SNSのなりすまし行為で名誉毀損に。
SNS上で何者かが自分なりすまし、他の利用者を罵倒する書き込みをしていたら…あなたはどうしますか?
今回は、誰にでも起こるかもしれないSNSでの「なりすまし事件」の民事訴訟について解説します。
「SNSでなりすまし、他人を罵倒 名誉権侵害で賠償命令」(2017年8月30日 朝日新聞)
長野県在住の男性が、「インターネット上の掲示板に、自分になりすまして投稿され肖像権などを侵害された」として、大阪府枚方市の男性に723万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪地裁でありました。
裁判所は、「社会的評価を低下させ、名誉権を侵害した」として被告側に130万円の支払いを命じました。
事件があったのは、2015年5月。
原告男性がSNS「GREE(グリー)」で使用していたプロフィール画像の顔写真や登録名を、被告男性が無断で使ってなりすまし、掲示板に「お前の性格の醜さは、みなが知った事だろう」などと別の利用者を罵倒する内容の書き込みをしたということです。
「正当な目的なく顔写真を使い、男性が他者を根拠なく侮辱、罵倒して掲示板の場を乱す人間であるとの誤解を与えるような投稿をした」と指摘し、原告男性の肖像権、名誉権を侵害したと結論づけました。
なお、原告男性は今回の訴訟に先立ち、2015(平成27)年10月にSNS運営会社に対し、発信者情報の開示を求めて大阪地裁に提訴しており、一審は棄却したものの、2016(平成28)年10月に大阪高裁の開示命令判決を受けたことで、被告を特定して損害賠償を求める訴訟を起こしていたとうことです。
まずは、民事における損害賠償請求について見ていきましょう。
民法の規定により、名誉を侵害された場合は不法行為による損害賠償を請求することができます。
「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第710条(財産以外の損害の賠償)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
第723条(名誉毀損における原状回復)
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
ここでのポイントは、なりすましをされただけでは一般的には名誉などの権利を侵害されたとはいえないことです。
つまり、今回の事件でいえば、被告がなりすましている間に、原告の「名誉を毀損した」、つまり、「社会的評価を低下させる」ような書き込みをしたかどうかが争点になるわけです。
なお、ネット上の中傷投稿に名誉毀損やプライバシーの侵害の内容が含まれている場合は、「発信者情報開示請求」をすることができます。
詳しい解説はこちら⇒
「中傷投稿やツイートに対抗する法的手段とは?」
ネット上の言動は、バレないと思っている人もいるかもしれません。
しかし、たとえば、ツイッターで爆破予告などをすると、すぐ特定されて、警察等の業務を妨害した、といことで逮捕されたりしますし、今回のように、損害賠償請求を受けたりします。
ネットやSNSの容易性を甘く見て、人生を棒に振らないように気をつけていただきたいところです。