分掌変更退職給与で納税者勝訴の裁判例 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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分掌変更退職給与で納税者勝訴の裁判例

2024年03月21日

今回は、分掌変更退職給与で納税者が勝訴した裁判例をご紹介します。

東京地裁平成20年6月27日判決です。

(国の主張)

・被告は、原告乙が、取締役を退任後も原告会社の監査役であるとともに筆頭株主であること、

・約15年間にわたり原告会社の代表取締役を務めていたこと

・原告会社の現在の代表取締役である甲の父であること

・などから、長年の経験を活かし、また、その所有する株式を通じて、原告会社の経営に影響を与え得るとして、原告乙は引き続き原告会社の経営上主要な地位を占めており、原告会社を実質的に退職したと同様の事情にあるとは認められない。

←こんな理由で分掌変更退職給与が否認されたら、分掌変更退職給与など支給できないですね。

(判決)

・原告会社において、役員が経営上の方針等について、その株式の所有割合に応じた影響力又は発言力を有しているとは認め難い。

・原告乙は原告会社において、役員としてはおろか、従業員としても一切の業務を行っていない状態になった

・仮に、原告乙が筆頭株主として原告会社に対して何らかの影響を与え得るとしても、それは、飽くまで株主の立場からその議決権等を通じて間接的に与え得るにすぎない。

・原告乙が約15年間にわたり原告会社の代表取締役を務めており、原告会社の現在の代表取締役である甲の父であるとしても、そのような事情は原告乙が原告会社の経営に影響を与え得る可能性を抽象的に示すものにすぎず、実際に原告乙が上記のような立場に基づいて原告会社の経営に関与していることは何らうかがわれない。

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以上です。

分掌変更退職給与を支給した後にも引き続き出社したり、経営上のアドバイスをしたり、というようなことをすると、上記の事情と相まって退職の事実が否定される可能性が高まっていきます。

分掌変更退職給与を支給した会社に関しては、以下の点がチェックポイントとなってきます。

・事業運営上の重要な意思決定に関与したか

・営業面で重要な役割を果たしたか

・金融機関との交渉に重要な役割を果たしたか

・資金調達に重要な役割を果たしたか

・経営会議に参加して意見を表明したか

・支出や経費、財務に関し、意見を表明する等重要な役割を果たしたか

・稟議書等を決裁しているか

・人事に関与しているか

・株主や取締役構成員として以上に役員報酬や従業員給与等の決定に関与しているか

・取締役構成員として以上に予算作成に関与しているか

・給与を大幅に下げているか(通達では50%以上)

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