交通事故の示談で知らないと損をする注意点とは?
目次
交通事故の示談で知らないと損をする注意点とは?
交通事故に遭った場合、被害者がしなければならないことはたくさんあります。
まず警察への対応です。
警察は、交通事故が起こると、加害者の刑事処罰をするかどうかなど、捜査を進めます。
その過程で実況見分調書を作って、交通事故の状況を可視化します。
被害者も記憶に従い、交通事故の状況を説明することを求められます。
また、加害者の刑事処罰に進むようであれば、供述調書なども作ることになります。
それと併行し、被害者は、怪我の治療を行わなければなりません。
死亡事故の場合には、葬儀などが大変な手続になります。
それらが終わると、いよいよ示談交渉です。
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交通事故は一生に何度も遭うものではないので、「交通事故の示談交渉」といっても、どこに注意しなければならないか、知っている人はほとんどいないでしょう。
そこで、交通事故の示談交渉で注意すべきポイントをご説明します。
交通事故の「示談」といっても、これは、交通事故の損害賠償問題を解決する一つの手段に過ぎません。
他にも、「調停」や「裁判」により解決する方法もあります。
1.示談って何?
(1)示談は、「和解」
交通事故における示談というのは、交通事故の損害賠償問題を、話し合いにより解決することです。
法律上は、「和解」と言います。
民法695条では次のように規定されています。
「和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。」
「互いに譲歩をして」と書いてありますが、必ずしも譲歩が必要条件ではありません。
被害者が5000万円を請求し、加害者が「いいですよ」と言えば、被害者は譲歩せず、5000万円で和解が成立します。
これを、一般的な用語で「示談」と言います。
しかし、実際には、そんなにすんなりとうまくいきません
実際、交通事故の損害賠償金を正当に見積もって、5000万円である、と主張しても、加害者側からは、1000万円が適正である、などという反論がきて、示談交渉が決裂してしまうことがあります。
そして、そのような場合には、裁判になることになります。
(2)被害者と加害者の利害は対立する
交通事故の損害賠償金は、過去の膨大な裁判例の積み重ねにより、ある程度の相場が形成されています。
そうであれば、被害者が相場の金額を主張すれば、示談が成立すると思われがちですが、実際には、そうはなりません。
それは、被害者と加害者の利害が対立しているためです。
加害者側からは、任意保険会社が出てくるのが通常です。
保険会社も利益を上げなければ、経営者は株主から責任を追及されます。
そして、利益を出すためには、収入を多くし、支出を少なくしなければなりません。
保険会社の場合、支出の多くを保険金の支払い等が占めますので、保険金の支払いは、少なければ少ないほど、会社の利益が大きくなるわけです。
そこで、保険会社は、被害者の損害を少なく見積もり、示談金も少なく提示して、利益を出そうとするのです。
これが、交通事故の示談交渉がうまくいかない理由です。
したがって、交通事故の示談交渉は、すんなり進みませんので、被害者には覚悟が必要です。
しかも、被害者が直接交渉しても、いつまでも保険会社側が譲歩しない、ということもあります。
そういう時は、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士が出てくると、保険会社は、ある程度適正な金額に応じないと、裁判になり、適正な金額を支払わざるをえなくなり、かつ、別途弁護士費用もかかるので、示談でも譲歩せざるをえなくなるからです。
これが、弁護士に依頼すると、示談金額が増額される理由です。
2.示談交渉の開始時期
被害者の中には、交通事故が起こると、すぐに過失割合や示談交渉を始めようとする人がいます。
しかし、示談交渉は、怪我の治療が全て終了してから行うことになります。
過失割合についても同じです。
物損だけ先に示談する場合は、同時に物損の過失割合について交渉しますが、そこで合意した過失割合と人損の過失割合は同じである必要はありません。
怪我の治療が終了してから示談交渉を行う理由は、治療が終了しないと、損害額が確定しないためです。
治療費も休業損害も、入通院慰謝料も確定しません。
また、後遺症が残る場合には、後遺症に関する損害も賠償してもらう必要がありますが、それも治療が終わらないと、わかりません。
したがって、急いで示談交渉を行わないよう注意しましょう。
3.後遺症が残った場合
交通事故の被害者が怪我の治療に専念しても、完全に治療できない時があります。
いわゆる「後遺症」が残った場合です。
交通事故で後遺症が残った場合は、医師に自賠責後遺障害診断書を書いてもらい、画像や検査結果などを沿えて、損害保険料率算出機構という機関に後遺障害等級の申請をします。
後遺障害等級は、重いものから順に1級から14級に分類されています。
この後遺障害等級が何級かによって、示談金額が大きく変わってきます。
重いものになると、1級の違いが数千万円の示談金額の違いになってきますので、要注意です。
したがって、自分が認定された後遺障害等級が適正なものなのかをきちんと検討しなければなりません。
そして、きちんと認定されていない時は、更に医証を追加して、「異議申立」をして、正しい等級を認定してもらうことがとても大切です。
ただ、交通事故の被害者が、正しい等級を判定するのは無理だと思いますので、ここは必ず交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。
みらい総合法律事務所もそうですが、交通事故の無料相談に応じてくれる法律事務所が多数あります。
4.示談交渉のポイント
(1)損害賠償金額の項目を網羅する
交通事故の治療が終了し、後遺障害等級が認定された時点、または、死亡事故の場合には被害者の四十九日が過ぎたあたりから、示談交渉を開始します。
示談交渉では、次の2つが重要です。
①損害賠償金額の項目を網羅する
②各項目を適正金額にする
これで、全体の示談金額が適正額になります。
まず、損害賠償額の項目を網羅します。
示談金の内訳である損害賠償金には、さまざま項目があります。
たとえば、
治療費、付添費、将来介護費、入院雑費、通院交通費、装具・器具等購入費、家屋・自動車等改造費、葬儀関係費、休業損害、傷害慰謝料、後遺症慰謝料、逸失利益、修理費、買替差額、代車使用料などです。
自分の場合に、これらのうち該当するものがあるかどうか、漏れのないように請求することが必要です。
次に、各項目の金額の適正額を検討します。
保険会社の提示する金額を安易に信じてはいけません。
保険会社側では、なるべく各項目が安くなるように見ているためです。
過去の判例等に照らし、適正な金額、できるだけ多くなるような金額になるよう検討することになります。
ここも難しいので、やはり交通事故に精通した弁護士の協力を得る方が望ましいでしょう。
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(2)示談書の書き方
加害者側と話をし、示談金の合意に至ったら、示談成立です。
「示談書」を取り交わし、示談金を支払ってもらって、示談交渉は終了となります。
示談書の内容は次のようことを記載します。
①当事者の特定
交通事故の当事者を特定します。
②交通事故の特定
交通事故の発生した年月日時刻、場所などを特定します。
③人損と物損の別(自賠責後遺障害等級)
④示談金額
⑤支払条件
いつ、どのような方法で支払うのかを記載します。
⑥精算条項
示談が成立したことで、交通事故の損害賠償問題は全て解決した、という内容を記載します。
これで、以後、さらなる賠償金の請求はできなくなります。
ただし、通勤労災の場合にはすべてを免責してしまうと、将来の労災給付も打ち切られますので、将来の労災給付は除外しておく必要があります。
⑦将来の後遺障害
将来、後遺障害が発生する可能性がある場合は、「本件示談後、後遺障害が発生した場合には、当該後遺障害に基づく損害賠償については別途協議する。」というような記載をしておきます。
以上が交通事故における示談のポイントです。
さらに詳しく知りたい人は、こちらをご覧ください。⇒「交通事故の示談を有利にする方法と注意点を弁護士が解説」
交通事故の示談交渉で被害者が避けておきたい7つのこと
https://www.jikosos.net/basic/basic6/jidan-dame-7point