月21日(水)開催 定員20名】

    本セミナーで労働時間管理、残業代問題、
    制度設計の知識を身につけておきましょう。

    労働時間管理と残業代問題 弁護士解説セミナー
    ⇒ http://myhoumu.jp/seminar/roudou07.html

  • 残業代の立証はどうするか?

    2014年08月20日

    使用者(会社)と労働者の間にリスペクトがあり、互いに尊重し合う関係の中で仕事ができれば、こんなに幸せなことはありません。

    しかし現実には、解雇問題やいじめ・パワハラ、労働条件の引き下げなど、労使間の労働紛争が絶えず起きています。

    5月に厚生労働省が発表した「平成25年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、労働相談の総件数は105万件あまり。
    前年度比で1.6%減となっていますが、それでも6年連続の100万件超えで高止まりしています。

    ところで先日、こんな報道がありました。

    「9割の求人で不適切記載 固定残業代導入の企業で」(2014年7月29日 産経新聞)

    一定額の残業代を手当などの形で事前に支払う「固定残業代制度」を導入している企業が全国のハローワークに出した求人のうち、約9割に不適切な記載があったとの調査結果が発表されました。

    報道によると、近年、求人や労働契約の際に固定残業代を盛り込む企業が増えているが、何時間分の残業代に当たるかが不明である、長時間労働の助長、給料の総額を高く見せかけるなどの問題点が見つかっているということです。

    労働契約の内容や就業規則等は、各企業によって違うものですが、中には固定残業代どころか、残業代がないという企業もあるようです。

    今回は、そうした企業で働く社員の方のお悩みです。

    Q)残業代について質問です。私の勤務先では残業代がでません。それなのに、残業は毎日のようにあります。仕事はがんばりたいのですが、やはり「損をしている」、「会社にいいように使われている」と思うと仕事へのやる気がなくなります。お金がすべてとは思っていませんが、自分が働いた対価は当然ほしいです。上司に聞いてみたところ、「うちは前から残業代ないし、社員はみんな納得して働いてる。お前もつべこべ言わず働け」と、まったく取りあってもくれません。法的には、どう対応したらいいのでしょうか?
    以前、残業代について解説しました。

    「残業代を支払わない会社には倍返しのツケがくる!?」
    http://taniharamakoto.com/archives/1574

    中華料理のチェーン店「餃子の王将」で、社員とパート従業員の計923人に対し、2億5500万円分の残業代の未払いがあったというものでした。

    「労働基準法」では、使用者が労働者を働かせることができる労働時間は、原則として1日8時間、一週間で40時間までと定められています。これを「法定労働時間」といいます。

    法定労働時間外の勤務をさせた場合、会社は労働者に対して「割増賃金」(残業代)を支払わなければいけません。

    よって、質問者の方は会社に対して残業代を請求できますし、支払ってもらう権利があります。

    ただし、実際に会社に請求するには、毎日の始業時間と終業時間、そして実労働時間をできるだけ正確に、客観的に特定しなければいけません。

    タイムカードのコピーや、勤怠システムのデータを出力したものがあれば、一番よいでしょう。

    それらがない場合には、業務上のメールやFAX、勤務時間が記載してある業務日報や報告書、自分の手帳に記載した勤怠時間のメモ、パソコンのログイン・ログアウトのデータの時間なども証拠となります。

    では、勤務記録が自分の手元にない場合はどうでしょうか?

    この場合は裁判で立証するしかないでしょう。

    しかし、ここまでくると手続きなど難しい部分もあるので、一度、弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

    反対に、会社の側では、きちんと労働者の勤怠管理をしておくことが、残業代の払いすぎを防止することになります。

    ちなみに、残業代請求の時効は2年となっています。
    2年を過ぎると時効によって残業代は消滅してしまいますので、注意が必要です。

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