残業代を支払わない会社には倍返しのツケがくる!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。
メニュー
みらい総合法律事務所
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階
弁護士20人以上が所属するみらい総合法律事務所の代表パートナーです。
テレビ出演などもしており、著書は50冊以上あります。

残業代を支払わない会社には倍返しのツケがくる!?

2014年07月24日

以前、「労働基準法」について解説しました。

詳しくはこちら⇒「8割以上の企業が労働基準法違反!あなたの会社は?」
https://taniharamakoto.com/archives/1239

昨年行われた厚生労働省の調査により、8割以上の企業に法令違反が見つかったというものでした。

しかし、こうした取り組みの後も労働基準関係法令違反の企業がなくなることは、なかなかありませんね。

先日も、こんな報道がありました。

「王将フード、賃金2億5500万円未払い 労基署が是正勧告」(2014年7月14日 京都新聞)

中華料理店チェーン「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは、社員とパート従業員の計923人に対し、2億5500万円分の賃金の未払いがあったと発表しました。

同社は、2013年7月から2014年2月までの間に、全国の直営店で残業時間を適正に管理せず、残業代の一部を払っていなかったということで、京都下労働基準監督署から実際の労働時間に見合った残業代を支払うよう是正勧告を受けたということです。

未払い分は7月中に支払う予定で、費用を2014年4~6月期に計上。業績への影響は軽微としているようです。

厚生労働省は、是正勧告、指導に応じない企業は労働基準法違反の疑いなどで送検し、企業名を公表するとしていましたから、是正勧告後の同社の対応については適切だったということでしょう。
ところで近年、労働者が使用者を訴える「労働紛争」が増加しています。
その中でも多いのが残業代未払い問題です。

ここで、もう一度、残業代について簡単に解説しておきたいと思います。

「法定労働時間とは」
労働基準法では、使用者が労働者を働かせることができる労働時間は、原則として一週間で40時間、かつ1日8時間(法定労働時間)までと定められています。

ただし、36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出れば、労働者が法定労働時間を超えて働いても労働基準法には違反しません。

36協定とは、労働者の過半数が加入する労働組合があればその労働組合と、そのような労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表するものと書面で締結した協定のことをいいます。
労働基準法36条に基づくためこう呼ばれています。

なお、労動者が法定労働時間を超えて働かせた場合には、適用除外を除き労働者に割増賃金を支払わなくてはなりません。
「割増賃金とは」
法定労働時間外の勤務をさせたときに必要となるのが割増賃金です。

割増賃金とは、使用者が労働者に時間外労働(残業)、休日労働、深夜業を行わせた場合に支払わなければいけない賃金のことです。

ちなみに、労働基準法における労働時間とは、使用者が労働者を指揮命令下においている時間です。

しかし、就業規則や労働協約に定められている、合意で決めているといった理由だけで、労働者が労働したと主張する時間が労働時間ではないとはいえないことに注意が必要です。
「割増賃金の算定方法」
割増賃金は、法定労働時間を超えた時間に1時間あたりの賃金の1.25をかけます。
法定労働時間を超えた時間が深夜労働(午後22時から午前5時)に当たる場合には1.5をかけた金額になります。
「基本給と残業代の区分け」
残業代部分が基本給から明確に区別できるのであれば、残業代を支払っていると認められますが、そのような区別ができない場合には、別途残業代を支払わなければなりません。
「労働者が勝手に残業していた場合」
残業して仕事を終わらせることがどうしても必要であり、そのことを管理者が当然に認めていた場合には、黙示に残業を命じたとして、使用者は残業代を支払わなくてはなりません。
「付加金とは」
割増賃金の支払いを怠った場合には、未払賃金に加え、同額の付加金が義務づけられることがあるので注意が必要です。

付加金は裁判所の命令によって生じるので、裁判所が命じる前に未払賃金に相当する金額を労働者に支給し、使用者の義務違反の状況が消滅した後は、付加金を支払う必要はありません。
「賃金請求権の期限」
賃金請求権の消滅時効は2年です。
つまり、労働者から2年以上前の賃金を請求されても、使用者は支払う必要はないということになります。
企業が残業代を支払わず、労働基準監督署の監督・調査が入ると、今回のようなことになります。

ここで企業側が注意しなければいけないのは、裁判を起こされた場合には、裁判所が未払い残業代と同額の「付加金」の支払を命じることがあるということです。
つまり、2倍の金額を支払わなければいけないということです。

「餃子の王将」のような規模の企業なら経営悪化には至らないのでしょうが、中小企業などでは、複数社員の訴えがあった場合など、大変なことになってしまいます。

(未払い残業代+付加金)×人数分の支払いになるわけですから、いっきに多額の金銭がキャッシュアウトして、企業の存立が危うくなる可能性もあるわけです。

ちなみに、今年の3月には社員に給料を払わなかった社長が書類送検された事件もありました。
詳しくはこちら⇒「給料の不払いが犯罪になる!?」
https://taniharamakoto.com/archives/1395

無用な紛争を避けるためにも、①効率よく働ける労働環境を整えること、②長時間におよぶ余分な労働が発生しないように使用者が労働時間をきちんと管理することで、労働者と使用者がともに発展していくことが大切です。

未払い残業代の問題でお困りの方は、こちらにご相談ください。
「残業代請求から会社を守る弁護士SOS」
http://www.bengoshi-sos.com/labor/04/