迷惑行為防止条例違反⇒嫌がらせ行為の禁止について | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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迷惑行為防止条例違反⇒嫌がらせ行為の禁止について

2018年06月01日

嫌がらせ行為による事件が相次いでいるようなので法的に解説します。

「小学校講師と妻、近所の男性宅前に生ゴミ投棄」(2018年5月30日 読売新聞)

近所に住む会社員男性(57)の自宅前にビニール袋に入った生ごみなどを投棄したとして、福岡県小郡署は男(56)と、その妻(44)を県迷惑行為防止条例違反(嫌がらせ行為の禁止)の疑いで逮捕した。

被害者男性が、「今年になって十数回ゴミを置かれた」と同署に被害申告したことから防犯カメラの映像などを解析したところ、今年(2018年)4月22日午後11時半頃と5月3日午前5時頃の2回、夫婦の犯行が浮上した。

男性は「夫婦との間にトラブルがあった」と説明。
一方、容疑者の男は「何も話したくない」とし、妻は「間違いない」と容疑を認めているという。

「同僚女性のロッカーに体液塗ったタオル 容疑の会社員逮捕 栃木」(2018年5月30日 産経新聞)

同僚女性のロッカーに体液を塗り付けたタオルを置いたとして、栃木県警下野署は男(34)を県迷惑防止条例違反(嫌がらせ行為)の疑いで逮捕した。

事件が起きたのは、2017年12月半ば~2018年1月下旬。
容疑者の男は勤務先の会社で、20代の女性が使っている個人ロッカーの中に自分の体液を塗り付けたハンドタオルを3回置いた疑い。
女性が会社を通じて同署に通報し、防犯カメラの映像などから男が割り出された。
男は「間違いありません」と容疑を認めている。

2人は部署が異なり、女性は容疑者についてはよく知らなかったという。

まずは条文を見てみましょう。

「福岡県迷惑行為防止条例」
第8条(嫌がらせ行為の禁止)
何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、次に掲げる行為を反復して行ってはならない。(後略)

6 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

これに違反した場合は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。(第11条2項)

「栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例」
第7条(嫌がらせ行為の禁止)
何人も、特定の者に対する嫌悪、嫉妬その他これらに類する感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次に掲げる行為を反復して行ってはならない。

5 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

これに違反した場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第9条1項)
常習で違反した場合は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。(第9条2項)

迷惑防止条例は、それぞれ名称に若干の違いはありますが、現在では47都道府県すべてで定められているものです。

どの都道府県でも基本的には、公衆に著しく迷惑をかける行為等を防止し、各都道府県民の生活の安全と平穏を保持することを目的として制定されています。

禁止される行為には、卑わいな行為や粗暴行為、不当な客引き行為などがありますが、その中に嫌がらせ行為も規定されています。

では、どのような行為が嫌がらせになるのかというと、次のようなものがあります。

「“うそつきばばあ”何度も暴言疑い…86歳逮捕」(2017年4月5日 読売新聞)

兵庫県警西宮署は、西宮市の無職の女(86)を県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕した。
容疑は、2017年の1月10日~2月16日に、同じ通りに住む近所の会社員の女性(61)に対し、「うそつきばばあ」、「謝れ」などと叫ぶなどの嫌がらせを繰り返したというもの。
容疑者の女は、女性が自治会役員だった2010年頃、自宅の前にごみ捨て場が移設されたことに腹を立て、女性が出勤する際などに罵声を浴びせるようになったという。

詳しい解説はこちら⇒「人に対する暴言は、犯罪を構成する

「父親に金の無心、2千万円超 容疑で40歳男逮捕」(2017年7月3日 神戸新聞)

兵庫県警伊丹署は、嫌がる父親(72)の元へ再三、金の無心に行ったとして、次男で住所不定、無職の男(40)を逮捕した。
男は何度も実家に帰ってきては「金がない」、「仕事が決まった。これが最後」などと父親に懇願して食費や交通費を要求していた。
その後、父親が同署に相談し署員が直接、男に注意したところ、「もう父親のところには行かない」と誓ったものの、さらに金を要求するなどしたため、父親が「我慢の限界」として被害届を提出した。
同署は、こうした条例を親族間で適用するのは異例としている。

詳しい解説はこちら⇒「親子間での嫌がらせ行為で逮捕

「駐車場で6回排泄…そのまま放置 兵庫県迷惑防止条例違反容疑で無職男逮捕」(2017年4月19日 産経新聞)

兵庫県警加東署などは、2017年3月から4月に計6回、貸駐車場で用を足した後、排泄物をそのまま放置したとして、加東市の無職の男(56)を兵庫県迷惑防止条例違反(嫌がらせ行為)容疑で逮捕した。
防犯カメラに用を足す男の姿が映っており、駐車場を管理する男性(48)が被害届を提出していた。

「好きな女性と勘違い、別人待ち伏せ 警備員の容疑者逮捕」(2018年5月21日 朝日新聞)

徳島県警徳島名西署は、面識のない女性に待ち伏せを繰り返したとして、徳島市の警備員の男(61)を県迷惑行為防止条例違反(嫌がらせ行為)の疑いで逮捕した。
男は、2018年4月15日~5月20日の間に少なくとも3回、徳島市の50代女性の自宅に押しかけたり待ち伏せしたりしたが、以前、同じ職場だった別の女性の自宅と勘違いしていたという。

嫌がらせが犯罪になることを知らない人が多いと思います。

しかし、以上のように嫌がらせに犯罪が成立し、逮捕されることがあるので、十分注意しましょう。

ちなみに、東京都迷惑防止条例の嫌がらせについては、次のように規定されています。

第五条の二 何人も、正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、不安を覚えさせるような行為であつて、次の各号のいずれかに掲げるものを反復して行つてはならない。この場合において、第一号及び第二号に掲げる行為については、身体の安全、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下この項において「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限るものとする。

一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。

二 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

三 連続して電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。

四 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。