ネット書き込みで名誉毀損罰金 | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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ネット書き込みで名誉毀損罰金

2017年12月06日

今回は、SNSでの中傷書き込みはどのような犯罪になる可能性があるのかについて解説します。

「“ゴキブリ入り料理”ネット中傷の市議に罰金」(2017年12月5日 読売新聞)

インターネットの投稿サイトに知人男性が経営する飲食店を中傷する書き込みをしたとして、小松区検は石川県の市議(47)を名誉毀損で略式起訴していたことがわかりました。

事件が起きたのは、今年(2017年)5月頃。
市議は知人男性の経営する飲食店について、「消費期限切れを提供」、「ゴキブリ入りの料理」などと匿名でインターネットの投稿サイトに10回ほど書き込み、8月頃から警察の任意の取り調べを受けていたようです。

11月22日、小松区検が名誉毀損で略式起訴し、同市議は12月2日に小松簡裁から罰金30万円の略式命令の通知を受け取っていたということです。

市議は、「個人的なトラブルが原因で人から聞いた話を確認も取らずに書き込んでしまった」、「軽はずみな行動で、相手に対しては謝罪したい」と陳謝。
進退については、「支援者らと話し合って決めたい」と話しているということです。

 

略式起訴というのは、公判を行なわない簡略化した手続きでの起訴のことです。

まず、警察は加害者への取り調べを行ない、供述調書を作成します。
取り調べには、加害者が逮捕・勾留される場合と、在宅事件といって逮捕・勾留されない場合があります。
その後、加害者は検察庁に送致され、ここでの最終的な取り調べを受けて、検察庁が起訴するかどうかを決めることになります。

起訴された場合は刑事裁判となり、加害者の刑罰に関して審理が行われ、刑を科すか否かの判決が言い渡されます。
一方、加害者に罰金刑だけを科す場合は公判請求をせずに、略式起訴といって書面審理のみで刑が言い渡される場合が多い傾向にあります。

では、条文を見てみましょう。

「刑法」
第230条(名誉棄損)
1.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

条文にあるように、名誉棄損罪は事実の有無や真偽を問いません。
今回の事件でいえば、本当のことを言っていたとしても、市議がインターネット上で不特定多数の人が見ることができる中傷書き込みをしたために名誉棄損罪が適用される可能性がある、ということです。

ただし、

第230条の2(公共の利害に関する場合の特例)
前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

名誉毀損が、

① 公共の利害に関する事実
② 目的が専ら公益を図ることにあった
③ 真実である

場合は、罰しない、ということです。

今回は、それに該当しない、ということですね。

なお、略式起訴といっても前科はつきます。
さらに名誉棄損については、被害者は加害者に対して民事訴訟を起こし、損害賠償請求をすることができます。

詳しい解説はこちら⇒「SNSのなりすまし行為で名誉毀損に。

特に、SNSでは、不用意に他人の名誉を毀損してしまう恐れがあります。

今年も、あと残りわずかです。
みなさん、軽率な言動には十分注意しましょう。