ニッポン放送株事件高裁決定 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
東京都千代田区麹町2丁目3番麹町プレイス2階 みらい総合法律事務所
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ニッポン放送株事件高裁決定

2005年02月24日

ニッポン放送の新株予約権発行差止仮処分決定認可決定に対する保全抗告事件に関し、東京高裁は、3月23日、抗告を棄却し、ライブドアに軍配をあげました。
 
主要な争点は、ご存じのとおり、ニッポン放送の新株予約権発行が、「著しく不公正な方法」と言えるかどうかです。東京高裁は、東京地裁決定と同じく、本件新株予約権の発行が「著しく不公正」と判断したものです。
 
今回も「主要目的ルール」を使用していますが、その適用の前提条件は「会社の経営支配権に現に争いが生じている場面」であることが必要です。今回は、ニッポン放送に関して、ライブドアとフジテレビとの間で経営支配権に現に争いが生じていました。
 
次に、「主要目的」の内容は、次のとおりです。
(1)敵対的買収によって経営支配権を争う特定の株主の持株比率を低下させ、
(2)現経営者又はこれを支持し事実上の影響力を及ぼしている特定の株主の経営支配権を維持・確保する。
今回の新株予約権の発行目的は、ライブドアの持株比率を低下させ、フジテレビの経営支配権を維持・確保することが目的でしたから、この要件を満たします。
 
裁判所は、上記の要件を満たした場合には、「原則として」著しく不公正な方法による新株予約権の発行であると断じます。
 
ただし、例外があります。それは、敵対的買収者が、株式の高価売り抜け等を目的とし、会社を食い物にするような「濫用目的」である場合です。このような場合には、主要目的ルールの例外として、許される場合があるというのです。そして、この事実は、ニッポン放送側が疎明、立証してゆく必要があります。
 
ライブドアが過去に企業を食い物にして企業価値を著しく低下させた例があれば別ですが、今回、ライブドアは買収後自ら経営してゆくことを明言しておりましたので、この点が疎明できなかったのは当然といえます。
 
この疎明ができない結果、ニッポン放送は敗れる結果となりました。
 
なお、東京高裁は、ニッポン放送側が主張した「ライブドアの支配下に入った場合には、企業価値が著しく毀損する」という点については、「経営判断の法理」を持ち出して裁判所が判断すべき事項ではない旨判示しました。
 
買収者が株式の高価売り抜けや企業の切り売り等の「濫用目的」を公言しながら買収をしかけてくることは通常では考えられないので、今回の高裁の基準からすれば、今回のような経営支配権の維持を主要目的とする新株予約権の発行による防衛の道は事実上閉ざされたと言えそうです。
 
平時の敵対的買収対策がより需要になったといえます。