あおり運転は、一発免停!? | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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あおり運転は、一発免停!?

2018年05月24日

今回は、交通違反による点数の累積がなくても、「あおり運転」をすると一発で運転免許が停止になる可能性があると、いうことについて解説します。

ドライバーのみなさんは要注意です。

「“あおり”免停9倍ペース 警察庁指示後、1~3月」(2018年4月26日 共同通信)

各都道府県の公安委員会が、交通に危険を生じさせる恐れがある「あおり運転」などで今年(2018年)1~3月に免許停止の行政処分とした件数が13件に上ったことが警視庁のまとめでわかりました。

ここ4年間で、あおり運転による行政処分は年間4~7件だったことから考えると、今年は例年のおよそ9倍のペースで増加しているということです。

2017年に交通死亡事故に発展する恐れがあるあおり運転が社会問題化。
警察庁は昨年12月、免許停止の行政処分の積極的な適用と取り締まりの強化を全国の警察に指示しましたが、各警察本部が交通違反としての摘発のほか、行政処分との両面から悪質で危険な運転の封じ込めに乗り出していることが裏付けられる結果だといえます。

【あおり運転が社会問題化】
自動車を走行中に、「後方からの追い上げ」、「急な割り込み」、「幅寄せ」、「蛇行運転」などをして相手に対して威嚇、嫌がらせ、仕返しなどをする危険で悪質な行為であるあおり運転は、道路交通法(第26条)の「車間距離の保持」に違反する行為であり、以前から問題になっていました。

それが社会問題化したのは2017(平成29)年6月、神奈川県大井町の東名高速道で発生した交通死亡事故がきっかけでした。

あおり運転に対して社会の厳しい目が向けられる中、警視庁は今年(2018年)1月、各都道府県警に対する文書で、あおり運転の取り締まり強化を指示。
道路交通法違反だけでなく、より罰則の厳しい危険運転致死傷罪や暴行罪などの容疑の適用も視野に積極的な捜査をする方向に舵を切りました。

詳しい解説はこちら⇒
あおり運転に暴行罪が適用
あおり運転は事故を起こさなくても暴行罪が適用!

そうした方針の中に、将来的にあおり運転から事故を発生させる可能性があると判断した運転者に対し、道路交通法の免許停止の規定を積極的に適用していくという指示もあったわけです。

【危険性帯有者への免停処分とは?】
日本の道路交通法には、交通違反をした場合に「点数制度」というものがあります。

点数制度では、自動車やバイク、自転車などの車両を運転して犯した交通違反の種類、度合いに応じて点数が決められています。
運転者の過去3年間の累積点数から所定の基準に達した場合に、運転免許の停止や取り消し等の行政処分が行われます。

詳しい解説はこちら⇒
違反点数3点以下の軽微な交通違反一覧①

ドライバーの中には交通違反を犯しても、「まだ〇点あるから免停にはならない、大丈夫だ」などと考える人もいると思います。

しかし、自動車を運転することで著しい危険を生じさせるおそれがあると判断された場合は「危険性帯有者」として交通違反による点数の累積がなくても最長180日間の免許停止処分を行なうことができるのです。

「道路交通法」
第103条(免許の取消し、停止等)
1.免許(仮免許を除く)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。(以下、省略)

八 前各号に掲げるもののほか、免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき。

このような運転者を「危険性帯有者」ということがあります。
なお、前各号には次のような人や行為があります。(第103条1項1~7号)

・幻覚の症状を伴う精神病(政令で定めるもの)
・発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気(政令で定めるもの)
・上記以外で自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
・認知症
・目が見えないこと、その他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として政令で定めるものが生じている者
・アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
・重大違反唆し等をしたとき(飲酒運転や救護義務違反、共同危険行為などの重大違反行為を、そそのかしてやらせること)
・道路外致死傷をしたとき(道路外とは、工場の構内や港湾内の埠頭、駐車場などの場所をいう)

この規定を適用した結果、免許停止の行政処分件数が激増しているというわけですね。

警視庁は、あおり運転を抑制するために、あらゆる法令を駆使し、さらには京都や静岡をはじめ、群馬、岐阜、愛知、福島、佐賀などの各府県警でヘリコプターを使った上空からの取り締まりも行なっています。

危険な悪質運転や交通トラブルをきっけとした暴力行為などについては、今後も取り締まりが厳しくなっていくと思われます。

ドライバーのみなさんには、心の余裕を持ってハンドルを握ってほしいと思います。