日本でも司法取引が始まります。
日本の司法取引制度に関する法案に動きがあったようなので解説します。
「司法取引6月1日に導入 政府、政令を閣議決定へ」(2018年1月24日 産経新聞)
法務省は1月24日、司法取引を導入する改正刑事訴訟法について、施行日を6月1日とする方針を固めました。
司法取引については、施行日を「公布から2年以内」としていましたが、政府は近く施行日を定めた政令を閣議決定するということです。
司法取引とは?
司法取引とは、逮捕された容疑者や起訴された被告人と検察官が司法における取引をすることです。
具体的には、容疑者や被告人が共犯者らの犯罪を明らかにするために捜査機関に証拠の提出や供述などをした場合、その見返りとして検察官は起訴を見送ったり(不起訴処分)、求刑を軽減したりできるというものです。
司法取引制度成立の背景
アメリカ映画などを見ていると、司法取引の場面が描かれていることがありますが、これまで日本では司法取引は法律で認められていませんでした。
しかし、証拠収集手段の適正化や多様化、充実した公判審理の実現などを目指し、2016(平成28)年5月に成立した「改正刑事訴訟法」に、検察と警察の取り調べの録音・録画(可視化)の義務付けとともに司法取引の導入が盛り込まれました。
ちなみに、改正刑事訴訟法は2017(平成29)年6月に公布されています。
対象となる犯罪
・薬物・銃器関連の犯罪
・贈収賄、汚職、背任、脱税、談合などの経済犯罪
・組織犯罪処罰法の組織的詐欺(振り込め詐欺など)
・独占禁止法違反
・特許法違反
・会社法違反
・破産法違反
・詐欺罪
・窃盗罪 など
司法取引制度のポイント
・司法取引の協議は、検察官と容疑者・被告人およびその弁護人との間で行なわれ、合意するには弁護人の同意が必要となります。
・組織犯罪における主犯格の情報を引き出したり、共犯者の解明に役立つと期待されていますが、一方で嘘の供述で他人を陥れたり、共犯者に自分の罪をかぶせたりといった冤罪を生む危険性も指摘されています。
従来、日本の刑事手続きでは、自白を重視するあまり過酷な取り調べが問題視されていました。
そこで、取り調べを可視化することで容疑者への自白の強要を防ぎ、また立証が困難な汚職や背任などの企業犯罪や詐欺などの組織犯罪の捜査の効率化を図るという目的が改正刑事訴訟法にはあります。
さて、この制度が日本に根付くかどうか、今後の進展を見守りたいと思います。