自転車の無灯火事故は、過失が大きい | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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自転車の無灯火事故は、過失が大きい

2011年04月26日

原発事故を原因とする電力供給量の減少により、街は節電として、街灯がなく、暗い状態です。

タクシーを止めようとしても、気がつかず、通り過ぎてしまうこともあります。

と、いうことは、歩行者に気付かない可能性もあるのであり、交通事故が増えていないか、心配なところです。

そんな中、時々無灯火で走行する自転車があり、危ない思いをすることがあります。

この無灯火自転車、もし、事故を起こしたら、その過失はどの程度大きくなるのでしょうか?

道路交通法により、自転車は、夜間、道路では、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければなりません(道交法52条1項)。

ここで、夜間とは、日没時から日出時までのことです。

灯火の付け方については、都道府県公安委員会が定めることになっています(道路交通法施行令18条5号)。

東京都道路交通規則では、灯火のつけ方について、次のように定めています。

(軽車両の灯火)
第9条 令第18条第1項第5号の規定により軽車両(牛馬を除く。以下この条において同じ。)がつけなければならない灯火は、次に掲げるものとする。

(1) 白色又は淡黄色で、夜間、前方10メートルの距離にある交通上の障害物を確認することができる光度を有する前照灯

(2) 赤色で、夜間、後方100メートルの距離から点灯を確認することができる光度を有する尾灯

2 軽車両(自転車を除く。以下この項において同じ。)が、夜間、後方100メートルの距離から道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)第32条第1項の基準に適合する前照灯で照射した場合に、その反射光を照射位置から容易に確認できる灯とう色又は赤色の反射器材(後面の幅が0.5メートル以上の軽車両にあつては、両側にそれぞれ1個以上)を備え付けているときは、前項の規定にかかわらず、尾灯をつけることを要しない。

3 自転車が、法第63条の9第2項本文に定める反射器材(後面の幅が0.5メートル以上の自転車にあつては、両側にそれぞれ1個以上)を備え付けているときは、第1項の規定にかかわらず尾灯をつけることを要しない。

これに違反した場合は、5万円以下の罰金です(道交法120条1項5号)。

自転車が歩行者と衝突して事故を起こし、歩行者が怪我をしたり、死亡したりした場合には、自転車の運転者は、被害者に対して、損害賠償義務を負担します。

この損害賠償については、加害者と被害者の過失の程度に応じて、過失割合が定められます。

たとえば、自転車が80%過失があり、歩行者に20%過失がある場合、被害者が被った損害額が1,000万円であれば、自転車運転者は、800万円を歩行者に支払うことになります。

賠償額が大きくなると、賠償金5,000万円を認めた判例もあり(横浜地裁平成17年11月25日判決)、今後1億円を超える賠償金が認められる可能性もあります。

仮に賠償金が1億円とするならば、過失10%で1,000万円も賠償金額が異なることになります。

そして、夜間、無灯火で自転車を運転した場合、自転車の運転者の過失がおおむね5~20%も違ってくる可能性があります。

賠償金1億円とするならば、500万円~2,000万円も違ってくる、ということです。

なぜ、5~20%と幅があるかというと、それは、事故の状況によって過失が異なってくるためです。

夜間であっても比較的明るく、歩行者の方も向かってくる自転車が見える場合には、歩行者の方も事故を回避しなければならない義務を負うので歩行者の過失が大きくなります。

しかし、夜間真っ暗な状況で、無灯火自転車が向かってくるのを歩行者が見えない場合、歩行者は事故を防ぐことができないので、自転車の過失が大きくなる、ということです。

このようなこともあるので、自転車に乗る時は、くれぐれも灯火をつけて乗っていただくようお願い致します