刑法犯 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜 - Part 5
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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  • スポーツの勝敗で賭をすると、犯罪です。

    2015年10月08日

    スポーツには、観る者を熱くさせ、感情を昂らせる力があります。
    しかし、時として、その熱さがほかの方向に向かってしまうこともあります。

    今回は、スポーツとギャンブルについて法的に解説します。

    Q)取引先の会社の部長が、ギャンブル大好きで困っています。高校野球や大相撲、ワールドカップ、オリンピックなど大きなスポーツの大会があると部署内で賭け事が始まるからです。私のような営業担当は、ほぼ強制的に参加させられます。私は、それほどギャンブルには興味がないため熱くなる気持ちがよくわかりません。しかも、遊びの賭け事でも犯罪になるという話を聞いたことがあるのですが本当でしょうか?

    A)法律では、「一時の娯楽に供する物」を賭ける場合を除いて賭博は禁止されています。
    「一時の娯楽に供する物」とは、その場で消費してしまうような物、たとえば、食事や飲み物、たばこなどが該当します。
    一時の娯楽に供する物が買える程度の金銭を賭ける場合は、セーフとする見解もありますが、判例は違法と判断する傾向にありますので、注意が必要です。

    日本で認められているギャンブルは、「公営競技」と「公営くじ」に分けられます。
    公営競技は、競馬、競艇、競輪、オートレース。
    公営くじは、宝くじ(ナンバーズ、ロト、スクラッチ等も含む)とサッカーくじ(toto)です。

    これら以外のギャンブルは法律で禁止されています。

    「刑法」
    第185条(賭博)
    賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
    刑法では、「賭博及び富くじに関する罪」として、賭博罪(185条)のほかにも、常習賭博罪(186条)、賭博場開張等図利罪(186条)、富くじの発売罪(187条)、取次ぎ罪(187条)、授受罪(187条)が規定されています。

    前述したように、第185条の「一時の娯楽に供する物」とは、食事や飲み物、お菓子、たばこなどその場で消費してしまうような物のことです。

    なお、法律上はたとえ1円でも賭けをすれば違法の可能性がありますが、現実にはこれら一時の娯楽に供される程度の少額の金銭であれば摘発される可能性は少ないでしょう。

    しかし、金額が大きくなればそうはいきません。
    先日も、野球賭博の事件が報道されました。

    「野球賭博、関与の疑い…巨人・福田投手」(2015年10月5日 読売新聞)

    読売巨人軍所属の福田聡志投手(32)が、知人とプロ野球の試合などを対象に賭けをしていた疑いが明らかになった。

    今年8月、チームメートに紹介された税理士法人勤務という男性から、全国高校野球選手権大会の試合で賭けをしないかと誘われ、複数の試合で賭けを行ったという。

    賭けの方法は、勝ちを予想したチームに点数(1点1万円)を賭けるというもので当初は5~10点を賭けていたが、大きな損をしたところ、男性から「プロ野球で取り返せばいい」と持ちかけられ、8月下旬から9月初旬まで、プロ野球と米大リーグでそれぞれ約10試合を対象に賭けを続けていた。

    福田選手は最終的には百数十万円の損をしたが、男性から精算を求められたことはなく、現金のやり取りは一度もしていなかった。
    しかし、賭けをやめた後、男性からの取り立てが始まり、9月30日に男性が読売ジャイアンツ球場(川崎市)を訪れたことで事案が発覚したという。
    さて、質問者の参加した賭け事の詳細はわかりませんが、ちょっとした遊び感覚でも賭博は犯罪となる可能性があるということは覚えておいてほしいと思います。

  • 不正アプリを使った“性的脅迫”事件が急増中!?

    2015年06月30日

    スマートフォンなどを使ったネット上の性的な脅迫、「ゆすり」行為が行われているようです。

    一体、どんな手口なのでしょうか?
    「不正アプリで性的脅迫 個人情報抜き取り 全国で被害」(2015年6月24日 神戸新聞)

    インターネット上で知り合った女性と性的な写真を交換するうちに、不正アプリを通じて自分のスマートフォンに登録してあるメールアドレスなどを抜き取られ、あとになって女性の関係者から「知り合いに写真をばらまく」と脅され、現金を要求される…そうした被害が全国に広がりつつあるようです。

    兵庫県警によると、手口は次の通りです。
    ・ある日、男性のスマホに突然、見ず知らずの女性からメールが届く。
    ・何度かやり取りを重ねるうちに、女性から「恥ずかしい姿を見せ合おう」と持ちかけられる。
    ・送られてきた女性の画像を開くと、自分のスマホの中の電話帳のデータなどが抜き取られる不正アプリがインストールされる。
    または、動画をやり取りするためのアプリと称したアプリを入手させられる。
    ・男性が自分の性的な恥かしい画像を送った後、女性のアカウントから見ず知らずの男がメール、もしくは電話で、「電話帳に入っているアドレス宛におまえの恥かしい画像をばらまく。嫌なら金を払え!」などと脅迫される。

    兵庫県内では2015年に入り、中高年の男性複数人から「数十万を要求された」などの相談があったようですが、今のところ現金被害は出ていないということです。

    しかし、県警サイバー犯罪対策課は、「事件の性質上、被害者は申告しにくく、実際の事件数はもっと多い」とみているとしています。
    こうした手口は、「性的な」と「ゆすり」を意味する単語を組み合わせた造語である「セクストーション(性的脅迫)」と呼ばれるもので、5年くらい前にアメリカで被害が確認され、日本では2014年頃から報告され始めているようです。

    では、法律的にはどのような罪になるかというと、「不正指令電磁的記録供用罪」に問われる可能性があります。

    「刑法」
    第168条の2(不正指令電磁的記録作成等)
    1.正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

    一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
    二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録

    2.正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
    不正指令電磁的記録供用罪については、以前にも解説しています。
    詳しい解説はこちら⇒
    「遠隔操作アプリで逮捕!?夫が妻に犯した罪とは?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1932

    妻のスマホに遠隔操作アプリを無断でインストールし、遠隔操作ができる状態にしたとして夫が逮捕された事件でした。

    そもそも、この不正指令電磁的記録供用罪は、正当な理由なしに、人のコンピュータ(電子計算機)に不正な指令を与えるウイルス(電磁気記録)などを入れる(インストール)犯罪です。

    最近では、知り合った女子大生のスマホに遠隔操作アプリを不正にインストールした大学助教授や、スマホから自動的に110番にかかるコンピューターウイルスに感染したサーバーにつながるURLを、LINE(ライン)で広めた高校生5人が逮捕、書類送検される事件も起きています。

    ネット上に流出した画像や動画は半永久的に消去されず、自分の死後も存在し続ける可能性があります。

    今回の不正アプリは、画像ではなく個人情報のデータを抜き取るものですが、男性が送ってしまったハレンチな自分の画像が将来的に悪用される危険性は否定できません。

    安易な気持ちで画像や動画をネット上でやり取りしない、見ず知らずの怪しい人物からのメールや添付データは開かないなど、自衛の意識を持っておいたほうがいいでしょう。

    また、これは犯罪なので、お金を払ってはいけませんよ。
    すぐに警察に相談することが大切です。
    お金を払っても画像が消される保証はありません。

    昔は、スキャンダル写真を撮られて脅されてお金を払うのと引き換えに、ネガを返してもらう、という方法での恐喝がありました。

    しかし、実は大量に現像されており、まだ写真が残っている、ということで、またお金を脅し取られる、というようなことが行われていました。

    デジタル画像だと、もう画像が全て消されたかどうかなど確認しようがありません。

    くれぐれも、お金を払わないよう気をつけてください。

  • リベンジポルノ防止に動きあり

    2015年06月23日

    はたして、被害拡大に歯止めをかけられるでしょうか。
    リベンジポルノに関して、各方面で動きが出てきました。

    「リベンジポルノをLINEで拡散…全国初の摘発」(2015年6月22日 読売新聞)

    警視庁は、リベンジポルノ画像を無料通話アプリ「LINE(ライン)」で拡散させたとして、26歳と27歳の無職の男2人をリベンジポルノ被害防止法違反と名誉毀損容疑で逮捕しました。
    被害を受けた女性が警視庁に相談して発覚したようです。

    報道によると、今年4月下旬、ゲーム仲間の男女でつくるLINEの3つのグループに、26歳の男が撮影したメンバーである20歳代女性の上半身裸の画像を投稿。
    27歳の男が画像を保存したうえで、別のグループのLINEに投稿して拡散するなどして、不特定多数が閲覧可能な状態にしたとしています。

    容疑者の男は、「自分が買ってきたおみやげを女性が捨てたと聞き、仕返しをしようと思った」と供述。

    LINEを使ったリベンジポルノの摘発は全国初ということです。
    リベンジポルノは卑劣な犯罪であること、そして被害の発生を防止するために「リベンジポルノ被害防止法」が成立したことは以前、解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒
    「リベンジポルノには新たな法律が適用されます!」

    リベンジポルノには新たな法律が適用されます!

    リベンジポルノ被害防止法の目的は次の通りです。

    私事性的画像記録の提供等により、私生活の平穏を侵害する行為を処罰するとともに、私事性的画像記録に係る情報の流通によって、個人の名誉及び私生活の平穏が侵害される被害の発生、又はその拡大を防止することを目的とする。(第1条)

    私事性的画像記録とは、以下のものをいいます。

    1.性交又は性交類似行為に係る人の姿態。
    2.他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの。
    3.衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの。
    (第2条)

    第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、プライベートで撮影した画像を不特定、または多数の者に提供した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第3条)

    ちなみに、今回の逮捕容疑には名誉毀損もありますが、こちらの刑罰も3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法第230条)
    さて、今回の事件はLINEを使ったリベンジポルノの初摘発でしたが、時を同じくしてGoogle(グーグル)では動きがあったようです。

    「グーグル、リベンジポルノ画像を削除へ 米」(2015年6月20日 CNN.co.jp)

    米検索大手のグーグルは、「リベンジポルノ」を同社の検索結果から削除するための新施策を講じると発表しました。

    短文投稿サイト「ツイッター」や交流サイト大手「フェイスブック」は3月にリベンジポルノ禁止をサイト上に明示。
    IT企業が相次いで対策に乗り出していることから、グーグルもこの流れに沿ったようで、誰でも削除要請フォームに入力し、本人の同意なしに投稿されたヌード写真や性的な画像の削除を求めることができるようにするということです。

    これまでは、「不適切な画像」として法的要請なしにグーグルが削除してきたのは、社会保障番号などの個人情報か児童ポルノに限られていました。
    しかし、同社の上級副社長(検索担当)は、「リベンジポルノは被害者、特に女性をおとしめる目的でしかない」と指摘したうえで、「本人の同意なしに共有されたヌード写真や性的に露骨な画像について、検索結果から削除してほしいとする人々の要求を尊重したい」と述べたということです。

    今回の対応は、日本を含む各国で適用されるとしています。
    これは非常によい決定だと思います。

    ネット上の中傷投稿やリベンジポルノなどへの法的手段としては、投稿者に対する不法行為(名誉棄損)に基づく「発信者情報開示請求」をしていくことが必要ですが、この手続きは難しく労力がかかるものです。

    詳しい解説はこちら⇒「中傷投稿やツイートに対抗する法的手段とは?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1299

    しかし、被害者にとって今後は手続きが非常にスムーズになり、対応しやすくなるのなら大歓迎でしょう。
    一度ネット上に広まった画像などを完全に消去するのは不可能ですし、グーグルの対応がリベンジポルノを根絶するわけではないとしても、一定の抑制効果は期待できるのではないでしょうか。

    リベンジポルノへの対策と厳罰化の動きは、日本だけでなく世界的にも広がっています。

    別れた後に問題となる可能性のある画像や動画の扱いについては、男性も女性も十分注意してほしいと思います。

  • 自分の子供を連れ去った父親が逮捕!?

    2015年06月17日

    父親が自分の子供を車に乗せて自宅に帰ったところ、逮捕されたという事件が起きました。
    一体、どういうことでしょうか?

    「親権ない実子連れ去った父親!罪になるとは…“」(2015年6月9日 読売新聞)

    静岡県御殿場市に住む男(31)が、内縁の妻(25)の自宅から親権のない実子である生後11ヵ月の長男を乗用車に乗せて連れ去ったとして、未成年者略取の疑いで緊急逮捕されました。

    容疑者の男は、「自宅に連れ去ったが罪になるとは思わなかった」と供述。長男にケガはなかったということです。
    早速、条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第224条(未成年者略取及び誘拐)
    未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
    略取とは、力ずくで奪い取ることですが、法的には暴力や脅迫、その他の強制的な手段で相手をこれまでの生活環境から離脱させ、第三者の支配下に置くこと、となります。

    誘拐とは、偽計や誘惑を手段とするなどして人に誤った判断をさせて上記の行為を行うことです。

    たとえ自分の息子であっても連れ出す場合には、この親権のない父親は監護者(子供を引き取り、生活を共にして世話をする人)である内縁の妻の同意を得なければいけなかったわけです。
    それにも関わらず、無断で連れ去ったために逮捕となったということです。

    未成年者略取罪は目的や動機を問わないので、成年の場合とは異なり、営利目的でなくても成立します。
    身代金目的ではなく、「かわいかったから、ただ一緒にいたかっただけ」という理由での子供の連れ去り事件がありますが、そうした場合もこの罪は成立します。

    ちなみに営利目的の場合は、第225条が適用されます。

    第225条(営利目的等略取及び誘拐)
    営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
    では、どんな行為をすると未成年者略取罪になるのでしょうか?
    判断能力のある未成年者を脅迫、暴行して連れ去る以外にも、次のような事例があります。

    ・生後2日の嬰児(赤ちゃん)を連れ出した。(東京高判昭37・7・20判時319-21)
    ⇒相手が赤ちゃんで抗拒不能(抵抗・反抗できない状態)でも略取になります。

    ・共同親権者である夫が、別居・離婚係争中の妻が養育している2歳の子供を連れ去った。(最高裁平17・12・6集59-10-1901)
    ⇒親権のある親でも罪が成立する場合があります。

    ・子供の携帯品を取り上げ、「返してほしければついて来い」と脅迫して連れ去った。
    ⇒この程度の行為でも脅迫になり得ます。

    ・コンテナ内に入っている者を外部から施錠して閉じ込め、トラックで運び去った。
    ⇒暴行・脅迫以外の手段を用いても略取になります。

    ・麻酔薬で意識を失わせてから連れ去った。
    ⇒相手が昏睡状態、心神喪失状態の場合でも略取になります。
    ところで以前、「面会交流」について解説しました。
    詳しい解説はこちら⇒「面会交流は成立しない!?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1610

    面会交流とは、離婚後や長期間の別居中に子供を養育・監護していない方の親が、子供と面会などをすることです。

    父親と母親の間で話し合いによって決められるのですが、話がまとまらないような場合、家庭裁判所に調停や審判の申立てをすることになります。

    この申立てが2013年に1万件を超え、この10年間で倍増しているが、調停が成立しない例が約4割あり、子供に会うことができない親が増えているというものでした。

    今回の事件、報道内容からだけでは詳細はわかりません。
    容疑者の男は、なかなか子供に会うことができなかったのかもしれないし、内縁の妻は定期的に面会の場を設けていたのかもしれません。

    しかし、いずれにせよ、普段いっしょに暮らしていない親が無断で子供を連れ去る、連れ帰ると犯罪になるということは、この機会に覚えておいていただきたいと思います

  • 小学生の犯罪はどのように処罰されるのか?

    2015年05月18日

    警察庁公表の「少年非行情勢(平成26年1月~12月)」によると、2014(平成26)年中の刑法犯少年の検挙人数は4万8361人で、11年連続で減少しているということです。

    しかし、少年による凄惨な事件が発生したほか、再犯者率の上昇、少年非行の低年齢化が続いていることなど、少年非行を取り巻く情勢は引き続き厳しい状況にある、としています。

    凶悪事件の例としては、少年2名を自動車で跳ね飛ばし1名を殺害、もう1名に重傷を負わせた事件(愛知)、同級生の後頭部を殴打したうえ、首を絞めて殺害した事件(長崎)、集団で少女に暴行を加えて死亡させた事件(愛媛)などが挙げられています。

    犯罪で一番多かったのは窃盗犯の2万8246人、次いでその他の刑法犯が1万1737人、粗暴犯(傷害・暴行等)が6243人で、知能犯(詐欺等)が(987人)。
    凶悪犯(殺人・強盗・放火・強姦)は703人でした。

    さて今回、なぜ少年犯罪の統計データから始まったかというと、子供の犯罪に悩む親御さんからの相談が届いたからです。
    一体、子供は何をしてしまったのでしょうか?

    Q)12歳の息子がスーパーで万引きをしました。お店の責任者の方から連絡があり迎えに行ったのですが…どうやら今まで何回も万引きしていたようです。警察に通報しないでもらったのですが、親として、これからどうすればいいのでしょうか? 法的には、どのように処罰されるのでしょうか?

    A)大人の場合、窃盗罪は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金(「刑法」第235条)となりますが、子供の場合、今回は12歳なので仮に警察に補導されたならば、その後、児童相談所に通告されることになっています。
    前述の「刑法犯少年」とは、14歳以上20歳未満で刑法犯の罪を犯した少年のことで、14歳未満の場合は「触法少年」といいます。(少年法3条1項2号)。

    「刑法」第41条では、「14歳に満たない者の行為は、罰しない。」と規定しているため、今回の相談のように12歳の子供の万引きは警察に補導されても罰せられることはありませんが、警察は児童相談所に通告することになっています。

    児童相談所とは、「児童福祉法」第12条に基づき、各都道府県に設けられた児童福祉の専門機関で、0歳から17歳の者を対象に以下のような業務を行っています。(児童福祉法11条の2)

    ・児童に関するさまざまな問題について、家庭や学校などからの相談に応じる。
    ・児童及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行う。
    ・児童及びその保護者につき、上記の調査又は判定に基づいて必要な指導を行う。
    ・児童の一時保護を行う。

    通告を受けた児童相談所は、以下のような措置を取ります。

    ・児童、または保護者に訓戒を加え、または誓約書を提出させる。
    ・児童、または保護者を児童福祉司、または児童委員に指導させる。
    ・児童を、里親もしくは保護受託者に委託し、または児童施設等に入所させる。(保護者のいない児童、または保護者に監護させることが不適当だと認められる児童の場合)
    ・14歳未満でも、家庭裁判所の審判に付することが適当だと認められる児童は、家庭裁判所に送致する。(都道府県知事、または児童相談所長から送致を受けた場合など)
    ところで、前述の統計データによれば、2014(平成26)年中の触法少年の補導人数を見てみると、1万1846人で前年比-746人。
    平成17年と比べると、この約10年で8673人減少しています。

    窃盗犯が最も多く7728人で、そのうち万引きは4797人。
    暴行・傷害などの粗暴犯は1429人、殺人・放火などの凶悪犯は76人が検挙されています。

    犯罪の低年齢化が懸念されます。

    若いころに身についた遵法精神は大人になってからも生き続けます。

    小学校や中学校の段階での法教育が望まれるところです。

  • 31歳年の差にストーカー規制法違反

    2015年05月14日

    今回は、かなり年上の女性を好きになりすぎて、ついには逮捕されてしまった男の話です。

    男が犯した罪とは何だったのでしょうか?

    「“好きで忘れられなかった”54歳女性に23歳男がストーカー行為で逮捕」(2015年5月12日 産経新聞)

    兵庫県警生活安全企画課と県警豊岡南署は、元交際相手の女性(54)につきまとい、メールを連続して送りつけたなどとして、会社員の男(23)をストーカー規制法違反容疑で逮捕しました。

    報道によると、男は3月6日~8日にかけて、女性から拒まれたにもかかわらず、「電話をください」などと36回ものメールを送りつけ、さらには4月17日午後2時半ごろ、被害者宅を監視するなどしたようです。

    同署は被害女性から相談を受け、3月に警告を行いましたが4月になってもストーカー行為が続いたため、今回の逮捕となったとしています。

    2人は、以前勤務していた会社の同僚で、男は「好きで忘れられなかった」と容疑を認めているということです。
    年上の女性に憧れ、恋をする青年…そんな設定の小説や映画がありますが、現実世界ではストーカー行為は犯罪になります。
    では、条文を見てみましょう。

    「ストーカー規制法」
    第2条(定義)
    1.この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
    「つきまとい行為」は、以下の8つが規定されています。
    ①待ち伏せ、尾行、および自宅や勤務先を見張り、押しかけること。
    ②行動を監視していると告げる行為。
    ③面会や交際、その他義務のないことを行うことの要求。
    ④著しく粗野、乱暴な言動。
    ⑤無言電話、連続した電話・FAX・メール。
    ⑥汚物・動物の死体等の送付。
    ⑦名誉を害する事項の告知。
    ⑧性的羞恥心を侵害する事項の告知、わいせつな写真・文章などの送付、公表。
    どれもやられたら迷惑なものばかりで、被害者にとってはたまったものではありませんね。

    以下に、この法律について簡単にまとめておきますので、この機会に「ストーカー規制法」について学んでいただきたいと思います。

    ・ストーカー規制法は、正式名称を「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます。

    ・1999(平成11)年に起きた「桶川ストーカー殺人事件」をきっかけに、2000(平成12)年11月に制定された法律で、その後、2012(平成24)年に発生した「逗子ストーカー殺人事件」を受けて、2013(平成25)年6月に改正されました。

    ・ストーカー行為とは、つきまとい行為を同一の人に対して反復して行うことです。(第2条2項)

    ・上記①~④に関しては、「身体の安全、住居などの平穏、名誉が害され」、「行動の自由が著しく害され不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る」とされています。(第2条2項)

    ・上記のストーカー行為をした者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第13条)

    ・ストーカー行為は「親告罪」です。
    親告罪とは、被害者が告訴(捜査機関に対し犯罪を申告して処罰を求めること)しなければ公訴できない犯罪のことです。

    ・警察は、行為者に対して警告書によって警告ができます。(第4条)
    警告に従わない場合、都道府県公安委員会は禁止命令を出すことができます。(第5条)
    この命令に従わない場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第14条)

    ・女性だけでなく、男性も保護の対象となっています。

    上記にあてはまる行為を受けている方も多いのではないでしょうか。

    せっかくの一度の人生、他人からのつきまとい行為により、ビクビクしながら生きるのはもったいないですね。

    「警察に申告するのがこわい」

    という人もいますが、むしろ、そのまま行動がエスカレートする方が、もっと怖い目にあうと思います。

    勇気を出して、警察に被害を申告するようにしましょう。

    ご相談は、こちらから。
    http://www.bengoshi-sos.com/about/0903/

  • 遠隔操作アプリで逮捕!?夫が妻に犯した罪とは?

    2015年04月15日

    先日、妻に内緒であることをした夫が逮捕されるという事件が起きたようです。

    一体、どんなことをしたのでしょうか?

    「妻のスマホに無断で遠隔操作アプリ入れた35歳会社員を逮捕」(2015年4月9日 産経新聞)

    奈良県警は、妻のスマートフォンに遠隔操作アプリを無断でインストールし、遠隔操作ができる状態にしたとして、同県桜井市の会社員の男(35)を不正指令電磁的記録供用容疑で逮捕しました。

    報道によると、2014年7月、容疑者である夫が妻(当時30代)のスマートフォンに無断で遠隔操作アプリをインストール。

    その後、妻は何事もなく使用していたようですが、2015年3月に見覚えのないアプリがインストールされているのに気づき、「夫の仕業ではないか」と県警に相談して発覚。
    男は、「間違いない」と容疑を認めているということです。

    県警は、男がアプリを使ってどのような操作をしていたか調べるとしています。
    何が目的だったのか? 夫婦の関係はどうだったのか?
    報道内容からだけではわかりませんが、たとえ夫婦でも一線を越えれば犯罪となります。

    では、条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第168条の2(不正指令電磁的記録作成等)
    1.正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

    一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
    二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録

    2.正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
    「不正指令電磁的記録供用罪」は、2011年の刑法改正で新設された犯罪類型です。

    簡単に言えば、正当な理由なしに、人のコンピュータ(電子計算機)に不正な指令を与えるウイルス(電磁気記録)などを入れる(インストール)と犯罪ですよ、ということです。

    今回の事件では、時代に即した形で、スマホに入れたアプリに適用したわけですが、じつはここ数年、こうした遠隔操作できるアプリを配偶者や恋人のスマホに無断でインストールする事件が増えているようです。

    もともとは合法の盗難防止アプリで、スマホを紛失したり盗難に遭ったときに、遠隔操作でカメラのレンズやスピーカーを使って場所を特定して探し出すというものです。
    それが違法に、しかも相手に無断で使われ、監視・盗撮などされるところに犯罪となる問題があるわけです。

    昨年、広島で起きた事件では、ある女性がスマホの動きが何かおかしい、知らないアプリの表示がついたり消えたりする、居場所を言っていないのに知人に知られていたということがあり警察に相談。

    その結果、元交際相手の男が、女性と会っていたときに席を外したすきに盗難防止アプリをインストールしていたことが判明。
    居場所を確認され、写真を撮られ、会話を録音されていたようです。

    もちろん、今回の事件では妻が同意しているのであれば問題はありませんが、子供ではないのですから同意する人もいないでしょう。
    (えぇ? そうしたプレイを楽しむ夫婦もいるとか、いないとか…)

    たとえ夫婦間でも、合法なアプリでも、悪意をもって無断でこっそりインストールすれば犯罪になるということは、しっかり理解してほしいと思います。

    ちなみに、配偶者や恋人のメールをこっそり見るのはどうでしょうか?
    詳しい解説はこちら⇒「アダムとイブと不正アクセス禁止法」
    https://taniharamakoto.com/archives/1326

    こちらも犯罪になる可能性がありますから注意してください。

  • 手の甲をなめただけで強制わいせつ罪で逮捕

    2015年04月08日

    野生動物たちは傷ついたとき、傷口をなめ、ひとり静かに傷の治りと体力の回復を待つといわれます。

    専門的には、そうした行為を「ズーファーマコロジー」と呼ぶのだそうです。

    人間も子供の頃などは、すり傷や切り傷をすると自分でなめたり、つばをつけたりしますね。
    痛みを和らげるためにも、本能的になめるのかもしれません。

    実際、だ液には殺菌作用があり、また上皮成長促進因子という成分のおかげで傷の治りが早くなるという研究報告もあるそうです。

    なめるという行為には、こころと肉体両面の癒し効果があるのでしょう。

    しかし、他人をなめるときは、もちろん注意が必要です。
    なめる相手、場所、部分、やり方を誤ると犯罪になる可能性があります。

    「女性の腕つかみ手の甲なめた男“覚えていない”」(2015年4月4日読売新聞)

    茨城県警鹿嶋署は、自称土木作業員の男(57)を強制わいせつ容疑で逮捕しました。

    報道によると、事件が起きたのは4月2日午後3時40分頃。
    男は、鹿嶋市内の路上を歩いていた10代の女性の腕をつかみ、手の甲をなめたようです。

    「酔っぱらっていて覚えていない」と男は容疑を否認しているということです。
    以前、「準強制わいせつ罪」と「強制わいせつ罪」の違いについて解説しました。
    詳しい解説はこちら
    ⇒「強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪の本当の違いとは?」
    https://taniharamakoto.com/archives/1312

    13歳以上の者に対して、「暴行」や「脅迫」によって被害者を心神喪失や抗拒不能状態にしたうえで事におよんだ場合、強制わいせつ罪となります。

    6ヵ月以上、10年以下の懲役が科されます。

    刑法上、わいせつな行為とは、「性欲を刺激、興奮又は満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」とされています。
    どのような行為が「わいせつ」とされるかについても、以前解説しているので参考にしてください。

    詳しい解説はこちら
    ⇒「スカートめくりが「いたずら」から「犯罪」に昇格」
    https://taniharamakoto.com/archives/1690

    ところで、この事件には報道内容からだけでは見えてこないのですが、警察と容疑者の間の3つの争点があると思います。

    1.どのような「なめ方」をしたのか?
    通常、こうした事件の場合、まずは暴行罪で逮捕して、途中から容疑を切り替えることが多いものです。
    しかし、今回は最初から強制わいせつ容疑で逮捕しています。
    よほど「卑猥(ひわい)」で「猥褻(わいせつ)」な「なめ方」をしたのかもしれません。

    判例では、強制わいせつでの暴行行為については、殴る、蹴るはもちろん、体を押さえたり、着衣を引っ張ったりすることも含まれるとされていますので、女性の手を引っ張ったという容疑者の行為は暴行の要件を満たしているといえます。
    2.酒に酔っていて覚えていない、は通用するか?
    容疑者は、酔っ払っていて覚えていないと供述しているようですが、それは通用するでしょうか?

    刑法上、刑罰に触れる行為をした者の中で、自分がしたことの善悪が判断できなかったり、善悪の判断に基づいて行動する能力がない者は「心神喪失」状態だったとして処罰されないことになっています。
    また、上記のような能力が普通の人よりも著しく劣っている者は「心神耗弱」として、刑が通常より軽くされることになっています。

    ただ、心神喪失と認定されるのは稀で、警察庁が公表している「犯罪白書」によれば、たとえば、裁判で無罪認定を受けた人数は、平成25年は3人、平成24年は1人、平成23年は1人、平成22年は2人、平成21年は5人となっています。
    (心神耗弱とされる人数は心神喪失の数より多く、たとえば平成7年から10年間の平均では年80.4人となっています)

    そもそも、容疑者は「酒に酔っていた」という認識があるわけですから心神喪失や心神耗弱が認められることはまずないと思われます。
    3.男は、なぜなめたのか?
    容疑者の男は、なぜ女性の手をなめたのでしょうか?

    彼なりの挨拶のようなものだったのでしょうか?
    映画を観ると、よく男性の紳士が女性の手の甲にキスをして挨拶しているようですが・・・。

    それとも……犯行直前までテキーラを飲んでいたのかもしれません!

    ・ライムを、きゅっとかじる
    ・テキーラを口に流し込む
    ・飲んだら親指と人差し指の「股」のところに置いた塩をなめる

    あの伝統的な飲み方を繰り返したあげく、酔っ払って路上を歩いたところ、また塩がなめたくなり、自分の手と間違って女性の手をなめてしまった……。
    そういう事情かもしれません。

    しかし、私が弁護人なら、そういう主張は、恥ずかしくてなかなかできるものではありません。

    色々な争点のある本件、警察の捜査を待ちたいところです。

    さて、テキーラでも飲みに行くますか!
    ( ^_^)/▼☆▼\(^_^ ) ノミマスカッ!!

  • リベンジポルノには新たな法律が適用されます!

    2015年03月19日

    今年の2月、福島県で元交際相手の女性の裸の写真をショッピングセンターの駐車場でばらまいたとして、会社員の男(33)がリベンジポルノ被害防止法で初逮捕という事件がありました。

    この数年で問題化してきたリベンジポルノは、元配偶者や元恋人への復讐目的で裸の画像や動画を投稿などする嫌がらせ行為のことですが、収まる気配はなく、また新たな逮捕者が出たようです。

    「ツイッターに裸写真…リベンジポルノ法違反容疑で男を再逮捕 ネットでの適用は全国初」(2015年3月11日 産経新聞)

    神奈川県警は、元交際相手の女性の裸の写真をインターネット上で公開したとして、鳥取県境港市の無職の男(39)をリベンジポルノ被害防止法で再逮捕しました。

    ネット上に画像をアップロードする行為としては、同法では全国初の検挙ということです。

    報道によると、今年1月、男は自らの簡易投稿サイト「ツイッター」に、元交際相手で専門学校生の女性(20)の裸の写真10枚を掲載。
    写真は平成24年7月から25年1月までの交際中などに撮影されたようです。

    2014年12月にも、男は写真1枚を掲載しており、友人に知らされた女性が今年1月に県警に相談したことで発覚。

    男は、「(別れた後に)彼女が返事しなくなり、恨みが募った」などと供述し、容疑を認めているようです。

    なお男は、すでに脅迫などの容疑で逮捕後に処分保留となっており、今回、神奈川県警が再逮捕したということです。
    【リベンジポルノ被害防止法とは?】

    リベンジポルノ被害防止法は、正式名称を「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」といいます。
    (なんと長い、26文字もあります!)

    この法律は2013年10月に発生した、三鷹ストーカー殺人事件をきっかけにリベンジポルノに対処するために、2014年11月、国会で成立しています。

    全部で6条からなるリベンジポルノ被害防止法の目的は、以下の通りです。

    私事性的画像記録の提供等により、私生活の平穏を侵害する行為を処罰するとともに、私事性的画像記録に係る情報の流通によって、個人の名誉及び私生活の平穏が侵害される被害の発生、又はその拡大を防止することを目的とする。(第1条)

    次に、「私事性的画像記録」とは、以下のような人の姿態が撮影されたものをいいます。
    1.性交又は性交類似行為に係る人の姿態
    2.他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
    3.衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
    (第2条)
    【どのような刑罰が科せられるのか?】
    今回の事件では、ツイッターに女性の裸の写真を投稿したということですから、「私事性的画像記録提供等」の罪に問われたということになります。

    第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、プライベートで撮影した画像を不特定、または多数の者に提供した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第3条)

    以前の事件のときにはリベンジポルノ被害防止法が成立していなかったので罪に問うことができず、今回の事件では、発生が同法の施行直後だったため、脅迫など別の容疑を適用し、今回、時期を待って再逮捕ということになったのでしょう。

    ちなみに、脅迫罪は2年以下の懲役又は30万円以下の罰金ですから、リベンジポルノ被害防止法の方が重い罪になるということです。

    新たな法律ができ、初の逮捕者が出たことによって、今後は取り締まりが厳しくなされていくでしょう。

    また、米Twitterは現地時間の3月11日、ユーザーポリシーの「Twitterルール」と「嫌がらせ行為に関するポリシー」を改定したということです。

    「撮影されている人物の同意なく撮影または配布された、私的な画像や動画を投稿することを禁じます。」という一文を追加し、リベンジポルノの禁止を明文化したようです。

    リベンジポルノに関しては、日本だけでなく世界的にも厳罰化に向かっています。

    スポーツや資格試験には、おおいにリベンジしても結構ですが、元交際相手にリベンジはいけません。

    世の男性諸氏は十分気をつけましょう。

    「善とは何か。後味の良いことだ。
    悪とは何か。後味の悪いことだ。」
    (アーネスト・ヘミングウェイ/アメリカのノーベル賞作家)

  • ネットに書き込むことは名誉を毀損することだ

    2015年03月12日

    恥は若者にとって名誉であり、老人には屈辱である。

    これは、紀元前の古代ギリシャの哲学者、アリストテレスの言葉だそうです。

    若者にとって、自分からかく恥は、確かに偉大な哲学者が言うように名誉といえるかもしれません。
    しかし、他人からかかされた恥は、やはり若者にとっても屈辱でしょう。

    名誉を傷つけられれば、誰だって怒り心頭になるでしょうし、人の名誉を傷つければ、それは犯罪になる可能性があります。
    そんな事件が起きました。

    「“彼女取られて仕返したかった”大学生 ネットに書き込み名誉毀損容疑で逮捕」(2015年3月9日 産経新聞)

    女性を装って、「同じ大学に通う男性にストーカー行為をされている」とウェブサイトに書き込んだとして、札幌東署は札幌市の大学生の男(22)を名誉毀損の疑いで逮捕しました。

    報道によると、男は「彼女を取られて仕返ししてやりたかった」と供述。大学生の男性の名誉を傷つけるためにウェブサイトに書き込み、顔写真を掲載したようです。

    また同署は、男がかつて交際していた女性の裸の写真をインターネット上に投稿していることを確認しており、リベンジポルノに当たるとみて、私事性的画像記録の提供被害防止法違反の疑いでも捜査しているとのことです。

    今回は、リベンジポルノではなく、名誉毀損について解説したいと思います。

    では早速、条文を見てみましょう。

    「刑法」
    第230条(名誉棄損)
    1.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
    公然とは、不特定または多数の人が認識し得る状態をいいます。

    毀損とは、利益や体面などを損なうことですが、法律上では人の社会的評価が害される危険を生じさせることとされ、実際に社会的評価が害されることは要しないとされています。

    また、条文にあるように名誉棄損罪は、事実の有無、真偽を問いません。

    つまり、今回の事件では、事実無根の事実(男性がストーカーをしているかのような事実)をネット上に摘示して、不特定多数に公開し、男性の名誉を毀損したことで罪に問われた、ということになります。

    ところで今回の事件、じつは見逃せないポイントがあります。
    実際には、名誉棄損での逮捕というのは珍しいのですが、今回なぜ逮捕に至ったのでしょうか。

    それは容疑者に、「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」違反の疑いがあるからでしょう。

    聞きなれない法律だと思いますが、これは通称「リベンジポルノ防止法」といわれるもので、2014年11月に成立したものです。

    リベンジポルノが社会問題化している現状も踏まえ、この法律については次の機会に詳しく解説したいと思います。
    では今回は、締めの言葉もアリストテレスです。

    「私は敵を倒した者より、自分の欲望を克服した者を勇者と見る。
    自分に勝つことこそ、もっとも難しいことだからだ」