FAXでの名誉毀損に注意。
ネットの発達のおかげで、以前よりは使われなくなってしまったファクス(ファックス、FAX)ですが、その原型は1843年、イギリス人のアレクサンダー・ベインよって発明されたそうです。
日本の和暦では、なんと江戸時代後期の天保14年です。
ちなみに、アレクサンダー・グラハム・ベルが電話を発明したのが1876年、トーマス・エジソンが真空管を発明したのが1883年ということですから、じつはかなり歴史が古いことに驚きます。
今回は、そんなFAXが使われた犯罪について解説します。
男が女に送ったFAXには、一体何が書かれていたのでしょうか……。
「元交際女性の職場に“中傷ファクス”…ごみ処理施設の係長ら逮捕 京都」(2018年8月29日 産経新聞)
京都府警上京署は、かつての交際相手だった女性を中傷する文書を勤務先に送りつけたとして、男(52)と、その知人(47)を名誉毀損の疑いで逮捕しました。
報道によると、今年(2018年)5月9日と14日、容疑者の男が以前交際していた会社員女性(46)の勤務先に、「専務の女になれば祇園で店を持たせてやると言われたと言い回っている」などと女性を中傷する文書をファクスで送信し、名誉を傷つけたというものです。
2人は、いずれも容疑を認めているということです。
名誉毀損とはどういう罪なのか、条文を見てみましょう。
「刑法」
第230条(名誉棄損)
1.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
ポイントは、「事実の有無にかかわらず」という部分です。
つまり、今回のようなケースでは容疑者が被害者女性に送ったFAXの内容が事実かどうかは問われないということです。
なお、名誉毀損は刑事事件だけでなく民事事件でも問題になる可能性があります。
被害者女性は、名誉を侵害されたとして損害賠償を請求することができるのです。
関連する条文は次の通りです。
「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第710条(財産以外の損害の賠償)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
第723条(名誉毀損における原状回復)
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
今回の事件はFAXを使ったものでしたが、近年では時代的にもSNSなどを使った名誉棄損被害が起きています。
この場合、ネット上の投稿が名誉毀損やプライバシーの侵害と認められるなら、被害者は「発信者情報開示請求」をすることができます。
詳しい解説はこちら⇒
「中傷投稿やツイートに対抗する法的手段とは?」
https://taniharamakoto.com/archives/1299
男女の仲のもつれは、リベンジポルノやストーカー事件に発展することもあります。
詳しい解説はこちら⇒
「リベンジポルノには新たな法律が適用されます!」
https://taniharamakoto.com/archives/1909/
「ストーカー規制法が改正!SNSへの書き込みも規制対象に!」
https://taniharamakoto.com/archives/2494/
みなさん、気をつけましょう。