赤信号停止中の携帯電話やスマホの使用禁止について | 弁護士谷原誠の法律解説ブログ 〜日常生活・仕事・経営に関わる難しい法律をわかりやすく解説〜
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赤信号停止中の携帯電話やスマホの使用禁止について

2016年04月06日

今回は、運転中の携帯電話、スマホの使用について解説します。

まずは、道路交通法を見てみましょう。

「道路交通法」
第71条5の5(運転者の遵守事項)
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百二十条第一項第十一号において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。第百二十条第一項第十一号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第十六号 若しくは第十七号 又は第四十四条第十一号 に規定する装置であるものを除く。第百二十条第一項第十一号において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
条文にあるように、運転中の携帯電話やスマホの使用では、「自動車が停止しているとき」を除き、手に持っての通話や画面注視をしてはいけないことになっています。

しかし、法律には曖昧というと語弊がありますが、どちらにもとれるような判断が難しい「グレーゾーン」が存在します。

では、実際の使用例に即して具体的に考えてみましょう。

1.通話やスマホの画面を見ながら、ほんの少しでも自動車を動かしてはいけないのか?

道交法では、「停止しているときを除き」となっています。「停止」というためには、車輪が完全に止まっていなければいけませんので、渋滞等で少しでも車輪が動いていれば、アウト、ということになります。

ちなみに、画面を見ずにスマホの操作ができるのであれば、それは「通話」もしていないし、「注視」もしていないので走行中でもこの条文の違反ではない、ということになります。

ただし、安全運転義務違反、という他の違反もありますので、注意しましょう。

2.赤信号で停止しているときに、通話やスマホの画面を見るのは違反か?

赤信号停止中は「停止」ではないとの前提で、切符を切られた、というような話を聞きます。

しかし、私は、赤信号で完全に車輪が止まっているのであれば、「停止」として、道交法違反ではない、と考えています。

道路交通法では、いくつかの条文で、「停止」という用語が使用されています。

たとえば、道交法2条1項20号は、「徐行」の定義を「車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。」としています。

とすれば、ここでいう「停止」とは、車輪が止まっている状態をいうと解釈するのが自然でしょう。

また、道交法2条1項18号では、「駐車」の定義を「車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること」としています。

交差点の赤信号で停止中、故障をして継続的に停止した場合には、この条文により、駐車していることになります。

そうであれば、赤信号で車輪を完全に停止している場合には、道路交通法上は、「停止」と解釈するべきでしょう。

中には、「エンジンがかかっていれば『走行中』」と言えるのではないか」という意見があるかもしれません。

しかし、そうすると、駐車場や駐停車OKの場所でエンジンをかけて駐車中の車なども「走行中」ということになり、不合理です。

したがって、赤信号で停止中に携帯電話使用、スマホ注視をしている人に切符を切るのは間違いである、と考えています。

ただし、現状、取締がされている、という話を聞きますので、余計なトラブルを避けるためには、赤信号停止中は使用しない方が無難です。

警察庁は、「停止」の定義を明確にして、実務の運用の統一を図っていただければと思います。

3.スマホ車載ホルダーに固定してナビ代わりにスマホを使用した場合でも違反になるのか?

最近では、専用の車載ホルダーにスマホを固定して運転中にカーナビの代わりに使っているドライバーが増えているようですが、これも違反になるでしょうか。
「画面注視」というのは、画面を見続けることをいいます。
たとえば、カーナビは一瞥(いちべつ)を繰り返し、何度か見返せば位置が理解できるようになっているので、一瞥するだけでは注視にはなりません。

しかし、走行中にカーナビをじっと凝視していれば当然「注視」となり、違反となります。

したがって、スマホを、カーナビのように一瞥の繰り返しによって位置を理解し走行できれば違反にはなりません。
しかし、専用ホルダーに固定したスマホを見続けていれば「注視」していたことになり、違反となります。

スマホの画面は小さいので、カーナビよりも注視しやすい傾向があるため注意が必要です。

なお、ドリンクホルダーにスマホを差して使っているドライバーもいますが、これも専用ホルダーと同様です。
4.どのくらいの時間、画面を見続けると「注視」になるのか? 法律に規定はあるのか?

「道路交通法」の条文に具体的な数字が書いているわけではないので、何秒以上は違反という決まりはありません。

ちなみに、交通事故の防止を目的とした警察庁の通達の中の「運転者の遵守事項に関する規定の整備」の項目にも、「注視とは、見続けること」と記載されています。

したがって、運転中にスマホ画面を見ることは、それ自体危険な行為であるため一瞥する以上に画面を見る行為はこの規定に違反する、と考えた方がよいでしょう。
5.自転車運転の場合でも携帯電話での通話やスマホ画面を見ることは法律違反か?

自転車に乗りながら携帯電話やスマホを使うくらい問題ないだろう、法律違反なんて大袈裟な、と思う人もいるかもしれません。

実際、道路交通法の条文では、「自動車及び原動機付き自転車」に限定しています。

しかし、道路交通法第71条6号に基づく、各都道府県の「道路交通規則」には自転車の運転中の通話や画面注視が禁止されていることがあります。

東京都道路交通規則では、5万円以下の罰金です。

さらに、2015年6月1日に施行された「改正道路交通法」では、自転車運転による違反の取り締まり強化と事故抑制を目的として、悪質な自転車運転者に対する安全講習の義務化を定めました。

信号無視や酒酔い運転、一時不停止など全部で14の違反行為があり、その中の安全運転義務違反として携帯電話やスマホの使用禁止が規定されています。

詳しい解説はこちら⇒「自転車の危険運転に安全講習義務づけに
https://taniharamakoto.com/archives/1854
携帯電話やスマホの“ながら運転”は死傷事故など重大な事態につながる危険性があります。

交通ルールや法律を守り、安全運転を心がけることは自分のためだけでなく、相手のためでもあることをしっかり認識してほしいと思います。